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第二章
第七十三話 デカい人
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「──ひぃあああぁーーッ!?」
倒したエリアボスの死体をどのマジックアイテムにするか悩んでいると、どことなく緊張感に欠ける悲鳴が聞こえてきた。
「なんか聞こえたな」
「聞こえてきましたね」
「な、何で追いかけてくるのーーッ!?」
段々と近付いてくる女性の声と足音だけでなく、それを更に追いかける複数の気配を感知した。
「はて? 追跡していた奴らは全部〈魅了〉したんだよな?」
「そのはずなんですが……」
「男女問わず?」
「勿論です」
「ふむ。上級覚醒者の〈魔女〉からの干渉に耐えるとは。単純に抵抗力が高いか、耐性系スキルを持ってるってところか」
一先ずエリアボスの死体と宝箱を〈宝納の指環〉に収納すると、叫びながら近付いてくる第三者の方からは死角になる場所へとリリアと共に退避する。
程なくして、俺達がいる盆地へと悲鳴の主が飛び込んできた。
「デッカ……」
思わず反射的に口に出してしまうほどに、悲鳴の主は全体的にデカかった。
年齢はたぶん同年代。身長に関してはおそらく190センチはあるだろう。
そして、身長に比例するかのように胸部も凄かった。
具体的なサイズまでは分からないが、取り敢えず巨ではなく爆だと断言できるレベルだ。
もしかすると3桁はあるかもしれない……。
「……クロヤさん、どこを見てるんですか?」
「いや、結構攻めてる格好だな、と思ってな。ほら」
「確かに凄いですね。ええ、本当に……」
リリアから向けられる極寒の視線を躱わすため、謎の美女の装備を指し示す。
装備的に戦士系クラスのようだが、流石に女性もの且つ全身のサイズに合う防具は無いのか、胸元がはだけて谷間が露出している。
まぁ、単純に蒸れるから開放しているだけかもしれないが。
蠱惑的にも野生的にも見える肌の露出多めの金属板付き革鎧と、マジックアイテムの剣と盾を装備した美女は、盆地へと着地して背後へと振り返る。
彼女を追って丘の向こう側から5人の男性探索者が飛び出してきたが、その目は明らかに正気ではない。
具体的にはまるで〈魅了〉されているようにしか見えなかった。
「確かにちゃんと魅了されてるな」
「そうでしょう?」
やはりあの爆にゅ、もとい爆弾ボディな美女だけが運命属性魔力をレジストしたようだ。
単に偶々通りかかって巻き込まれただけかもしれないけど、たぶん俺達を追跡していた複数のパーティーのいずれかに属するメンバーだろう。
運命属性魔力の術者であるリリアの姿が見えない所為で、〈魅了〉状態になっても同士討ちは起こらなかったというよりは、〈魅了〉の影響で男達の彼女に対する欲望が解放されたことが理由のような気がする。
美人な上に、目に毒な格好と身体付きとあらば無理もないか……。
なんとなく憐憫の視線で彼らの醜態と痴態を眺めていると、彼らは武器を振り上げて彼女に襲い掛かっていった。
「どうしましょうか?」
「どうしようか」
元より治外法権なダンジョン内でのことなので、追跡されたこと自体にそこまで思うことはない。
今回のように返り討ちにすれば良いだけだし、結局のところは自己責任でしかないからだ。
それはそれとして、経緯はどうあれ目の前で女性が複数の男性に襲われるのを黙って見ているのは如何なものかという思いもある。
故に、どうしたものかと悩んでいるのだが……。
「なんか大丈夫そうだな」
「というか、彼女強すぎませんか?」
正気を失っているとはいえ、1対5の状況なのに爆弾ボディな美女は男達を剣と盾で見事に捌いていた。
長身ではあるが、特別筋肉が凄いというわけではない。
それなのに図体のデカい男──彼女よりは低いが──からの一撃を正面から軽々と受け止めていた。
体幹も良いようで、重い一撃を受け止めても微塵も足元は揺らがず、攻撃を受け止めた盾で相手持ち上げるようにして跳ね除け、他の男へとぶつけていた。
悲鳴を上げながら逃げていたのと同一人物だとは思えないが、それほど先ほどはパニックになっていたのだろう。
いきなり仲間から襲われたならば、それほどおかしなことではないか。
「……取り敢えず助けるか」
「美人だからですか?」
「それもあるが、追跡対象とは別人のフリをして助けて、俺達を追跡していた理由を探る」
「なるほど。では、そういうことにしておきます」
なんとなく冷たいリリアの反応に肩を竦めつつ、顔に装着していた〈隠遁者の獣面〉を外して、外見情報を偽っていた闇系魔法『幻影偽身』を解除した。
男女の2人組という点が同じなのは偽れないので、後は演技力次第だな。
「おい、大丈夫か!」
「今助けますね!」
「えっ、あ、ありがとうございます! お願いします!」
一瞬だけ浮かべた困惑の表情だけでは、俺達が追跡していた対象だと気付いたか判断が付かないな。
人目のある場所での戦闘では【植物支配】しか使ってないから、【植物支配】さえ使わなければ戦闘スタイルから正体が露見することはないはずだ。
一先ずは、男達を【麻痺撃】付きで殴って動けなくし、そこから第6層能力【状態変換】で〈気絶〉状態にしてから無力化させるとしよう。
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