身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される

絵麻

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回想・身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される

八話『警告と殺気』

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 時東と翔哉は、磯崎准将の元で海兵としてのイロハを学んだ。度重なる海戦の中で、准将は右目を負傷した。

 眼球摘出の大怪我だった。
 だが、それだけなら、海兵を辞める必要はない。磯崎准将が退役された理由は、レントゲンに写り込んだ病魔のせいだ。

「泣くな、ガキ共」 
 退役される日、数多の将官が泣き崩れた。皆が将官を、『オヤジ』と慕っていた・・・翔哉と義孝を含めて。

 勇敢で正義感が強くて、部下想いの彼を・・・嫌う者は居なかった。

 ーーーさらばだ、息子たち。

 あれから、二十年余りが過ぎた。

 義孝と翔哉は、中原中将の元で鍛えられた。そして、翔哉は軍艦璃月あきづきの艦長になり、義孝は軍艦疾風の艦長になった。

「藤岡少佐が戻ったら、オレの部屋に来いと伝えろ」
「は」
 副長の土方中佐が頷いた。
「あのバカ」
 土方中佐は毒づく。

 璃月で、康介と花のことを知らぬ者はいない。義孝の耳に入るのも、時間の問題だ。
「おい、康介」
「はい」
「艦長がお呼びだ」
「はい」
 艦長室に行く通路で、何人かの将官が刺すような視線を向ける。

 ーーーあのバカ。

 艦長室では、翔哉が待っていた。
 その眼光は鋭く、翔哉が怒っているのが分かる。
「まあ、座れ」
「はい」
 言われた通りに椅子にかけ、翔哉の言葉を待った。

「康介、お前・・・女房がいたな?」
「はい。ですが、六年前に病没しました」
「なるほど。で、今は女はいるのか?恋人か、想い人は?」
「いません」
「なら、再婚したらどうだ?」
「え」
 康介が固まる。
「オレが世話してやる。女を抱きたいだけなら、遊郭か」
「必要ありません」
「お前、満州に復員に行く前、女を連れていただろ?」
 本題に入る。
「はい」
 翔哉の眼光が鋭い。
「誰だ、どういう関係だ?」

 ーーー妹、なんて言うな?
 
「昔馴染みです。実家の近くの」
「なら、警告しておく。その昔馴染みには、二度と会うな?」
 康介は歯軋りする。
「なぜ、ですか?」
「その昔馴染みの女はな、疾風の艦長の女房だ。オレの弟分でな、『海神の化身』は知っているな?時東はお前の歳で、将軍の参謀として軍会議に参加していた。っり・・・」
 人差し指で頭を指す。
「ここの出来が、一般の海兵とは桁違いに良いんだ。あと、軍隊格闘でアイツに勝てるのは、中原中将くらいだ」

 ーーー殺されるぞ。

「アイツが気づいたら、頸がいくつあっても足りん」
「・・・」
「話しは終わりだ。時東には、オレから詫びを入れておく」
「はい」

 恐ろしい程の殺気が、料亭『さざなみ』に渦巻いている。

「大した奴等だ。この殺気の中で、呑めるんだからな」
 
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