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身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される(新婚編)
二十九話『継母の逮捕と謝罪』
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「おい、時東」
中原中将の声が響いた。
「はい?」
スーツから軍服に着替えた義孝が立ち止まり、こちらを振り返る。
「後で、儂の部屋に来い。ちょっと、話さにゃならん」
「はい」
朝のうちに捌かねばならない業務を終えた義孝は、中原中将の執務室に向かった。
「時東です」
「ああ。入れ」
ーーーー失礼します。
一礼し、部屋に入る。
「まあ、適当に座れ」
「はい」
義孝が頷く。
「時東、嫁さんの義理の母親のことなんだが」
「はい」
「捕縛された」
「そう、なのですか」
中将の話によれば、貴子は義孝と花が婚約した時に桐島邸の付近にいたとのこと。
「お前が邸に帰り、嫁さんと抱擁しているのを見たそうだ。『幸せそうで、安心した』ってさ。あと、これは警察から渡された、義理の母親の手紙だ」
「わかりました」
「反省、しとるそうだ。花さんに『すまなかった』とさ」
「はい」
✢✢✢◇◇✢✢✢
「継母が、謝罪?」
「ええ、すまなかったと」
「ふ」
「詳しい詳細は、手紙に」
「わかりました」
ふるっ、と涙があふれる。
「私、仲良くし・・たか」
「はい」
「った、です」
涙がポタポタと流れ落ちる。
「はい」
「大好きだと、言いたかっ」
嗚咽は号泣になる。
「好きに、なりたかった!」
わああ、と声を上げる花を義孝は抱きしめた。
❖❖❖◆◆❖❖❖
花、まずは結婚おめでとう。
十三年前、あなたに最初に会った日、私はやっと幸せになれると安堵していました。
私の実家は東北の貧しい農村で、一年の半分は雪に埋もれます。作物は満足に育たず、私も口減らしに奉公に、二百圓で東京に売られました。
そして、十九の春に屋敷の跡継ぎ、文昭さんと結ばれて聡美が生まれました。
美しく、賢い子に。
そう、私達はあなたのような娘を望んでいました。
泣いても、怒っても可愛い。
身体の弱い文昭さんは、子を授かれないと両親は悲観していたのでーーー聡美を産んだ私を愛してくれました。
❖❖❖◆◆◆❖❖❖
涙が止まらない。
花は鼻を鳴らす。
幸せな、愛する人と愛する娘との、幸せな日々が綴られた手紙に涙が落ちる。
「なんで」
桐島に嫁いだのか、胸が抉れた。
❖❖❖◆◆◆❖❖❖
だけど、幸せは続きませんでした。文昭さんは二十八歳と言う若さで亡くなり、かねてより情緒不安だった聡美が発達障害と癇癪があると診断されたのです。
成長すれば、淑やかな娘になると信じていたのに。眼の前が、真っ暗になりました。
文昭さんは男爵の位を持つ、名家の嫡子。先祖代々の、水呑百姓の私とは月とスッポンでした。
両親は僅かなお金を渡して、私と聡美を屋敷から出したのです。
あとは、あなたも分かると思いますが、男爵の身分であるのを利用して浩一郎さんに嫁いだのです。
やっと、幸せになれる。
安堵した直後に、浩一郎さんが倒れてーーーー私は不安になりました。
牛耳らねば、また出されると。幼い、母を求めるあなたには、辛い苦しい想いをたくさんさせました。
本当に、ごめんなさい。
よく、夢想しました。
あなたが私の産んだ娘であったなら・・・今でも、文昭さんの妻でいられたのかしら?と。
聡美が桐島の娘なら、と。
酷い、最低の母親です。
これからの生命を、償いに当てます。
少しでも、文昭さんや浩一郎さんのいる、天国に相応しい人間になる為にーーーー。
貴子
追伸、どうか幸せに。
あなたと時東さんは、本当にお似合いよ。おめでとう、花。
❖❖❖◆◆❖❖❖
「お、かあ、さ」
花は泣き崩れる。
幼い子供のように、わああんと泣きじゃくる。
「やだぁ」
泣きじゃくる花に、鹿江達は涙を流す。
「優しい子ですねぇ、花さんは」
千代は胸を痛めた。
「許せる日を、待っていたんでしょうね」
「ええ、きっと」
「やっと、それが叶いましたが・・・やりきれねぇ」
「花さん」
声を上げる花を、義孝は抱きしめるしか出来なかった。
「私、仲良くしたかったんです。聡美とも、母とも・・・でも、偽物の私に愛される価値はないんだと」
本物の娘の聡美が、大事に決まっている。
「でも、嫌われてはいなかったんですね」
「ええ。羨ましかったと話したそうですよ。あんなに器量良しで、気立ての良い娘を授かれて・・・・、自分が花さんを生みたかったと」
「聡美を愛していた筈なのに、辛いですね。そんな事を考えてしまうなんて」
涙が流れ落ちる。
胸が抉れたように、痛い。
「私、許したいです。母を」
「・・・」
「出所したら、その」
「迎え入れたい、ですか?」
ぐす、と鼻を鳴らす。
「だ、め・・・?」
泣き笑いになり、上手く出来ない。また、花は号泣した。
「いまは、休んで下さい。先のことは、あなたの傷が癒えてから・・・ゆっくり考えましょう?」
「はい」
コクコクと、頷く。
涙が流れ落ちる。
(・・・いつか、ちゃんと二人を赦してあげたいな)
花は目を閉じた。
中原中将の声が響いた。
「はい?」
スーツから軍服に着替えた義孝が立ち止まり、こちらを振り返る。
「後で、儂の部屋に来い。ちょっと、話さにゃならん」
「はい」
朝のうちに捌かねばならない業務を終えた義孝は、中原中将の執務室に向かった。
「時東です」
「ああ。入れ」
ーーーー失礼します。
一礼し、部屋に入る。
「まあ、適当に座れ」
「はい」
義孝が頷く。
「時東、嫁さんの義理の母親のことなんだが」
「はい」
「捕縛された」
「そう、なのですか」
中将の話によれば、貴子は義孝と花が婚約した時に桐島邸の付近にいたとのこと。
「お前が邸に帰り、嫁さんと抱擁しているのを見たそうだ。『幸せそうで、安心した』ってさ。あと、これは警察から渡された、義理の母親の手紙だ」
「わかりました」
「反省、しとるそうだ。花さんに『すまなかった』とさ」
「はい」
✢✢✢◇◇✢✢✢
「継母が、謝罪?」
「ええ、すまなかったと」
「ふ」
「詳しい詳細は、手紙に」
「わかりました」
ふるっ、と涙があふれる。
「私、仲良くし・・たか」
「はい」
「った、です」
涙がポタポタと流れ落ちる。
「はい」
「大好きだと、言いたかっ」
嗚咽は号泣になる。
「好きに、なりたかった!」
わああ、と声を上げる花を義孝は抱きしめた。
❖❖❖◆◆❖❖❖
花、まずは結婚おめでとう。
十三年前、あなたに最初に会った日、私はやっと幸せになれると安堵していました。
私の実家は東北の貧しい農村で、一年の半分は雪に埋もれます。作物は満足に育たず、私も口減らしに奉公に、二百圓で東京に売られました。
そして、十九の春に屋敷の跡継ぎ、文昭さんと結ばれて聡美が生まれました。
美しく、賢い子に。
そう、私達はあなたのような娘を望んでいました。
泣いても、怒っても可愛い。
身体の弱い文昭さんは、子を授かれないと両親は悲観していたのでーーー聡美を産んだ私を愛してくれました。
❖❖❖◆◆◆❖❖❖
涙が止まらない。
花は鼻を鳴らす。
幸せな、愛する人と愛する娘との、幸せな日々が綴られた手紙に涙が落ちる。
「なんで」
桐島に嫁いだのか、胸が抉れた。
❖❖❖◆◆◆❖❖❖
だけど、幸せは続きませんでした。文昭さんは二十八歳と言う若さで亡くなり、かねてより情緒不安だった聡美が発達障害と癇癪があると診断されたのです。
成長すれば、淑やかな娘になると信じていたのに。眼の前が、真っ暗になりました。
文昭さんは男爵の位を持つ、名家の嫡子。先祖代々の、水呑百姓の私とは月とスッポンでした。
両親は僅かなお金を渡して、私と聡美を屋敷から出したのです。
あとは、あなたも分かると思いますが、男爵の身分であるのを利用して浩一郎さんに嫁いだのです。
やっと、幸せになれる。
安堵した直後に、浩一郎さんが倒れてーーーー私は不安になりました。
牛耳らねば、また出されると。幼い、母を求めるあなたには、辛い苦しい想いをたくさんさせました。
本当に、ごめんなさい。
よく、夢想しました。
あなたが私の産んだ娘であったなら・・・今でも、文昭さんの妻でいられたのかしら?と。
聡美が桐島の娘なら、と。
酷い、最低の母親です。
これからの生命を、償いに当てます。
少しでも、文昭さんや浩一郎さんのいる、天国に相応しい人間になる為にーーーー。
貴子
追伸、どうか幸せに。
あなたと時東さんは、本当にお似合いよ。おめでとう、花。
❖❖❖◆◆❖❖❖
「お、かあ、さ」
花は泣き崩れる。
幼い子供のように、わああんと泣きじゃくる。
「やだぁ」
泣きじゃくる花に、鹿江達は涙を流す。
「優しい子ですねぇ、花さんは」
千代は胸を痛めた。
「許せる日を、待っていたんでしょうね」
「ええ、きっと」
「やっと、それが叶いましたが・・・やりきれねぇ」
「花さん」
声を上げる花を、義孝は抱きしめるしか出来なかった。
「私、仲良くしたかったんです。聡美とも、母とも・・・でも、偽物の私に愛される価値はないんだと」
本物の娘の聡美が、大事に決まっている。
「でも、嫌われてはいなかったんですね」
「ええ。羨ましかったと話したそうですよ。あんなに器量良しで、気立ての良い娘を授かれて・・・・、自分が花さんを生みたかったと」
「聡美を愛していた筈なのに、辛いですね。そんな事を考えてしまうなんて」
涙が流れ落ちる。
胸が抉れたように、痛い。
「私、許したいです。母を」
「・・・」
「出所したら、その」
「迎え入れたい、ですか?」
ぐす、と鼻を鳴らす。
「だ、め・・・?」
泣き笑いになり、上手く出来ない。また、花は号泣した。
「いまは、休んで下さい。先のことは、あなたの傷が癒えてから・・・ゆっくり考えましょう?」
「はい」
コクコクと、頷く。
涙が流れ落ちる。
(・・・いつか、ちゃんと二人を赦してあげたいな)
花は目を閉じた。
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