呪われ竜騎士とヤンデレ魔法使いの打算

てんつぶ

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第十話 呪いと精 ※②

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 その瞬間、なぜかラーゴの纏う雰囲気が硬質なものへと変わる。
 スウッと細められた瞳が、冷酷な色を感じさせた。
「ねえリウ。もっと僕が呪いを吸い取れたら、リウは長い時間自由に動けると思いませんか?」
「そりゃあ……そうだな。もし可能なら、ありがたいな。仕事だって一人で行けるだろうし」
 今のリウは日に四回、痛みを回避するためにラーゴの口づけを必要としている。
 これでも最初の方に比べれば、随分回数が減った。
 それは痛みの出る頻度が把握されたこともあるし、リウ自身があまり動き回らないことにも起因している。
 運動量と呪いによる痛みは連動していると仮定されているため、屋敷で大人しくしている分には四回でも十分だ。
 しかし竜騎士団に復帰となれば、もちろん訓練が必要となり頻回にラーゴの口づけが必要となる。
 復帰の話になった時点でラーゴは頻回に竜騎士団を訪れることを受け入れており、リウも心苦しくなりながらもそれに頼しかなかった。
 だがもしも今よりも口づけの間隔を空けることができるのなら、ラーゴの負担を減らせるかもしれない。
 そう思い、リウはラーゴの提案に深く頷く。
 だが紫の瞳はそんなリウを見つめながら、人知れず鬱屈とした暗さを増していた。
「やっぱり、僕から離れたいんですね」
 小さく小さく呟いたラーゴの声は、幸か不幸かリウの耳には入らない。
 肩に乗ったラーゴの手のひらが重みを増し、リウは知らず俯いていた顔を上げた。
 いつも通りの笑顔を浮かべているはずのラーゴがなぜか泣きそうに見えて、リウは吸い寄せられるように思わず手を伸ばす。
 その手を掴まれ、珍しく力任せにリウの腕を引いた。
「では早速、試してみてもいいですか?」
「え……わっ!」
 一瞬で身体を抱き抱えられ、そのまま寝台の上にポイと放り投げられた。魔法を使うラーゴにとってリウの体重などたいしたことはないのだろう。
 それでもラーゴらしからぬ行動は、些か気になった。
「ラーゴ?」
 寝台から身を起こそうとするリウの手のひらが、見えない何かによってシーツに縫い止められる。
 魔法だ。
 拳に力を入れて振りほどこうにも、ピクリともしない。
 リウとて竜騎士として、人並み以上には鍛えているにも関わらず、だ。
「おい……っ、ラーゴ!」
 腹筋を使って勢いを付けて起き上がろうとしても、腕は全く動かなかった。
 ラーゴを見れば、その紫の瞳は重苦しい闇に染まっているかのようにジットリとしている。得体のしれない不安がリウの胸を駆け巡る。  
「唾液は体液です。竜の呪い――魔力を引き受けるためには体液を介します。ですがもっと効率的に体液を回収できるんですよ」
 ラーゴの腕がリウの足元に乗り、その体重を受けて寝台がギシリと音を立てた。
 普段共寝をしているときとは違う、奇妙な緊迫感が漂う。
「ねえリウ。僕の手助けなんて最小限にしたいんですよね?」
「……ああ」
 忙しい仕事の合間を縫って、日に何度もリウのために時間を割かせてしまっている。
 ずっと心苦しく思っていたそれの回数が減るのなら、それはラーゴにとってはいいことだろう。
 だから頷いたというのに、何故かラーゴの顔は苦しげに歪んだ。
 しかしそれは一瞬で、すぐにラーゴはいつもの笑みを浮かべる。
 彼の長い指がリウのズボン、そのやわらかい膨らみに触れた。
「ではここから痛みの元となる魔力を吸い出しましょうね。唾液よりも継続します」 
「な……」
 一瞬意味を理解できず、だがすぐにリウの顔は真っ赤になった。
 つまりラーゴの口に出せ、ということだ。
 混乱するリウの腰はあっさりと持ち上げられ、ズボンと下着を一気に剥ぎ取られた。
「ちょっ、待てって……!」
 嫌悪ではなく恥ずかしさから無意識に抵抗するリウは、動かない腕の代わりに足元にいるラーゴに蹴りかかる。
 いかんせんリウがラーゴへの恋心を自覚したのは、まだつい先日の話だ。
 恋愛経験こそややあるリウだが、これが人生初の恋である。まるで生娘のような反応は二十八歳にもなってと笑われそうではあるが、こればかりは仕方がない。
 蹴りかかるリウの脚を易々と押さえ込むラーゴは、貼り付けた笑顔のままだ。
 なんとか膝頭を合わせて股間を隠すものの、魔法を使われたのか脚は一向に動かない。
「やっぱり、嫌なんですね」
「そりゃ、嫌だろ……」
 片思いの相手から、いきなり口淫を施されようとしたのだ。
 どうでもよくない相手だからこそ、抵抗もする。
 だから素直に嫌だと口にしたのだ。
 ただリウは、自身の戸惑いと恥じらいという混乱の中にある。普段のリウであればどこか暗鬱としているラーゴの、些細な異変に気付いただろう。
「でも、竜騎士団には戻りたいんですよね。できるだけ僕の手を借りず、一人で」
「ああ」
 それは間違いない。
 ラーゴの手を煩わせることなく復帰できれば、それが一番いいことだ。
 だがそれの代償としてラーゴからの口淫が待っているのであれば話は別だ。自分の利益のためだけに、さすがにそんなことをさせるわけにはいかない。
 いくらラーゴがリウに対して多少の好意はあろうとも、そんなことを引き受けさせてはならないとリウは考える。
 とはいえだからといって代わりの案もないリウだ。
「他の手段はないのだろうか」
 頼ってばかりで申し訳ないと、リウはそう問いかける。
 するとラーゴはニッコリと華やかな笑みを浮かべた。
 しかしそこで初めてリウは、ラーゴの纏う空気の異質さに気がつく。
「ある、と言ったら? 貴方は僕が触れることを拒むんでしょう?」
 そう告げるや否や、合わせていた膝頭をあっさりと左右に開かれた。
 ラーゴの美しい顔がそこに沈む。
 空気に晒された鼠径部に、さらりとした黒髪が触れる。
「おいっ、ラーゴ……っン」
 まだ柔らかいリウのそれを、ラーゴは躊躇なく口の中へと一気に吸い込んだ。
 芯のないそれが、熱い口腔内で嬲られる。
「やめ、うっ、くあ……」
 反応すまいと念じようとも思い人からの奉仕はあまりに刺激的だ。あっという間にラーゴの口の中で硬さを増す。
 質量の増えたそれからラーゴは口を離す。
 口端から溢れる唾液は、赤い舌と相まってあまりに淫靡だ。
 ラーゴはうっとりとした表情で、リウの陰茎に頬を寄せる。
「僕でも反応してくれたんですね」
 むしろラーゴだからこそ反応するのだが。
 リウは内心そう思ったが、それを口にすることは憚られた。そう告げることでまるで続きをしろと強請っているような気がしたからである。
 実際リウの心とは裏腹に、腰は勝手につぎの刺激を求めて揺れた。
「嬉しいです。まだそこまで嫌われてない」
 嫌うわけない。どうしてそんな考えになるんだ。そう言おうとして、リウはグッと奥歯を噛みしめた。
 平たくしたラーゴの舌がベロリと亀頭を舐めたのだ。堪えなければ口からおかしな声が上がりそうだった。
 腰から頭にかけて、リウの背中に雷が走る。
「ひ、っう」
「可愛い……リウ、可愛い。今だけは、僕だけの」
 言うやいなや、ラーゴは唇や舌を使っていきり立つそれを愛撫する。
 指先で小さな穴をクルクルと撫で回し、反対の手で根元を上下に擦った。
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