無自覚人たらしマシュマロ令嬢、王宮で崇拝される ――見た目はぽっちゃり、中身は只者じゃない !

恋せよ恋

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マシュマロ令嬢の置き土産

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 ステファニーがオラニエ侯爵家へ帰る日。王宮の正門前は、ちょっとした暴動のような騒ぎになっていた。

「行かないでくださいステファニー様ー! 誰が明日から私たちの心(とお腹)を満たしてくれるのですか!」
「お口にクリームがついたまま微笑むあの尊いお姿を見られないなんて、絶望です!」

 泣き叫びながら馬車に縋り付く侍女たち、跪いて号泣する近衛騎士たち、そして特製ケーキのレシピを握りしめて咽び泣く料理人ディーン。

 エメリーとエリオが必死に彼らを引き剥がしている横で、ステファニーは「あらあら、また遊びに来ますわ」と、優雅におからクッキーを配り歩いている。

 そんな喧騒を離れ、ステファニーは最後に、王族三人を呼び出していた。
 国王、王妃エマニュエル、そして王弟コンスタンティン。

 国の最高権力者たちを前に、12歳の少女は腰に手を当て(ようとしたが、ふかふかのお腹で手が止まり)、凛として言い放った。

「皆様! わたくし、最後に言わせていただきますわ。……隠し事は、心にカビを生やす原因ですのよ!」
 ビクリと肩を揺らす三人の大人たち。

「陛下! 王弟殿下を守るために、第二王子を『自分の子』と偽って側妃様を囲うなんて、あまりに回りくどすぎますわ! 側妃様と王妃様があんなに仲睦まじくお茶を楽しんでいるのに、周囲が『ドロドロの世継ぎ争い』だと勘違いして、悪いオーラを撒き散らしていたんですのよ!」

 そう、ステファニーの彩光の目は見抜いていた。

 第二王子は、かつて伯爵らの魔の手から逃れるために陛下が預かった、王弟コンスタンティンの実子。王妃と側妃は、実は協力して子供たちを守っていた「最強の親友同士」だったのだ。

「国民の皆様には、真実を公表なさいませ。『陛下は義理堅く、王弟は子煩悩で、王妃様と側妃様はマブダチです』と! そうすれば、嫉妬や憶測という名の『苦いスパイス』は消えてなくなりますわ!」

「……マ、マブダチ……」
 国王陛下は、少女のあまりの正論(と新語)に圧倒され、深く頷いた。

「……分かった、ステファニー嬢。君の言う通りにしよう。……それと、説教の後にそんなに美味しそうにアップルパイを食べられると、何だかすべてが些細なことに思えてくるな」

「当然ですわ! 美味しいものは、世界を平和にしますの!」

 数日後、国民への布告ーー

 王宮から出された公式発表は、国中を驚かせ、そして温かな涙で包んだ。

「第二王子は王弟の子であり、陛下は友愛のために彼らを家族として迎えていた」という真実は、伯爵が作り上げた「王家の闇」という幻想を根底から覆した。

 国民は、王妃と側妃が仲良く並んで市場で菓子を買う姿を目撃し、「なんと平和な王家か」と拍手喝采を送った。

 陰謀も、嘘も、悲しい色も、すべては彼女の「ふかふか」な光と、甘いお菓子の香りに溶けて消えていった。
 これにて、王宮大掃除、一件落着。

 ロンデール伯爵の失脚から数週間。王宮は劇的な変化を遂げていた。

 第一王子アルバートは、ステファニー直伝の「幸せに食べる秘訣」を学び、卑屈さを脱ぎ捨てて、鍛錬にも積極的に励む堂々としたスリムな美少年に成長。

 王弟コンスタンティンも公務に復帰し、王宮はかつてない活気に包まれていた。


 そして現在、舞台は再びオラニエ侯爵邸へと戻る。

「マシュマロちゃん、おかえり! よくぞ、よくぞ無事で……! ほら、王宮の質素な食事(勘違い)で痩せてしまった君のために、世界中のバターを買い占めておいたよ!」

 父ローレンツが涙を流してステファニーを抱きしめ、母イザベルは優雅に、しかし手際よく焼きたてのスコーンを積み上げている。

 庭のテラスには、信じられない光景が広がっていた。

 そこには、王宮から休暇をとって遊びに来たアルバート王子、そして――。

「ほっほっほ! まさかこのわしが、塔を降りてまでパイを食べに来るとはのう」
 伝説の賢者アストラルが、虹色のオーラをキラキラと煌めかせながら、特等席に座っていたのだ。

「アストラル様、そんなにオーラを光らせたら、アップルパイが見えなくなってしまいますわ」
 ステファニーはくすくす笑いながら、焼きたての大きなアップルパイを切り分ける。

「いやはや、お嬢さん。おまえさんの『彩光』がこの国の濁りを洗ったおかげで、世界の色が鮮やかすぎて困るわい。このパイの色も、実に見事な『黄金色』じゃ」

 サクッ、と良い音がテラスに響く。蜜の滴るリンゴと、バターたっぷりの生地。それを頬張るステファニー、アルバート王子、賢者アストラル、そして兄サイラスと両親。

 今や、メラニーが仕立てる「ステメラニー」のドレスは、王都中の令嬢たちの憧れの的となっていた。「無理に痩せる必要はない、自分らしく輝く姿が一番美しい」というステファニーの在り方が、流行という名の概念を塗り替えたのだ。

「ステファニー。……君に会えて、本当によかった」
 アルバート王子が、口の端にソースをつけながら、少し照れくさそうに笑う。

「あら、殿下。それはパイが美味しかったからかしら?」

「……それもある。けれど……、僕が僕でいいんだと教えてくれたのは、君のその、マシュマロみたいな笑顔だ」

 ステファニーは、アメジストの瞳を細めて微笑んだ。彼女の目に見える世界は、今、どこまでも澄み渡っている。

 悪意の黒は消え、人々の心は、美味しいものを分かち合う喜びで、暖かなパステルカラーに染まっていた。

「わたくし、決めましたわ。これからも、美味しいものをたくさん食べて、世界中の『苦い色』を、甘い色に変えて見せますわ!」

 そう言って、ステファニーは最後の一切れを口に放り込んだ。

 彼女が笑うたび、虹色の光が波紋のように広がり、周囲の人々を、そして読者の心までもを、温かく「ふかふか」に包み込んでいく。

 ぽっちゃり令嬢の彩光の目は、今日もまた、最高に美味しい幸せを見つけ出すのであった。

 ハッピーエンド
___________
ステファニーへ、エール📣いいね❤️お気に入り⭐️応援よろしくお願いします🙇‍♀️
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