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第九話 改造
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「──こうして、うん。こんな感じか」
手元で弄っていたジャンク品の表面を光の粒子──機神粒子が体外で力を発揮する際の発光現象だ──が這いずり回る。
光が通り過ぎた後には、元のジャンク品とは少し異なる形状の武器が残っていた。
元は刀型軍用近接機巧武器〈高周波ブレード〉のジャンク品だったが、今は実体刃の表面が光刃化する実体刀型レーザーブレードになっていた。
ハンドガン以外の武器は修理に出していて手元には無く、少し装備に不安があったのだが、これなら役に立ちそうだ。
「おお! 初めてにしては中々良いんじゃないか、くっ!?」
メタトロンをはじめとした天機使シリーズに備わる基本能力【改造】でジャンク品の修理と改良が成功した瞬間、脳裏に新たな情報が浮かび上がってきた。
[初めての【改造】に成功しました]
[適合者と〈代行者〉の同化が進みます]
[現在の〈代行者〉の同化率は1%です]
立ち眩みは一瞬だけですぐに収まった。
だが、そんなことよりも気になることができた。
「……メタトロンの同化率? インプットされた情報にはなかった情報だな」
適当なジャンク品を使って実体型レーザーブレードの試し斬りをしつつ、たった今開示された情報について考える。
状況的にも、この同化率とやらがメタトロンの適合具合を示していた適合率と別物なのは間違いない。
適合率と同様に進捗具合を数値化していることからも、同化率が進むと何かが起こると思われる。
「……なるほど。そういうことか」
カウンター席に置いているジャンク品の山から3つのパーツを手に取ると、その3つをくっ付けながら【改造】を発動させる。
3つのジャンク品が光に包まれ、一対の機巧式の籠手へと形を変えた。
先ほどのレーザーブレードの時の試行錯誤とは違い、ジャンク品の山を一目見た瞬間に何が出来るかが理解できた。
タイミングから見ても、メタトロンの同化率が進んだことによる変化だろう。
「まさか、同化率が進むと機神になるんじゃないだろうな?」
同化が進んだことによって起きた変化に一抹の不安を覚える。
インプットされた情報によれば、メタトロン以前の天機使シリーズの適合者達のうち、適合率が俺と同じ100%だった完全適合者だけは機神にならなかったらしい。
しかし、それはあくまでもメタトロンが製造された時点での情報だ。
その後も本当に完全適合者は機神にならなかったかどうかまでは分からない。
当時の適合者4名中3名が機神と化しているのだから、信じるには実例が少なすぎる。
機神化と同化率の関係性に対する情報が無いのが不親切だと思いながら、改造品の籠手を装着する。
「機能は握力強化とレーザー照射か」
籠手の手首の辺りがスライドし、そこから赤い球体が覗く。
見た目は違うが、このレーザー照射機にはジャンク屋の店主の義眼型レーザー銃のデータが使われている。
つまり、収集した機械や機巧式武具のデータが増えれば増えるほど【改造】のバリエーションが増えるというわけだ。
「不意打ちには良さそうだな。威力は実戦で試すか」
「オまたせ、しま、シタ。これで、最後、デス」
「おう、ご苦労さん。って、そろそろ駄目そうだな」
ジャンク屋の店主から所属するドランクタスクの情報を聞き出し、現金などを受け取った後、店の奥に幾つか武器があると言うから持ってこさせた。
命じた通りに武器を抱えて戻ってきた店主の目からは、血の涙が流れていた。
インプット情報によると、メタトロンの固有能力【支配】は機械に対する干渉能力であるため、元より人に対して使える物ではない。
それでも間接的には使えるため、こうして店主を操れたわけだが、その結果、脳がメタトロンからの干渉に耐えられなくなり、御覧の有様だ。
数分程度なら問題ないらしいが、店主みたいに30分も干渉していたら駄目になるらしいな。
余談ではあるが、メタトロンを構成する特殊ナノマシンである機神粒子に適合できなければ、コレより酷い状態で死ぬことになる。
第1ロットの4機の天機使には安全装置が備わっていなかったので、天機使を扱えるほどの適合率に達することができずに死んだ者が大勢いたらしい。
第2ロット以降は安全装置のおかげで使用可能未満の適合率でも死ぬことはなかったが、その代わり心身に何らかの障害が出るなどの問題は残ったままだった。
「……適合して良かったよ。死ぬ前に電子式の金の送金よろしく」
「ワカか、リギ、ましタ」
震える手で店主が自分の端末を操作してから俺に差し出してきたので、俺も端末を向けて金を受け取った。
店主の端末に触れて【支配】を行い、たった今行なったやり取りのデータを完全に消去しておいた。
これで俺へと繋がる痕跡は消えた。
店内の監視カメラなどの情報機器も映像データを消した上で破壊しておいたので問題ない。
店主の義眼に使っていた【支配】を解除すると、繋がっていた店主が崩れ落ちた。
念のため脈拍の確認をするが、やはり死んでいるようだ。
「さて、用は済んだし長居は無用だな」
カウンターに置かれた武器とジャンク品の全てを亜空間ポーチに放り込むと、着ているコートのフードを深く被ってから店を出た。
特殊技能の【索敵】で周囲の人の気配を探るが、こちらの動きを気にするような動きが感じられる。
スラム街の経験から、この動きは近くで起こっている騒ぎを気にしている動きだと分かった。
ジャンク屋を目視できる位置にいないことからも監視しているわけではないようなので、処理する必要はないだろう。
「ま、俺が去った後は好きにすればいいさ」
ジャンク屋の前から立ち去ってから程なくして、離れたところから様子を窺っていた複数の気配がジャンク屋に近付いていくのに気付いた。
あそこに残っているのは残り物のジャンク品だけだが、それでも多少は金になるだろう。
同郷の者達の今後の活躍を祈りつつ、店主から聞き出したドランクタスクのアジトへと向かった。
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