身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される

絵麻

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身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される(新婚編)

一話『気恥ずかしい朝』

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 初夜を済ませた翌日、花と義孝は何となく・・・気恥ずかしく、目を合わせ辛く思っていた。

(わ、私は昨晩・・・つ、ついに)
 朝食後、片付けやら何やら終えて、縁側で百面相をしていた。
「ああ、どうしよ?」
 昨晩のことを思い出してしまい、花は泣きそうになっていた。
「あんなに、義孝さんに触って、あまつさえ・・・」

 はしたないと、思われただろうか?

「花さん」
 一方の義孝も、何となく花に声がかけづらい。
「・・・」
 今まで恋人を作らず、芸者遊びもしなかった。特別に想い人がいた訳でもない。

『じゃあ、好きになったのは、私が初めて・・・なんですか?』
 ふるっ、と花が涙目で訊ねる。
『ええ、前にも話しましたが、私はは花さんより好きな人はいません』
『・・・ぇっ』
 涙がポタポタと、床に落ちる。
『じゃあ、馴染の芸者さんや恋人も?いない、ということですね?』
『まあ、そうなりますね』
 頬が熱い。
 花は泣き笑いになる。
 その涙を優しく拭いながら、義孝と花は初めての接吻を交わした。

(・・・初めての接吻は蜂蜜味だとか、柑橘の風味だとか聞いたけど。なんか、ちょっと塩っ辛い味だったな)
 幸せな夜だった。
 もう、淋しくはなかった。
「花さん」 
「あ」
 優しい声が、自分の名前を呼んでくれた。
「義孝さん」
 照れくさくて、二人ではにかんだ笑いになる。

「洗濯物、お疲れ様です」
「いえ、なんてことありません」
「しかし、家事は料理に洗濯物に掃除・・・終りがありませんね」
「ふふ。楽しいですよ?お義母さんや義孝さんの、笑顔が見られるから」
 ずっと夢見ていた。
 愛して、愛される日々を。
「義孝さんは、私の欲しいものを次々に与えてくれます」
「ほう?例えば」
「優しい言葉、気遣い、優しさに家族、あとーーー無償の愛」
「お互い様です」
 さらりと、そう返せる義孝は、やはりすごい人。
「花さんと出会って、私はたくさんの感情が己の中に存在すると知りました。嫉妬に恋心は、未知の経験です」
「ふふ。私もです、だけどーーーちっとも辛くありませんでした。ドキドキして恥ずかしいけど、幸せな心地よさでした」

 互いに初めての恋をした。
 降って湧いたような縁談だったが、婚礼の儀を前に互いを愛するようになったのは幸いだった。

「幸せです、とても」
 花は泣き笑いに顔を歪める。
「私もです」

 あと、三日で陸と海に分かたれてしまうが、まだ三日もあると額をくっつける。
「花さん」
 義孝の手が、頬に触れ・・・花は目を閉じた。

(それは、昨晩交わした接吻とは違った。切迫した、すがるようなものとは違う、優しい触れるだけの)
 頬が熱い。
 この邸には千代だけでなく、鹿江達使用人もいるのに。今はただ、少しでもくっついていたかった。
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