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「娘さん、わしら農民は虫がおおいところにおるじゃけ、虫よけ剤はありがたいんじゃ」
「それに毒虫もいるからね!子供がさされたりしたら大変なんだよ!」
「そうだ、お医者様もいないからこの村じゃ毒虫にさされたらそれだけでもたいへんだぁ!」
「山や森にいくときも虫よけはあった方がええ。南の町から仕入れても何日も経過して効果が薄くなってしまうから作りたての虫よけ剤はほんとーに、わしらからしたらありがたいんじゃ」
ルーシーちゃんの声に続くように、家の前にいた他の村の人もしゃべりだした。確かにみんな虫よけ剤の事を絶賛してくれてる。お年寄りだけじゃない。子育てしてる人もみんな、平等に困ってるという事がヒシヒシと伝わってきた。
そうか、王都には農民さんはほとんどいないけど、錬金術士はたくさんいる。だから店頭に並ぶ前に仲のいい錬金術士に虫よけ剤を直接作ってもらって、店頭に並ぶ前の新鮮な虫よけ剤を農家さんは手に入れてたんだ。だけどこの村には錬金術士がいない。南の町で虫除け剤を買っても、村に戻るまで馬車で4日はかかる。虫よけ剤の効果は4日も経過してしまえば約半分。薄まった虫よけ剤を輸送費や人件費などの余計なコストを上乗せして売るよりも、新鮮な虫よけを欲しい時に買えた方が助かる、ってことか!
ルーシーちゃんはみんなのいう事を「うんうん」と言いながらうなずいていた。
「いつからこのお店は買い物ができるんじゃ?みたところまだ店の中は空っぽのようじゃが?」
おじいさんがお店の中を見ながら困った顔で聞いてくる。
そう、私の店は昨日やっとお掃除が終わって、今日から開店準備をしようかなぁ、って思ってたところ。どんな商品を作ればいいかも思いつかなかったけど、最初の目玉商品はこれで決まった!まずはみんなの為に虫よけ剤を作ってみることにする!
「すいません、まだ引越してきたばかりでお店の準備もできてなくて。うーん、あと数日待っていもらえれば開店できると思うんですけど…」
『あぁ』『すぐに買えないのかね』『農作業はもう始まるんじゃけどなぁ』ガヤガヤと村人さんたちは各々の気持ちを口にするとそれは「早くほしい」。という声ばかりだった。私は「ごめんなさい、なるべく早く作るからまっててください」と頭を下げることしかできなかった。正直ガッカリしてしまう人を見るのはとてもつらかった。
「おいおい!お嬢さん、準備ってのは、なにするんだい?」
後ろの方で力強く威勢のいい声が聞こえた。村人たちも自然と声の方向を向くと、人だかりの1番奥にその人はいた。
「え、えーと。実はまだ調合の素材も集まってないし、お店の中も棚とかなくて。これから色々集めたりしようかなぁって思ってて」
「それは錬金術士にしかできなくて、俺たち普通の人間にはできないことなのか?」
あれ?あの人、どこかで見たことがあるような…。
人だかりのあいだからゆっくりと歩いてくる。
「い、いえ。そんな事ないですよ、別にちょっと知識があれば素材集めは出来ますし、棚とかは誰でも作れちゃいますから」
「じゃあ別に、錬金術が使えない俺たちでもお前さんの手伝いができるってわけだ!」
「ぱぱぁ!」
その人が私たちの目の前に出てくると、ルーシーちゃんが驚いて目を丸くする。そうか、ミーちゃんと一緒に行った食堂の奥で料理作ってた人だ!ただ、ルーシーちゃんはルーシーちゃんパパが今ここにいる事は知らなかったようだ。
「よぉルーシア!なんかコソコソと企んでたからなぁ。後をつけさせてもらったぜ!そしたら商売敵の店の商品を宣伝して歩くとは、とんだ親不孝娘だな!だがそんなことは関係ねぇ!ルーシアの友達の店のことだ、ここはグラーデン家総出で最大限サポートしていかねーとなぁ!このまま手ぶらで帰ったらかぁちゃんにフライパンで殴られちまう。…よーし決めた!今日はこのまま店じまいだ!暇な連中は付き合え!手伝ってくれた奴は昼飯と晩飯の食い放題だ!今日中にこの店仕上げんぞぉー!!」
村の人たちは顔を見合わせると、「そうだな、待つだけじゃなくて手伝おう」「私たちまで錬金術士になった気分になっちまうよ」など、ルーシーちゃんパパの一声で落胆していた顔がやる気に溢れてくる。
「おぉーーー!!!!」
「ちょ、ちょっとまって、まだ!、まだなんにも考えてなくて、いきなりそんなこと言われても私なにもできないし」
「なぁにお嬢さんは指示だけ出してりゃいいんだ。どんな店にしたいのか、どんなものが必要なのか、なんでも俺たちに言ってくれ!錬金術は使えないがそれ以外の事はなんでも任せてくれ!」
ニカっっと笑ったルーシーちゃんパパは男の人数人と何かの打ち合わせを始めた。私はどうしたらいいのかわからなくて、なんかお祭り騒ぎで盛り上がってしまったその場の雰囲気に圧倒されていたところをルーシーちゃんに、
「だいじょうぶ、この村ってみんながみんなを助けてるんだよ。昨日言ったじゃない?困った時はお互い様って。みんなはエリーちゃんのお店で早く買い物がしたい。エリーちゃんは、早くお店の開店準備をしたい。お互いの目標が同じになんだから、甘えちゃっても大丈夫じゃないかな!それにうちのパパすごいし!どうせなら素敵なお店を作っちゃおうよ!」
「え、あ、うん。…じゃなくて、ああ待ってよ、ルーシーちゃーん!」
私は手を引かれて店の中へ戻った。ルーシーちゃんは「ここに商品棚はどう?」「ここはテーブルを置いてみたらどうかな?」「ここにも棚が欲しいね」「ここは椅子とかどう?みんなが少し休んだりするの!」などいろいろなイメージや完成予想を一緒に話してくれた。どれもこれも、その提案は素敵なものばかりで、断る理由なんて何もないくらい完璧で、それを聞いたルーシーちゃんパパは村のみんなとドンドン作り上げて行ってしまう。テーブルクロスやカーテンなどの縫物は女性のみなさんが手際よく進めてくれて、カウンターやできたばかりのテーブルに次々にかけられていく。
このペースだと、本当に今日中に準備が終わってしまいそう。
「それに毒虫もいるからね!子供がさされたりしたら大変なんだよ!」
「そうだ、お医者様もいないからこの村じゃ毒虫にさされたらそれだけでもたいへんだぁ!」
「山や森にいくときも虫よけはあった方がええ。南の町から仕入れても何日も経過して効果が薄くなってしまうから作りたての虫よけ剤はほんとーに、わしらからしたらありがたいんじゃ」
ルーシーちゃんの声に続くように、家の前にいた他の村の人もしゃべりだした。確かにみんな虫よけ剤の事を絶賛してくれてる。お年寄りだけじゃない。子育てしてる人もみんな、平等に困ってるという事がヒシヒシと伝わってきた。
そうか、王都には農民さんはほとんどいないけど、錬金術士はたくさんいる。だから店頭に並ぶ前に仲のいい錬金術士に虫よけ剤を直接作ってもらって、店頭に並ぶ前の新鮮な虫よけ剤を農家さんは手に入れてたんだ。だけどこの村には錬金術士がいない。南の町で虫除け剤を買っても、村に戻るまで馬車で4日はかかる。虫よけ剤の効果は4日も経過してしまえば約半分。薄まった虫よけ剤を輸送費や人件費などの余計なコストを上乗せして売るよりも、新鮮な虫よけを欲しい時に買えた方が助かる、ってことか!
ルーシーちゃんはみんなのいう事を「うんうん」と言いながらうなずいていた。
「いつからこのお店は買い物ができるんじゃ?みたところまだ店の中は空っぽのようじゃが?」
おじいさんがお店の中を見ながら困った顔で聞いてくる。
そう、私の店は昨日やっとお掃除が終わって、今日から開店準備をしようかなぁ、って思ってたところ。どんな商品を作ればいいかも思いつかなかったけど、最初の目玉商品はこれで決まった!まずはみんなの為に虫よけ剤を作ってみることにする!
「すいません、まだ引越してきたばかりでお店の準備もできてなくて。うーん、あと数日待っていもらえれば開店できると思うんですけど…」
『あぁ』『すぐに買えないのかね』『農作業はもう始まるんじゃけどなぁ』ガヤガヤと村人さんたちは各々の気持ちを口にするとそれは「早くほしい」。という声ばかりだった。私は「ごめんなさい、なるべく早く作るからまっててください」と頭を下げることしかできなかった。正直ガッカリしてしまう人を見るのはとてもつらかった。
「おいおい!お嬢さん、準備ってのは、なにするんだい?」
後ろの方で力強く威勢のいい声が聞こえた。村人たちも自然と声の方向を向くと、人だかりの1番奥にその人はいた。
「え、えーと。実はまだ調合の素材も集まってないし、お店の中も棚とかなくて。これから色々集めたりしようかなぁって思ってて」
「それは錬金術士にしかできなくて、俺たち普通の人間にはできないことなのか?」
あれ?あの人、どこかで見たことがあるような…。
人だかりのあいだからゆっくりと歩いてくる。
「い、いえ。そんな事ないですよ、別にちょっと知識があれば素材集めは出来ますし、棚とかは誰でも作れちゃいますから」
「じゃあ別に、錬金術が使えない俺たちでもお前さんの手伝いができるってわけだ!」
「ぱぱぁ!」
その人が私たちの目の前に出てくると、ルーシーちゃんが驚いて目を丸くする。そうか、ミーちゃんと一緒に行った食堂の奥で料理作ってた人だ!ただ、ルーシーちゃんはルーシーちゃんパパが今ここにいる事は知らなかったようだ。
「よぉルーシア!なんかコソコソと企んでたからなぁ。後をつけさせてもらったぜ!そしたら商売敵の店の商品を宣伝して歩くとは、とんだ親不孝娘だな!だがそんなことは関係ねぇ!ルーシアの友達の店のことだ、ここはグラーデン家総出で最大限サポートしていかねーとなぁ!このまま手ぶらで帰ったらかぁちゃんにフライパンで殴られちまう。…よーし決めた!今日はこのまま店じまいだ!暇な連中は付き合え!手伝ってくれた奴は昼飯と晩飯の食い放題だ!今日中にこの店仕上げんぞぉー!!」
村の人たちは顔を見合わせると、「そうだな、待つだけじゃなくて手伝おう」「私たちまで錬金術士になった気分になっちまうよ」など、ルーシーちゃんパパの一声で落胆していた顔がやる気に溢れてくる。
「おぉーーー!!!!」
「ちょ、ちょっとまって、まだ!、まだなんにも考えてなくて、いきなりそんなこと言われても私なにもできないし」
「なぁにお嬢さんは指示だけ出してりゃいいんだ。どんな店にしたいのか、どんなものが必要なのか、なんでも俺たちに言ってくれ!錬金術は使えないがそれ以外の事はなんでも任せてくれ!」
ニカっっと笑ったルーシーちゃんパパは男の人数人と何かの打ち合わせを始めた。私はどうしたらいいのかわからなくて、なんかお祭り騒ぎで盛り上がってしまったその場の雰囲気に圧倒されていたところをルーシーちゃんに、
「だいじょうぶ、この村ってみんながみんなを助けてるんだよ。昨日言ったじゃない?困った時はお互い様って。みんなはエリーちゃんのお店で早く買い物がしたい。エリーちゃんは、早くお店の開店準備をしたい。お互いの目標が同じになんだから、甘えちゃっても大丈夫じゃないかな!それにうちのパパすごいし!どうせなら素敵なお店を作っちゃおうよ!」
「え、あ、うん。…じゃなくて、ああ待ってよ、ルーシーちゃーん!」
私は手を引かれて店の中へ戻った。ルーシーちゃんは「ここに商品棚はどう?」「ここはテーブルを置いてみたらどうかな?」「ここにも棚が欲しいね」「ここは椅子とかどう?みんなが少し休んだりするの!」などいろいろなイメージや完成予想を一緒に話してくれた。どれもこれも、その提案は素敵なものばかりで、断る理由なんて何もないくらい完璧で、それを聞いたルーシーちゃんパパは村のみんなとドンドン作り上げて行ってしまう。テーブルクロスやカーテンなどの縫物は女性のみなさんが手際よく進めてくれて、カウンターやできたばかりのテーブルに次々にかけられていく。
このペースだと、本当に今日中に準備が終わってしまいそう。
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