新世機生のアポストル 〜Restart with Lost Relic〜

黒城白爵

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第八話 ジャック

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 ◆◇◆◇◆◇


 スラム街である4等エリアの建築物は、コロニー内とは違って周囲の景観や交通の便などを考慮して建てられていない。
 その所為でコロニー側から定められている荒野まで繋がっている公道以外の道は、まるで迷路のように複雑になっている。
 壁内コロニー育ちの凡人が興味本位で公道を外れて、スラム街の奥へと入ってしまうと2度と出てくることはできない、と言われるほどに危険な場所だ。
 まぁ、それもスラム街の出身なら話は別だが。


「壁の近くは変わっていないが離れれば離れるほど変化が大きくなってるな。あれ? 飯屋が無くなってる」


 現地でも情報を集めようと昔通っていた飯屋に来たのだが、そこに飯屋は無く、代わりに見慣れないジャンク屋があった。
 店内に入ると片目を眼帯で隠した人族に中年男がいた。
 カウンターの向こう側にいるし、他に人がいないから彼が店主のようだ。


「なぁ、此処って飯屋じゃなかったっけ?」

「あん? あー、あんたあの飯屋の常連か? あの店なら店じまいをしたよ、永遠にな」

「へぇ、何があったんだい?」


 ジャンク屋のカウンターの周りにある商品を見ながら店主と話をする。
 ジャンク品を手に取った俺の動きに注意を払っている店主の眼帯男は、少し何かを考えてから口を開けた。


「よくある話さ。場所代が払えなくなったから潰されたんだよ」

「これまでは払えていたのに、急に払えなくなったのか?」

「上が変わったから額が上がったんだよ。それでも払おうとしてたみたいだが、幹部の方が看板娘を気に入ったみたいでな。あとは、分かるだろ?」


 下品な笑みを浮かべる店主に肩を竦めると、別のジャンク品を手に取り状態を確かめる。


「まぁ、確かに美人だったしな。猫人族らしい愛嬌の良さが常連客には人気だったよ」

「へへへっ、興味があるか? 組織に入れば、幹部の方が飽きたら、もしかすると回ってくるかもしれないぜ?」

「ほう、それはそれは……何て組織なんだ?」

「ドランクタスクだ。今ノリにノッてる組織でな。新規のメンバーを募集中だ」

「ドランクタスクか。その組織に潰された飯屋の跡地に店を構えるアンタも一員というわけか」

「まぁな」

「それならちょうど良い。コイツのことを知らないか? 最近ドランクタスクに入ったって聞いたんだが」


 探索者協会で受けた依頼のターゲットである探索者の写真を見せる。
 その写真には1人の探索者が、奴隷売買の現場にいる姿が写っていた。

 件の探索者が手に染めている犯罪行為は奴隷売買の幇助。
 スラム街に拠点を置く組織が行なっているこの事業に加担しているらしく、その実態を探るためには、先にどこの組織かを探すところから始める必要があった。
 この探索者の後を尾ければ話は早いのだが、協会のオフィスに現れるのを待っていたら時間が掛かりすぎる。
 住んでいる場所もスラム街の何処かとしか分かっていないので、家の前で待ち伏せすることもできない。

 そういった理由に加えて、手持ちの金に余裕がないので、さっさと依頼を達成して報酬を受け取る必要があった。
 どこの組織に加担しているかは分からないので、協会でもらった捜査資料の写真を使って組織を虱潰しに探すという強攻策を取ることにした。


「なんだ、この兄ちゃんを探してたのか? この兄ちゃんなら知ってるぜ。何せ、さっき言った幹部の方の護衛の1人だからな」

「ほほう。それはそれは。コイツに会うにはどうすればいい?」

「それなら簡単だ。まずは、コレを受け取りなッ!」


 連続する銃撃音が店内に鳴り響き、カウンターを突き破って大量の銃弾が飛来してきた。
 短気な奴だな、と思いながら空中に跳び上がって銃撃を躱わすと、そのまま店主へと飛び掛かる。
 店主の眼帯から僅かに駆動音が聞こえた直後、布製の眼帯を突き破ってレーザーが放たれてきた。
 持っていたジャンク品でレーザーを防ぐと、ジャンク品が焼き切られる前に店主の頭を殴り付けてレーザー照射を強制終了させた。


「グッ、こんなことをして、ドランクタスクを敵に回すつもりかッ!!」


 床に組み伏せて無力化した店主が怒鳴っているが、元より依頼を遂行するためにはターゲットと関わりのある犯罪組織と接触する必要があると考えていた。
 穏便にターゲットを引き渡すとは思っておらず、はじめから犯罪組織も纏めて敵に回すつもりだったので、今更だった。
 唯一想定外だったのは、いきなり手掛かりを見つけてしまったことぐらいだ。
 我ながら運が良いな。


「んー、義眼型レーザー銃か。このタイプなら、もしかすると可能か?」

「おい! 聞いてるのか!?」

「聞いてる聞いてる。えっと、今の段階だと直接触れる必要があるのか」

「あぁ? 何を言って──」

「〈支配ジャック〉」

「やがガ、ガガッ、ギギ!?」


 義眼型レーザー銃に触れた状態でメタトロンの【支配】を使用する。
 機械式の義眼とメタトロンが繋がり、その機能が瞬時に支配ジャックされた。
 メタトロンのナノマシンを通じて頭に入ってきた義眼型レーザー銃の情報量に思わず顔を顰める。
 不快感はすぐに無くなったが、あまり体験したくない感覚だな。


「学習装置もこんな感じなんだろうな。おい、立て」

「……ハイ、了解、しまシた」


 拘束を解いて命じると、辿々しい口調に相応しいゆったりとした動きで店主が立ち上がった。
 メタトロンの支配下にある義眼型レーザー銃を経由して、店主の支配も完了した。
 このように機械に干渉するメタトロンの固有能力【支配】が生物にも通用するのは、店主が身に付けている義眼型レーザー銃が生体接続タイプの機械だからだ。

 サイボーグの身体のような生身の身体と深く繋がっているタイプの機械は、基本的に使用者の思考によって動いている。
 このような機械は生身と同じように動かせなければ意味がないので、思考作動式なのは当然のことだと言える。
 だが、この思考作動式機械をメタトロンが支配すると、その思考作動の仕組みを逆に利用して生身の脳に命令を下すことができるらしい。
 こうして仕組みを言ってしまえば簡単そうに聞こえるが、インプットされた情報の中にあった生体支配パターンの実際のプロセスは非常に複雑だった。
 俺には全く理解出来なかったが、取り敢えず、特殊ナノマシンこと機神粒子スゲー、ってことだけは分かった。


「さて、色々聞かせてもらおうか。あ、その前に店にある金を全てもらおうか。電子式も現金も全てだ」


 思わぬ臨時収入に浮き足立ちつつ、店主が金を掻き集めるまでの間、店内にあるジャンク品を物色していった。



 
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