新世機生のアポストル 〜Restart with Lost Relic〜

黒城白爵

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第七話 スラム街

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 ◆◇◆◇◆◇


 報酬の良い依頼を求めて探索者協会のオフィスに来てみたが、そんなオイシイ依頼が残っているわけがなかった。
 公式サイトに載っている常設依頼に良いのがなかったので直接足を運んだのだが、オフィス内の依頼用掲示板に貼り出されている依頼も似たようなものだった。


「仕方ない。今日も直接聞いてみるか」


 掲示板前から受付カウンターへと向かう。
 ちょうど空いた窓口に並ぶと、昨日とほぼ変わらない内容の用件を告げた。


「前回のようなタイプの依頼ですね。少々お待ちください……申し訳ありませんが、現在ベリエル様のご要望に沿う依頼は残っていないようですね」

「そうか。じゃあ、報酬の良いオススメの依頼は何かないか?」

「その条件ですと……此方はどうでしょうか。少し違いますが、先ほどのベリエル様のご要望に近い依頼でもあります」


 そう言って職員が手元の機器を操作すると、俺達の間にあるカウンター上に依頼内容が表示される。
 口頭ではなく文字情報で開示するということは、周りに人がいて盗み聞きされる状況では口に出せない依頼というわけか。

 依頼内容は、犯罪行為に手を染めている可能性が高い探索者の実態調査。
 対象が噂通り犯罪行為に加担していた場合の処分も含めての依頼らしい。
 対象の探索者の力量は俺よりも下らしいが、仲間がいる可能性もあるんだとか。
 確かに、昨日受けた依頼に似ている。
 あちらは闇組織お抱えの武装勢力で、こちらは同業者という違いはあるが、基本的にやることは変わらない。
 報酬も中々良いので、この依頼を受けるとしよう。


 ◆◇◆◇◆◇


「──こっちの方に来るのも久しぶりだな」


 場所は3等エリアの外縁部の一画。
 コロニーの外へと出られる数ある門の1つであり、4等エリアである最下層民区と接している場所の1つでもある。
 普段使っている門の外には荒野が広がっているが、ここの外にはまずスラム街が存在している。
 正当なコロニー区画である1等エリアから3等エリアをそれぞれ隔てている巨大で分厚い壁とは違い、スラム街と荒野を隔てる壁は非常に頼りない。
 それは、このスラム街が税の支払い能力が無い貧困層や他所のコロニーから追放された者などが集まって作られた街だからだ。
 4等エリアとしてコロニー側から容認されているものの、支援は最低限なので正規の壁が建てられたりはしていない。
 なので、荒野からやってくる脅威に対する備えは自分達でやらなければならない。

 正式名称は4等エリア、呼称は最下層民区、通称がスラム街であることからも、コロニー側からの扱いがどの程度かが窺える。
 身寄りのない孤児だった俺も5年ほど前までは此処に住んでいた。


「結構変わってるんだろうな」


 半年もあれば街並みがかなり変わっているのも此処の特徴だ。
 それだけ人も物も節操の無い場所なだけあってトラブルも多く、ここの門にはコロニーの警備隊の1つが配置されている。
 他の門にはモンスターとも戦える正規軍の部隊が配置されているが、ここには対人専門の警備隊しかいない。
 その理由は、荒野からモンスターなどが襲来した際に、手前にあるスラム街が門を閉じるまでの時間稼ぎの役割を果たすからだ。
 そういった理由から、育成と装備に金の掛かっている軍人は他の場所に回されており、代わりに警察機関である警備隊の兵士がスラム街の住民から門を守っていた。


「お。アイツがいるじゃん。おーい、デロデロ!」

「そ、その呼び方は、やっぱりベリエルの兄貴!」


 片耳の無い魔角族の後ろ姿が見えたので声を掛けると、思った通り知り合いの警備兵だった。
 デニール・デランドことデロデロは俺と同じスラム街出身の男で、一回りぐらい年上だが俺の舎弟みたいな奴だ。
 デロデロの左目の辺りにある一筋の傷は、孤児の俺から金を奪おうとした彼を返り討ちにしてやった時にできたものだ。
 それ以来何故か兄貴呼ばわりされるようになった。

 路地裏のチンピラ時代に出来た古傷によって凄みのある外見をしており、その容姿を活かしてこの門の警備兵としてスラム街から3等エリアに来る者達に睨みを利かせている。


「最近音沙汰がありませんでしたが、やっぱり生きてたんですね!」

「他の門を使っていただけだよ。こっちは荒野に出るまで時間が掛かるからな」

「そういえばそうでしたね。そんなベリエルの兄貴がこっちに来たってことは古巣に用事ですかい?」

「そんなところだ。ちょうど良い。この半年の間に起きたスラム街の変化について教えてくれ」

「そうッスね……変化と言うなら、やっぱりスラム街の一部を牛耳っていたカルタカルマの連中が新参のグループにやられたことッスかね」

「カルタカルマか。結構武闘派のマフィアだったよな」

「はい。荒野のダンジョンにも潜ったことのある探索者崩れがボスのマフィアッス。部下達も似たような経歴の奴らばかりで、かなりの戦力を持っていたんですが、先々月あたりにドランクタスクって連中に潰されちまったんスよ」

「ドランクタスクか。マフィアか?」

「一応はそうなります。ただ、カルタカルマとは違って悪質なドラッグにも手を出しているので、この門の警備隊としては治安が悪化するので悩みの種ッスね。今のところは裏の界隈だけですが、徐々に表にも手を伸ばしつつあるって話を聞くッス」

「ふーん。なるほどな。もっと詳しく教えてくれ。情報の質次第ではコレをやるよ」


 スラム街での情報収集用に2等エリアで買ってきた良質な酒が入った瓶を亜空間ポーチから取り出す。
 それを見たデロデロや聞き耳を立てていた同僚達も目の色を変える。
 スラム街と接している門に配属されているということは、彼らもデロデロと似たような経歴を持つ者達のはずだ。
 賃金の低さから3等エリア住まいであろう彼らからすれば、上のエリアの上質な酒は垂涎ものの逸品になる。

 ワラワラと集まってきたデロデロの同僚達からもスラム街の情報を集め終わると、久しぶりの故郷へと足を踏み入れた。


 
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