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身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される(新婚編)
三十二話『祝福できる優しさ』
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ぞろぞろ。
ガヤガヤ。
初日の朝、『灰かぶり姫』の客入りは今ひとつだった。
見に来たのは、妻や友人だけで観客席は無料にも関わらず、空席だらけだった。
「やっぱり、私が灰かぶりだからでは?」
義孝がバツの悪い顔をする。
「白勢がやったほうが」
「駄目です。白勢さんは王妃様、もう今更セリフを覚えられません」
花がキッと、眉を上げる。
「まだ、昼と夕。二日半あるんです」
「わかりました」
花は真面目だ。
―――艦長が尻に敷かれてる。
杉田中佐をはじめとする面々が、密かに微笑んだ。
「私だって、ホントにやるなら王子様より灰かぶり姫がいいです。灰かぶり姫は、女の子の大好きな物語ですから」
「たしかに、花さんは灰かぶり姫ですね。辛い日々に耐えて、幸せを掴みました」
「はい。私も、灰かぶり姫には共感します」
素敵な男性に会えました。
袖を掴み、花は呟いた。
✢✢✢✜✜✢✢✢
「王子様はガラスの靴にピッタリ合う足の方に、結婚を申し込むと」
「ならば、私も!」
泣いてばかりの灰かぶり姫が、舞台に現れる。
「長官様、私にも試させてください」
「厚かましい、召使いふぜいが!掃除をしてなさい」
杉田中佐の鋭い怒声が響く。
「マダム、全てのレディにと王様はお命じです」
「なら、私も?」
客席では、義孝の端正な顔立ちに、うっとりする婦人達がいて・・・花は不安になる。
(・・・あ、やっぱり。男女が逆で良かった)
「花ちゃん、出番」
「え?」
「ほら、王子が求婚する見せ場!」
泣きたい気持ちで、花は舞台は上がる。
―――え、あの子が?
―――灰かぶり姫の奥さん?
ズキン、と胸が痛む。
海軍と家族が演じる舞台だと、看板やパンフレットに説明がある。
配役の名前から、妻や母親が出ていることも想定内。
「よしこ。僕・・・いえ、私の妻になっていただけますか」
「はい、喜んで。王子様」
花の手を握り、義孝が微笑んだ。
―――なんか、チグハグ。
―――地味ね?
ズキン。
心無い言葉に、目が潤む。
(似合わない、それが世間の評価なのよね。そんなの、分かってる)
ふ。
花が泣きそうになる寸前、緞帳が下がった。
「花ちゃん」
「大丈夫?」
・・・ぇっ。
涙が流れ落ちる。
「ごめんなさい」
「花さん」
チグハグ。
地味ね。
そう囁いた声に、杉田中佐は聞き覚えがあった。
・・・・あ。
「花さん?」
「ご・・・め、あ」
「花ちゃん?まさか、声が」
あれは、芸者だ。
海軍主催のバザーが開かれることは、芸者や舞妓に案内が届く。
「艦長」
杉田中佐が呼びかける。
「なんだ」
「あ・・いっ・・・て」
過呼吸になりながら、花が訴える。
「あれ」
杉田中佐が舞台袖から、客席の女性客を指差す。
「ん?」
「芸者の駒菊、鈴花、梅桃です」
義孝はふと、『さざなみ』にいた芸者を思い出す。
―――うちらの時東はん!
「彼女達が、なぜ?」
「休暇でしょうね」
「休暇」
「先ほど、こんな言葉を」
それは、花を傷つけるに充分な暴言だった。
「大丈夫、花ちゃん?」
「うん、ごめ・・ん」
「可哀想」
(チグハグ。たしかに、私じゃ義孝さんに不釣り合い。だけど、私は義孝さんが好き)
「どうします?」
「ん?」
「不快な言葉を言いに来るなら、退席を促しましょうか?」
「・・・いや、必要ない」
義孝は首を振る。
「花さんは、見た目ほど弱い女性じゃない。大丈夫だ」
花さん。
義孝が花の元へ向かう。
「あ、義孝さん」
にこり、と花が笑顔になる。
「大丈夫ですか?まだ、最後の場面がありますよ」
「はい!」
花が頷く。
「ごめんなさい、泣いたりして」
花が立ち上がった。
―――弱い女性じゃない。
「ホントに、ぞっこんだな」
くくっ、と杉田中佐は笑う。
ただ、甘やかすだけではなく、その強さを信じて支える。
緞帳が上がり、継母と継妹が報いを受ける。
「いだい」
「やめてぇ?」
小鳥が、子ねずみが、結婚式に招待された二人を攻撃する。
「優しい灰かぶり姫に対しての意地悪は、すでに国王夫妻も知っていました」
「太子妃よ。そなたは彼女らに、どのような罰を与えたい?」
「いえ、罰など。ただ、私が与えられたものと、同じ境遇を二人に」
「分かった」
灰かぶり姫が王子様と新婚旅行に行ったあと、継母と継妹は女中の着物を与えられた。
「何よ、この汚い服」
「私は公爵婦人よ!」
「灰かぶり姫の言葉を忘れたか?私が与えられたのと、同じ境遇を二人にと。今日からそなたらは炊事洗濯掃除をして、己の卑しい心根を罰するのだ」
――――そんなぁ。
二人に汚い兵士の臭い服が投げつけられる。
「灰かぶり姫は優しい王子様と、幸せに暮らしました」
✜✜✜✜✜✜
「転んでも、また立ち上がる人か」
「だから、艦長はベタ惚れなんですね」
三日の舞台を、花は無事にやり遂げた。
「駒菊さん、鈴花さん、梅桃さん」
杉田中佐が声が声をかけると、三人は凍りつく。
「杉田中佐」
「なんで、うちらやと」
「大佐も、気付いてますよ」
「え?」
凍りつくような目が、三人を見据える。
「す、すんません」
「うちら、羨ましゅうて」
「ほんに、堪忍」
「人の幸せを祝福できる人が、真の幸せを手にすると思いますよ」
杉田中佐の言葉に、三人は紅くなる。そして、涙ぐんだ。
ガヤガヤ。
初日の朝、『灰かぶり姫』の客入りは今ひとつだった。
見に来たのは、妻や友人だけで観客席は無料にも関わらず、空席だらけだった。
「やっぱり、私が灰かぶりだからでは?」
義孝がバツの悪い顔をする。
「白勢がやったほうが」
「駄目です。白勢さんは王妃様、もう今更セリフを覚えられません」
花がキッと、眉を上げる。
「まだ、昼と夕。二日半あるんです」
「わかりました」
花は真面目だ。
―――艦長が尻に敷かれてる。
杉田中佐をはじめとする面々が、密かに微笑んだ。
「私だって、ホントにやるなら王子様より灰かぶり姫がいいです。灰かぶり姫は、女の子の大好きな物語ですから」
「たしかに、花さんは灰かぶり姫ですね。辛い日々に耐えて、幸せを掴みました」
「はい。私も、灰かぶり姫には共感します」
素敵な男性に会えました。
袖を掴み、花は呟いた。
✢✢✢✜✜✢✢✢
「王子様はガラスの靴にピッタリ合う足の方に、結婚を申し込むと」
「ならば、私も!」
泣いてばかりの灰かぶり姫が、舞台に現れる。
「長官様、私にも試させてください」
「厚かましい、召使いふぜいが!掃除をしてなさい」
杉田中佐の鋭い怒声が響く。
「マダム、全てのレディにと王様はお命じです」
「なら、私も?」
客席では、義孝の端正な顔立ちに、うっとりする婦人達がいて・・・花は不安になる。
(・・・あ、やっぱり。男女が逆で良かった)
「花ちゃん、出番」
「え?」
「ほら、王子が求婚する見せ場!」
泣きたい気持ちで、花は舞台は上がる。
―――え、あの子が?
―――灰かぶり姫の奥さん?
ズキン、と胸が痛む。
海軍と家族が演じる舞台だと、看板やパンフレットに説明がある。
配役の名前から、妻や母親が出ていることも想定内。
「よしこ。僕・・・いえ、私の妻になっていただけますか」
「はい、喜んで。王子様」
花の手を握り、義孝が微笑んだ。
―――なんか、チグハグ。
―――地味ね?
ズキン。
心無い言葉に、目が潤む。
(似合わない、それが世間の評価なのよね。そんなの、分かってる)
ふ。
花が泣きそうになる寸前、緞帳が下がった。
「花ちゃん」
「大丈夫?」
・・・ぇっ。
涙が流れ落ちる。
「ごめんなさい」
「花さん」
チグハグ。
地味ね。
そう囁いた声に、杉田中佐は聞き覚えがあった。
・・・・あ。
「花さん?」
「ご・・・め、あ」
「花ちゃん?まさか、声が」
あれは、芸者だ。
海軍主催のバザーが開かれることは、芸者や舞妓に案内が届く。
「艦長」
杉田中佐が呼びかける。
「なんだ」
「あ・・いっ・・・て」
過呼吸になりながら、花が訴える。
「あれ」
杉田中佐が舞台袖から、客席の女性客を指差す。
「ん?」
「芸者の駒菊、鈴花、梅桃です」
義孝はふと、『さざなみ』にいた芸者を思い出す。
―――うちらの時東はん!
「彼女達が、なぜ?」
「休暇でしょうね」
「休暇」
「先ほど、こんな言葉を」
それは、花を傷つけるに充分な暴言だった。
「大丈夫、花ちゃん?」
「うん、ごめ・・ん」
「可哀想」
(チグハグ。たしかに、私じゃ義孝さんに不釣り合い。だけど、私は義孝さんが好き)
「どうします?」
「ん?」
「不快な言葉を言いに来るなら、退席を促しましょうか?」
「・・・いや、必要ない」
義孝は首を振る。
「花さんは、見た目ほど弱い女性じゃない。大丈夫だ」
花さん。
義孝が花の元へ向かう。
「あ、義孝さん」
にこり、と花が笑顔になる。
「大丈夫ですか?まだ、最後の場面がありますよ」
「はい!」
花が頷く。
「ごめんなさい、泣いたりして」
花が立ち上がった。
―――弱い女性じゃない。
「ホントに、ぞっこんだな」
くくっ、と杉田中佐は笑う。
ただ、甘やかすだけではなく、その強さを信じて支える。
緞帳が上がり、継母と継妹が報いを受ける。
「いだい」
「やめてぇ?」
小鳥が、子ねずみが、結婚式に招待された二人を攻撃する。
「優しい灰かぶり姫に対しての意地悪は、すでに国王夫妻も知っていました」
「太子妃よ。そなたは彼女らに、どのような罰を与えたい?」
「いえ、罰など。ただ、私が与えられたものと、同じ境遇を二人に」
「分かった」
灰かぶり姫が王子様と新婚旅行に行ったあと、継母と継妹は女中の着物を与えられた。
「何よ、この汚い服」
「私は公爵婦人よ!」
「灰かぶり姫の言葉を忘れたか?私が与えられたのと、同じ境遇を二人にと。今日からそなたらは炊事洗濯掃除をして、己の卑しい心根を罰するのだ」
――――そんなぁ。
二人に汚い兵士の臭い服が投げつけられる。
「灰かぶり姫は優しい王子様と、幸せに暮らしました」
✜✜✜✜✜✜
「転んでも、また立ち上がる人か」
「だから、艦長はベタ惚れなんですね」
三日の舞台を、花は無事にやり遂げた。
「駒菊さん、鈴花さん、梅桃さん」
杉田中佐が声が声をかけると、三人は凍りつく。
「杉田中佐」
「なんで、うちらやと」
「大佐も、気付いてますよ」
「え?」
凍りつくような目が、三人を見据える。
「す、すんません」
「うちら、羨ましゅうて」
「ほんに、堪忍」
「人の幸せを祝福できる人が、真の幸せを手にすると思いますよ」
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