新世機生のアポストル 〜Restart with Lost Relic〜

黒城白爵

文字の大きさ
7 / 28

第七話 スラム街

しおりを挟む


 ◆◇◆◇◆◇


 報酬の良い依頼を求めて探索者協会のオフィスに来てみたが、そんなオイシイ依頼が残っているわけがなかった。
 公式サイトに載っている常設依頼に良いのがなかったので直接足を運んだのだが、オフィス内の依頼用掲示板に貼り出されている依頼も似たようなものだった。


「仕方ない。今日も直接聞いてみるか」


 掲示板前から受付カウンターへと向かう。
 ちょうど空いた窓口に並ぶと、昨日とほぼ変わらない内容の用件を告げた。


「前回のようなタイプの依頼ですね。少々お待ちください……申し訳ありませんが、現在ベリエル様のご要望に沿う依頼は残っていないようですね」

「そうか。じゃあ、報酬の良いオススメの依頼は何かないか?」

「その条件ですと……此方はどうでしょうか。少し違いますが、先ほどのベリエル様のご要望に近い依頼でもあります」


 そう言って職員が手元の機器を操作すると、俺達の間にあるカウンター上に依頼内容が表示される。
 口頭ではなく文字情報で開示するということは、周りに人がいて盗み聞きされる状況では口に出せない依頼というわけか。

 依頼内容は、犯罪行為に手を染めている可能性が高い探索者の実態調査。
 対象が噂通り犯罪行為に加担していた場合の処分も含めての依頼らしい。
 対象の探索者の力量は俺よりも下らしいが、仲間がいる可能性もあるんだとか。
 確かに、昨日受けた依頼に似ている。
 あちらは闇組織お抱えの武装勢力で、こちらは同業者という違いはあるが、基本的にやることは変わらない。
 報酬も中々良いので、この依頼を受けるとしよう。


 ◆◇◆◇◆◇


「──こっちの方に来るのも久しぶりだな」


 場所は3等エリアの外縁部の一画。
 コロニーの外へと出られる数ある門の1つであり、4等エリアである最下層民区と接している場所の1つでもある。
 普段使っている門の外には荒野が広がっているが、ここの外にはまずスラム街が存在している。
 正当なコロニー区画である1等エリアから3等エリアをそれぞれ隔てている巨大で分厚い壁とは違い、スラム街と荒野を隔てる壁は非常に頼りない。
 それは、このスラム街が税の支払い能力が無い貧困層や他所のコロニーから追放された者などが集まって作られた街だからだ。
 4等エリアとしてコロニー側から容認されているものの、支援は最低限なので正規の壁が建てられたりはしていない。
 なので、荒野からやってくる脅威に対する備えは自分達でやらなければならない。

 正式名称は4等エリア、呼称は最下層民区、通称がスラム街であることからも、コロニー側からの扱いがどの程度かが窺える。
 身寄りのない孤児だった俺も5年ほど前までは此処に住んでいた。


「結構変わってるんだろうな」


 半年もあれば街並みがかなり変わっているのも此処の特徴だ。
 それだけ人も物も節操の無い場所なだけあってトラブルも多く、ここの門にはコロニーの警備隊の1つが配置されている。
 他の門にはモンスターとも戦える正規軍の部隊が配置されているが、ここには対人専門の警備隊しかいない。
 その理由は、荒野からモンスターなどが襲来した際に、手前にあるスラム街が門を閉じるまでの時間稼ぎの役割を果たすからだ。
 そういった理由から、育成と装備に金の掛かっている軍人は他の場所に回されており、代わりに警察機関である警備隊の兵士がスラム街の住民から門を守っていた。


「お。アイツがいるじゃん。おーい、デロデロ!」

「そ、その呼び方は、やっぱりベリエルの兄貴!」


 片耳の無い魔角族の後ろ姿が見えたので声を掛けると、思った通り知り合いの警備兵だった。
 デニール・デランドことデロデロは俺と同じスラム街出身の男で、一回りぐらい年上だが俺の舎弟みたいな奴だ。
 デロデロの左目の辺りにある一筋の傷は、孤児の俺から金を奪おうとした彼を返り討ちにしてやった時にできたものだ。
 それ以来何故か兄貴呼ばわりされるようになった。

 路地裏のチンピラ時代に出来た古傷によって凄みのある外見をしており、その容姿を活かしてこの門の警備兵としてスラム街から3等エリアに来る者達に睨みを利かせている。


「最近音沙汰がありませんでしたが、やっぱり生きてたんですね!」

「他の門を使っていただけだよ。こっちは荒野に出るまで時間が掛かるからな」

「そういえばそうでしたね。そんなベリエルの兄貴がこっちに来たってことは古巣に用事ですかい?」

「そんなところだ。ちょうど良い。この半年の間に起きたスラム街の変化について教えてくれ」

「そうッスね……変化と言うなら、やっぱりスラム街の一部を牛耳っていたカルタカルマの連中が新参のグループにやられたことッスかね」

「カルタカルマか。結構武闘派のマフィアだったよな」

「はい。荒野のダンジョンにも潜ったことのある探索者崩れがボスのマフィアッス。部下達も似たような経歴の奴らばかりで、かなりの戦力を持っていたんですが、先々月あたりにドランクタスクって連中に潰されちまったんスよ」

「ドランクタスクか。マフィアか?」

「一応はそうなります。ただ、カルタカルマとは違って悪質なドラッグにも手を出しているので、この門の警備隊としては治安が悪化するので悩みの種ッスね。今のところは裏の界隈だけですが、徐々に表にも手を伸ばしつつあるって話を聞くッス」

「ふーん。なるほどな。もっと詳しく教えてくれ。情報の質次第ではコレをやるよ」


 スラム街での情報収集用に2等エリアで買ってきた良質な酒が入った瓶を亜空間ポーチから取り出す。
 それを見たデロデロや聞き耳を立てていた同僚達も目の色を変える。
 スラム街と接している門に配属されているということは、彼らもデロデロと似たような経歴を持つ者達のはずだ。
 賃金の低さから3等エリア住まいであろう彼らからすれば、上のエリアの上質な酒は垂涎ものの逸品になる。

 ワラワラと集まってきたデロデロの同僚達からもスラム街の情報を集め終わると、久しぶりの故郷へと足を踏み入れた。


 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界帰りのハーレム王

ぬんまる兄貴
ファンタジー
俺、飯田雷丸。どこにでもいる普通の高校生……だったはずが、気づいたら異世界に召喚されて魔王を倒してた。すごいだろ?いや、自分でもびっくりしてる。異世界で魔王討伐なんて人生のピークじゃねぇか?でも、そのピークのまま現実世界に帰ってきたわけだ。 で、戻ってきたら、日常生活が平和に戻ると思うだろ?甘かったねぇ。何か知らんけど、妖怪とか悪魔とか幽霊とか、そんなのが普通に見えるようになっちまったんだよ!なんだこれ、チート能力の延長線上か?それとも人生ハードモードのお知らせか? 異世界で魔王を倒した俺が、今度は地球で恋と戦いとボールを転がす!最高にアツいハーレムバトル、開幕! 異世界帰りのハーレム王 朝7:00/夜21:00に各サイトで毎日更新中!

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

魔法使いが無双する異世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです

忠行
ファンタジー
魔法使いが無双するファンタジー世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか忍術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです。むしろ前の世界よりもイケてる感じ?

ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった

仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。 そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?

万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵
ファンタジー
 異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。  魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。  そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。  自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。  後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。  そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。  自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...