旦那様に学園時代の隠し子!? 娘のためフローレンスは笑う-昔の女は引っ込んでなさい!

恋せよ恋

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隠し子?との遭遇

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 その日、カサンドラからジョシュア宛に急な知らせが届いた。

―――エリオットが飛び出して行ってしまい、まだ戻りません。近所を探しています。 キャス

 知らせを受けたジョシュアは、すぐさまカサンドラの実家――ジファール伯爵邸へ向かった。

「キャス! エリオット君はどこに?」

 慌てて駆けつけたジョシュアの顔を見るなり、カサンドラは張り詰めていたものが切れたように涙をこぼした。

「ジョシュ! エリオットが、飛び出して行ってしまったの!どこを探したらいいのか分からなくて……うっ、ううぅ……!」

「落ち着いて! まずは憲兵隊に連絡を!」
 ジョシュアはカサンドラの肩を支えながら言った。

 いくらしっかりしているとはいえ、エリオットはまだ七歳の子どもだ。
 迷子になって心細い思いをしているのではないか――そう思うと、ジョシュアの胸は不安で締めつけられた。



 その頃、エリオットは大通りのはずれを歩いていた。
 母カサンドラがジョシュア伯爵へ告げた──
「自分の父親がアデル侯爵ではないかもしれない」
という言葉が、気になってしかたなかった。

 エリオットは、これまでは周囲の大人から、「優秀だ」「さすが侯爵子息だ」「お父上のアデル殿によく似ている」と、褒められてばかりだった。

( 僕は、パパの子じゃないの?)

 七歳のエリオットには、意味はよくわからなかった。でも、大好きな父親に嫌われるかもしれないという大きな不安が湧き上がった。気付けば涙が頬を伝っていた。袖口で涙を拭いながら、嗚咽を必死に堪えて闇雲に歩いた。

 その時──聞き慣れた可愛い声が響いた。

「エリーおにいたま!」

 ローズマリーが、美しい女性に抱き抱えられ、エリオットに向かって力いっぱい手を振っていた。

 驚きと安堵がいっぺんに押し寄せ、緊張の糸がぷつりと切れた。

「うっ……うううわあぁぁんっ!」

 自分でも驚くほど大きな泣き声が漏れた。

「まあ、どうしたの? どちらのご子息かしら……見かけないお顔ね」
 フローレンスはエリオットの前にしゃがみ込み、安心させるように優しく頭を撫でた。

「ローズマリー、この子を知っているの?」

「うん!」

 得意げに答える娘が可愛くて、フローレンスは思わず微笑んだ。
 ローズマリーが知っているということは、きっと上級貴族の子息なのだろう。

「お名前を教えてくれる?」

「うっ……ううぅ。エリ……うっ。」

「そう、......エリ君ね」

「ひとりなの? 誰かお家の方と一緒じゃないのかしら?」

「うっ……ひ、とり……」

「そう……。お家は分かる?」

「うっ……ううぅ。わからなくなって……」

「家名を教えてくれる?」

「うっ……はい。ジファール……伯爵家です……」

 その家名を聞いた瞬間、フローレンスははっとして少年を見つめた。

 この子が......ローズマリーの言う“エリーお兄様”なのね。

(誰かに似ている……。誰かしら……)
 胸の奥に小さなざわめきが生まれた。

「まずは一度、うちに帰りましょう。お夕飯を食べて、落ち着きましょうね」
 フローレンスは侍女に声をかけ、ローズマリーとエリオットを連れて家路を急いだ。



 ハワード伯爵家へ帰り着いたフローレンスは、取り急ぎジファール伯爵家へ知らせを送った。

 それから、エリオットの迎えが来るまでの間、ローズマリーとともに食卓を囲んでいると、玄関先が急に騒がしくなった。

「エリオット君! どうして、ここに!?」
 ジョシュアが慌てた様子で食堂へ駆け込んでくる。

「あら、ジョシュ。そんなに慌てて、どうなさったの?」
 フローレンスが声をかけると、ジョシュアはハッとしたように我に返り、驚愕の表情を浮かべて動揺した。

「あっ!? いや、その、これは――!」

 あまりの取り乱しぶりに、フローレンスは怪訝に眉を寄せた。

 そのとき、ジョシュアの後ろから、美しい女性が姿を現した。

「エリオット! ああ、良かったわ! 探したのよ!」
 女性は涙ながらにエリオットの名を呼び、強く抱きしめる。

「うわぁぁん……お母様!怖かったよぉ」
 エリオットも泣きながら、その女性にしがみつき、安堵の声をあげた。

 フローレンスは、目の前の親子を見つめるうちに、妙な既視感を覚えた。

 この女性を……どこで見たのか。
 エリオットは……誰に似ているのか。

 そして思い当たった瞬間、フローレンスの表情は青ざめた。

「あなたは……カサンドラ様?」

 口をついた言葉は、その女性の耳にも届いたらしい。
 彼女はハッとした表情でフローレンスを見た。

「あっ……失礼いたしました。ご無沙汰しております、フローレンス様」

 その丁寧な挨拶を、フローレンスは呆然と聞き、
 そしてあらためてエリオットを見つめた――似ている。

(そうか……わたしが大好きだった、七歳の頃のジョシュに似ているんだわ)

 その事実に気づいた瞬間、フローレンスは残酷な現実に喉が詰まり、声が出なかった。

 ジョシュアもまた、そんなフローレンスに何も言えず、ただ立ち尽くしていた。

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