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身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される(新婚編)
三話『あなたがいるだけで』
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「出来た」
完成した写真立てに、花は満足していた。
「綺麗な写真立てですねぇ」
千代が和室にやって来る。
「あ、お義母さん。どうでしょう?海と空を表現したつもりなんですけど」
「うん、綺麗な色。だんだん淡く、濃くなっているのが綺麗」
「義孝さんの、誕生日にプレゼント出来ればなって」
「ああ、もうすぐですねぇ」
八月末に、義孝の誕生日がある。
手渡しは難しいかも知れないが、誕生日には間に合いそうだ。
ーーー時東さん、電報です!
郵便配達の声がする。
印鑑を手に、花が玄関に走る。
「はぁい、ご苦労さまです」
トタパタと花が廊下を行く。
「ありがとうございます」
電報を受け取り、花は封を開ける。
✢✢✢✢✢✢✢
8ガツ✕✕ニチ、ヨコスカニ
キコウ、スル。
3カノ、キュウカアリ。
✢✢✢✢✢✢✢
「花さん。どうしました?」
「お義母さん、義孝さんから電報が・・これ」
花は電報を千代に見せる。
「あら、これは・・・旅行のお誘いですね」
「え?」
ぽぽ、と花は頰を染める。
「え、えと、えとっ」
「これは、準備しなくては!」
ね?
と千代は微笑んだ。
(という訳で、私はお義母さんと鹿江、そして使用人の女性二人と百貨店に来た)
「ふふ、新婚旅行ですね、お嬢様」
「旦那様、粋な事企画しますね」
「し、新婚旅行」
花は頰を染める。
「やっぱり、そうなのかな」
「旦那様は二人きりになりたいんですね」
鹿江の言葉に、泣きたくなる。
「やっぱり、桃紅色は外せませんよね」
「お嬢様は色白さんですから、紅い色が似合いますよ」
布を顔に当て、花は着せ替え人形になっていた。
✜✜✜ 七日後、疾風 ✜✜✜
「艦長、手紙です」
「ああ。ありがとう」
一日の業務が終わり、皆が思い思いに夕食を食べ、酒を飲んだりカードをしたり・・・。
「おや、艦長。もう、休むんですか」
「ああ。あ、これ飲んでおけ」
入れ違いに、部下に瓶を渡す。
「わ、全然飲んでないじゃないですか」
「ありがとうございます!」
義孝は手紙を手に、艦長室に戻る。
「花さんからか」
結婚から半月、初めての手紙だ。
「今日、お義母さんや鹿江達と、百貨店に行きました。お義母さんが『服を仕立てましょう!』と言ったので」
着せ替え人形とされ、ふるふるとしている花の姿が浮かぶ。
「私にはあのような、モガな服は似合わないと思うのですが。せっかくの二人きりなのだからと、みんなが・・・。ふっ、モガか」
似合うと思うが、と義孝は思う。
花はここ数ヶ月で、綺麗になった。
初めて会った時は顔色が悪く、痩せていた。理由は翌日、花から聞いた生い立ちで分かる。
愛して欲しい一心で、花は努力してきた。しかし、全ては糠に釘、梨の礫だった。
食事を抜かれたのも、一度や二度じゃないと使用人達が証言している。痩せていく花を、継母は座視していた。
「きっと、似合いますよ。花さん」
優しい笑みが浮かぶ。
花を思うだけで、温かい気持ちになる。婚約までの三ヶ月が、胸に蘇る。
腕を怪我した自分を助けようと、布団運びを申し出た花。叱られてばかりの彼女に、どれだけ勇気が必要だったか。
拒絶されることのない日々は花を笑顔にしていった。もう、大丈夫なのだと、初めて安心したのだ。
『私は、義孝さんがいいのです。他の人なんて、欲しくありません!』
幸せになる時、隣には義孝にいて欲しいと花は言ってくれた。
「少し前に、義孝さんがたくさん着物を買ってくださったばかり。こんなに幸せで、怖いくらいです。私、みんなが大好きです」
夏でも、心は寂しさという寒さで凍りついていた。義孝や千代と暮らし、優しさに凍りついていた心が溶け、寂しさや苦しみは涙となり流れてゆく。
「私、泣き虫になりました。以前はこんな自分が嫌でした。でも、今は違います。幸せだから、流れる涙があると・・・義孝さんが教えてくれました」
『ありがとうございます、義孝さん。私、すごく幸せです』
笑顔の花が、目に浮かんだ。
「良かった」
目を閉じ、息を吐く。
花が、自分の傍で幸せだと言ってくれる、その事実が義孝を幸せにする。
「私も、幸せですよ。花さん」
手紙と便箋を出し、返事を書き始めた。
「あ、義孝さんから手紙!」
ぱぁ、と頰が染まる。
「花さん、私も幸せです」
義孝の最初の一文に涙がこぼれる。ポタポタと、涙が落ちる。
『花さん、私は以前から心配だったことがあります。あなたは自分を卑下している、そんな風に思えるからです。
花さん、人は何かないと、価値が無いのでしょうか?
人は何か出来ないと、価値がないのでしょうか?
あなたに出逢い、あなたに愛されて・・・私は幸せになれました。
あなたが居てくれるだけで、この青空の下で生きていてくれるだけで、私には過ぎた幸せです。
きっと、私の最後にはあなたが居てくれる。だから、私は一人ではなくなる。
ありがとう、花さん。
生まれて来てくださって、
私に出逢ってくれて、
本当にありがとう』
最後は涙に揺れて、読めなかった。
「義孝さんっ」
手紙を抱きしめ、花は泣いた。
八月、花はドキドキしながら、屋敷をあとにした。
「では、いってきます」
「はい、楽しんできて」
鞄を手に、新しいワンピースを着て・・・。花は横須賀の軍港から、少し奥まったバス停で待っていた。
「ドキドキする」
初めて会うより、心臓が煩い。
スカートの丈が心もとない。
「!」
コツ・・・コツ、と靴音がする。
見れば、白い軍服を着た義孝が歩いてくる。
「義孝さん」
「花さん」
笑顔になる。
「それ、手紙にあった」
「はい、新しい服です」
「似合いますよ」
「ありがとうございます。義孝さんも、すごく格好いいです」
二人で歩き出す。
一緒に歩くだけで、幸せだった。
完成した写真立てに、花は満足していた。
「綺麗な写真立てですねぇ」
千代が和室にやって来る。
「あ、お義母さん。どうでしょう?海と空を表現したつもりなんですけど」
「うん、綺麗な色。だんだん淡く、濃くなっているのが綺麗」
「義孝さんの、誕生日にプレゼント出来ればなって」
「ああ、もうすぐですねぇ」
八月末に、義孝の誕生日がある。
手渡しは難しいかも知れないが、誕生日には間に合いそうだ。
ーーー時東さん、電報です!
郵便配達の声がする。
印鑑を手に、花が玄関に走る。
「はぁい、ご苦労さまです」
トタパタと花が廊下を行く。
「ありがとうございます」
電報を受け取り、花は封を開ける。
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8ガツ✕✕ニチ、ヨコスカニ
キコウ、スル。
3カノ、キュウカアリ。
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「花さん。どうしました?」
「お義母さん、義孝さんから電報が・・これ」
花は電報を千代に見せる。
「あら、これは・・・旅行のお誘いですね」
「え?」
ぽぽ、と花は頰を染める。
「え、えと、えとっ」
「これは、準備しなくては!」
ね?
と千代は微笑んだ。
(という訳で、私はお義母さんと鹿江、そして使用人の女性二人と百貨店に来た)
「ふふ、新婚旅行ですね、お嬢様」
「旦那様、粋な事企画しますね」
「し、新婚旅行」
花は頰を染める。
「やっぱり、そうなのかな」
「旦那様は二人きりになりたいんですね」
鹿江の言葉に、泣きたくなる。
「やっぱり、桃紅色は外せませんよね」
「お嬢様は色白さんですから、紅い色が似合いますよ」
布を顔に当て、花は着せ替え人形になっていた。
✜✜✜ 七日後、疾風 ✜✜✜
「艦長、手紙です」
「ああ。ありがとう」
一日の業務が終わり、皆が思い思いに夕食を食べ、酒を飲んだりカードをしたり・・・。
「おや、艦長。もう、休むんですか」
「ああ。あ、これ飲んでおけ」
入れ違いに、部下に瓶を渡す。
「わ、全然飲んでないじゃないですか」
「ありがとうございます!」
義孝は手紙を手に、艦長室に戻る。
「花さんからか」
結婚から半月、初めての手紙だ。
「今日、お義母さんや鹿江達と、百貨店に行きました。お義母さんが『服を仕立てましょう!』と言ったので」
着せ替え人形とされ、ふるふるとしている花の姿が浮かぶ。
「私にはあのような、モガな服は似合わないと思うのですが。せっかくの二人きりなのだからと、みんなが・・・。ふっ、モガか」
似合うと思うが、と義孝は思う。
花はここ数ヶ月で、綺麗になった。
初めて会った時は顔色が悪く、痩せていた。理由は翌日、花から聞いた生い立ちで分かる。
愛して欲しい一心で、花は努力してきた。しかし、全ては糠に釘、梨の礫だった。
食事を抜かれたのも、一度や二度じゃないと使用人達が証言している。痩せていく花を、継母は座視していた。
「きっと、似合いますよ。花さん」
優しい笑みが浮かぶ。
花を思うだけで、温かい気持ちになる。婚約までの三ヶ月が、胸に蘇る。
腕を怪我した自分を助けようと、布団運びを申し出た花。叱られてばかりの彼女に、どれだけ勇気が必要だったか。
拒絶されることのない日々は花を笑顔にしていった。もう、大丈夫なのだと、初めて安心したのだ。
『私は、義孝さんがいいのです。他の人なんて、欲しくありません!』
幸せになる時、隣には義孝にいて欲しいと花は言ってくれた。
「少し前に、義孝さんがたくさん着物を買ってくださったばかり。こんなに幸せで、怖いくらいです。私、みんなが大好きです」
夏でも、心は寂しさという寒さで凍りついていた。義孝や千代と暮らし、優しさに凍りついていた心が溶け、寂しさや苦しみは涙となり流れてゆく。
「私、泣き虫になりました。以前はこんな自分が嫌でした。でも、今は違います。幸せだから、流れる涙があると・・・義孝さんが教えてくれました」
『ありがとうございます、義孝さん。私、すごく幸せです』
笑顔の花が、目に浮かんだ。
「良かった」
目を閉じ、息を吐く。
花が、自分の傍で幸せだと言ってくれる、その事実が義孝を幸せにする。
「私も、幸せですよ。花さん」
手紙と便箋を出し、返事を書き始めた。
「あ、義孝さんから手紙!」
ぱぁ、と頰が染まる。
「花さん、私も幸せです」
義孝の最初の一文に涙がこぼれる。ポタポタと、涙が落ちる。
『花さん、私は以前から心配だったことがあります。あなたは自分を卑下している、そんな風に思えるからです。
花さん、人は何かないと、価値が無いのでしょうか?
人は何か出来ないと、価値がないのでしょうか?
あなたに出逢い、あなたに愛されて・・・私は幸せになれました。
あなたが居てくれるだけで、この青空の下で生きていてくれるだけで、私には過ぎた幸せです。
きっと、私の最後にはあなたが居てくれる。だから、私は一人ではなくなる。
ありがとう、花さん。
生まれて来てくださって、
私に出逢ってくれて、
本当にありがとう』
最後は涙に揺れて、読めなかった。
「義孝さんっ」
手紙を抱きしめ、花は泣いた。
八月、花はドキドキしながら、屋敷をあとにした。
「では、いってきます」
「はい、楽しんできて」
鞄を手に、新しいワンピースを着て・・・。花は横須賀の軍港から、少し奥まったバス停で待っていた。
「ドキドキする」
初めて会うより、心臓が煩い。
スカートの丈が心もとない。
「!」
コツ・・・コツ、と靴音がする。
見れば、白い軍服を着た義孝が歩いてくる。
「義孝さん」
「花さん」
笑顔になる。
「それ、手紙にあった」
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二人で歩き出す。
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