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第二章
第七十一話 再び三獣領域へ
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依頼していた防具を受け取った翌日。
俺とリリアは約2週間ぶりにダンジョン〈三獣領域〉を訪れていた。
ここで他国の特殊部隊に襲われたのが今となっては懐かしく感じられる。
まぁ、半月程度しか経っていないんだが。
「それにしても、三獣領域ってダンジョン名を聞くと先日の〈混幻魔獣〉を思い出すよな」
「キマイラ種が大体3種類のモンスターの特徴を兼ね備えているからですか?」
「ああ。キマイラのことを知ってたらダンジョンの名前から出現モンスターがキマイラだと連想してしまいそうだ」
「そうですね。確か、ここのダンジョンボスはシカ系モンスターなんですよね?」
「そうだぞ。今から戦うエリアボスはオオカミ系のボスモンスターだけど」
リリアと雑談を交わしながらエリアボスを出現させるための作業を行う。
〈三獣領域〉で出現する2体のエリアボスの内、以前倒したキツネ系のボスモンスター〈魔煌五尾狐サイラ〉を召喚する際には、下位種族である〈魔導狐〉の各属性の死体を1体ずつ集める必要があった。
それはもう片方のエリアボスであるオオカミ系のボスモンスターも同様で、こちらのエリアボスを召喚する場合も似たような下準備が必要だった。
森フィールドにメイジフォックスが出現する一方で、草原フィールドには〈魔闘狼〉というオオカミ系モンスターが出現する。
ウォーウルフもメイジフォックスも単体では行動せずに集団で動く点は同じだが、その数はかなり違う。
メイジフォックスは2~10体ほどだが、ウォーウルフは3~20体と倍近い数で行動している。
メイジフォックスが魔法を使え、ウォーウルフは魔法が使えないことを考慮すれば集団ごとの戦力に然程差はない。
とはいえ、数の暴力というのは分かりやすい脅威であるため、最低でも5人以上の中級覚醒者のパーティーで挑むのが普通らしい。
贅沢を言えば倍の10人以上で戦うべきとも言われており、5人程度のパーティーからは毎月数人の死者が出ていると、探索者協会のサイトにある〈三獣領域〉のページの特記事項の欄に記載されていた。
そんなウォーウルフの群れに対して、俺とリリアは2人だけで挑んでいる。
これは俺達が共に上級覚醒者だからというのも理由ではあるが、単純にウォーウルフ達と相性が良いのが1番の理由だった。
「それにしても、よく効くよな。今のところ〈魅了〉成功率100%か」
「クロヤさんの捕縛率も100%ですね。ウォーウルフ達の力では拘束を振り解けないみたいです」
「遠距離攻撃手段もないからな。楽な戦いだ」
目の前には俺の【植物支配】で支配された草原フィールドの草に拘束されたウォーウルフ達の姿が散見しており、それらのウォーウルフへとリリアが解き放った運命属性魔力が侵蝕していた。
運命属性魔力によって〈魅了〉状態になったウォーウルフは拘束状態から解放され、同様の状態に陥った他のウォーウルフへと襲い掛かり、同士討ちを行う。
俺達は能力を行使しつつも、その場から動くことなくウォーウルフ達が殺し合う光景を眺めていた。
「動きの速いウォーウルフをクロヤさんのスキルで捕まえて動けなくし、その隙に私の魔力で操り同士討ちをさせる。本当に楽な戦いですね」
「おかげで多少目立ってるけどな。先輩のギルドから報酬で貰ったこの仮面があって良かったよ」
【認識困難】に【鑑定妨害】といった身バレ防止の能力を持つ〈隠遁者の獣面〉の仮面の表面を撫でる。
正体を隠しているのは、これからエリアボスを召喚させるからだ。
現時点では〈三獣領域〉のエリアボスは未発見であり、その存在が初めて明るみになると、それを為した俺達にも注目が集まるのは簡単に予想できる。
以前のキツネ系のエリアボスは森フィールドでしか召喚出来なかったように、オオカミ系のエリアボスは草原フィールドでしか召喚することができない。
木々といった視線を遮る障害物がない草原では、戦闘の様子が人目に触れないようにするのは不可能だ。
そのため、戦闘後に起こるであろう騒動を避けるのに、この仮面が大いに役立つ。
なお、顔とステータス以外の身体付きや防具といった視覚情報については、闇系魔法『幻影偽身』で誤魔化している。
戦闘スタイルまでは誤魔化せないが、何も対策をしないよりはマシだろう。
「さて、これで群れのリーダーの死体は集まったか」
「10体分でしたよね?」
「ああ。これでエリアボスを召喚できるはずだ。疲れているならボス戦の前に休憩を入れるが、どうする?」
「大丈夫です。魅了に使った分の魔力も回復しましたから。そういえば、今倒した分のウォーウルフ達の肝は採取しなくていいんですか?」
「さっき倒した群れの分で空いてる素材保管ケースが無くなったから放置でいいよ」
「あ、そうだったんですね」
ウォーウルフの肝は〈体力回復薬〉という〈魔法薬〉の材料の1つであるため、まぁまぁの値段で売れる。
比較的倒しやすいモンスターであり、一度に出現する数も多く、肝ほどではないが毛皮も売れるため、ウォーウルフは〈三獣領域〉では重要な金策対象モンスターだった。
今回の主な目的はエリアボス討伐だが、だからといって召喚の糧となるウォーウルフの死体を無駄にするわけにはいかない。
肝以外にもマジックアイテム化のために綺麗な死体も確保しているので、エリアボスを除いても今日の稼ぎは大幅に黒字だ。
これで後顧の憂いなくエリアボスに挑むことができる。
リリアの準備が整ったのを確認すると、オオカミ系のエリアボスを召喚するため、〈宝納の指環〉に収納しておいたウォーウルフのリーダー種の死体を次々と取り出していった。
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