人質同然だったのに何故か普通の私が一目惚れされて溺愛されてしまいました

ツヅミツヅ

文字の大きさ
160 / 200

160

しおりを挟む
 王城に着くと早速王太子と神獣に特別な国賓を招く迎賓室に通すよう命じる。
 今夜はもう遅いので改めて明日、話し合うという事になった。
 皆夕餉を摂っていなかったので、王太子と神獣に食事を用意する様手配し、儂とレイティアは軽い食事を済ませた。
 その後、レイティアを二人の元に向かわせ相手をする様に命じた。
 その間に重臣達を呼び集める。
「どの様な方ですか?シビディアの王太子殿下は」
 宰相が儂に訊ねた。
「実に面白い。王太子殿は王妃と同じ種類の人間だ」
 儂はいつもの様に長椅子に座り、脚を組んで頬杖をついた。
「王妃と同じ種類の人間なんて滅多にいないと思ってたんですけど、結構いるもんですね」
 法相が楽しげに冗談めかした。
「まさか! 王妃位可愛くて素直な人間なんて、そんなポンポンいるもんじゃないでしょ?」
 外相もまたそれに応えて冗談めかす。
「どうやらその珍しい種類の人間が二人いるらしいな。王太子殿は随分と神獣に目をかけられておるらしい」
「神獣?」
 軍師が儂に顔を向ける。
「あの供が神獣だそうだ。王妃がそうであると証明した」
「あの男が……。供がたった1人だなんてエラく丸腰で疑問だったのですが……」
 宰相が組んでいた腕を解き、指先を顎に寄せた。
「シビディアの首脳陣としてはこれで充分だと知らしめる意図もあるのだろう。あの王太子殿にはそんなつもりは毛頭ないのだろうが」
 儂は頬杖をついた指をこめかみ辺りにやった。
「恐らくグリムヒルトの兵士が取り囲んでも逃げ遂せる自信があるのだろうな」
「下手に人数がいるよりも王太子たった1人を守る方が楽だという事か」
 軍師が薄く笑う。
「でも、シビディアの王太子って確か武芸の達人なんでしょ?」
 外相が宰相の方を見て訊ねた。それに宰相はコクリと頷く。
「自衛の出来る王太子にそれを守る神獣。そりゃ二人で充分だと判断するでしょうね」
 儂は外相に目をやり、問う。
「さて、シビディアの王太子殿は国交をお望みだ。お前はシビディアの何を引き出したい?」
 儂に向かって外相は妖しく笑い答える。
「圧倒的に、軍事同盟ね。シビディアの騎獣兵、魔法師団はどんな条件よりも魅力的だわ。サンドバルに万が一国土を包囲されてもシビディアの騎獣兵と魔法師団が介入してくれるならこんなに心強い事はないわ。他の何を差し置いてもこの条件は引き出すべきね」
 外相は外交も得意だがやはり根っこは軍人だ。この国の弱点もよくわかっている。
「ふむ……。しかし相手は王妃と同じ種類の人間だ。そんな人間から軍事同盟を引き出せると思うか?」
「交易と航海技術を提供するなら、引き出せる自信はあるわ。それに、シビディアはオルシロンとの睨み合いが続いてるんでしょ?」
 外相は宰相の方を振り返り、これに宰相が答える。
「ああ。最近シビディアとオルシロンに挟まれた小国郡の一角、アルフキニア王国がオルシロンに落とされたよ。アルフキニアの第一王女はシビディアの王太子の婚約者で、現在この王女はシビディアに亡命中の様です。この一件でシビディアとオルシロンは一層緊張が高まっています」
 外相は満面の笑みを浮かべ腰に手を当てる。
「なら、余計にオルシロンの海軍が動けない様に牽制する事がうちグリムヒルトには出来るってしっかり売り込むべきね。オルシロンの魔法師団、騎獣兵を抑えてくれれば絶対うちグリムヒルトは海戦では負けないもの」
 軍師が更に口を挟む。
「シビディア王国、オルシロン王国近海の海流は把握しています。オルシロンの航海技術、造船技術、海戦戦術、全てにおいて我が国には敵わないでしょう」
 儂はこめかみにやった指を再び頬に戻す。
「ふむ。一つはそれで決まりか。後は何が欲しい」
 外相が腕を組んで考え込む。
「そりゃ? シビディアは富の宝庫だもの。やっぱり交易をうちに任せて貰えればとっても美味しいわ。ただそうね、細かい価格調整が難しくなる。今の地の民から買い叩いた価格の流通との格差をどう埋めるか……。ここは困ったわね」
 法相が外相の言葉を受け取る。
「シビディアの工芸は格段に質が良い。ただ、だからと言ってうちの地の民の造る工芸品がそれに見劣りしているという訳じゃない。やはり陛下の仰る通り、ここがネックになってしまいましたね。交易は今のところ保留するのが良いのかもしれません」
「今回の法案が無事に通れば少なくともシビディアに交易を卓上に出して提起する位の事は出来るだろうな。宰相、最後まで気を抜くな? 恐らくまだ水面下ではひっくり返そうと画策しておる者達が多数おるぞ」
「御意」
 宰相が儂に軽く頭を下げる。
「この法案だけは是が非でも通さねばならん。皆此度ばかりは宰相に協力せよ。家名でも儂の名でも何でも使え。許す」
「「「「御意」」」」
 皆が儂に頭を下げて、
「明日が楽しみだ。あの王太子殿は一体何を目論んでおるのだろうな」
「王妃と同じ種類の人なんでしょ?そりゃ真っ当な事でしょ」
 外相はニコリと笑う。
「……で、あろうな。問題は、どこまでわかっておるか、という事だ」
 そう呟いた儂を皆が続きを促す様に見たが、儂はそれをあえて無視した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

贖罪の花嫁はいつわりの婚姻に溺れる

マチバリ
恋愛
 貴族令嬢エステルは姉の婚約者を誘惑したという冤罪で修道院に行くことになっていたが、突然ある男の花嫁になり子供を産めと命令されてしまう。夫となる男は稀有な魔力と尊い血統を持ちながらも辺境の屋敷で孤独に暮らす魔法使いアンデリック。  数奇な運命で結婚する事になった二人が呪いをとくように幸せになる物語。 書籍化作業にあたり本編を非公開にしました。

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

ざまぁに失敗したけど辺境伯に溺愛されています

木漏れ日
恋愛
天才魔術師セディが自分の番である『異界渡りの姫』を召喚したとき、16歳の少女奈緒はそれに巻き込まれて、壁外という身分を持たない人々が住む場所に落ちました。 少女は自分を異世界トリップに巻き込んだ『異界渡り姫』に復讐しようとして失敗。なぜかロビン辺境伯は少女も『異界渡りの姫』だと言って溺愛するのですが…… 陰陽の姫シリーズ『図書館の幽霊って私のことですか?』と連動しています。 どちらからお読み頂いても話は通じます。

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

イケメンとテンネン

流月るる
恋愛
ある事情から、イケメンと天然女子を毛嫌いする咲希。彼らを避けて生活していた、ある日のこと。ずっと思い続けてきた男友達が、天然女子と結婚することに! しかもその直後、彼氏に別れを告げられてしまった。思わぬダブルショックに落ち込む咲希。そんな彼女に、犬猿の仲である同僚の朝陽が声をかけてきた。イケメンは嫌い! と思いつつ、気晴らしのため飲みに行くと、なぜかホテルに連れ込まれてしまい――!? 天邪鬼なOLとイケメン同僚の、恋の攻防戦勃発!

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

処理中です...