悲報!地味系令嬢、学園一のモテ男に「嘘の告白」をされる。

恋せよ恋

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愛よりもサインを

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 学園の開放的なテラス。サブリナは一人、一番安い茶葉で淹れた紅茶を啜りながら、カモ……もとい、マーロンを待っていた。

 そこへ、取り巻きを連れた三人の男たちが現れた。

「やあ、貧乏子爵令嬢。今日も擦り切れた服がよく似合っているじゃないか」
 リーダー格のローガン・キッドマン伯爵令息が、下卑た笑みを浮かべてサブリナを見下ろした。

 ジェイミーとヘンリーも、後ろでクスクスと笑っている。

「マーロンも物好きだよな。君のような『石ころ』を、罰ゲームとはいえ恋人にするなんて」

「……罰ゲーム、ですの?」
 サブリナはわざとらしく、悲しげに瞳を伏せた。

(知ってるわよ、そんなこと。でもわざわざ教えに来てくれるなんて、なんて親切な『情報源』かしら)

「そうさ。君が泣いて縋る姿を見て、僕らで笑い飛ばす予定なんだ。身の程を知れよ、エアハート嬢」
 ローガンが勝ち誇ったように身を乗り出した、その時。
 
 サブリナはティーカップを静かに置き、眼鏡を指先でクイッと押し上げた。

「あら、そうですの。……ところでローガン様」
 サブリナの声から、先ほどまでの怯えが消えていた。

 代わりに、商談で数多の悪徳商人を震え上がらせてきた、低く冷徹な響きが混じる。

「お宅のキッドマン商会、先月、東部の税関で『荷物の中身が申告と違う』と差し押さえを食らいましたわね? 確か、密輸の疑いで騎士団が動き始めているとか……。今、私がこの場で声を上げれば、お宅の株価はどうなるかしら?」

「なっ……!? なぜそれを……っ」
 ローガンの顔から血の気が引く。
 それは、伯爵家が必死に隠蔽している最重要機密だった。

「ジェイミー様も。お父様が愛人に買い与えた屋敷、実は我が商会の抵当に入っておりますの。……明日にでも、差し押さえの執行を早めましょうか?」

「ヘンリー様。貴方の卒業論文、代筆させた業者の領収書が私の手元にございますわ」

「ひっ……!」
 三人の令息たちは、目の前の「地味な女」から放たれる圧倒的なプレッシャーに、言葉を失った。

「……何か仰りたいことが? なければ、マーロン様がいらっしゃる前に消えてくださる? 営業妨害(デートの邪魔)ですわ」
 サブリナが極上の(暗黒の)微笑みを浮かべると、三人は脱兎のごとく逃げ出した。

「ふう。ゴミ掃除完了ね」
 サブリナが再び大人しい令嬢の顔に戻り、冷めた紅茶を飲もうとした時——。

「……素晴らしいな。君のその『声』、もっと聞かせてくれないか?」
 柱の影から、マーロンが拍手をしながら現れた。
 その瞳は、獲物を見つけた猛獣のように、ぎらぎらとした愉悦に満ちています。

「マーロン様……いつから、そこに?」
(しまった、完全に地が出たわ!)

「最初からだよ。……サブリナ、君は本当に『退屈』を殺してくれる」
 マーロンはサブリナの目の前に膝をつき、その冷えた手を強引に取って、熱い口づけを落とした。

「嘘の告白だったはずだが……予定変更だ。君を、誰にも渡したくなくなった」
 サブリナの計算機が、激しく火花を散らす。

(ちょっ、ちょっと待って! 契約書にサインさせる前に、攻略対象の情緒が壊れるのは計算外よ!!)

「……離してくださいませ、マーロン様。皆さまが見ておりますわ」
 サブリナは引きつった笑顔で、執拗に指先に口づけを落とすマーロンを引き剥がそうとした。

 先ほど、彼の友人たちを鮮やかに脅し上げた「毒舌」を聞かれたのだ。普通なら引くところが、マーロンの瞳に宿っているのは恐怖ではなく、ゾッとするほどの「独占欲」だった。

「皆に見られて何か不都合でも? 僕たちは恋人だろう」
「……『嘘の』、ではございませんでしたの?」

「ああ、さっきまでの僕は愚かだった。君という稀代の宝石を、ただの石ころだと思っていたのだから」
 マーロンの声は甘く、けれど逃げ道を塞ぐような重圧が漂っていた。
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