身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される

絵麻

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身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される(あれから・・・)

三話『再会』

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「お義母さん」
「おばあちゃん」
「母さん」
 車から、三人が降りる。
「優衣」
「はるか、ありがとう」
「うん、速く、行ってあげて」

 三人が階段を駆け上がる。
 どうして、霊園や寺の階段はこんなに長いのか?

 いざという時の避難場所よ

 花が、いつだったか言っていた。寺や神社を燃やす人はいない。空襲でも、アメリカは寺院や霊園を避けたという。

「おばあちゃん!」

     ✣✣✣✣✣

「花さん」
 優しい声。
 大好きな、低い声。

「・・・」
 胸がざわめく、花が振り返る。

「花」
 そこには、出会った頃より幾分若い、軍人姿の義孝がいた。
「義孝さん」

 ドキドキする。
 心臓が煩い。

「花」
「いや、来ないで」
 花は後ずさる。
「花」
「見ないで!」
 顔を隠す。
「酷いわ、自分だけ若い、なんて!私は、こんなっ」
 嗚咽が漏れる。
「いや、夢でもいや。見ないで、こんなシワだらけ!酷い」
 義孝の手が、優しく手を引き剥がす。
「なぜ、恥じるのですか?」
「え」
「頑張って、生きてきた。綺麗な手を、なぜ恥じるのです」
「綺麗な?」
 涙でいっぱいの目が、義孝を見る。
「花さんは、私だけの綺麗な花。私の大事な人だ」
「ふ・・・えっ」
 シワ一つない、美しい手のひら。
「会いた・・・かったぁ」
「ありがとう、花さん」
 抱きしめ、義孝が涙を流す。
「出会ってくれて、生まれて来てくれて」

 手紙にあった言葉を、義孝は伝える。

「あなたが愛してくれたから、私は、幸せだった。あなたがいてくれて、どれだけ」
「義孝さん」
 声が甘い、若々しい。
 だけど、自分はたしか。

 花は振り返る。
 大きな楡の木の下で、微笑んで・・・。

「あ」
 義孝に抱きしめられる。
「愛しています、花」
 涙があふれる。
「私も、愛しています」

 帰ろう、あの邸に。
 帰りましょ、私達の家に!

 還ろう、あの夏に。
 還ろう、愛しい日々に。

 夫婦になったあの日。
 初めて会った、初春の日に。

 崩れかけた布団。
 庇ってくれた、逞しい腕。

 思い返せば、温かい。
 幸せで、泣きたくなる日々。
 ほんのり塩味がした、初めての接吻。

 もう、離さないで。
 ずっと、一緒に―――――。
      
     ✣✣✣✣✣

「おばあちゃん」
 優衣が駆け寄るが、すでに花は息絶えていた。
「やだぁ、起きてよ!」
 泣きじゃくる声が夏空に響いた。

「きて、くれたのね?お義父さん」
「ああ、幸せそうだな」
 花の死に顔は、幸せそうに微笑んでいた。

 そう、遠くないわ。
 きっと、迎えに来てくれるわ。

 花が幸せならば。
 平成✕✕年八月某日、花は七十五歳の人生を終えた。義孝が召されて、五年目の夏だった。

   一ヶ月後。

「優衣」
 智志から連絡が来たのは、花の遺骨を納骨したあとだった。
「今、話せるか」
「うん」
 涙があふれる。
「どうした、泣いてんのか?」
「智志ぃ」
「今、どこだよ」
 声を上げ、泣いていた。

「オレ、これを渡そうと」
「なに?」
 それは小さな四角い箱。
「指輪」
「優衣に、誕生日に渡そうと。再来月だろ」
「・・・うん」
 まさか、連絡がなかったのは。
「もう、付き合って四年だもんな。優衣が大学生で、オレは社会人一年で」
「うん」
「で、えとっ」
 忘れていた、智志はすごく口下手だということ。メールも文章が短すぎて、分からなすぎて。

「つまり、そのだな」
「はい」
 紅くなった智志に、優衣まで恥ずかしくなる。
「結婚・・して下さい」
「はい」
 優衣は頷いた。

(・・・おばあちゃん、見てる?私、結婚することになったよ)

 きっと、大丈夫だから。

 花の笑顔を思い出す。
 花の言葉に、間違いはない。

「私、おばあちゃん達みたいになりたい。幾つになっても、名前で呼びあえる」
「そうだな、そうなれたら」
 言いかけて、智志は首を振る。
「いや、そうなろうな」
「うん」

 
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