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第十二話 竜騎士と魔法使い④
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第二王子の襲撃後、さすがに暫くの間はリウとラーゴの身辺は目に見えて慌ただしくなった。
反竜派で知られる第二王子が引き起こした事件により、王妃による国家簒奪の目論みが明らかになったのだ。結局第二王子は廃嫡の上、王妃共々遥か辺境の地へ流刑に処された。
ラーゴは甘い処分だと不満そうだったが、城で贅沢な暮らしをしていた王族には厳しい処分だろうとリウは思う。
芋ずる式にラーゴの実母である側妃殺害事件も公にされかけたが、どちらの事件も国家の根底を揺るがしかねないと緘口令を敷かれている。
ただし、幼い頃に命の危機を感じた第一王子であるラウィゴ・セデンス第一王子が、認定魔法使いであるラーゴ・ラディーンであった事実は一般に公開されることとなった。
「孤児院に避難させられた当時は怒りや悲しみでリウを困らせてばかりいましたが、こうやって愛し合えるようになったのですから僕は幸せです」
ラーゴはそう言って、上機嫌でリウの首筋に唇を落とす。
湯上りの肌はしっとりとしていて、何も纏わないお互いの身体から直接体温が伝わってくる。
真っ暗な部屋の中では、フクロウの鳴き声だけが遠く響く。
「そうか」
ラーゴの背中を、リウが抱きしめる。その指先にはまだ竜の呪いが色濃く残ったままだ。
リウは自分の指をじっと見つめ、それからふとあることに気が付いて身を起こす。
どうして気付かなかったのか。
この仮定がただしければ、ひょっとしたら呪いをなくすことができるかもしれない。
「なあラーゴ、思いついたんだが――あ?」
浮足立ちつつラーゴへ顔を向けたリウは、そのまま再び寝台へとひっくり返される。
「その話は、積年の想いを通じ合わせて今すぐにでもあなたを抱きたい欲求よりも優先されるものですか?」
見上げるリウの視線の先には、拗ねた顔をする男の顔があった。
そんなものよりは優先すべき話だと思うものの、だがずっと堪えて待っててくれたラーゴの気持ちを蔑ろにはできない。
リウは苦笑しつつラーゴの首に腕を回した。
「お手柔らかに頼む」
「ええ、ええ。この世の天国を約束します!」
気合十分のラーゴを微笑ましく見つめていると、唇を緩く食まれた。
それが角度を変えて次第に深い口づけへと代わり、舌を吸われれば次第に呼吸が乱れていく。
「好きです、愛しています、僕だけのリウ」
「俺も……好きだぞ」
いくらでも重なる言葉と想いを乗せて、リウは若い男の情熱を受け止めた。
抱きつぶされた翌朝は天国どころか地獄を見たと思ったものだが、またそれは別の話だ。
◆ ◆ ◆
昼過ぎになり、ようやくリウが起き上がれるようになると、ラーゴと共に竜舎へと向かった。城の敷地内では何人かの竜騎士とすれ違うものの、リウの隣に立つのが認定魔法使いで第一王子だと気づくと皆、騎士の礼を取る。
結局誰とも話すことなく竜舎へとたどり着いた。
「それでリウ、画期的な考えというのはどんなものです?」
相棒であるガジャラを前に、リウは自分のシャツの袖を捲った。
呪いのせいで、指先から肘にかけてくっきりと赤黒い染みが広がっている。
リウは少し気まずい顔をして、ラーゴに向き直る。
「呪いによる痛みはラーゴが浄化してくれてると思っていたが、体内に引き受けているんだろう。痛みで食べ物もろくに喉を通らなかったんだと、ゴッドランド宰相が教えてくれた」
「あのタヌキ爺……」
「怒らないでやってくれ。俺が聞き出したようなものなんだ。だからお前は俺に食事を用意しても、自分では食べなかったんだな。気づけなかった自分が恥ずかしい」
リウが肩を落とすと、ラーゴは目に見えて狼狽えた。
「すみません、リウのせいではないんですよ。痛みは魔法で多少散らせますし、貴方が痛みに呻く姿を見ることの方がつらかったんです」
「ん。分かってる。ラーゴはいつだって俺のために動いてくれている。だけどこの呪いはずっとある。俺だって、俺のせいでラーゴが苦しむのは嫌なんだ」
「リウ……」
知らなかったとはいえ、リウがラーゴに負担を強いていた。
それを知らされた時はさすがにリウも落ち込んだ。だが落ち込むだけならだれでもできる。だから素人考えだろうと、どうすれば呪いによる痛みから解放されるのかと、リウはここ最近、ずっと考えてきたのだ。
「それで、考えたんだ。ラーゴは魔石を作れる。それなら竜の魔力だという呪いそのものを、魔石に作り替えることはできないのか?」
「……なるほど。竜の魔力を分解せずそのまま変換。それならできるかもしれません」
「できるか? もしも、もしもそれができるなら……俺は二度と竜に乗れなくても、こいつらのために魔石を差し出すことができる」
魔石は竜の好物だ。
なにもできない身体になっても、せめて魔石を与えることくらいできるなら。
リウは真剣だった。
「まったく……リウはどこまでも竜バカなんですね。嫉妬しそうです」
「竜相手にか。馬鹿だな、一番はお前だよ」
クスクスとじゃれあう二人の間に漂う空気は、酷く甘い。
「リウ、キスをしてください」
乞われるがままに唇を合わせると、リウの身体からスウッと何かが通り抜けていくのが分かった。
痛みが起きていない今、移動した呪いと呼ばれる竜の魔力はわずかなものだったはずだ。
だが見れば、リウの指先から腕へと広がる痣が消えている。
「えっ?」
痣が消え、元の肌色しかないリウの腕をラーゴはしげしげと眺める。
「なるほど……この痣自体が、竜の魔力が影響していたということですか。確かに痛みのない時に、魔力を吸い出そうとしたことがなかった……もっと早く気づいていれば……いえ、今は先に魔石を作りますね」
ラーゴはリウから一歩後ろに下がると、目を閉じたまま自らの臍の辺りに手を置き力を籠める。ラーゴの周辺にふわっと柔らかな光が満ちる。
光が収まると、ラーゴが差し出す手の中には小さな石があった。
「へえ、これが魔石……」
「作ってみると、思っていた以上に負担が少ないですね。やはり竜が元々魔物だからでしょうか、魔石へ作り替える手間が殆どかからない」
ラーゴはラーゴで魔法使いとして、竜の呪いを魔石にできたことへの興奮があるようだ。
細かい作り方やラーゴの手間についてはリウは分からないままだが、感触としては悪くないように思えた。
「これなら、ラーゴが引き受ける痛みが後を引かないんじゃないか? すまない、俺自身がどうにかできたら一番いいんだが」
「気にしないでください。と言ってもリウは気にするんでしょうが、リウが与えてくれるものであれば痛みであれ嬉しいですよ」
どこまでが本気なのか冗談なのか。
だがこんなラーゴの態度に救われてきたのも事実だ。
「それでこの魔石だが、竜に食べさせてみても安全だろうか」
「ええもちろん。僕達人間には竜の魔力は毒ですが、同じ竜にはむしろいい効果を生むかもしれません」
魔物の魔力は人間の身には毒となる。
それは竜の呪いとして引き受けていたリウも、実感を伴って理解できた。
リウは手のひらに小さな魔石を置き、ずっとこちらを伺っていた竜・ガジャラの口元へと運んだ。ガジャラは大きな鼻をクンクンと動かす。それからすぐに、舌でべろりと魔石を体内へと取り込んだ。
ゴクンと嚥下する音が竜舎に響くようだ。
「……大丈夫、か?」
「ギュウウウ! ギュア、ギュア!」
恐る恐る様子を窺うリウとは裏腹に、ガジャラは久しぶりに上機嫌な声が聞こえた。
どうやら口に合ったらしい。
リウはホッと安堵の息を吐いた。
「大丈夫そうだ。よかった、これならラーゴの負担も軽い……な?」
話の途中で、リウの頬がベロリと舐められる。
大きな舌はもちろんラーゴのものではない。
ガジャラが魔石をもっとくれと、催促しているのだ。
しかし竜の呪いに侵されたリウは、竜に触れるだけでお互いに鋭い痛みを伴う。
リウは慌てた。
「な……っ、ガジャラ大丈夫か? 痛みは、いや、俺にもない……ということは」
「ギュアア! ギュアッ!」
ベロン、ベロンとガジャラがリウの頬を舐める。
リウがガジャラの口元に恐る恐る手を伸ばす。震える指でそっとガジャラの硬い鱗に触れるが、痛みは全く襲ってこない。
「なんで、だ?」
「これはまだ推論ですが……リウの体内にあった竜の呪い、すなわち竜の魔力ですが、それを魔石に変えてガジャラが取り込んだ。それにより同じ魔力を持つ者として、以前あった反作用をさらに打ち消すことができたのではないでしょうか」
「つまり……」
「この魔石があれば、呪いを伴ったままでも竜に触れられるということです」
その言葉に、リウは跳ねるようにしてガジャラの首を抱きしめた。
「ガジャラ!」
「ギャウウ!」
嬉しそうなリウに呼応するように、ガジャラもリウへ顔を摺り寄せる。
触れることすらままならなかっただけに喜びはひとしおだ。
「まったく、僕より竜ですか。嫉妬しますよ」
やれやれといった顔のラーゴだが、その光景を見つめる瞳は優しい。
「す、すまない。そういうつもりじゃ」
「冗談です。リウが嬉しそうなら、僕も嬉しいですからね」
ラーゴは喜びがあふれるあまり、思わずリウに飛びついた。
竜騎士であるリウの身体を難なく受け止め、ラーゴは愛おしそうに抱きしめる。
「今度は、是非僕も竜に乗せてくれますか?」
「ああ、もちろんだ」
「ギャウウ!」
打算で始まったと思っていたラーゴとの関係が、まさかこんな形で落ち着くとは。
竜舎には賑やかな声が響き続けていた。
終
反竜派で知られる第二王子が引き起こした事件により、王妃による国家簒奪の目論みが明らかになったのだ。結局第二王子は廃嫡の上、王妃共々遥か辺境の地へ流刑に処された。
ラーゴは甘い処分だと不満そうだったが、城で贅沢な暮らしをしていた王族には厳しい処分だろうとリウは思う。
芋ずる式にラーゴの実母である側妃殺害事件も公にされかけたが、どちらの事件も国家の根底を揺るがしかねないと緘口令を敷かれている。
ただし、幼い頃に命の危機を感じた第一王子であるラウィゴ・セデンス第一王子が、認定魔法使いであるラーゴ・ラディーンであった事実は一般に公開されることとなった。
「孤児院に避難させられた当時は怒りや悲しみでリウを困らせてばかりいましたが、こうやって愛し合えるようになったのですから僕は幸せです」
ラーゴはそう言って、上機嫌でリウの首筋に唇を落とす。
湯上りの肌はしっとりとしていて、何も纏わないお互いの身体から直接体温が伝わってくる。
真っ暗な部屋の中では、フクロウの鳴き声だけが遠く響く。
「そうか」
ラーゴの背中を、リウが抱きしめる。その指先にはまだ竜の呪いが色濃く残ったままだ。
リウは自分の指をじっと見つめ、それからふとあることに気が付いて身を起こす。
どうして気付かなかったのか。
この仮定がただしければ、ひょっとしたら呪いをなくすことができるかもしれない。
「なあラーゴ、思いついたんだが――あ?」
浮足立ちつつラーゴへ顔を向けたリウは、そのまま再び寝台へとひっくり返される。
「その話は、積年の想いを通じ合わせて今すぐにでもあなたを抱きたい欲求よりも優先されるものですか?」
見上げるリウの視線の先には、拗ねた顔をする男の顔があった。
そんなものよりは優先すべき話だと思うものの、だがずっと堪えて待っててくれたラーゴの気持ちを蔑ろにはできない。
リウは苦笑しつつラーゴの首に腕を回した。
「お手柔らかに頼む」
「ええ、ええ。この世の天国を約束します!」
気合十分のラーゴを微笑ましく見つめていると、唇を緩く食まれた。
それが角度を変えて次第に深い口づけへと代わり、舌を吸われれば次第に呼吸が乱れていく。
「好きです、愛しています、僕だけのリウ」
「俺も……好きだぞ」
いくらでも重なる言葉と想いを乗せて、リウは若い男の情熱を受け止めた。
抱きつぶされた翌朝は天国どころか地獄を見たと思ったものだが、またそれは別の話だ。
◆ ◆ ◆
昼過ぎになり、ようやくリウが起き上がれるようになると、ラーゴと共に竜舎へと向かった。城の敷地内では何人かの竜騎士とすれ違うものの、リウの隣に立つのが認定魔法使いで第一王子だと気づくと皆、騎士の礼を取る。
結局誰とも話すことなく竜舎へとたどり着いた。
「それでリウ、画期的な考えというのはどんなものです?」
相棒であるガジャラを前に、リウは自分のシャツの袖を捲った。
呪いのせいで、指先から肘にかけてくっきりと赤黒い染みが広がっている。
リウは少し気まずい顔をして、ラーゴに向き直る。
「呪いによる痛みはラーゴが浄化してくれてると思っていたが、体内に引き受けているんだろう。痛みで食べ物もろくに喉を通らなかったんだと、ゴッドランド宰相が教えてくれた」
「あのタヌキ爺……」
「怒らないでやってくれ。俺が聞き出したようなものなんだ。だからお前は俺に食事を用意しても、自分では食べなかったんだな。気づけなかった自分が恥ずかしい」
リウが肩を落とすと、ラーゴは目に見えて狼狽えた。
「すみません、リウのせいではないんですよ。痛みは魔法で多少散らせますし、貴方が痛みに呻く姿を見ることの方がつらかったんです」
「ん。分かってる。ラーゴはいつだって俺のために動いてくれている。だけどこの呪いはずっとある。俺だって、俺のせいでラーゴが苦しむのは嫌なんだ」
「リウ……」
知らなかったとはいえ、リウがラーゴに負担を強いていた。
それを知らされた時はさすがにリウも落ち込んだ。だが落ち込むだけならだれでもできる。だから素人考えだろうと、どうすれば呪いによる痛みから解放されるのかと、リウはここ最近、ずっと考えてきたのだ。
「それで、考えたんだ。ラーゴは魔石を作れる。それなら竜の魔力だという呪いそのものを、魔石に作り替えることはできないのか?」
「……なるほど。竜の魔力を分解せずそのまま変換。それならできるかもしれません」
「できるか? もしも、もしもそれができるなら……俺は二度と竜に乗れなくても、こいつらのために魔石を差し出すことができる」
魔石は竜の好物だ。
なにもできない身体になっても、せめて魔石を与えることくらいできるなら。
リウは真剣だった。
「まったく……リウはどこまでも竜バカなんですね。嫉妬しそうです」
「竜相手にか。馬鹿だな、一番はお前だよ」
クスクスとじゃれあう二人の間に漂う空気は、酷く甘い。
「リウ、キスをしてください」
乞われるがままに唇を合わせると、リウの身体からスウッと何かが通り抜けていくのが分かった。
痛みが起きていない今、移動した呪いと呼ばれる竜の魔力はわずかなものだったはずだ。
だが見れば、リウの指先から腕へと広がる痣が消えている。
「えっ?」
痣が消え、元の肌色しかないリウの腕をラーゴはしげしげと眺める。
「なるほど……この痣自体が、竜の魔力が影響していたということですか。確かに痛みのない時に、魔力を吸い出そうとしたことがなかった……もっと早く気づいていれば……いえ、今は先に魔石を作りますね」
ラーゴはリウから一歩後ろに下がると、目を閉じたまま自らの臍の辺りに手を置き力を籠める。ラーゴの周辺にふわっと柔らかな光が満ちる。
光が収まると、ラーゴが差し出す手の中には小さな石があった。
「へえ、これが魔石……」
「作ってみると、思っていた以上に負担が少ないですね。やはり竜が元々魔物だからでしょうか、魔石へ作り替える手間が殆どかからない」
ラーゴはラーゴで魔法使いとして、竜の呪いを魔石にできたことへの興奮があるようだ。
細かい作り方やラーゴの手間についてはリウは分からないままだが、感触としては悪くないように思えた。
「これなら、ラーゴが引き受ける痛みが後を引かないんじゃないか? すまない、俺自身がどうにかできたら一番いいんだが」
「気にしないでください。と言ってもリウは気にするんでしょうが、リウが与えてくれるものであれば痛みであれ嬉しいですよ」
どこまでが本気なのか冗談なのか。
だがこんなラーゴの態度に救われてきたのも事実だ。
「それでこの魔石だが、竜に食べさせてみても安全だろうか」
「ええもちろん。僕達人間には竜の魔力は毒ですが、同じ竜にはむしろいい効果を生むかもしれません」
魔物の魔力は人間の身には毒となる。
それは竜の呪いとして引き受けていたリウも、実感を伴って理解できた。
リウは手のひらに小さな魔石を置き、ずっとこちらを伺っていた竜・ガジャラの口元へと運んだ。ガジャラは大きな鼻をクンクンと動かす。それからすぐに、舌でべろりと魔石を体内へと取り込んだ。
ゴクンと嚥下する音が竜舎に響くようだ。
「……大丈夫、か?」
「ギュウウウ! ギュア、ギュア!」
恐る恐る様子を窺うリウとは裏腹に、ガジャラは久しぶりに上機嫌な声が聞こえた。
どうやら口に合ったらしい。
リウはホッと安堵の息を吐いた。
「大丈夫そうだ。よかった、これならラーゴの負担も軽い……な?」
話の途中で、リウの頬がベロリと舐められる。
大きな舌はもちろんラーゴのものではない。
ガジャラが魔石をもっとくれと、催促しているのだ。
しかし竜の呪いに侵されたリウは、竜に触れるだけでお互いに鋭い痛みを伴う。
リウは慌てた。
「な……っ、ガジャラ大丈夫か? 痛みは、いや、俺にもない……ということは」
「ギュアア! ギュアッ!」
ベロン、ベロンとガジャラがリウの頬を舐める。
リウがガジャラの口元に恐る恐る手を伸ばす。震える指でそっとガジャラの硬い鱗に触れるが、痛みは全く襲ってこない。
「なんで、だ?」
「これはまだ推論ですが……リウの体内にあった竜の呪い、すなわち竜の魔力ですが、それを魔石に変えてガジャラが取り込んだ。それにより同じ魔力を持つ者として、以前あった反作用をさらに打ち消すことができたのではないでしょうか」
「つまり……」
「この魔石があれば、呪いを伴ったままでも竜に触れられるということです」
その言葉に、リウは跳ねるようにしてガジャラの首を抱きしめた。
「ガジャラ!」
「ギャウウ!」
嬉しそうなリウに呼応するように、ガジャラもリウへ顔を摺り寄せる。
触れることすらままならなかっただけに喜びはひとしおだ。
「まったく、僕より竜ですか。嫉妬しますよ」
やれやれといった顔のラーゴだが、その光景を見つめる瞳は優しい。
「す、すまない。そういうつもりじゃ」
「冗談です。リウが嬉しそうなら、僕も嬉しいですからね」
ラーゴは喜びがあふれるあまり、思わずリウに飛びついた。
竜騎士であるリウの身体を難なく受け止め、ラーゴは愛おしそうに抱きしめる。
「今度は、是非僕も竜に乗せてくれますか?」
「ああ、もちろんだ」
「ギャウウ!」
打算で始まったと思っていたラーゴとの関係が、まさかこんな形で落ち着くとは。
竜舎には賑やかな声が響き続けていた。
終
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