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身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される(また、25歳差)
五話『先生の部屋』
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「お邪魔、します」
「どうぞ」
透匡の住むマンションは、学校から電車で一時間の場所にある。
「わ、綺麗に整頓されてる」
「まあ、簡単な片付け程度はしている。父が軍人でな、色々と教えられた」
ふふ、と花が微笑う。
「お父さんに感謝ですね。私、お掃除するつもりでしたよ」
「え?」
それは、ちょっと。透匡がタジタジになる。
「ふふ、困りますよね。なんか、男の子って、お母さんに部屋に入られるの嫌って聞きますもん」
透匡が複雑な顔をする。
「あのね、それは思春期の男子で、私はもう四十路。見られて困る本とかありませんよ」
「えー、ないんですかぁ」
Booと口唇を尖らせる。
「あるわけ無い。それは十代の中学生や高校生が見たがる物で・・・」
「そう、なんですね。なるほど、大人の男性はエッチな本は見ないんだ」
「な、何だと思っていたんだ、人の部屋。私は考えることが色々あるから、そこまで」
笑い声が響く。
教師と生徒という関係上、外では会えないが。透匡のマンションは、海陽からはビル群の死角となり、関係者にバレにくい。
あれこれ話しをして、花が作る昼食を食べて過ごした。二十五年の歳の差はあるが、花は賢くて話題は尽きない。
「じゃあ、歴史の方も勉強していたんですか?」
花が目をぱちくりする。
「ああ。ただ、ちょっと偏りがあるけれど」
「え、偏り?」
「太平洋戦争の事を、資料館に調べに行ったりとか」
「あ・・・三笠とか?」
「ああ。疾風の乗組員が、どうしていたのかとか」
「気になりますよね?みんな、大事な仲間ですもん。でも、けっこう学院にいませんか?ほら、現国の長月先生って」
容姿端麗な、透匡の同期。
食堂で二人で話している姿を、花は見かける。
「あの長月先生って、杉田中佐じゃありませんか?まっすぐで」
「ふはは、たしかに。彼とは妙に気が合うんだ。逆に嫌いな同僚も同じで」
「アハハ」
透匡は花が洗った皿を布巾で拭く。
「ごはん、味付けは大丈夫でしたか?」
「ああ、美味しかった。腕は健在だな」
「ふふ。私、栄養士の資格をとろうかと。ほら、廊下に自衛官の調理師募集ってあるじゃないですか?あれ見て、ここに行けば義孝さんの生まれ変わりに会えるかなぁって」
単純ですね、と花はエプロンを外しながら微笑う。
「花」
透匡の腕が、花を抱きしめる。
「もう、海には行かない」
「うん」
ずっと、今度は一緒にいたいと考えていた。何ヶ月も艦にいた日々、手紙のやり取りさえ叶わない復員の引き上げ。
「も、海には行かない」
「ああ」
透匡の匂いを、日に当たった衣類の香りを花は吸う。胸いっぱいに、花の甘い匂い。
「匂いも、甘いままだな」
「え?」
ドキリとする。
「え、えとっ」
「見るな」
胸に、しかと抱きしめられる。
「・・・照れて、ます?」
「・・・」
ドキドキしながら訊ねたが、透匡は答えない。だが、心臓の音が代わりに答えてくれる。
花は笑顔になった。
夕暮れ前に、部屋を出る。
先に透匡が出て、知り合いが居ないか見てくれる。
「じゃ、また学院で」
「はい」
花が微笑う。
その後ろ姿を、透匡が見ている。
(えへ、自撮りモードで移しちゃった)
寮に帰り、花はスマホを見る。
画面にある、帰宅する花を見る透匡と自分が並んでいる。
「えへへ、ツーショットだぁ」
にんまり、笑顔になる。
「いつか、堂々と一緒に歩きたいな。買い物したり、散歩したり」
透匡は海に出ないと、言ってくれた。
「ずっと、一緒にいたい」
✣✣✣✣
マンションに入った透匡のスマホが着信する。
「なんだ」
それは、非通知だった。
「非通知・・・削除、と。ん?」
しかし、その内容の見出しに、透匡が手を止める。
『淫行教師』
そこには、花と歩く姿がある。
もう一枚は、マンションの通用門から出る二人の姿。
「暇な奴もいたものだ」
やれやれ、と透匡は息を吐く。
「しかし、考えなくてはな」
花の人生は、まだスタート地点だ。
「さて、言い訳を考えるか」
✣✣✣✣
「工藤先生」
田城シスターがにっこり、微笑んだ。
「説明を」
「はあ、これはですね。彼女の親戚筋が、同じマンションにいたようです」
「なるほど、分かりました」
「え」
「そういう事に、今回はしておきます。ですが、工藤先生?」
「え」
「恋愛をするな、とは申しません。ですが、杉崎さんが大切な生徒であるように・・・先生も大事な教師です。あなたを慕う生徒を、ガッカリさせることはなさらないで下さい」
「はい、肝に銘じます」
失礼します、と一礼する。
「あと、半年です」
「はい」
「杉崎さんが高校生でなくなるまで、あと半年をきりました。自制してください」
「はい」
透匡は理事長室を後にした。
「どうぞ」
透匡の住むマンションは、学校から電車で一時間の場所にある。
「わ、綺麗に整頓されてる」
「まあ、簡単な片付け程度はしている。父が軍人でな、色々と教えられた」
ふふ、と花が微笑う。
「お父さんに感謝ですね。私、お掃除するつもりでしたよ」
「え?」
それは、ちょっと。透匡がタジタジになる。
「ふふ、困りますよね。なんか、男の子って、お母さんに部屋に入られるの嫌って聞きますもん」
透匡が複雑な顔をする。
「あのね、それは思春期の男子で、私はもう四十路。見られて困る本とかありませんよ」
「えー、ないんですかぁ」
Booと口唇を尖らせる。
「あるわけ無い。それは十代の中学生や高校生が見たがる物で・・・」
「そう、なんですね。なるほど、大人の男性はエッチな本は見ないんだ」
「な、何だと思っていたんだ、人の部屋。私は考えることが色々あるから、そこまで」
笑い声が響く。
教師と生徒という関係上、外では会えないが。透匡のマンションは、海陽からはビル群の死角となり、関係者にバレにくい。
あれこれ話しをして、花が作る昼食を食べて過ごした。二十五年の歳の差はあるが、花は賢くて話題は尽きない。
「じゃあ、歴史の方も勉強していたんですか?」
花が目をぱちくりする。
「ああ。ただ、ちょっと偏りがあるけれど」
「え、偏り?」
「太平洋戦争の事を、資料館に調べに行ったりとか」
「あ・・・三笠とか?」
「ああ。疾風の乗組員が、どうしていたのかとか」
「気になりますよね?みんな、大事な仲間ですもん。でも、けっこう学院にいませんか?ほら、現国の長月先生って」
容姿端麗な、透匡の同期。
食堂で二人で話している姿を、花は見かける。
「あの長月先生って、杉田中佐じゃありませんか?まっすぐで」
「ふはは、たしかに。彼とは妙に気が合うんだ。逆に嫌いな同僚も同じで」
「アハハ」
透匡は花が洗った皿を布巾で拭く。
「ごはん、味付けは大丈夫でしたか?」
「ああ、美味しかった。腕は健在だな」
「ふふ。私、栄養士の資格をとろうかと。ほら、廊下に自衛官の調理師募集ってあるじゃないですか?あれ見て、ここに行けば義孝さんの生まれ変わりに会えるかなぁって」
単純ですね、と花はエプロンを外しながら微笑う。
「花」
透匡の腕が、花を抱きしめる。
「もう、海には行かない」
「うん」
ずっと、今度は一緒にいたいと考えていた。何ヶ月も艦にいた日々、手紙のやり取りさえ叶わない復員の引き上げ。
「も、海には行かない」
「ああ」
透匡の匂いを、日に当たった衣類の香りを花は吸う。胸いっぱいに、花の甘い匂い。
「匂いも、甘いままだな」
「え?」
ドキリとする。
「え、えとっ」
「見るな」
胸に、しかと抱きしめられる。
「・・・照れて、ます?」
「・・・」
ドキドキしながら訊ねたが、透匡は答えない。だが、心臓の音が代わりに答えてくれる。
花は笑顔になった。
夕暮れ前に、部屋を出る。
先に透匡が出て、知り合いが居ないか見てくれる。
「じゃ、また学院で」
「はい」
花が微笑う。
その後ろ姿を、透匡が見ている。
(えへ、自撮りモードで移しちゃった)
寮に帰り、花はスマホを見る。
画面にある、帰宅する花を見る透匡と自分が並んでいる。
「えへへ、ツーショットだぁ」
にんまり、笑顔になる。
「いつか、堂々と一緒に歩きたいな。買い物したり、散歩したり」
透匡は海に出ないと、言ってくれた。
「ずっと、一緒にいたい」
✣✣✣✣
マンションに入った透匡のスマホが着信する。
「なんだ」
それは、非通知だった。
「非通知・・・削除、と。ん?」
しかし、その内容の見出しに、透匡が手を止める。
『淫行教師』
そこには、花と歩く姿がある。
もう一枚は、マンションの通用門から出る二人の姿。
「暇な奴もいたものだ」
やれやれ、と透匡は息を吐く。
「しかし、考えなくてはな」
花の人生は、まだスタート地点だ。
「さて、言い訳を考えるか」
✣✣✣✣
「工藤先生」
田城シスターがにっこり、微笑んだ。
「説明を」
「はあ、これはですね。彼女の親戚筋が、同じマンションにいたようです」
「なるほど、分かりました」
「え」
「そういう事に、今回はしておきます。ですが、工藤先生?」
「え」
「恋愛をするな、とは申しません。ですが、杉崎さんが大切な生徒であるように・・・先生も大事な教師です。あなたを慕う生徒を、ガッカリさせることはなさらないで下さい」
「はい、肝に銘じます」
失礼します、と一礼する。
「あと、半年です」
「はい」
「杉崎さんが高校生でなくなるまで、あと半年をきりました。自制してください」
「はい」
透匡は理事長室を後にした。
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