21 / 27
第二十一話 コントラクト
しおりを挟む◆◇◆◇◆◇
「──〈契約〉」
俺の切り札、メタトロンの2つある固有能力の1つ【契約】を発動させる。
直後、一瞬で距離を詰めてきたアザカが刀形態になった魔剣カルグラムを振り下ろしてきた。
その一撃を素手で受け止めた
「ッ、グッ!?」
俺に起きた変化に驚愕するアザカを魔剣を受け止めた手とは逆の手で殴り付け、吹き飛ばす。
魔剣を止めた手も殴った手も共に元の手から大きく変化している。
人間の生身の手から機械の手のような見た目になっており、魔剣の斬撃を受け止めても傷一つ付いていない。
もう1つの固有能力【支配】で収集した機械データを、機神粒子にて俺の肉体に直接再現する。
それが固有能力【契約】の能力だ。
集めたデータを自分の肉体に反映することに合意する、という意味での契約なわけだが、その力はまるで機神化のようだ。
メタトロンの適合時にインプットされた情報によれば、【契約】使用後は特殊ナノマシンである機神粒子が元の生身の肉体を再構築してくれるらしいが、ハッキリ言って不安しかない。
そういった不信感もあって今まで1度も使ったことはなかったのだが、生きるか死ぬかの現状では使う以外に助かる道はないと判断した。
せめてもの保険として、万が一戻れない場合に備えて反映するのは両腕のみにしておいた。
「それは、戦闘型機巧腕? 今までは偽装機能を使っていたのね」
生身の腕から機械の腕に一瞬で変貌したのならば、そう思ってしまうのも無理はない。
メタトロンの固有能力を知らなければ、一瞬で機械化したなどと分かるわけがないだろうからな。
[初めての【契約】に成功しました]
[適合者と〈代行者〉の同化が進みます]
[同化率8%→13%]
[現在の〈代行者〉の同化率は13%です]
[同化率が10%を超えました]
[〈代行者〉の第1次制限が解除されます]
[〈代行者〉の基本能力【洞察】が解放されました]
[〈代行者〉の基本能力【亜空庫】が解放されました]
同化率が一気に上がったことによる強烈な立ち眩みに襲われていると、それを隙とみたアザカが再び斬り掛かってくる。
同化率上昇によって【強化】の思考速度の強化倍率も上がっており、先ほどよりもアザカの動きが目で追うことができている。
気分は最悪だが、今は生き残ることだけを考えるとしよう。
「出来ればコレを使わずに勝ちたかったんだがな」
「あら。もう勝った気でいるのねッ!」
強化された今の思考速度ですら目で追うのが困難なほどにアザカのスピードが上がった。
新たに追加された基本能力【洞察】を発動させ、アザカの動きを解析する。
その情報から予測されるアザカの移動先を先読みすると、進路上に向けて握り締めた機巧腕の拳を振り抜いた。
刀形態の魔剣カルグラムを盾にして機巧腕の一撃を防いだアザカだったが、その拳撃は先ほどと同様にアザカの身体を纏う魔力の鎧を破壊し、彼女の身体を吹き飛ばした。
戦闘型機巧腕〈ギガンテスアーム〉。
膂力と頑丈さに主眼を置いた機巧腕であり、生身の腕よりも高性能かつ非常に頑丈な機械式義腕だ。
今回の未発見遺跡の探索依頼の準備のため、コロニーの2等エリアにある機械式義肢専門店で実物に触ってデータを集めておいた。
2等エリアにある機械式義肢専門店屈指の高級品なだけあって、その性能は凄まじいの一言だ。
まぁ、それ以上に凄いのは勿論メタトロンなのだが。
「魔剣もそうだが、身体の方も頑丈なんだな」
ギガンテスアームの一撃を直接受け止めても折れない魔剣を携えたアザカが立ち上がってくる。
身体能力の差が機巧腕1つであっさり覆ったが、未だにアザカの身体は大きなダメージは負っていない。
新人類の鬼人族らしい身体の頑強さだが、魔力に関しては余裕がないらしく、拳撃による2度の吹き飛ばしの度に壊れた魔力鎧が展開されていなかった。
メタトロンは【洞察】で看破して得たアザカの身体情報によれば、彼女の魔力は残り2割を切っている。
俺の残りの魔力も似たようなものだが、【契約】の使用によって大量の機神粒子が消費されているため、カロリー的には余裕がない。
後々のことを考えるとそろそろ決めたいのだが、アザカが中々にしぶとかった。
あの余裕を見るに、まだ切り札がありそうな感じなんだよな。
他の部位も機巧義肢に置き換えて強化し、一気に終わらせるべきだろうか?
「ねぇ、ディアボロ。提案があるんだけど」
「なんだ?」
「このままだとお互いに無駄に潰し合うだけだから、もう終わりにしない?」
「決着をつけようということか?」
「違うわよ。ある意味では決着はつくわ。私の降参という形でね」
「ほう」
アザカからの予想外の提案に驚きつつ、顎を小さく動かして続きを話すよう促した。
「高額の報酬は魅力的だけど、それも命があってこそでしょう? 荒野を抜けてコロニーに戻ることも考慮すると、これ以上の消耗は割に合わないのよね」
「なるほど。だが、このまま逃がした先でリーダーを襲わない保証がないな」
「違う道を通ってから地上に脱出するから大丈夫よ。彼らと合流するつもりなんでしょう? 途中まで一緒に行って、私が道を外れれば問題はないわ」
「ふむ……」
さて、どうしたものかな。
このまま戦闘を続けても損失が大きいのは間違いない。
機巧腕から生身の腕に戻す分の機神粒子はストックしておく必要がある。
機巧腕のままにしておけば関係ないんだろうが、機神化が怖いから出来るだけ早く生身の腕に戻したい。
だが、不安要素を残したままというのが気に掛かり即断できずにいた。
「悩んでいるみたいね」
「そりゃあな。それだけでは決め手に欠けている」
「それなら、この条件はどう?」
そう言ってからアザカが提示した条件に思わず反応しそうになった。
約束を守られないリスクはあるが、ちゃんと守られれば俺にとっては利がある。
この場での口約束なので不安が残る点は変わらないものの、少し悩んだ末にその追加の条件を受け入れ、これ以上のアザカとの戦闘を終了した。
0
あなたにおすすめの小説
シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~
尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。
だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。
全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。
勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。
そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。
エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。
これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。
…その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。
妹とは血の繋がりであろうか?
妹とは魂の繋がりである。
兄とは何か?
妹を護る存在である。
かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!
ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった
仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。
そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?
氷河期世代のおじさん異世界に降り立つ!
本条蒼依
ファンタジー
氷河期世代の大野将臣(おおのまさおみ)は昭和から令和の時代を細々と生きていた。しかし、工場でいつも一人残業を頑張っていたがとうとう過労死でこの世を去る。
死んだ大野将臣は、真っ白な空間を彷徨い神様と会い、その神様の世界に誘われ色々なチート能力を貰い異世界に降り立つ。
大野将臣は異世界シンアースで将臣の将の字を取りショウと名乗る。そして、その能力の錬金術を使い今度の人生は組織や権力者の言いなりにならず、ある時は権力者に立ち向かい、又ある時は闇ギルド五竜(ウーロン)に立ち向かい、そして、神様が護衛としてつけてくれたホムンクルスを最強の戦士に成長させ、昭和の堅物オジサンが自分の人生を楽しむ物語。
鬼死回生~酒呑童子の異世界転生冒険記~
今田勝手
ファンタジー
平安時代の日本で魑魅魍魎を束ねた最強の鬼「酒呑童子」。
大江山で討伐されたその鬼は、死の間際「人に生まれ変わりたい」と願った。
目が覚めた彼が見たのは、平安京とは全く異なる世界で……。
これは、鬼が人間を目指す更生の物語である、のかもしれない。
※本作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ネオページ」でも同時連載中です。
万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜
黒城白爵
ファンタジー
異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。
魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。
そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。
自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。
後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。
そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。
自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。
アポカリプスな時代はマイペースな俺に合っていたらしい
黒城白爵
ファンタジー
ーーある日、平穏な世界は終わった。
そうとしか表現できないほどに世界にモンスターという異物が溢れ返り、平穏かつ醜い世界は崩壊した。
そんな世界を自称凡人な男がマイペースに生きる、これはそんな話である。
日本国 召喚獣管理省 関東庁 召喚獣総合事案即応科。
wakaba1890
ファンタジー
召喚獣。
それは向こう側とされる所から、10歳を迎えた日本人の子供の下に召喚されるモンスターのことである。
初代天皇・神武天皇が日本を建国した際に書かれた絵画には彼は金鵄と呼ばれる金色に輝く鵄(とび)と契約したのが原初となっている。
そして、縄文、弥生、古墳、飛鳥、平安、戦国時代から近代から今に至るまで、時代を動かしてきた人物の側には確かに召喚獣は介在していた。
また、奇妙な事に、日本国に限り、齢10歳を迎えた日本在住の日本人にのみ体のどこかから多種多様な紋章が発現し、当人が念じると任意の場所から召喚陣が現れ、人ならざるモンスターを召喚される。
そして、彼らモンスターは主人である当人や心を許した者に対して忠実であった。
そのため、古来の日本から、彼ら召喚獣は農耕、治水、土木、科学技術、エネルギー、政治、経済、金融、戦争など国家の基盤となる柱から、ありとあらゆる分野において、今日に至るまで日本国とアジアの繁栄に寄与してきた。
そして、建国から今まで、国益の基盤たる彼ら数万種類以上をも及ぶ召喚獣を取り締まり管理し、2600年以上と脈々と受け継がれてきた名誉ある国家職がーーーーー国家召喚獣管理官である。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる