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回想・身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される
四話『膝枕と鋭意』
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花と義孝が結婚し、数ヶ月が過ぎた。二人きりの宿屋で、花は幸せにどっぷりと浸る。
その理由は、長椅子に腰掛けて座り話している時だった。
夕食が運ばれるまで、まだ二時間はある。茶を飲みながら、のんびりと話していたのだがーーー。
「・・・」
ふと、義孝が黙る。
「義孝さん?」
すー・・すー・・
義孝が居眠りをしていた。
「お疲れ様です」
微笑んで、そっと義孝を寝かせ、タオルケットを掛ける。
「ありがとうございます。旅行に連れてきてくれて」
幸せだった。
優しく、深い愛情を注いでくれる、大好きな旦那様と二人きり。
「ほんとに、男前だなぁ」
切れ長の一重の目は、時に厳格な迫力になる。だけど、ふっと微笑んだ時に優しい印象に変わる。
「私、義孝さんが大好き」
「ん」
膝枕で寝ていたなど、後で知ればまた平謝りする。
「ふふ」
泥酔した時の様を思い出す。
ーーー大佐は中原中将を。
杉田中佐によれば、中原中将を飲み比べで負かしたほどの酒豪の義孝。お銚子二十数本で、酔い潰れるなどあり得ない、との話だった。
『大佐は、奥さんの傍でこそ、休まるのでしょう。艦長としての責任が、寛ぐことを良しとしないのではないでしょうか』
義孝は自分の傍でこそ、寛ぐことが出来るのだとしたら・・・。
この無防備な姿は、自分だけが知ることになる。花は目が熱くなるのを感じ、慌てて空を仰いだ。
「・・・花さん?」
義孝が目を開く。
「あ、目が覚めました?」
目が赤い花に、義孝は飛び起きる。
「ど、どうされました?脚が痺れたのですか!?」
「ちがいます」
そんな事で泣きません、と花は慌てる。
「嬉しいんです。義孝さんが、私の傍で休まるなら、こんなに嬉しい話はありません」
「花さん」
義孝が、ほっとした顔をする。
夕食を食べて温泉に入り、夜の露店を覗いて回り。義孝が挿してくれた簪に、花は涙を流した。
「義孝さんは、すぐに私を甘やかします」
身に余るほどに、愛されている。
「着物に簪、どれもポンと買える額ではありません」
「そんなに、高い物ではありませんが?」
「それでも、私には贅沢すぎますよ」
今、贈られた簪も宝石ではないが、上質な天然石だ。
「花さんを幸せにしたいだけです。今まで、淋しく過ごした日々を埋めることを」
「私は、今のままで」
涙を拭かれ、目を閉じる。
「ん」
口づけられ、息があがる。
「・・・だめ、です」
「嫌?」
艶のある眼差しが、花を写している。
(私も、同じ瞳で見てる?)
「ちがいます、嫌では。でも、ここでは・・・」
頬が、体が熱を帯びる。
はぁ、と小さく息を吐く。
「宿に、戻りますか?」
「・・・はい」
泣きそうに、花は頷いた。
手を繋ぎながら、宿まで歩く。
「あの、でも・・・」
「はい?」
「明日、もあるので。限度は・・超えないで?」
沈黙に、花はふるふるする。
「義孝さん?」
「ま、鋭意・・・努力します」
目線が泳ぎまくる。
「義孝さん!私の目を見て」
「あはは」
ふるふる、花が真っ赤に茹で上がる。
翌朝、花はぼ~っと朝食の膳を見つめていた。
「花さん」
「た、食べまひょ」
声がかすれ、呂律がおかしい。
「ご飯が冷めますりょ」
ぷ、と吹き出した義孝に、花が泣きそうになる。
「なんれ、笑うんれすかぁ?誰の」
「可愛い」
「酷い!誰のせいりゃと、あんなに・・するかりゃ!」
幸せな、朝だった。
その理由は、長椅子に腰掛けて座り話している時だった。
夕食が運ばれるまで、まだ二時間はある。茶を飲みながら、のんびりと話していたのだがーーー。
「・・・」
ふと、義孝が黙る。
「義孝さん?」
すー・・すー・・
義孝が居眠りをしていた。
「お疲れ様です」
微笑んで、そっと義孝を寝かせ、タオルケットを掛ける。
「ありがとうございます。旅行に連れてきてくれて」
幸せだった。
優しく、深い愛情を注いでくれる、大好きな旦那様と二人きり。
「ほんとに、男前だなぁ」
切れ長の一重の目は、時に厳格な迫力になる。だけど、ふっと微笑んだ時に優しい印象に変わる。
「私、義孝さんが大好き」
「ん」
膝枕で寝ていたなど、後で知ればまた平謝りする。
「ふふ」
泥酔した時の様を思い出す。
ーーー大佐は中原中将を。
杉田中佐によれば、中原中将を飲み比べで負かしたほどの酒豪の義孝。お銚子二十数本で、酔い潰れるなどあり得ない、との話だった。
『大佐は、奥さんの傍でこそ、休まるのでしょう。艦長としての責任が、寛ぐことを良しとしないのではないでしょうか』
義孝は自分の傍でこそ、寛ぐことが出来るのだとしたら・・・。
この無防備な姿は、自分だけが知ることになる。花は目が熱くなるのを感じ、慌てて空を仰いだ。
「・・・花さん?」
義孝が目を開く。
「あ、目が覚めました?」
目が赤い花に、義孝は飛び起きる。
「ど、どうされました?脚が痺れたのですか!?」
「ちがいます」
そんな事で泣きません、と花は慌てる。
「嬉しいんです。義孝さんが、私の傍で休まるなら、こんなに嬉しい話はありません」
「花さん」
義孝が、ほっとした顔をする。
夕食を食べて温泉に入り、夜の露店を覗いて回り。義孝が挿してくれた簪に、花は涙を流した。
「義孝さんは、すぐに私を甘やかします」
身に余るほどに、愛されている。
「着物に簪、どれもポンと買える額ではありません」
「そんなに、高い物ではありませんが?」
「それでも、私には贅沢すぎますよ」
今、贈られた簪も宝石ではないが、上質な天然石だ。
「花さんを幸せにしたいだけです。今まで、淋しく過ごした日々を埋めることを」
「私は、今のままで」
涙を拭かれ、目を閉じる。
「ん」
口づけられ、息があがる。
「・・・だめ、です」
「嫌?」
艶のある眼差しが、花を写している。
(私も、同じ瞳で見てる?)
「ちがいます、嫌では。でも、ここでは・・・」
頬が、体が熱を帯びる。
はぁ、と小さく息を吐く。
「宿に、戻りますか?」
「・・・はい」
泣きそうに、花は頷いた。
手を繋ぎながら、宿まで歩く。
「あの、でも・・・」
「はい?」
「明日、もあるので。限度は・・超えないで?」
沈黙に、花はふるふるする。
「義孝さん?」
「ま、鋭意・・・努力します」
目線が泳ぎまくる。
「義孝さん!私の目を見て」
「あはは」
ふるふる、花が真っ赤に茹で上がる。
翌朝、花はぼ~っと朝食の膳を見つめていた。
「花さん」
「た、食べまひょ」
声がかすれ、呂律がおかしい。
「ご飯が冷めますりょ」
ぷ、と吹き出した義孝に、花が泣きそうになる。
「なんれ、笑うんれすかぁ?誰の」
「可愛い」
「酷い!誰のせいりゃと、あんなに・・するかりゃ!」
幸せな、朝だった。
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