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身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される(新婚編)
三十一話『灰かぶり姫』
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「いえ。マダム、僕はそちらのお嬢様と、踊りたいのです」
花はこうなったら、と自らもアドリブで動いた。
「お嬢様、宜しいでしょうか」
「ーーーはい」
義孝の手を取り、花は微笑んだ。
✢✢✢◇◇◇✢✢✢
「素敵な王子様」
「こんな王子様、憧れるなぁ」
絵に描いた王子様ぶりを演じる花に、美沙はほうっと溜息を吐く。
「やっぱり、王子様は花ちゃんだね」
佳代が微笑んだ。
✢✢✢◇◇✢✢✢
「王子様、私で宜しいのですか?」
「はい。僕はあなたが、良いのです」
舞台で、二人が踊っている。
✢✢✢◇◇◇✢✢✢
「時致さんから聞いたんだけど、時東さんは花ちゃんに『ぞっこん』なんだって」
「ぞっこん?」
佳代は舞台の二人を見て、たしかにと頷く。
「うん、旦那さん。すごく優しい目で花ちゃんを見てる」
「花ちゃんと時東さんは、二十五も年が離れてるけど。全然、そんな風に見えないよね」
「うん。年齢差を感じさせないね」
幸せそうに舞台の上を回る二人に、皆が笑みを浮かべている。
「なかなか、いい芝居だな」
中原中将が舞台袖に来る。
「あ、中将さん」
「お疲れ様」
「いや、なんの。みんな、楽しんでいる。ありがとう」
中将が笑う。
中原中将・・・中原玄逸は、その気性の荒さは、海軍一である。だが、気前の良さや面倒見の良さから、多くの海兵に慕われている。
「中将さんの魔法使い、素敵でした」
「あんなで、良かったか?」
「はい」
美沙は頷いた。
「私がこの劇でやりたいのは、希望を無くさないこと」
「希望を無くさないこと・・・か」
玄逸は花と義孝を見る。
「ならば、あの二人は合格か?」
「はい。戦争が起きるかもと悲観して、花ちゃんに別れを告げようとした時東さんに。逆に『私は義孝さんと幸せになります!』って、求婚したらしいでから」
「え、そうなの?」
佳代が瞬く。
「らしいな。アイツ、女房に求婚されたらしい」
「海軍で有名らしいよ?冷静沈着の心を乱す、婚約者様って」
緞帳を下げて、休憩をすることになり、花と義孝が降りてくる。
「なぁに、なんのお話し」
花が興味津々とばかりに、三人に話しかける。
「ん。海神の化身は、若い妻にぞっこんだって話」
「え」
花は目を瞬く。
「海軍では有名なんだって。冷静沈着、頭脳明晰の時東大佐の心を乱した婚約者は、どんな女性なんだろうって」
「え、えっ?」
花は頰を染める。
「義孝さん?」
「ええと、それは・・・まあ、事実ですね」
ぞっこん?
本当に?
花が、潤々とした瞳で義孝を見上げる。
「ふふ、時東さんが花ちゃんに『ぞっこん』、理解できるなぁ」
「可愛い過ぎるもん」
疾風の乗員達も、この数日間の花のいじましい姿を、何度も軍令部で見かけている。
「まあ、惚れるしかありませんね」
杉田中佐が微笑んだ。
「あ、杉田中佐」
「おキレイでしたよ」
「おや、そうですか」
「はい、当日が楽しみ」
「お化粧もしますし?」
他の乗員達も、なかなか端正な顔立ちだ。きっと、化粧映えすることだろう。
「皆さん、お疲れ様です」
珈琲と菓子を配る。
「このお菓子、花ちゃんの手製ですよ~」
「美味しいですよ」
「あ、そんなの。言わなくて、いいってば」
花が慌てる。
「へぇ、艦長の奥さんが?」
「美味いから、買ってきたのかと」
作った方が安い材料費で済むのだ。花は昨日、自宅で菓子を焼いていた。
「花さん、ご苦労様です」
「味は、大丈夫でしょうか?」
「美味しいですよ。花さんは、多才ですね」
「いえ、洋菓子店で買うと、ちょっと高すぎるんです。義孝さんがくださってるお金で、いくらでも材料が買えますし」
「花さん、前から気になりますが」
はい?と花は瞬く。
「花さんは、自分の欲しい物は買われていますか?いつも、私や母への贈り物やらに消えているようですが」
「は、はいっ。もちろんです!たまに、その・・・お饅頭かったり、その化粧品とか補充しているのでっ」
ふしゅーっ、と茹で上がる。
「・・・ならば、構いませんが。服とか買っているように、思えないので」
「服とか着物は義孝さんやお義母さんが買って下さいました。もう、充分に着回せます」
花は潤々とした瞳で、必死に説明した。
「可愛いお嫁さんね」
「ええ」
他の手伝いに来ていた海兵の家族が、花や美沙達を身て言った。
「優しい子ですよ、花さんは」
「そうね。細やかで、何より息子さんに一途に恋してるわ」
「母親としては、嬉しい限りね」
花とて、義孝にぞっこんなのだ。常にその一挙一動を目に映していたい。
子猫のように、花は目を動かしている。その様子が、見ている側には堪らなくツボにはまる。
――――可愛い。
義孝は出勤時、胸がむず痒い。抱きしめてやりたいくらい衝動にかられてしまうのだ。
―――自覚してないだろうな。
そもそも、花は自分の行動に無自覚だ。どれだけ可愛くて、愛おしく感じているかなど。
つゆにも思わない。
堪らなく、愛しい存在である。
「嬉しいです」
花が笑った。
花はこうなったら、と自らもアドリブで動いた。
「お嬢様、宜しいでしょうか」
「ーーーはい」
義孝の手を取り、花は微笑んだ。
✢✢✢◇◇◇✢✢✢
「素敵な王子様」
「こんな王子様、憧れるなぁ」
絵に描いた王子様ぶりを演じる花に、美沙はほうっと溜息を吐く。
「やっぱり、王子様は花ちゃんだね」
佳代が微笑んだ。
✢✢✢◇◇✢✢✢
「王子様、私で宜しいのですか?」
「はい。僕はあなたが、良いのです」
舞台で、二人が踊っている。
✢✢✢◇◇◇✢✢✢
「時致さんから聞いたんだけど、時東さんは花ちゃんに『ぞっこん』なんだって」
「ぞっこん?」
佳代は舞台の二人を見て、たしかにと頷く。
「うん、旦那さん。すごく優しい目で花ちゃんを見てる」
「花ちゃんと時東さんは、二十五も年が離れてるけど。全然、そんな風に見えないよね」
「うん。年齢差を感じさせないね」
幸せそうに舞台の上を回る二人に、皆が笑みを浮かべている。
「なかなか、いい芝居だな」
中原中将が舞台袖に来る。
「あ、中将さん」
「お疲れ様」
「いや、なんの。みんな、楽しんでいる。ありがとう」
中将が笑う。
中原中将・・・中原玄逸は、その気性の荒さは、海軍一である。だが、気前の良さや面倒見の良さから、多くの海兵に慕われている。
「中将さんの魔法使い、素敵でした」
「あんなで、良かったか?」
「はい」
美沙は頷いた。
「私がこの劇でやりたいのは、希望を無くさないこと」
「希望を無くさないこと・・・か」
玄逸は花と義孝を見る。
「ならば、あの二人は合格か?」
「はい。戦争が起きるかもと悲観して、花ちゃんに別れを告げようとした時東さんに。逆に『私は義孝さんと幸せになります!』って、求婚したらしいでから」
「え、そうなの?」
佳代が瞬く。
「らしいな。アイツ、女房に求婚されたらしい」
「海軍で有名らしいよ?冷静沈着の心を乱す、婚約者様って」
緞帳を下げて、休憩をすることになり、花と義孝が降りてくる。
「なぁに、なんのお話し」
花が興味津々とばかりに、三人に話しかける。
「ん。海神の化身は、若い妻にぞっこんだって話」
「え」
花は目を瞬く。
「海軍では有名なんだって。冷静沈着、頭脳明晰の時東大佐の心を乱した婚約者は、どんな女性なんだろうって」
「え、えっ?」
花は頰を染める。
「義孝さん?」
「ええと、それは・・・まあ、事実ですね」
ぞっこん?
本当に?
花が、潤々とした瞳で義孝を見上げる。
「ふふ、時東さんが花ちゃんに『ぞっこん』、理解できるなぁ」
「可愛い過ぎるもん」
疾風の乗員達も、この数日間の花のいじましい姿を、何度も軍令部で見かけている。
「まあ、惚れるしかありませんね」
杉田中佐が微笑んだ。
「あ、杉田中佐」
「おキレイでしたよ」
「おや、そうですか」
「はい、当日が楽しみ」
「お化粧もしますし?」
他の乗員達も、なかなか端正な顔立ちだ。きっと、化粧映えすることだろう。
「皆さん、お疲れ様です」
珈琲と菓子を配る。
「このお菓子、花ちゃんの手製ですよ~」
「美味しいですよ」
「あ、そんなの。言わなくて、いいってば」
花が慌てる。
「へぇ、艦長の奥さんが?」
「美味いから、買ってきたのかと」
作った方が安い材料費で済むのだ。花は昨日、自宅で菓子を焼いていた。
「花さん、ご苦労様です」
「味は、大丈夫でしょうか?」
「美味しいですよ。花さんは、多才ですね」
「いえ、洋菓子店で買うと、ちょっと高すぎるんです。義孝さんがくださってるお金で、いくらでも材料が買えますし」
「花さん、前から気になりますが」
はい?と花は瞬く。
「花さんは、自分の欲しい物は買われていますか?いつも、私や母への贈り物やらに消えているようですが」
「は、はいっ。もちろんです!たまに、その・・・お饅頭かったり、その化粧品とか補充しているのでっ」
ふしゅーっ、と茹で上がる。
「・・・ならば、構いませんが。服とか買っているように、思えないので」
「服とか着物は義孝さんやお義母さんが買って下さいました。もう、充分に着回せます」
花は潤々とした瞳で、必死に説明した。
「可愛いお嫁さんね」
「ええ」
他の手伝いに来ていた海兵の家族が、花や美沙達を身て言った。
「優しい子ですよ、花さんは」
「そうね。細やかで、何より息子さんに一途に恋してるわ」
「母親としては、嬉しい限りね」
花とて、義孝にぞっこんなのだ。常にその一挙一動を目に映していたい。
子猫のように、花は目を動かしている。その様子が、見ている側には堪らなくツボにはまる。
――――可愛い。
義孝は出勤時、胸がむず痒い。抱きしめてやりたいくらい衝動にかられてしまうのだ。
―――自覚してないだろうな。
そもそも、花は自分の行動に無自覚だ。どれだけ可愛くて、愛おしく感じているかなど。
つゆにも思わない。
堪らなく、愛しい存在である。
「嬉しいです」
花が笑った。
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