万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵

文字の大きさ
73 / 139
第二章

第七十三話 デカい人

しおりを挟む


 ◆◇◆◇◆◇


「──ひぃあああぁーーッ!?」


 倒したエリアボスの死体をどのマジックアイテムにするか悩んでいると、どことなく緊張感に欠ける悲鳴が聞こえてきた。


「なんか聞こえたな」

「聞こえてきましたね」

「な、何で追いかけてくるのーーッ!?」


 段々と近付いてくる女性の声と足音だけでなく、それを更に追いかける複数の気配を感知した。


「はて?  追跡していた奴らは全部〈魅了〉したんだよな?」

「そのはずなんですが……」

「男女問わず?」

「勿論です」

「ふむ。上級覚醒者の〈魔女〉からの干渉に耐えるとは。単純に抵抗力が高いか、耐性系スキルを持ってるってところか」


 一先ずエリアボスの死体と宝箱を〈宝納の指環〉に収納すると、叫びながら近付いてくる第三者の方からは死角になる場所へとリリアと共に退避する。
 程なくして、俺達がいる盆地へと悲鳴の主が飛び込んできた。


「デッカ……」


 思わず反射的に口に出してしまうほどに、悲鳴の主は全体的にデカかった。
 年齢はたぶん同年代。身長に関してはおそらく190センチはあるだろう。
 そして、身長に比例するかのように胸部も凄かった。
 具体的なサイズまでは分からないが、取り敢えずではなくだと断言できるレベルだ。
 もしかすると3桁はあるかもしれない……。


「……クロヤさん、どこを見てるんですか?」

「いや、結構攻めてる格好だな、と思ってな。ほら」

「確かに凄いですね。ええ、本当に……」


 リリアから向けられる極寒の視線を躱わすため、謎の美女の装備を指し示す。
 装備的に戦士系クラスのようだが、流石に女性もの且つ全身のサイズに合う防具は無いのか、胸元がはだけて谷間が露出している。
 まぁ、単純に蒸れるから開放しているだけかもしれないが。
 蠱惑的にも野生的にも見える肌の露出多めの金属板付き革鎧と、マジックアイテムの剣と盾を装備した美女は、盆地へと着地して背後へと振り返る。
 彼女を追って丘の向こう側から5人の男性探索者が飛び出してきたが、その目は明らかに正気ではない。
 具体的にはまるで〈魅了〉されているようにしか見えなかった。


「確かにちゃんと魅了されてるな」

「そうでしょう?」


 やはりあの爆にゅ、もとい爆弾ボディな美女だけが運命属性魔力をレジストしたようだ。
 単に偶々通りかかって巻き込まれただけかもしれないけど、たぶん俺達を追跡していた複数のパーティーのいずれかに属するメンバーだろう。
 運命属性魔力の術者であるリリアの姿が見えない所為で、〈魅了〉状態になっても同士討ちは起こらなかったというよりは、〈魅了〉の影響で男達の彼女に対する欲望が解放されたことが理由のような気がする。
 美人な上に、目に毒な格好と身体付きとあらば無理もないか……。
 なんとなく憐憫の視線で彼らの醜態と痴態を眺めていると、彼らは武器を振り上げて彼女に襲い掛かっていった。


「どうしましょうか?」

「どうしようか」


 元より治外法権なダンジョン内でのことなので、追跡されたこと自体にそこまで思うことはない。
 今回のように返り討ちにすれば良いだけだし、結局のところは自己責任でしかないからだ。
 それはそれとして、経緯はどうあれ目の前で女性が複数の男性に襲われるのを黙って見ているのは如何なものかという思いもある。
 故に、どうしたものかと悩んでいるのだが……。


「なんか大丈夫そうだな」

「というか、彼女強すぎませんか?」


 正気を失っているとはいえ、1対5の状況なのに爆弾ボディな美女は男達を剣と盾で見事に捌いていた。
 長身ではあるが、特別筋肉が凄いというわけではない。
 それなのに図体のデカい男──彼女よりは低いが──からの一撃を正面から軽々と受け止めていた。
 体幹も良いようで、重い一撃を受け止めても微塵も足元は揺らがず、攻撃を受け止めた盾で相手持ち上げるようにして跳ね除け、他の男へとぶつけていた。
 悲鳴を上げながら逃げていたのと同一人物だとは思えないが、それほど先ほどはパニックになっていたのだろう。
 いきなり仲間から襲われたならば、それほどおかしなことではないか。


「……取り敢えず助けるか」

「美人だからですか?」

「それもあるが、追跡対象とは別人のフリをして助けて、俺達を追跡していた理由を探る」

「なるほど。では、そういうことにしておきます」


 なんとなく冷たいリリアの反応に肩を竦めつつ、顔に装着していた〈隠遁者の獣面〉を外して、外見情報を偽っていた闇系魔法『幻影偽身イリュージョン』を解除した。
 男女の2人組という点が同じなのは偽れないので、後は演技力次第だな。


「おい、大丈夫か!」

「今助けますね!」

「えっ、あ、ありがとうございます! お願いします!」


 一瞬だけ浮かべた困惑の表情だけでは、俺達が追跡していた対象だと気付いたか判断が付かないな。
 人目のある場所での戦闘では【植物支配】しか使ってないから、【植物支配】さえ使わなければ戦闘スタイルから正体が露見することはないはずだ。
 一先ずは、男達を【麻痺撃】付きで殴って動けなくし、そこから第6層能力【状態変換】で〈気絶〉状態にしてから無力化させるとしよう。



 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

日本国 召喚獣管理省 関東庁 召喚獣総合事案即応科。

wakaba1890
ファンタジー
召喚獣。 それは向こう側とされる所から、10歳を迎えた日本人の子供の下に召喚されるモンスターのことである。 初代天皇・神武天皇が日本を建国した際に書かれた絵画には彼は金鵄と呼ばれる金色に輝く鵄(とび)と契約したのが原初となっている。 そして、縄文、弥生、古墳、飛鳥、平安、戦国時代から近代から今に至るまで、時代を動かしてきた人物の側には確かに召喚獣は介在していた。 また、奇妙な事に、日本国に限り、齢10歳を迎えた日本在住の日本人にのみ体のどこかから多種多様な紋章が発現し、当人が念じると任意の場所から召喚陣が現れ、人ならざるモンスターを召喚される。 そして、彼らモンスターは主人である当人や心を許した者に対して忠実であった。 そのため、古来の日本から、彼ら召喚獣は農耕、治水、土木、科学技術、エネルギー、政治、経済、金融、戦争など国家の基盤となる柱から、ありとあらゆる分野において、今日に至るまで日本国とアジアの繁栄に寄与してきた。 そして、建国から今まで、国益の基盤たる彼ら数万種類以上をも及ぶ召喚獣を取り締まり管理し、2600年以上と脈々と受け継がれてきた名誉ある国家職がーーーーー国家召喚獣管理官である。

新世機生のアポストル 〜Restart with Lost Relic〜

黒城白爵
ファンタジー
 異界から突如出現したモンスターによって、古き世界は終わりを告げた。  新たな世界の到来から長い年月が経ち、人類は世界各地に人類生存圏〈コロニー〉を築いて生き残っていた。  旧人類、新人類、コロニー企業、モンスター、魔力、旧文明遺跡、異文明遺跡……etc。  そんな様々な物が溢れ、廃れていく世界で生きていた若きベテランハンターのベリエルは、とある依頼で負った怪我の治療費によって一文無しになってしまう。  命あっての物種、だが金が無ければ何も始まらない。  泣く泣く知り合いから金を借りてマイナススタートを切ることになったベリエルは、依頼で危険なコロニーの外へと向かい、とある遺物を発見する……。  

女神の白刃

玉椿 沢
ファンタジー
 どこかの世界の、いつかの時代。  その世界の戦争は、ある遺跡群から出現した剣により、大きく姿を変えた。  女の身体を鞘とする剣は、魔力を収束、発振する兵器。  剣は瞬く間に戦を大戦へ進歩させた。数々の大戦を経た世界は、権威を西の皇帝が、権力を東の大帝が握る世になり、終息した。  大戦より数年後、まだ治まったとはいえない世界で、未だ剣士は剣を求め、奪い合っていた。  魔物が出ようと、町も村も知った事かと剣を求める愚かな世界で、赤茶けた大地を畑や町に、煤けた顔を笑顔に変えたいという脳天気な一団が現れる。  *表紙絵は五月七日ヤマネコさん(@yamanekolynx_2)の作品です*

シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~

尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。 だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。 全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。 勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。 そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。 エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。 これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。 …その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。 妹とは血の繋がりであろうか? 妹とは魂の繋がりである。 兄とは何か? 妹を護る存在である。 かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。 タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。 ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。 本編完結済み。 外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

この世界にダンジョンが現れたようです ~チートな武器とスキルと魔法と従魔と仲間達と共に世界最強となる~

仮実谷 望
ファンタジー
主人公の増宮拓朗(ましみやたくろう)は20歳のニートである。 祖父母の家に居候している中、毎日の日課の自宅の蔵の確認を行う過程で謎の黒い穴を見つける。 試にその黒い穴に入ると謎の空間に到達する。 拓朗はその空間がダンジョンだと確信して興奮した。 さっそく蔵にある武器と防具で装備を整えてダンジョンに入ることになるのだが…… 暫くするとこの世界には異変が起きていた。 謎の怪物が現れて人を襲っているなどの目撃例が出ているようだ。 謎の黒い穴に入った若者が行方不明になったなどの事例も出ている。 そのころ拓朗は知ってか知らずか着実にレベルを上げて世界最強の探索者になっていた。 その後モンスターが街に現れるようになったら、狐の仮面を被りモンスターを退治しないといけないと奮起する。 その過程で他にもダンジョンで女子高生と出会いダンジョンの攻略を進め成長していく。 様々な登場人物が織りなす群像劇です。 主人公以外の視点も書くのでそこをご了承ください。 その後、七星家の七星ナナナと虹咲家の虹咲ナナカとの出会いが拓朗を成長させるきっかけになる。 ユキトとの出会いの中、拓朗は成長する。 タクロウは立派なヒーローとして覚醒する。 その後どんな敵が来ようとも敵を押しのける。倒す。そんな無敵のヒーロー稲荷仮面が活躍するヒーロー路線物も描いていきたいです。

ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。 まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。 しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。 一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。

処理中です...