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第二章
第七十五話 探索者ブース
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ダンジョンを出て、マリヤを襲ったサイサリスギルドの5人を探索者協会の職員へと引き渡すと、俺達も一緒に事情を説明してから彼女とはダンジョン前で別れた。
サイサリスギルドに仮入団状態だったマリヤは、この後協会職員の立ち会いの下にサイサリスギルドへの入団を正式に断わるとのこと。
マリヤを襲った5人は〈魅了〉状態での犯行であったため、彼女を襲ったことを認める可能性は低いだろう。
だが、第3者である俺達の証言と謎の男女2人組──勿論俺達のことである──の戦果を奪うべく追跡していたことをマリヤが証言すれば、仮入団状態のサイサリスギルドを抜けることぐらいは簡単なはずだ。
こういうのを司法取引……とは言わないだろうが、まぁそんな感じで話はつくだろう。
「無事に話がつくといいですね」
「そうだな。それにしても、連絡先まで交換するとは仲良くなるのが早いな」
「やっぱり共通点が多いと話が盛り上がりますね」
「そんなに話が盛り上がるならさっさと場所を代わってくれれば良かったのに」
リリアと雑談をしながら〈三獣領域〉の近くにある〈探索者ブース〉へと移動する。
この探索者ブースとは、ダンジョンへ挑む前後で同じパーティーを組む探索者達が談合するために建てられた施設だ。
探索者として協会で登録されていない下級覚醒者でも利用できるが、探索者ブースという名称の通り主な顧客ターゲットは中級以上の等級の覚醒者であり、探索者協会が運営する有料施設であるため、探索者以外の姿は殆ど見かけない。
イメージとしてはカラオケ設備の無いカラオケ店が1番近く、個室かつ軽食とドリンクバーまである。
探索者IDを提示すれば利用料金は多少安くなるものの、パーティー内での話し合い用の施設なので全部屋に防音・防魔処理が施されているので結構な高額だ。
それでもパーティーを組む探索者にとっては、周りの目や耳を気にすることなく話し合えるので需要は非常に高く、2つ以上のダンジョンの中間地帯に置かれていることが多い。
そのため、全部屋が埋まっていることも珍しくないが、幸いにも〈三獣領域〉から1番近くにある探索者ブースには空きがあった。
取り敢えず30分だけ利用──30分単位で部屋を借りれる──することにして、リリアと共に部屋に入った。
「うーん。特に怪しいのは無さそうだな。そっちは?」
「見当たりませんね。『魔力探知』にも反応は無いので大丈夫だと思います」
俺は目視と触感で、リリアは魔法を使って、室内に盗聴器やカメラの類いが仕掛けられていないかを確認した。
部屋に防音だけでなく、情報系の魔法やスキルといった魔力を用いた干渉を防ぐ防魔処理が施されているとはいえ、それらが防げるのは部屋の外部に対することのみ。
初めから室内に機械の類いを仕掛けられていたら意味がないため、慎重な探索者は探索者ブースで部屋を借りるとまず最初に仕掛けられた機械類の有無を確認するのがお約束だった。
魔法使いがいれば無属性魔法の『魔力探知』が使えるため、盗聴器のような機能を持つマジックアイテムや室内に隠れている者を発見することもできる。
俺もマジックアイテムの〈魔法の偽器〉の力で無属性魔法が使えるが、魔法使い系クラスの補正があるリリアが使った方が効力が高いので、魔法による探知は彼女に任せた。
「よし。これで大丈夫だろう。さっそく宝箱を開けようか」
「はい、開けましょう」
探索者ブースを利用した理由の1つは、〈三獣領域〉のエリアボスの1体〈殺刃走葬の魔狼王ガラム〉を倒した際に出現した宝箱の中身を確認するためだ。
〈宝納の指環〉の収納空間から宝箱を取り出して蓋を開く。
○魔狼王の纏衣
等級:遺物級。
とあるダンジョンで産出された上着型マジックアイテム。
・【風を裂く衣】……着用中の風による行動阻害を無効化する。
・【魔狼王の守り】……装着者の寒暑耐性と直感力、回避率が強化される。寒暑耐性+10%、直感力+10%、回避率+20%。
宝箱の中には1着の薄手の灰色のコートが入っていた。
コートではあるが生地も薄いし、見た目もそこまで暑苦しくはないので暑い日に着てもそこまで暑苦しくはならなさそうだ。
「コートですね。私はもうコレがあるので大丈夫です」
確かにリリアには〈三獣領域〉のもう1体のエリアボスである〈魔煌五尾狐サイラ〉の宝箱から手に入れた、カーディガンタイプのマジックアイテム〈魔煌狐の羽衣〉があるから要らないだろうな。
「じゃあ俺が使おうかな。これなら今の防具の上から着れそうだ」
「白銀色の鎧は目立ってましたし、ちょうど良いですね」
「確かに目立ってたな……」
ダンジョン内の復路とダンジョン外での移動時での周囲の視線を思い出す。
一瞬チラッと見られる程度の注目度ではあるが、目立っていたことには変わりない。
このコートがあれば多少はマシになるだろう。
「宝箱の配分はこれで決定、と。残りのボスの死体の扱いだが、リリアは何か欲しいマジックアイテムとかあるか?」
「うーん、特には思い浮かびませんね。敢えて言うなら身体強化系の装身具でしょうか。あくまでも敢えて、ですけど」
「身体強化系か。ラインナップにあったかな……」
「クロヤさんは何かないんですか?」
「俺も特に無いんだよな。防具はコレがあるし、武器も剣以外にも、今回出番がなかった銃もあるし」
リリアの下級魔法でエリアボスが倒せてしまったから、二挺魔銃の出番がなかったんだよな。
「取り敢えず、使わずにおきますか?」
「慌てて決める必要もないし、そうするか……一応利用時間の間もう一度確認していくよ」
良さげな防具はあったのだが、今の防具がセット装備だから全部揃えておく必要があるので、選択することは出来なかった。
ガラムの死体を取り出せるように1番広い部屋を借りたので、問題なく室内に死体を取り出せた。
死体から血が流れ出てるが、その血は後で〈吸血皇杖カーメリア〉で綺麗に回収できるので問題ない。
何かないかなー、と思いながら〈貪欲の聖杯〉を使ってガラムの死体から創造できるマジックアイテムを改めて確認していった。
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