ひきこもり娘は前世の記憶を使って転生した世界で気ままな錬金術士として生きてきます!

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「お、おおお、お師匠様~!!」

 目の前を歩く生徒の隙間を走りぬき、王立錬金術学園アカデミーの外で待つ私のお師匠様のもとへ走る。

 ここは大陸の中心に位置する王都の中でも重要建築物の一つ、未来の才能ある錬金術士を育てる学校なのだ。私はそんなこの王立錬金術学園アカデミーに入学し、すぐに頭角を現した天才錬金術士である。

 息を切らしながら走り続け、大きな門を過ぎるとその先には他の生徒の関係者が待ちわびた様子だった。その中でもひときわ目立ち、別格のオーラを放つのが私の師匠だ。若くて髪の長い胸の大きなセクシーな女の人なのだけど、自称大陸1の錬金術師で、傲慢で態度は悪い、口は悪い、面倒くさがりで放浪癖と寝起きが最悪なくせに外見と人付き合いと頭の良さはすごい人だ。弟子入りしてから何度も何度も何度も泣かされてきた私が言うんだから嘘じゃない。

「お師匠様!あわああわわわ、わたし……ほら見て。頑張ったんですよ」

 私は喜びのあまり顔がニヤついてしまうのを必死にこらえて手に持ったアカデミーからの卒業成績書を師匠へ渡した。この国では錬金術士になるには最低4年。このアカデミーで学び、この卒業成績書を得ることで【錬金術士】として働けるようになる。いわば資格だ。
 この卒業成績書の内容により、卒業後の進路も変わる。王立魔道研究所で働けるようなエリート組もいれば、町医者や便利屋のようにいきなり自分の店が持てるスタートダッシュができる人もいる。私のような天才錬金術士ともなれば引く手数多。未来はバラ色。というやつだ。

「ほほぅ。エリナずいぶんと威勢がいいじゃないか。よほど自信があるらしいな。まぁなんせこの私、大陸1の錬金術師ビエラ・スターリンクの弟子というんだからには」

「…か、からには…?」

 子供に成績表を渡された親のような顔をしながら師匠は成績書に目を通す。最初は『はいはい』という態度だった師匠も驚きのせいかなにもしゃべらなくなってしまった。

「……‥‥‥‥」

「え?なんですか師匠。そんな小さな声で言ってたんじゃ聞こえませんよ。自慢の弟子をもっと祝ってくださいよ~」

「こぉんの大バカものがぁーー!!」

「ひゃあぁっぁぁ!!ご、ごごごごごめんなさぁぁいぃ!!!」

 急に目の前で激怒した師匠に驚いて全身がビクっとなった後にその場に小さく丸まって座り込んでしまった。


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