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私達は早速私の執務室に移動して親書を認めた。
その内容を宰相様に確認してもらって封蝋で封印する。
親書を受け取ろうと宰相様が手を出す。
「では、宿にご滞在のシビディアの使者殿にお渡しします。……王妃?」
なかなか渡さない私に宰相様が不思議そうに私を見た。
私は宰相様を上目遣いで見つめる。
「あのですね……?この親書、私が届けちゃダメですか?」
「は?」
宰相様は私の言葉に目を瞬かせた。
「……シビディアの使者の方がどの様な方なのか見ておきたいと言いますか……、知っておくと主の為人も見えてくると言いますか……、」
「つまり好奇心に駆られておるのだな?」
陛下に背後から両肩を掴まれて図星を刺される。
「そ、そういう訳では……」
私は振り返って陛下を仰ぎ見る。
「良いだろう。お前がグリムヒルトの使者となれ。儂が共をしてやろう」
宰相様が溜息混じりに私達を見た。
「そういう陛下も好奇心に駆られておいでなのですね。……仕方ありません。お二人とも言い出したら聞かないでしょう? お二人に託しますのでよろしくお願いします」
お許しを頂いた私は侍女達に文官っぽい格好をさせてもらう。陛下も騎士っぽい格好をさせてもらって、私達は抜け路で城下に降りた。
「陛下?この様に原住国家から使者が来るのは初めての事ですか?」
手を繋いで抜け路を歩きながら、私は陛下に質問をした。
「いや、祖父様の代にあったらしいぞ。シビディア、オルシロンの二国から苛烈な侵攻を止める様にとな。祖父様はそれを突っぱねたばかりか、更に苛烈に地の民への暴虐を激化させた様だが」
私は陛下の言葉にふうと溜息を吐いた。
「アウグスト様は天邪鬼でもいらっしゃるのですね……。本当に困った方です……」
陛下は笑い含みに言う。
「祖父様が生きておらんで良かった。生きておったらお前はお気に入りになって虐め抜かれておっただろうからな」
「どうしてですか?」
横を歩く陛下を見上げて疑問をぶつける。
陛下はしばらく私を黙って見つめると繋いだ手を持ち上げて私の指にキスをした。
「……記録から想像した事だ。あくまで妄想だがあながち外れてもおらんだろう。恐らく祖父様が本当に欲しかったのは、当時のマグダラスの巫女だ」
「……巫女を? どうしてですか?」
「侵攻を進める前にな、一度当時のマグダラスの巫女の側から、使者が送られておる」
「それは記録に残っていますね。マグダラスの資料にもあります」
「それからだ。祖父様が侵攻に本腰を入れ、血眼になったのは。火が付いたのだろう。それこそ使者を見て主の為人に興味を持った……と儂は読んでおる」
「……だとしたら、使者を送ってしまったのはマグダラス側の大失政ですね……。その為にどれほどの血が流れたか……。当時の巫女はきっととても胸を痛めた事だと思います」
陛下は自嘲する様に嗤う。
「それも含めて祖父様を悦ばせておっただろうな。わからんでもない」
私はつい悲しげに陛下を見つめてしまう。
そんな私を見つめ返した陛下は更に嗤いながら私の視線に応えた。
「そういう顔を自分がさせたのだという事実が嬉しくて堪らんのだ」
「……陛下よりもずっとずっと意地悪で天邪鬼な方だったんですね……」
「それを祖父様の前で発言すると間違いなくお前はお気に入りになっただろうな」
「えぇ?! 何故ですか?!」
「お前はまるで祖父様を困った子供の様に言う。儂に対してもそうだろう?爺にもそうであったな。儂らの様に恐れられる者をまるで赤子の様に扱う。どうにも王家の男はそういう女に惹かれるのだろう」
私は目を丸くする。
だって私にとっては陛下は困った所はおありだけどとびきり優しい人だし、太公様だって本当に優しくして下さった。娘の様に可愛がってくれたし。
アウグスト様は残酷な事をなさる方で、そこだけはどうしても容認出来ないけれど、困った方だなという印象だ。
皆んな厳しい面をお持ちなのは為政者として当たり前の事で、そこに恐れていては臣下として対峙なんて出来ない。
それよりも心の奥底にある想いを受け止めたいと思ってるだけだ。
「……私、ただ、寄り添いたいって思ってるだけで……、そんな大した事をしてる訳でもないのに……」
「恐らく巫女もそういう友好を軸にした内容の親書を送ったのだろう。そして使者からも同様に悪意を一切感じなかった。祖父様はさぞかし巫女に興味が湧いた事だろうな。侵攻を進めた結果、手の届かない山奥へと篭られてしまったという所だろう。儂がお前を手に入れたのは祖父様の悲願かもしれんな。まぁそれ以来だ、使者が送られて来るのは」
私は陛下の言葉に溜息を吐いた。
「それがもし本当ならば、もう少しだけアウグスト様が素直な方ならあんな悲劇もなく友好を築けたかもしれないのに……。私がその場にいたら叱って差し上げたのに」
「そんな事をしておったら、即あの塔に閉じ込められて最も寵愛を受けただろうな。お前は決して殺されなかっただろうが」
笑いながら私の言葉にそう答えた。
「さぁ使者殿。そろそろ抜けるぞ」
抜け路を抜けて街に降り立つ。街の灯りがキラキラ輝く。
王都の夜はこれからだろう。
さて、シビディアの使者はどんな方かしら?
私は気合を入れる為両手で自分の軽く頬を叩いた。
その内容を宰相様に確認してもらって封蝋で封印する。
親書を受け取ろうと宰相様が手を出す。
「では、宿にご滞在のシビディアの使者殿にお渡しします。……王妃?」
なかなか渡さない私に宰相様が不思議そうに私を見た。
私は宰相様を上目遣いで見つめる。
「あのですね……?この親書、私が届けちゃダメですか?」
「は?」
宰相様は私の言葉に目を瞬かせた。
「……シビディアの使者の方がどの様な方なのか見ておきたいと言いますか……、知っておくと主の為人も見えてくると言いますか……、」
「つまり好奇心に駆られておるのだな?」
陛下に背後から両肩を掴まれて図星を刺される。
「そ、そういう訳では……」
私は振り返って陛下を仰ぎ見る。
「良いだろう。お前がグリムヒルトの使者となれ。儂が共をしてやろう」
宰相様が溜息混じりに私達を見た。
「そういう陛下も好奇心に駆られておいでなのですね。……仕方ありません。お二人とも言い出したら聞かないでしょう? お二人に託しますのでよろしくお願いします」
お許しを頂いた私は侍女達に文官っぽい格好をさせてもらう。陛下も騎士っぽい格好をさせてもらって、私達は抜け路で城下に降りた。
「陛下?この様に原住国家から使者が来るのは初めての事ですか?」
手を繋いで抜け路を歩きながら、私は陛下に質問をした。
「いや、祖父様の代にあったらしいぞ。シビディア、オルシロンの二国から苛烈な侵攻を止める様にとな。祖父様はそれを突っぱねたばかりか、更に苛烈に地の民への暴虐を激化させた様だが」
私は陛下の言葉にふうと溜息を吐いた。
「アウグスト様は天邪鬼でもいらっしゃるのですね……。本当に困った方です……」
陛下は笑い含みに言う。
「祖父様が生きておらんで良かった。生きておったらお前はお気に入りになって虐め抜かれておっただろうからな」
「どうしてですか?」
横を歩く陛下を見上げて疑問をぶつける。
陛下はしばらく私を黙って見つめると繋いだ手を持ち上げて私の指にキスをした。
「……記録から想像した事だ。あくまで妄想だがあながち外れてもおらんだろう。恐らく祖父様が本当に欲しかったのは、当時のマグダラスの巫女だ」
「……巫女を? どうしてですか?」
「侵攻を進める前にな、一度当時のマグダラスの巫女の側から、使者が送られておる」
「それは記録に残っていますね。マグダラスの資料にもあります」
「それからだ。祖父様が侵攻に本腰を入れ、血眼になったのは。火が付いたのだろう。それこそ使者を見て主の為人に興味を持った……と儂は読んでおる」
「……だとしたら、使者を送ってしまったのはマグダラス側の大失政ですね……。その為にどれほどの血が流れたか……。当時の巫女はきっととても胸を痛めた事だと思います」
陛下は自嘲する様に嗤う。
「それも含めて祖父様を悦ばせておっただろうな。わからんでもない」
私はつい悲しげに陛下を見つめてしまう。
そんな私を見つめ返した陛下は更に嗤いながら私の視線に応えた。
「そういう顔を自分がさせたのだという事実が嬉しくて堪らんのだ」
「……陛下よりもずっとずっと意地悪で天邪鬼な方だったんですね……」
「それを祖父様の前で発言すると間違いなくお前はお気に入りになっただろうな」
「えぇ?! 何故ですか?!」
「お前はまるで祖父様を困った子供の様に言う。儂に対してもそうだろう?爺にもそうであったな。儂らの様に恐れられる者をまるで赤子の様に扱う。どうにも王家の男はそういう女に惹かれるのだろう」
私は目を丸くする。
だって私にとっては陛下は困った所はおありだけどとびきり優しい人だし、太公様だって本当に優しくして下さった。娘の様に可愛がってくれたし。
アウグスト様は残酷な事をなさる方で、そこだけはどうしても容認出来ないけれど、困った方だなという印象だ。
皆んな厳しい面をお持ちなのは為政者として当たり前の事で、そこに恐れていては臣下として対峙なんて出来ない。
それよりも心の奥底にある想いを受け止めたいと思ってるだけだ。
「……私、ただ、寄り添いたいって思ってるだけで……、そんな大した事をしてる訳でもないのに……」
「恐らく巫女もそういう友好を軸にした内容の親書を送ったのだろう。そして使者からも同様に悪意を一切感じなかった。祖父様はさぞかし巫女に興味が湧いた事だろうな。侵攻を進めた結果、手の届かない山奥へと篭られてしまったという所だろう。儂がお前を手に入れたのは祖父様の悲願かもしれんな。まぁそれ以来だ、使者が送られて来るのは」
私は陛下の言葉に溜息を吐いた。
「それがもし本当ならば、もう少しだけアウグスト様が素直な方ならあんな悲劇もなく友好を築けたかもしれないのに……。私がその場にいたら叱って差し上げたのに」
「そんな事をしておったら、即あの塔に閉じ込められて最も寵愛を受けただろうな。お前は決して殺されなかっただろうが」
笑いながら私の言葉にそう答えた。
「さぁ使者殿。そろそろ抜けるぞ」
抜け路を抜けて街に降り立つ。街の灯りがキラキラ輝く。
王都の夜はこれからだろう。
さて、シビディアの使者はどんな方かしら?
私は気合を入れる為両手で自分の軽く頬を叩いた。
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