人質同然だったのに何故か普通の私が一目惚れされて溺愛されてしまいました

ツヅミツヅ

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「離して! 乱暴しないで!」
 私は右腕を後ろ手に捻るグレーゲルに大声で抗議する。
「喧しい女だな」
 グレーゲルは忌々しそうに私を見た。
『凪屋』まで捕まって連れて来られた事になっている私はグレーゲル達に出来るだけ強めに食ってかかる。
 彼らへの報酬は太公様の遺産から出した。
 近頃は太公様から頂いた遺産は減るどころか、セオ島の売上が上がってしまって、どんどん増えていってる。
 もちろん私に使い途も無いので増える一方だ。3人の男達に充分な報酬を先ずは半金渡す事が出来た。
 本当はこんな事に使うんじゃなくて、民に還元出来ればいいなと思う。
「もうっ! 痛いじゃないっ! 離してってば!」
 そうして食ってかかっていると死角から他の男の手が伸びて来て私の口を塞ぐ。
 一応お金で繋がってるグレーゲルは完全にとは言えないけど信用は出来る。
 だけど突然知らない男に後ろから口を塞がれ手首を掴まれ、抱き竦められて私は凄く驚いて、本気で抵抗する。
 チラリと見えた頭にストールを巻いた男は突然私の顎を掴んでキスをした。
「ん゛っ! ん゛~~っ‼︎!」
 嫌だ! 陛下以外の人にキスされるなんて絶対嫌だ!
 周りにいる人たちが呆然とこちらを見てる。突然の男の行動に皆が面食らった様だ。
 ストールの男は唇を離して私を羽交締めにして、一人の男の方を見て言い放った。
「俺の報酬はこの女だ。これを貰う」
 男はその言葉に更に驚いたようだ。
 私はストールの男の聴き覚えのある声に驚いてその声が降りて来た方を仰ぎ見る。
「!」
 ストールの男は私を見下ろし不敵に笑っている。
「お前が気に入った。お前は俺の女だ」
「……嫌よ!」
「気の強い女だな。来い」
 ストールの男……陛下は、私の手首を乱暴気味に掴んだ。
「上の空き部屋を借りるぞ。仕事の話を進めといてくれ」
「離してっ! やめて!」
 この店は多分モグリの宿屋で妓楼に属していない娼婦達にこの上の部屋を貸しているのだろう。
 階段を登って空き部屋に入る。
 扉を開けると小さな部屋にベッドだけが狭苦しく置いてあった。
 乱暴に部屋に押し込められて扉が閉まる。
 私は勢い余ってベッドの上に横向きに倒れ込んだ。
 陛下は私に覆い被さって、顎をクイと掴んだ。
「さて、城でじっとしていろと命じた俺の妻が何故こんな所にいる?」
 私は陛下を真剣な眼差しで見つめて答える。
「私を取り押さえていた男とその奥にいた男達2人はこちらに取り込みました」
「ほう?」
 陛下は私の首筋にキスする。
「っん……あ、ちゃんと聞いて下さい……」
「それだけか?」
「まだあります。ヴェルウェルト商会が絡んでいると思われます」
「……ふむ。なかなか大物が釣れたな。裏は取れているのか?」
 陛下は更に首筋に舌を這わせる。ぞくりとした感触が私を襲う。
「……っアナバス様……っ!お願い、やめて下さい」
「裏は?」
「……はい、宰相様がこの凪屋の登記を調べて下さいました。店の店長こそ雇われですが、この土地と建物の所有者はヴェルウェルト商会の親戚筋です。ただ、それだけでは証拠としてはまだまだ弱いと」
「ふむ……。確かにそうだな。それで?お前が自らここに乗り込んだ理由にはならんが?」
 ……どう申し開きしようかしら……。
「アイラさんが全て話してくれました。御物の件は仕組まれた事だった様です。私はそれを聞いてしまったので、ここに連れて来られました……」
「だがあいつらを取り込んでいるのなら、あいつらは一度捕らえたと言う事だろう?何故ならお前は一度宰相に会っている。という事は城に戻っているという事だ」
 首筋に陛下の吐息がかかる。
「……はい……」
「ならば、お前の代わりはサリ辺りでも良かった筈だろう?」
「……失念していました……」
 私はにへらと笑う。
「宰相が止めただろう?」
「……はい……」
「つまり俺の命を無視したか」
 陛下は首筋に舌を這わせるのをやめて、私の顔を見た。
「…………だって……」
「なんだ?」
「……心配、だったんです……。アナバス様の事が……」
 陛下は私の顔をじっと見つめて、黙している。
「……昨日もお会いしてないし……。ここに来れば何かお助け出来るかもって……」
 陛下はそれでもじっと私を見つめている。私は耐え切れなくなって目を逸らした。
「……ごめんなさい……アナバス様……」
 自分が来たって足手纏いになるのはわかっていたけど、城でじっと待ってるなんてどうしても出来なかった。
 でも、これは私の我儘だ。謝るべき所だろう。
 陛下は私に口づけをする。陛下の舌は私の口腔内を犯していく。いつもよりもずっと激しくて、少し乱暴なキスだ。
「んん゛っ……! んっ……」
 唇を離した陛下は私の耳元で囁く。
「抵抗しろ。階下に聞こえる様に」
 そう言うといつもよりも強く私の手首を押さえつける。そして首筋にまた舌を這わせる。
 多分、今ここで初めて会って手篭めにすると言う設定だから不自然じゃない様に嫌がれって事だと思う。

 うん、ここで初めて会ったなら、当然ね。
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