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第3章 冒険者2~3か月目
50話 戦闘訓練開始
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「よいしょっと、これで良い?」
「はい、ちゃんと固定もされております。問題ありませんよ」
リレルの合格に、オレはホッと安堵のため息を吐く。
あの後、応急処置の基本として、患部を洗う、消毒を行う、傷口の保護や止血などといった基礎的な部分をあれこれ教わった。
で、今はその実践として実際に怪我をした想定での、傷口の保護の練習だった。
「今の行程で特に重要なのは、最初の傷口の洗浄と消毒です。ここが不十分な場合、数ヶ月して中で化膿して、患部を改めて切り開いて洗浄するなんてことになりかねません」
「ひえっ……せっかく治癒の魔術で傷口塞いでも、それじゃあ意味がない」
「そうです。だから、むやみやたらに治癒の魔術に頼るものもよろしくなのです」
魔術とは一体……なんだか、どんどん万能性が消え去っているよな。
普通、治癒の魔術で怪我したら即回復! で良いイメージがずっとあっただけに。
ただ、リレルから聞く生々しい経験談を聞くとその情景がありありと想像出来て、さっきからマジで怖い。
そういえば、最初の街のギルドで、そこの職員さんが『魔術は補助だ』って言ってたな、そういや。
「今日教えた応急処置を一通り覚えておけば、万が一があっても、大丈夫だと思います。ただ、この1回だけでは実際にその時が来たら『あれ? どうだったっけ?』になりますので、明日から毎日、こういう負傷をしたという想定をお伝えします」
「それに合わせて、応急処置をするってこと?」
「そうです。反復練習は大事ですよ」
そう言いながら、リレルはオレが巻いた包帯を外す。
いざと言う時に、条件反射とまではいかないけどすぐに「これをやればいい!」って判断出来るようになれば、確かに良いよな。
速さは正義だ、うんうん。
「それに、応急処置に関しては、案外ヒロトの所と大差がないかもしれません。覚えておけば、いざと言う時に人助けとか出来ちゃったりするかもですよ?」
人助け、かぁ……
「ちなみに現実的な数字で説明いたしますと……仮に心臓が停止した場合、4分以内に何かしらの処置を取れば生存率50%、何もしなかった場合は1分ごとに20%づつ下がります」
「1分が貴重すぎ!?」
「そうですよ。あと、声を掛けてあげる事もとても大事です、それだけで人は安心しますので」
「治癒の魔術の前にやること多すぎ……」
これ、オレが治癒の魔術取得云々に辿り着くの当面先過ぎないか?
いやまぁ、落ち着け。まずは応急処置だ、応急処置。
治癒の魔術を覚えて、適当にかけたとしても悪化する場合が大半なんだ、慌てるなオレ……!
「ヒロト、最後に1つ。大事な事をお伝えしますね」
「はい」
「どんな応急処置も、"完璧にこなさないといけない"と思わないでください。応急処置をやること自体に意味があります」
完璧じゃなくていい。やること自体に意味が……?
「どういうこと?」
「人命に関わる事ですから、可能な限り完璧にやりたいでしょう。ですが、理想や完璧さより、とにかくできることを素早くやる、というのを最優先に考えてください。たったそれだけでも、救える命があることを覚えていてください」
助けることこそが大事、か。
「分かった。最初は、うん、難しいかもだけど頑張ってみる」
「はい! ぜひ、お願いいたします」
オレのその言葉を聞いて、リレルはとても嬉しそうに微笑む。
……なんだろう、ここまで笑顔のリレルは初めてかもしれない。
そりゃ、いつも笑顔でいることが多いリレルだけど……今の笑顔は間違いなく違う、本当に嬉しそうだ。
ちょっとは、リレルから見ても成長出来てるのかな、オレ。
「さて、お話が長くなり過ぎました。ちょっと熱を入れ過ぎてお話しすぎた部分もありますし……申し訳ありません」
「いや、こっちこそありがとう。色々勉強になった……けど、魔術をオレが覚えるのは当面先だなこりゃ」
「そうですね。お伝えしても構わないのですが……それよりも覚えて欲しいことが山ほどありますので」
「分かってる。焦らないよ」
急いだって仕方ない。
最終目標でもある、元の世界に戻る為にも、確実に出来ることからやるのが一番だ。
少し背伸びして、無理やり覚えて使っても余計に状況が悪化する可能性があるならば、後回り上等だ。
「ですが……今日のお話で、ようやく最低限の知識は習得出来たと思います」
「……というと?」
「ヒロト、明日からは武器を使った訓練といきましょう」
================================
―――翌日、港町から出航して6日目の早朝。
「いっちにー、さんしーっと……うしっ! 今日の運動おしまい!」
いつものストレッチや軽い運動、最近増えたスクワットなどの筋トレなどを終え、オレは背伸びをする。
同じようにいつものトレーニングメニューを終えたサディエルたちも、タオルで汗を拭いている。
「リレル、準備いいよ!」
「はい、では始めましょうか」
そう言いながら、リレルはオレに訓練用の木剣を渡してくれる。
「おっ、もしかしてついに戦闘訓練か?」
「そうです。昨日のお話でようやく下地が出来ましたので」
サディエルの言葉に、リレルは笑顔で答える。
それを聞いて、サディエルとアルムも嬉しそうに笑う。
「そうか、ついにか。頑張れよ、ヒロト」
「なぁアルム。なんなら今から調理場借りないか? これからヒロトが頑張るんだ、何か美味しいもの作ってやろうぜ!」
「おっ、いいなそれ。よし、ヒロト! 頑張ってリレルから1本取れたらサディエル特製のデザートを進呈する」
「デザート!? マジ!?……って、リレルから1本取るって時点でムリゲー!」
どう考えても絶対無理じゃんそれー! と抗議すると、3人は同時に笑う。
「じゃあ、今日は特別に頑張ったらデザートってことで。そうだ、買い込んだ肉を使わないか? そろそろヒロトも魚に飽きてきただろうし」
サディエルの提案に、さらに期待が膨らむ。
肉! そういえば、この船に乗る前に大量に買い込んでた肉があった!
「飽きてきた! 朝、昼、晩の3食魚フルコース、そりゃ飽きが来ないようにあれこれアレンジされてたけど、さっすがに限界だった! お願いサディエル!」
「わかった、わかった。リレル、ヒロトのことよろしく。美味いもの作っておくから」
「了解しました」
じゃあどれ作る? あれがいいんじゃないかと、相談しながらサディエルとアルムは船内へと戻っていく。
さて、美味しい朝ごはんの為にも頑張らなければ!
「ふふっ、ヒロト。目的が朝ごはんに代わっちゃってる顔をされてますよ?」
「そろそろ肉食べたい!」
「目的があることは実にいいことです。さて、ヒロト。改めて問います、使いたい武器は剣でお間違いありませんね?」
そう言いながら、リレルも同じように訓練用の木剣を持つ。
「あぁ、間違いない!」
「確か、ヒロトの所では剣が大人気なんですよね。個人的には同じ槍か、アルムみたいな弓をお勧めしたいんですが……」
うん、リレルの言いたいことは分かる。
こちらも、最初の街のギルドの人から、似たようなことも言われていたわけだし。
で、その理由を考えたら意外と単純だった。というか、歴史が証明していた。
剣は意外と融通が利かないのだ。
リーチ差や、武器そのもののコスパ、他にもいろいろ。
全く使われないわけじゃないけど、少なくとも『主力』と言う意味では使われてはいない。
「では、基本的な足の動作は、アルムとやった足運びを応用してください。次に、要領を掴むために、好きなように切りかかって来て下さい。少し振るえば、すぐに課題が分かるはずです」
「え? 素振りじゃなくて?」
「素振りをして、やれてる感だけ得て満足されては困ります」
うっ、また痛いところを。
いやいやいや、今に始まったことじゃないんだ。落ち着けオレ。
「行くぞリレル!」
「どこからでも」
ナイフの時と同様にしっかりと構える。
昨日の武闘大会も思い出せ、足運びはすごく重要だ。
まずは距離を詰める、それから……どこを狙おう。
普通なら死角とかを狙うべきかんだろうけど、そんな場所わかるわけがない。
なにより、リレルが剣を持っている姿は今回初めてなんだ、どう攻めればいいかすら分からない。
……大振りだと回避される、それなら動きを最小限にして、今の俺が一番素早く攻撃出来るのは……動きはバレバレだけど、これならば!
オレは少し腰を落とし、右肘を引いて剣の矛先をリレルに向ける。そのまま左手を右手の上に重ねるように置いて、グッと足に力を入れる。
一度深呼吸して、一気に走り出して、剣をリレル目掛けて突き出した。
「なるほど、考えましたね!」
そう言いながら、リレルは剣の側面をこちらに向け、防御態勢を取る。
そして、オレの移動速度に合わせて小さく位置を微調整し、今出せる最速と最大限の力で突き出した木剣の横、オレから見て左側を滑らせるように受け流す。
「大振りに振り下ろしてくるかと思いましたが、いい判断です。ヒロトが"今"出来る最大の速度と、最大の力を乗せた攻撃がまさにそれになります」
「これでも結構考えたんだぜ!?」
「はい、考えるのをやめてはいけません。同時に、体を動かすのを怠るのもです!」
そう言うと、リレルはオレの剣を受け流した形そのままに、剣の柄頭をこちらに……って!? ちょ、このパターン!?
「"車は急に止まれない"のを、お忘れですよ!」
向けられた柄頭が、オレの喉元にヒットする。
強烈な痛みに、オレは喉を抑えて、けほこほと咳き込むって……すげぇデジャヴュなんだけど!?
「この辺りは、慣れです。死なない為にも、訓練で失敗パターンをしっかり学びましょう」
「げほ、げほ!!……はーい」
あー、痛い。
本当に急に柄頭を向けられたらどうしようもないって……この場合、すぐに剣を引くか、剣先を流された時点で右に飛んで、直後のカウンターを回避するとかかな。
少なくとも今みたいに全力疾走したら、まだ急に止まることは出来ないわけだし、そうだな……スピードを殺さずにいけば……
「ヒロトー? 考えるよりはやってみましょう? 今思いついたこと実践してみてください」
「了解!……もう一回、構えて……どうだ!」
先ほどと同じように、距離を詰めて剣を突き出す。
同じようにリレルが持つ剣の側面で流されたけれども、その瞬間に右に飛んで距離を取る。
よし、これならリレルからの武器による反撃……いや、ダメだ!
オレはさらに、1歩大きく下がる。
同時に、先ほどまでオレが立っていた場所に、風の塊が着弾した。
「うへぇ……無詠唱……」
「はい。ヒロトが先日言っていた無詠唱の正しい使い方です。1対1こそ、これは真価を発揮するのですから」
そう言いながら、リレルはやはり笑顔だった。
くっそー、自分がやるならいざしらず、便利なものが軒並み敵側に回ると何でこう厄介なんだ!
「けれど、今の流れはお見事です。1つの戦闘パターンとして覚えてください。次は突きではなく、切る方向でお願いします」
「分かった!」
今度は正面に構え、そのまま真上に剣をあげて振り落とす。
それをリレルは再び剣の側面で受け止めた。
僅かに向きをオレから見て左側にずらされ、こちらの剣が滑る。
僅かに滑った隙をついて、リレルはくるっと刃の向きを変えてそのままオレの顎目掛けて振り上げた。
もちろん、その刃は当たらず、オレの首元数センチでピタリと止まる。
「むっずかしい!!」
「そうですね。やはり場数を踏まないと読めない部分が多いです」
オレがヤケクソ気味に叫ぶと、リレルは同意しながら剣を離す。
「私の場合は、どのように打ち込まれたとしても返せるように、徹底的に反撃特化の形をとっておりますから余計にそう感じるかもしれません」
「反撃特化?」
「はい、私はどうしても腕力面で負けてしまうことが多いです。そこを補う為に、相手の勢いを利用して、最小限の力でいなして反撃する……ということです」
そっか、女性だとどうしても基礎的な部分で腕力負けする。
そこを逆に利用する為に、反撃特化型になるわけか。
「ただ、これは個人の性格によって向き不向きがあります。サディエルは自身の身軽さと体力を生かした立ち回りを主軸にしておりますし、アルムが剣を持った場合は、小手先重視になります」
「性格がめっちゃ出るなぁ……」
だけど、これは凄く分かりやすい。
サディエルとアルムに関しても、確かに想像しやすい。
「ではヒロト、今のお話から"課題"について想像がつきましたね?」
「うん、分かった。オレに最も合う戦い方を模索することだ!」
その言葉を聞いて、リレルは頷く。
「これからしばらくは、基礎を叩き込みながら、貴方に最も合う戦い方を探ることを重点に置いて行きます」
「了解、よろしく、リレル!」
「はい、ちゃんと固定もされております。問題ありませんよ」
リレルの合格に、オレはホッと安堵のため息を吐く。
あの後、応急処置の基本として、患部を洗う、消毒を行う、傷口の保護や止血などといった基礎的な部分をあれこれ教わった。
で、今はその実践として実際に怪我をした想定での、傷口の保護の練習だった。
「今の行程で特に重要なのは、最初の傷口の洗浄と消毒です。ここが不十分な場合、数ヶ月して中で化膿して、患部を改めて切り開いて洗浄するなんてことになりかねません」
「ひえっ……せっかく治癒の魔術で傷口塞いでも、それじゃあ意味がない」
「そうです。だから、むやみやたらに治癒の魔術に頼るものもよろしくなのです」
魔術とは一体……なんだか、どんどん万能性が消え去っているよな。
普通、治癒の魔術で怪我したら即回復! で良いイメージがずっとあっただけに。
ただ、リレルから聞く生々しい経験談を聞くとその情景がありありと想像出来て、さっきからマジで怖い。
そういえば、最初の街のギルドで、そこの職員さんが『魔術は補助だ』って言ってたな、そういや。
「今日教えた応急処置を一通り覚えておけば、万が一があっても、大丈夫だと思います。ただ、この1回だけでは実際にその時が来たら『あれ? どうだったっけ?』になりますので、明日から毎日、こういう負傷をしたという想定をお伝えします」
「それに合わせて、応急処置をするってこと?」
「そうです。反復練習は大事ですよ」
そう言いながら、リレルはオレが巻いた包帯を外す。
いざと言う時に、条件反射とまではいかないけどすぐに「これをやればいい!」って判断出来るようになれば、確かに良いよな。
速さは正義だ、うんうん。
「それに、応急処置に関しては、案外ヒロトの所と大差がないかもしれません。覚えておけば、いざと言う時に人助けとか出来ちゃったりするかもですよ?」
人助け、かぁ……
「ちなみに現実的な数字で説明いたしますと……仮に心臓が停止した場合、4分以内に何かしらの処置を取れば生存率50%、何もしなかった場合は1分ごとに20%づつ下がります」
「1分が貴重すぎ!?」
「そうですよ。あと、声を掛けてあげる事もとても大事です、それだけで人は安心しますので」
「治癒の魔術の前にやること多すぎ……」
これ、オレが治癒の魔術取得云々に辿り着くの当面先過ぎないか?
いやまぁ、落ち着け。まずは応急処置だ、応急処置。
治癒の魔術を覚えて、適当にかけたとしても悪化する場合が大半なんだ、慌てるなオレ……!
「ヒロト、最後に1つ。大事な事をお伝えしますね」
「はい」
「どんな応急処置も、"完璧にこなさないといけない"と思わないでください。応急処置をやること自体に意味があります」
完璧じゃなくていい。やること自体に意味が……?
「どういうこと?」
「人命に関わる事ですから、可能な限り完璧にやりたいでしょう。ですが、理想や完璧さより、とにかくできることを素早くやる、というのを最優先に考えてください。たったそれだけでも、救える命があることを覚えていてください」
助けることこそが大事、か。
「分かった。最初は、うん、難しいかもだけど頑張ってみる」
「はい! ぜひ、お願いいたします」
オレのその言葉を聞いて、リレルはとても嬉しそうに微笑む。
……なんだろう、ここまで笑顔のリレルは初めてかもしれない。
そりゃ、いつも笑顔でいることが多いリレルだけど……今の笑顔は間違いなく違う、本当に嬉しそうだ。
ちょっとは、リレルから見ても成長出来てるのかな、オレ。
「さて、お話が長くなり過ぎました。ちょっと熱を入れ過ぎてお話しすぎた部分もありますし……申し訳ありません」
「いや、こっちこそありがとう。色々勉強になった……けど、魔術をオレが覚えるのは当面先だなこりゃ」
「そうですね。お伝えしても構わないのですが……それよりも覚えて欲しいことが山ほどありますので」
「分かってる。焦らないよ」
急いだって仕方ない。
最終目標でもある、元の世界に戻る為にも、確実に出来ることからやるのが一番だ。
少し背伸びして、無理やり覚えて使っても余計に状況が悪化する可能性があるならば、後回り上等だ。
「ですが……今日のお話で、ようやく最低限の知識は習得出来たと思います」
「……というと?」
「ヒロト、明日からは武器を使った訓練といきましょう」
================================
―――翌日、港町から出航して6日目の早朝。
「いっちにー、さんしーっと……うしっ! 今日の運動おしまい!」
いつものストレッチや軽い運動、最近増えたスクワットなどの筋トレなどを終え、オレは背伸びをする。
同じようにいつものトレーニングメニューを終えたサディエルたちも、タオルで汗を拭いている。
「リレル、準備いいよ!」
「はい、では始めましょうか」
そう言いながら、リレルはオレに訓練用の木剣を渡してくれる。
「おっ、もしかしてついに戦闘訓練か?」
「そうです。昨日のお話でようやく下地が出来ましたので」
サディエルの言葉に、リレルは笑顔で答える。
それを聞いて、サディエルとアルムも嬉しそうに笑う。
「そうか、ついにか。頑張れよ、ヒロト」
「なぁアルム。なんなら今から調理場借りないか? これからヒロトが頑張るんだ、何か美味しいもの作ってやろうぜ!」
「おっ、いいなそれ。よし、ヒロト! 頑張ってリレルから1本取れたらサディエル特製のデザートを進呈する」
「デザート!? マジ!?……って、リレルから1本取るって時点でムリゲー!」
どう考えても絶対無理じゃんそれー! と抗議すると、3人は同時に笑う。
「じゃあ、今日は特別に頑張ったらデザートってことで。そうだ、買い込んだ肉を使わないか? そろそろヒロトも魚に飽きてきただろうし」
サディエルの提案に、さらに期待が膨らむ。
肉! そういえば、この船に乗る前に大量に買い込んでた肉があった!
「飽きてきた! 朝、昼、晩の3食魚フルコース、そりゃ飽きが来ないようにあれこれアレンジされてたけど、さっすがに限界だった! お願いサディエル!」
「わかった、わかった。リレル、ヒロトのことよろしく。美味いもの作っておくから」
「了解しました」
じゃあどれ作る? あれがいいんじゃないかと、相談しながらサディエルとアルムは船内へと戻っていく。
さて、美味しい朝ごはんの為にも頑張らなければ!
「ふふっ、ヒロト。目的が朝ごはんに代わっちゃってる顔をされてますよ?」
「そろそろ肉食べたい!」
「目的があることは実にいいことです。さて、ヒロト。改めて問います、使いたい武器は剣でお間違いありませんね?」
そう言いながら、リレルも同じように訓練用の木剣を持つ。
「あぁ、間違いない!」
「確か、ヒロトの所では剣が大人気なんですよね。個人的には同じ槍か、アルムみたいな弓をお勧めしたいんですが……」
うん、リレルの言いたいことは分かる。
こちらも、最初の街のギルドの人から、似たようなことも言われていたわけだし。
で、その理由を考えたら意外と単純だった。というか、歴史が証明していた。
剣は意外と融通が利かないのだ。
リーチ差や、武器そのもののコスパ、他にもいろいろ。
全く使われないわけじゃないけど、少なくとも『主力』と言う意味では使われてはいない。
「では、基本的な足の動作は、アルムとやった足運びを応用してください。次に、要領を掴むために、好きなように切りかかって来て下さい。少し振るえば、すぐに課題が分かるはずです」
「え? 素振りじゃなくて?」
「素振りをして、やれてる感だけ得て満足されては困ります」
うっ、また痛いところを。
いやいやいや、今に始まったことじゃないんだ。落ち着けオレ。
「行くぞリレル!」
「どこからでも」
ナイフの時と同様にしっかりと構える。
昨日の武闘大会も思い出せ、足運びはすごく重要だ。
まずは距離を詰める、それから……どこを狙おう。
普通なら死角とかを狙うべきかんだろうけど、そんな場所わかるわけがない。
なにより、リレルが剣を持っている姿は今回初めてなんだ、どう攻めればいいかすら分からない。
……大振りだと回避される、それなら動きを最小限にして、今の俺が一番素早く攻撃出来るのは……動きはバレバレだけど、これならば!
オレは少し腰を落とし、右肘を引いて剣の矛先をリレルに向ける。そのまま左手を右手の上に重ねるように置いて、グッと足に力を入れる。
一度深呼吸して、一気に走り出して、剣をリレル目掛けて突き出した。
「なるほど、考えましたね!」
そう言いながら、リレルは剣の側面をこちらに向け、防御態勢を取る。
そして、オレの移動速度に合わせて小さく位置を微調整し、今出せる最速と最大限の力で突き出した木剣の横、オレから見て左側を滑らせるように受け流す。
「大振りに振り下ろしてくるかと思いましたが、いい判断です。ヒロトが"今"出来る最大の速度と、最大の力を乗せた攻撃がまさにそれになります」
「これでも結構考えたんだぜ!?」
「はい、考えるのをやめてはいけません。同時に、体を動かすのを怠るのもです!」
そう言うと、リレルはオレの剣を受け流した形そのままに、剣の柄頭をこちらに……って!? ちょ、このパターン!?
「"車は急に止まれない"のを、お忘れですよ!」
向けられた柄頭が、オレの喉元にヒットする。
強烈な痛みに、オレは喉を抑えて、けほこほと咳き込むって……すげぇデジャヴュなんだけど!?
「この辺りは、慣れです。死なない為にも、訓練で失敗パターンをしっかり学びましょう」
「げほ、げほ!!……はーい」
あー、痛い。
本当に急に柄頭を向けられたらどうしようもないって……この場合、すぐに剣を引くか、剣先を流された時点で右に飛んで、直後のカウンターを回避するとかかな。
少なくとも今みたいに全力疾走したら、まだ急に止まることは出来ないわけだし、そうだな……スピードを殺さずにいけば……
「ヒロトー? 考えるよりはやってみましょう? 今思いついたこと実践してみてください」
「了解!……もう一回、構えて……どうだ!」
先ほどと同じように、距離を詰めて剣を突き出す。
同じようにリレルが持つ剣の側面で流されたけれども、その瞬間に右に飛んで距離を取る。
よし、これならリレルからの武器による反撃……いや、ダメだ!
オレはさらに、1歩大きく下がる。
同時に、先ほどまでオレが立っていた場所に、風の塊が着弾した。
「うへぇ……無詠唱……」
「はい。ヒロトが先日言っていた無詠唱の正しい使い方です。1対1こそ、これは真価を発揮するのですから」
そう言いながら、リレルはやはり笑顔だった。
くっそー、自分がやるならいざしらず、便利なものが軒並み敵側に回ると何でこう厄介なんだ!
「けれど、今の流れはお見事です。1つの戦闘パターンとして覚えてください。次は突きではなく、切る方向でお願いします」
「分かった!」
今度は正面に構え、そのまま真上に剣をあげて振り落とす。
それをリレルは再び剣の側面で受け止めた。
僅かに向きをオレから見て左側にずらされ、こちらの剣が滑る。
僅かに滑った隙をついて、リレルはくるっと刃の向きを変えてそのままオレの顎目掛けて振り上げた。
もちろん、その刃は当たらず、オレの首元数センチでピタリと止まる。
「むっずかしい!!」
「そうですね。やはり場数を踏まないと読めない部分が多いです」
オレがヤケクソ気味に叫ぶと、リレルは同意しながら剣を離す。
「私の場合は、どのように打ち込まれたとしても返せるように、徹底的に反撃特化の形をとっておりますから余計にそう感じるかもしれません」
「反撃特化?」
「はい、私はどうしても腕力面で負けてしまうことが多いです。そこを補う為に、相手の勢いを利用して、最小限の力でいなして反撃する……ということです」
そっか、女性だとどうしても基礎的な部分で腕力負けする。
そこを逆に利用する為に、反撃特化型になるわけか。
「ただ、これは個人の性格によって向き不向きがあります。サディエルは自身の身軽さと体力を生かした立ち回りを主軸にしておりますし、アルムが剣を持った場合は、小手先重視になります」
「性格がめっちゃ出るなぁ……」
だけど、これは凄く分かりやすい。
サディエルとアルムに関しても、確かに想像しやすい。
「ではヒロト、今のお話から"課題"について想像がつきましたね?」
「うん、分かった。オレに最も合う戦い方を模索することだ!」
その言葉を聞いて、リレルは頷く。
「これからしばらくは、基礎を叩き込みながら、貴方に最も合う戦い方を探ることを重点に置いて行きます」
「了解、よろしく、リレル!」
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アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。
フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。
※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
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