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第二章
第七十四話 共感する2人
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「──前々から彼らから向けられる怪しい視線には気付いてはいたんですけど、見て見ぬフリをしてたんですよね。自分でも格好がアレだと思っていましたし、新たに仲間を探すのも面倒だったので。だから襲われる可能性は考えてたんですけど、実際に襲われると焦っちゃって上手く対処出来ないですね。ハハハ……」
隣を歩く爆弾ボディな長身美女改め、鞠川マリヤが苦笑混じりに事の経緯を説明してくれる。
口調は若干軽いものの、困ったような表情を見る限り実際に軽く考えているわけではないらしい。
身長差からモデル体型な金髪美女を見上げつつ、気になることを尋ねていく。
「それは大変でしたね。鞠川さんの装備を見る限り戦士系クラスですか?」
「あ、はい。〈蛮族闘士〉というクラスです。クラスの特性の所為で装備できる防具に制限があるみたいで、肌の露出が多い防具じゃないと能力値が下がっちゃうんですよ。その代わりフィジカル面が強いんですけどね」
襟元を摘んで胸元をパタパタと煽ぐマリヤ。
10センチほどの身長差があるため自然と視線が吸い寄せられる。
マリヤと反対側を歩くリリアからの圧が増した気がしたので、誤魔化すように背後へと振り返る。
俺達3人の後ろではマリヤを襲った5人の男達の姿があった。
全員気絶しており、ロープで拘束された上でマリヤによって引き摺られていた。
装備込みでの成人男性の重さを考えると100キロ近くはあるだろう。
合わせて約500キロの男達を1人かつ片手で引き摺っていることから、マリヤの膂力の凄まじさが窺い知れる。
純戦士系の上級覚醒者というのもあるんだろうが、何よりも装備デメリットが存在するクラスなだけあってステータスがかなり高いな。
筋力値に関しては、各種ボーナス込みの俺の筋力値とマリヤの素の筋力値がほぼ同じだし、ホント冗談みたいな高さだ……。
「その、理由が理由ですけど、本当にこんな目に合わせてよかったんですか?」
俺の視線を追って同じように男達を見ていたリリアがマリヤへと尋ねた。
若干気まずげなのは自分が放った運命属性魔力が原因だからだろうか?
俺が提案したのだから気にする必要はないのに。
「大丈夫ですよ。今はお試し期間でのギルド加入でしたし、さっきも言ったように視線が怪しかったので元々近いうちに断る予定だったんです。今日なんか突然他の探索者を追跡し始めたりして、ちょっと合わないなぁと感じてもいましたし。だから今回のことは正規加入をお断りする良い理由付けになりました。これで堂々と離れられます」
「それなら良いんですけど……」
マリヤの様子を窺うに嘘ではないみたいだ。
リリアにもそれが分かったのか、マリヤの言葉を聞いて安堵しているようだった。
件のギルドは確か……。
「サイサリスギルドでしたよね、彼らのギルド名は。大型ギルドではないですけど、中堅どころでは上の方の規模のギルドにスカウトされていただなんて凄いですね」
「大型ギルドからもスカウトを受けていた外神さん達ほどではありませんよ」
「私達は少人数でダンジョンを攻略したから注目を集めただけですよ。鞠川さんも上級覚醒者ですけど、大型ギルドからスカウトはなかったんですか?」
「私が上級覚醒者になったのは最近のことですからスカウトは受けてませんね」
「なるほど。それなら近いうちにスカウトがありそうですね」
マリヤが望むならレイカ先輩のガーベラギルドでも紹介してやるのも良いかもしれない。
彼女自身が俺達の追跡を望んだわけではないみたいだし、結果的に仲間から襲われるという体験をすることになった詫び代わりに仲介ぐらいならしてやるつもりだ。
「知り合いに大型ギルド関係者がいますから、よければ紹介しましょうか?」
「そうですね……せっかくのお話ですが、お気持ちだけ受け取っておきます」
「おや、そうですか?」
「はい。前々から思ってたことなんですが、私は大人数で行動するのには向いていないようなので……」
言葉を選ぶようなマリヤの態度に内心で首を傾げる。
もしかして、一応は恩人に入る俺からの提案を断わるのが気まずいのだろうか?
そんなことを考えていると、リリアが俺の代わりに会話を引き継いだ。
「戦闘スタイル的にですか? それとも人間関係?」
「うーん、両方でしょうか。私は前衛で暴れるような戦闘スタイルなんですけど、人が多いと力を制限しないといけませんから。人間関係についてもまぁ、今回のことを除いても色々ありましたから……」
リリアからの率直な質問にマリヤが答える。
同性かつ似たような事情を持っていたリリアが、同意するように何度も頷いていた。
以前は制御不能故に周りの人間に不和を齎していた運命属性魔力の所為で、リリアは他人と組めなかったからな。
経緯は異なるが覚醒者として手に入れた力が原因という点では同じなので、共感せざるを得ないようだ。
「分かります。私も大変だったんです。詳細は省きますけど、私が人が多くいるところに行くと、下手すれば血の雨が降りそうになってましたから」
「ち、血の雨ですか?」
「はい。簡単に言うと、私が意図したわけではないのに、私が原因で刃傷沙汰が起きていました」
「……凄く身に覚えがありますね」
どうやらリリアの話を聞いてマリヤも共感しているようだった。
魔力と肉体という違いはあっても、2人共に周りを惑わせる魔性の女だからか通じるものがあるらしい。
まぁ、仲良く話が盛り上がるのは別にいいんだが、間に挟まれている男性の俺からしたら居心地の悪い話題が飛び交っているので、リリアは出来れば場所を代わってくれないだろうか?
気絶したまま草原フィールドを引き摺られているサイサリスギルドの5人の男達を少し羨ましく思いつつ、美女2人の苦労話を聞き流していった。
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