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第一部・最終章 魔術剣修道学園
第三十五話
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薄暗い闇に包まれた階段を一歩ずつ慎重に降りながら、不完全だった覚悟をゆっくりと固めていく。
一階の階段前で見た真紅の液体は、何段もの間隔を空けながら床に付着している。濡れた足跡も同様に、最初に比べかなり水量を増して残っている。
確実にユリを連れた犯人はこの下にいる。しかも、連れ去ってからあまり時間が経っていない。
今すぐ階段を駆け下りたい衝動をどうにか抑えながら、現在自分が置かれてる状況を整理する。
まず犯人はユリを連れ去った。それだけで相当な実力者であることが分かる。
ユリは女の子ではあるが、曲者相手に遅れを取るほど弱くもない。不意打ちを受けた所で負けるとは到底思えない。
そんな彼女を気絶、もしくは殺害したとなれば、不審者はかなりの実力者だ。恐らく焔天剣一本しか持たない俺でも、勝てる可能性は半分に満たない。
最悪、完成した自作魔術を詠唱する可能性があるかもしれない。
だがそれは最後の手段。絶対に勝てないと判断した時以外に使ってはいけない。
自作魔術が完成したのは昨晩であり、まだ試験運用を一度もしていない。ワタルと一緒に考えたとはいえ、何かしらの不具合が生じる可能性もあるし、運が悪ければ暴発して学園が吹き飛ぶ。
だから、まだ無闇に詠唱するわけにはいかない。出来れば自作魔術を使わずにユリを取り戻したい所存だ。
それが、可能ならの話だが。
しかも運が悪く、俺は物置の地形・配置を全く知らない。先に到着している相手の方に地の利がある。
整理して分かったことは、状況は圧倒的に不利だということ。
魔術を使用出来るだけの空間魔素は漂っているため、魔術対決で時間を稼ぎ、その隙にユリを連れて逃げる作戦でいくしかない。
長い思慮を巡らせていると、カズヤは根本的な疑問に遅かれ気付き、一度考えを念頭に据え置いた。
犯人は何故、足跡や血痕を拭き取らずに残したのか。
この嵐の中学園に忍び込んだ犯人も、当然濡れている。にもかかわらず、何故足跡を消さずに残しているのか。これでは自分の居場所を教えているようなもの。
そこでカズヤの脳に、一つの不確立な結論が導き出された。
敢えて残した? 追跡出来るように、地下に誘き寄せるために、足跡を消さずに、敢えて残したのか?
瞬間、背筋に悪寒が走った。
ユリを学園で拉致し、最も関係深い誰かを地下に誘き寄せるために、敢えて痕跡を残しているのか?
そして誘き寄せられたのは、俺。
もしや犯人は、俺を誘き寄せるためにユリを拉致したのか。だとしたら、犯人は俺を憎むか恨んでいる誰かになる。
だが何故だ? 関係ないユリを拉致したところで俺が来るとは限らない。彼女と最も仲が良いサヤの可能性だってあるし、人望がある彼女ならクラス総出だってあり得る。俺は、彼女と親しくなったのはつい最近だ。
しかしこれは、見方を変えてしまえばこうなる。相手は俺の性格を熟知していると。
犯人は俺を憎む誰か。憎むとなれば、俺が今一番大切な人や物を壊そうと考える。そして最近になって、ユリという大切な人が出来た。
そして犯人は、犯行に及んだ。俺──カズヤならば、絶対に助けに来ると踏んで。そして案の定、俺は学園に入ってきている。
そこで考察を止めた。この結論は確信性に欠ける、単なる憶測だ。決定打に欠けた結論などに翻弄されていては、これから対峙する犯人からユリを救出できない。
憶測を振り払うと、長く続いた道のりが終わり地下に到着した。
地下に降りると、すぐに巨大な扉に行き当たった。
「……ユリ」
静かに名を呟き、ゆっくりと扉を開ける。隙間から冷たく湿った風が一気に吹き出し、思わず両眼を閉じる。
風が止んでから、両眼をゆっくりと開く。そこは寮のエントランスと同じようなホールが広がっており、あちこちに行事用の用具が置かれている。天井はあまり高くなく、柱がかなり多く立っている。
あちこちにランタンのような明かりが掲げてあるが、メインとなる照明が点いていないため全体的には薄暗い印象だ。ただ、ところどころに他よりもずっと明るい照明があり、その一つに小さな女の子が照らされていた。
女の子は手足を拘束され、柱に寄りかかるような姿勢でぐったりとうなだれている。
「ユリ!」
部屋中に声が響くと、ユリははっとしたように顔を上げた。
「んんんんー!」
猿轡を噛まされているのか何を言っているのか一切分からないが、ぶんぶんと大きく首を横に振る。
瞬間、カズヤは不意に殺気を感じて大きく横に飛び退いた。
僅かに遅れて、柱の影から飛び出してきた黒い矢が、先ほどまでカズヤが立っていた空間を刺し貫く。
更に他の影からも同じような矢が次々と飛び出し、カズヤを狙う。
「くっ……!」
小さな呻き声を上げ攻撃をかわしていくが、どれもかなり際どい。どこから飛んでくるか、まるで予想がつかないのだ。その上、慣れない地形に視界の悪さから上手く動くことが出来ない。
避け続けることが出来ても反撃に出ることが出来ない。このままでは疲労が溜まり思うように動けなくなる。そうなる前に反撃しなければ。
まずは攻撃情報の分析。
相手の攻撃手段は魔術。矢を放つ音などは聞こえず、空間魔素が歪む瞬間を捉えることが出来た。
カズヤは矢を避けながら現状を打破案を一瞬で思い付き、即実行に移した。
六度目の攻撃を後方に大きく飛び退き、着地と同時に炎素を詠唱。
「そこだ!」
左の柱目掛けて炎素を放つと、柱の内部に貼り付けられていた魔法陣が露わになる。再度炎素を詠唱し、魔法陣の中央に向けて放つ。すると魔法陣は光の結晶となり消え去った。
六回も攻撃をかわせば、攻撃の規則性にも気付く。
攻撃は全て着地した場所に近く死角になる柱から飛んできている。暗がりの中で特定するのは難しかったが、一瞬の空間魔素の揺らぎを感知すればどうってことない。
後は矢が放たれるよりも先に自動発動設定された魔法陣を崩壊させれば、連鎖的に発動する魔術の包囲網から脱することが出来る。
「なるほど……流石は名門校の生徒だな」
予想通り攻撃がピタリと止むと、ユリが寄りかかっていた柱の影から一人の男が姿を現した。フードを深くかぶっているせいで男の顔は確認出来ないが、凍てつくようで、まるで感情らしきものが感じられない声をしている。
「……お前がユリを拉致した犯人か」
「そうだと言ったら、どうする……」
犯人は簡潔に答えると、どこからともなく出現した一本の長剣をユリの首元に突きつける。
「まずは武器を捨てろ。そうしなければ、こいつを殺す」
その言葉に、カズヤはぞっとした。
それが本気だと分かったからだ。
殺人を禁ずる禁書目録に違反する覚悟が、この男にはある。そして、従わなければ躊躇うことなくそれをやってのけるだろう。
それが分かった以上、カズヤにはそれを跳ね除けるという選択肢はない。
仕方なく、焔天剣をゆっくりと床に置く。
「鞘も置け……」
「……鞘は武器に入らないだろ」
「黙って従え。さもなければ……」
男はそう言うと、喉元に突きつけられた長剣の先端をわずかに刺した。
「分かった! ……すぐに置くからやめてくれ」
慌てて鞘を取り出し、焔天剣の隣に置く。すると男は更なる要求を突きつけてきた。
「その手にしてる指輪も外せ」
「……これも見えてるのかよ」
小さく呻きながら、指輪を外し床に置く。
あいつからは指輪は見えないはずなのに、何故指輪を嵌めていることに気付いたのか。やはりこいつは、俺をよく知る人物なのか。
「貴様のことはよく知っているからな……指輪一つでも脅威になり得る」
男は不意に、考えを見透かしたような発言をしてきた。
「……たかが魔道具一つでも脅威だと思ってくれるだけの評価はあるなんてな。俺のことも知ってるらしいし、俺たちどっかで会ったっけ?」
減らず口を叩くと、男は温度のない石のような瞳でカズヤを見た。
「貴様も俺を知っているさ……一年前に会っているのだからな」
「…………一年前に、俺がお前に会ってる?」
「忘れたのなら見せてやるよ……俺の素顔をな」
男はそう言うと、深くかぶっていたフードに手をかけ、ゆっくりと後ろに引いた。
そしてカズヤは、驚愕で息を呑んだ。
「お前は…………」
驚きを隠せずわななく唇からそれだけが零れ、震える指で男を指差した。
たしかに、俺はこいつを知っている。だが、すぐにその真実を受け入れることが出来なかった。
何故なら、男は一年前とは全く違う顔をしていたのだから。
火事に巻き込まれたのか、顔の皮膚は右半分がめくれており、痛々しい火傷跡を残している。右目は失っているのか、瞼を縫合され閉じられている。
何より、以前のこいつはこれだけの憎悪を抱いていなかった。
空間を歪ませるほどの激しい憎悪や怨念を持ち合わせており、先程の温度のない石のような瞳に、純粋な殺意を込めながらこちらを睨んでいる。
一年前のこいつは、こんな傷跡も負の感情も持っていなかった。だから素顔を確認してすぐに、誰だか分からなかった。
しかし、時間を経てようやく思い出すことが出来た。
「その顔……俺を思い出したようだな」
男は凍てついた声で言った。
悪魔の化身を思わせる男を指差しながら、カズヤはわななく唇からどうにか言葉を絞り出した。
「……ユーグ……お前、ユーグだな」
ユーグ。一年前の魔術剣修道学園入学試験の擬似決闘での不正行為が発覚したことで不合格となった男。
田舎者の俺を忌み嫌っていた、入学試験の時よりも憎悪を増幅させ豹変したユーグは、長剣を下ろすと妬ましく言った。
「覚えててくれてありがたいな。ま、もし忘れてたら、この女の首を跳ねていたがな」
そう言うと長剣をユリの柱に力強く叩きつける。柱の瓦礫屑が何個もユリの頭に落ちていき、砂埃が美しい顔を汚す。
一瞬の苛立ちをどうにか抑え込み、怒りを悟られないように落ち着いた雰囲気で尋ねた。
「お前、その顔は一体……」
焼けただれた皮膚で覆われた顔について指摘すると、ユーグは先の何倍もの憎悪を含ませた声で答えた。
「この傷はお前につけられたんだよ! 田舎者のゴミ屑風情が!」
最初の凍てつくような声から一変、怒号のようなけたたましい声を上げた。
「俺が……お前の顔に傷を付けただと?」
探りを入れるように問い返すと、柱に叩きつけた長剣を抜き、床に深々と突き立てた。そして、邪気を帯びた怒号で答えた。
「そうだよ! 貴様のせいで、俺の人生はめちゃくちゃに狂わされたんだよ!」
全く身に覚えのない主張を宣言すると、めくれた皮膚を鋭利な爪で掻きむしり始めた。皮膚の瘡蓋がベリベリと剥がれていき、剥がれた箇所からドス黒い色の液体が噴き出す。
悍ましい光景に吐き気を催しながら、懸命にユーグを見詰めた。
自分の右手が自らの液体で赤く染まると、数滴の血液を滴らせながら下げ、憎悪塗れの眼でこちらを鬼の形相で睨み付けていた。
ユーグから放たれる負の感情に圧倒されながら、俺はどうにか言葉を振り絞った。
「……この一年で、お前に一体何が起きたんだよ」
暗黒騎士と対峙した時同様の恐怖から目を背けながら、ユーグの現在に至るまでの経緯を尋ねると、長い沈黙を経てから、ゆっくりと答えた。
「……一年前。俺が行った不正行為が発覚し不合格になった。親父は俺に見切りをつけ、いないような存在に扱っていた」
静かに語るユーグの表情には、一筋の悲しみが滲み出ていた。
「それ以降俺は、屋敷内ではゴミ同然に扱われた。召使いは全員陰口を叩くようになり、兄上は俺に顔を合わせることさえなかった。敬愛する母上も、俺をまるでゴミ虫を見るような目を向けてくる始末だ」
思い出すだけでも腹立たしいのか、歯軋りする音がこちらにまで聞こえてくる。頭部には幾つも血管が破裂してしまうのではないかと思うほど膨らんでいた。
「だが屋敷内での扱いなんてどうでもよかった。以前から家族は俺に期待なんてしていなかったんだからな」
吐き捨てるように言うと、真っ赤に染まった右手を人差し指を突然持ち上げ、俺に突きつけてきた。
「俺が許せないのは、貴様に敗れたことだ!」
「……なんだと?」
「田舎から来た芋臭い貴様に敗れたことがどうしても許せなかったんだよ! あろうことか、高貴な人間である俺でさえ習得してない自作魔術なども使いやがって……」
突然真面目な話から子供みたいな言い草に唖然としながらも、カズヤはどこか納得していた。
貴族の末裔たるユーグは自尊心の塊のような男だ。毛嫌いしていた田舎者が自分よりも遥かに実力で優っていたことを、自らのプライドが許さなかったのだろう。
「俺は貴様が許せなかった! 怪しげな魔術を弄して勝利した貴様が! 本来俺様がいるべき席を剥奪した貴様が! 田舎者のくせに高貴な俺に逆らった貴様が!」
次々と上げられる憎しみの言葉は、最早嫉妬の類に思えるものばかりだった。
「領主の跡取りでもある俺が、平民出の貴様に負けたことが最も許せないんだよ! プライドも誇りも失った! だから貴様に復讐を誓ったんだ! 俺から全てを奪ったお前にな! この顔の傷は、あの時受けた屈辱を忘れないためにつけた、不名誉な傷なんだよ!」
言いたいことを全て言い終えたのか、乱れた呼吸を整えるように深呼吸を何度も繰り返した。
「どうだ……これで分かったか……貴様が犯した大罪が」
嘲るように囁く。奴はきっと、俺からの謝罪の言葉を待っているのだろう。
だが俺は、ユーグが待つ言葉とは全く異なる言葉を返した。
「お前って……本当に馬鹿だな」
放ったのは、罵倒言葉だった。
「一度負けたぐらいで俺を妬んで……関係ない人を巻き込んで……救いようのない馬鹿だよ、お前は」
侮辱的な発言をユーグに突きつけた。本来ならば人質を取られている立場故に犯人に刺激を与えるのは危険な行為ではあるが、自尊心の塊であるこいつならば、逆に侮辱し頭に血を昇らせれば、ユリを救い出せる隙が必ず生まれる。
事実ユーグは、これまで以上の憎悪を顔に刻みながら、今にもこちらに襲いかかりそうな勢いだ。
──そうだこい。ユリから離れた瞬間、顔面を地面に叩きつけてやる。
学園内でカズヤは、剣術や魔術以外にも体術を教授してもらっている。剣や魔術が主体の戦場に於いて需要は低いが、緊急時に役立つと思っていたのが、今役立つかもしれない。
思惑を悟られないよう険しい表情を崩さず、ユーグが飛びかかってくるのを待ち続ける。
だが、その作戦は儚く砕け散った。ユーグは先程まで狂気に歪めていた表情をすっと戻し、余裕の笑みを刻んだ。
「田舎者……何故俺様が、何の関係もない女を拉致したか分かるか?」
不意の問いに、カズヤは答えなかった。
「俺はな、半年もの間貴様を監視していたんだよ。無論、禁書目録違反にならない範囲でな」
「なんだと?」
「貴様に復讐するためならなんだってやるさ……知ってるぜ、四日前に中都近くの森にクラス全員で行ってたのを。普段は参加しないお前が、珍しく参加してたのもな」
四日前の親睦会も見られていたということは、まさか……、だから、ユリを……。
握りしめていた右拳に、じっとりと汗が滲むのをカズヤは意識した。
次に、本人が恐れていたことを口にした。
「そこで気づいたんだよ。お前とこいつの関係にな」
ユーグはそう言うと、ユリの頰を右手で摑み至近距離で覗き込むように顔を近づけた。怯える表情を楽しむようにしばらく黙っていたが、やがて芝居がかった仕草で大きく両腕を広げると高らかに叫んだ。
「俺はお前に癒えない傷を付けられた! だから貴様にも味合わせるんだよ! 将来を誓った女が苦しむ姿をな!」
言い放つや、ユーグは身を翻し──。
ユリが咥える猿轡を外し、こちらに放ってきた。
「や……嫌っ……!」
身をよじり、逃れようとするが、腕も足も拘束されているためままならない。ユーグの赤い右手が伸び、ユリの頰をぬるりと撫でる。
この時点でカズヤは、今から奴が行おうとしている行為を理解した。
ユーグはユリを、己の肉体で汚そうとしているんだ。将来を誓い夫婦となった男女にしか許されない行いを、強引に取り行おうとしているのだ。
そうと悟った瞬間、カズヤは叫んだ。
「これ以上罪を重ねるような真似はやめろユーグ! さもなくばお前をっ……!!」
床に置いてある焔天剣を握ろうと手を伸ばした瞬間、振り返ったユーグが両眼を爛々と光らせて言った。
「何を言っている……俺は一切罪を背負っていないぞ」
右手はユリの顔をなぶりつう、左手でカズヤを指差す。
「俺は禁書目録を違反していない。この嵐の中、こいつを安全な屋内に保護してるんだからな!」
突然放たれた支離滅裂な発言に抗議しようとしたが、一寸の隙もなく続く台詞に遮られた。
「これだけ吹き荒れる嵐だ……生命に関わる怪我を負う恐れもある。俺はそれを未然に防ぐためにこいつを地下に避難させた。いわば俺は、こいつの命の恩人だ。だから、最低限の奉仕をするのが礼儀だと思わないか?」
「……ふざけたことをっ!」
「寧ろ、俺の邪魔をすれば貴様が禁書目録を違反した罪人になるぞ。一切罪を犯していない一般人を切れば、殺人未遂で貴様が罪人になるのだからな!」
「そ……」
んなふざけた理屈、認められるか!
ユリから離れろ!
カズヤはそう叫ぼうとした。叫びつつユーグに飛びかかろうとした。だが。
いきなり両足が、床に根を張ったかの如く、勝手に止まった。勢い余ってがくんと膝を突いてしまう。慌てて立ち上がろうとするが、足に力が入らない。
頭の中では、『法を破れば全てを失う』という言葉が、何度も繰り返し鳴り響いている。
禁書目録がなんだ、たとえ罪人になってでも、関係のないユリを助けないと。確かにそう考えているのに、別の考えがそれを阻害する。
俺の目的は元の世界に帰ること。そのためには、十二主席で学園を卒業し、衛士隊から守護隊に入隊することが、今の俺の目的。禁書目録を違反してしまっては、全てが失われる。
「ぐ……っ……!!」
歯を食い縛り、阻害する思考に抗って右足を引っ張り上げる。そんなカズヤをちらりと見て、ユーグは嘲るように囁く。
「そうだ。そこで大人しく見てれば、全て終わる」
「う……ああっ……」
耳を貸さず、懸命に動かした右足でどうにか石畳を踏んだが、それ以上体を持ち上げることができない。もたついてる間にも、ユーグの汚らわしい手が、ユリに伸びている。
「────カズヤ君」
か細い声が聞こえ、カズヤは視線だけを動かした。
すると、ユーグに組み敷かれようとしているユリが、顔だけを向け、強い意志を宿した瞳で、まっすぐにカズヤを見ていた。
「私なら大丈夫だから……カズヤ君は、私が守るから……だからカズヤ君は、自分を責めたりしないで」
途切れ途切れの震え声だったが、ユリは毅然とそう言い切り、一つ頷いて顔を戻した。ユーグを一瞬睨んでから、ぎゅっと眼を瞑る。
一人の気高い少女の決意を目の当たりにして、ユーグは少し驚いたように身を引くと──
毒々しい笑みを浮かべた。
「大した覚悟だな。そんなにあの田舎者が好きだとはな……泣き叫ぶ声が楽しみだ」
人徳性の欠片もない台詞を口にするユーグには、ぎらつくような興奮と性欲だけに満ち満ちている。
こいつはまるで、一年半前に対峙した、魔界に住むゴブリンだ。セレナを連れ去り、俺を殺すことだけを考えていた亜人だ。
ユーグはユリの顔に手を伸ばすと、恐怖と恥辱を煽るように額や頰に指先を這わせた。唇の周りだけは巧妙に避けているのは、婚姻前の女性の唇へ合意なく意図的に接触することが禁じられているからだ。だが──それを禁じておきながら、婚姻前の少女を無理矢理凌辱することを許す法とは一体何だ? そのような行いを許す法に、存在意義や価値があるのか?
禁書目録は、人界に暮らす民が幸せな日々を過ごすために存在している。殺人・盗難・詐欺を万民が守っているから、人界は平和を保ててる。
しかし、ならばこそ、禁書目録は《禁ずる》だけなのか。おびただしい量の禁書条項を列挙せずとも、たった一つ簡潔に書けばいいではないか。
他者を尊重し、一人の人として敬意を払い、仁愛の心を持って接しよ。
禁書目録にその一文が存在すれば、今のような事件は起きなかったのに。
不可能なんだ。絶対の法を以てしても、すべての人間に善心のみを持たせることは出来ない。
俺は眼を背けていただけなんだ。異世界に来てから、ずっと元の世界の人間と異世界の人間を比べるのが嫌だった。それを認めてしまったら、世界が同じに見えてしまうから。
でも、今なら言える。元の世界で嫌というほど知った真実が、この世界にもあることが。
人間とは、もともと、善と悪の両方を持つ存在
異世界の人間が皆親切なのは、禁書目録によって善なる心を強要されていたから。
禁書目録は、人間の悪のほんの一部を押さえ込んでいるに過ぎない。だからユーグは、法の抜け道をすり抜け、無関係で何も知らない少女を汚すことが出来る。
無関係な少女が汚れるような法を守って……お前はそれでいいのか。
不意に、自分に問いかける。
将来に怯えた彼女に恐怖を与えようとする外道を見逃すことが、本当に正しい選択なのか。本当に正しい法なのか。
そんな法を守ることが、善だというのなら。一人の少女を見捨てることが善だというのなら。
「俺は…………」
カズヤは、床に横たわる焔天剣を握った。
鋭い刃を持つ相棒をユーグに向けた瞬間、俺の学園生活は終了し、全てを失うだろう。十二主席に上がることも、守護隊に入隊することも、セレナと再会することも、元の世界で俺の帰りを待つ家族に会うことも不可能になる。
だが、それらの目標は、目の前で純潔を散らそうとする彼女よりも大切なものなのか。彼女を見捨てて手に入れた功績を、俺は誇りに思えるのか。
十二主席という座は、ユリ以上に大切な肩書きじゃない。もしここでユーグの卑劣な行いを傍観していれば、俺は人として大切なものを失う。決して代用出来ない大切な──自分の心を。
例え法で禁じられていたとしても、しなくてはならないことがある。大切なものを守ることが、禁書目録よりも大切なもの。
自分の大切なものを守るために、俺は戦う。多くの人にとって、それが《悪》なのかもしれない。
「それでも…………俺は!」
声にならない声で叫ぶ。
自分の腕を懸命に、最大限の力を込める。
瞬間、右眼から頭の中央までを凄まじい激痛が貫く。真っ赤に染まった視界が広がり、意識が飛びかける。
なんなんだよ……これは。
…………また、この痛みが…………俺の邪魔を……
両の脚から地面に深い根が張ってしまったかのように、わずかにも動くことができない。
ユーグが異変に気付いたのか顔を向け、剣を握ったまま無様に固まるカズヤを見てニタリと嗤った。いっそうゆっくりと、見せつけるように、泣くのを我慢しているユリに腰を近づけていく。
そんな彼らの手前に、カズヤは真紅の視界を見た。
今なら分かる。これは、何らかの《呪い》だ。右眼に施されたこの呪いが、一年前のゴブリンの時も、ジュウオンジとの決闘の時も、この痛みが俺の行動を妨げていた。いや、今回だけは過去類に見ないほど強烈な激痛が襲っている。
「う……ぐ……ああ……!」
消し飛びそうになる意識を懸命に引き寄せながら、カズヤは深紅の視界を凝視した。そして、その向こうで、まさに少女の体を貫かんとしているユーグを。
ふざけるな……俺は、俺自身の意思で、ユリを助けると誓ったのに……。また、この痛みが俺の邪魔をするのか……そこまでして、自分の地位を守りたいと思うなら……俺は、俺は……!
自分自身に、抗ってやる! 俺の意思を、意地を見せてやる!
絶対に許さない。俺の大切な人を汚そうとするユーグを。奴への憎しみを力に変え、二本の足で立ち上がる。
ユーグの接近を感じた途端、ユリがこれまでに倍する恐怖と嫌悪に顔を歪めた。懇願するように激しく首を左右に振るが、ユーグはそれすら楽しむように、ゆっくりと、ゆっくりと体を近づけていく。
「い、嫌あああ────ッ!!」
ユリの叫びが耳に届いた瞬間、
「うっ……あ……あああああああああ!!」
カズヤは、高々と右拳を突き上げた。
そして、その指先を鉤爪のように曲げ。
激痛の源である右眼に、思い切り突き立てた。更なる激痛に耐えながら、右の眼球を一気に引き抜いた。
白い球体をぐしゃりと握り潰し、横に放り投げる。
眼球が抜き取られると、途端に右側の視界が真っ暗に陥り、灼熱の激痛のみが残るだけだった。
──助ける!! ユリだけは絶対に助ける!!
「う……おおおおおお────!!」
絶叫した、その刹那。
「ユ────グ!!」
ユリを貫く寸前だった外道に向けて、強力な炎素を宿した焔天剣が煌めく。
「なっ…………」
気付くのに遅れたユーグは短い悲鳴とともに、反射的に掲げられた左腕の肘あたりに、焔天剣が吸い込まれるように命中した。
ユーグの左腕は半ばから真っ二つに断ち切られ、くるくる炎上しながら回転し、石畳の上に落ちた。
「い……ああ……ああああ────!?」
甲高い絶叫が迸る。ぶしゅっ、と音を立てて大量の血液が切断面から噴き上がった。一部はカズヤの半身に降り注ぎ、白色の制服に赤黒い斑点を作った。
「き、貴様!! 俺の腕を──!?」
「ユリから……離れろ!!」
叫びを遮るように、顔面に向けて一発殴る。ユーグは後方に吹き飛び、端に置かれた用具に衝突した。
誰もが、しばらく動こうとも、声を上げようとしなかった。
やがて──。
「カズヤ……君……」
掠れたユリの声が、名を呼んだ。
カズヤは、残った左側の視界だけで彼女を捉え、安心させるように微笑み言った。
「もう大丈夫だよ、ユリ。俺が君を助けてみせる」
一階の階段前で見た真紅の液体は、何段もの間隔を空けながら床に付着している。濡れた足跡も同様に、最初に比べかなり水量を増して残っている。
確実にユリを連れた犯人はこの下にいる。しかも、連れ去ってからあまり時間が経っていない。
今すぐ階段を駆け下りたい衝動をどうにか抑えながら、現在自分が置かれてる状況を整理する。
まず犯人はユリを連れ去った。それだけで相当な実力者であることが分かる。
ユリは女の子ではあるが、曲者相手に遅れを取るほど弱くもない。不意打ちを受けた所で負けるとは到底思えない。
そんな彼女を気絶、もしくは殺害したとなれば、不審者はかなりの実力者だ。恐らく焔天剣一本しか持たない俺でも、勝てる可能性は半分に満たない。
最悪、完成した自作魔術を詠唱する可能性があるかもしれない。
だがそれは最後の手段。絶対に勝てないと判断した時以外に使ってはいけない。
自作魔術が完成したのは昨晩であり、まだ試験運用を一度もしていない。ワタルと一緒に考えたとはいえ、何かしらの不具合が生じる可能性もあるし、運が悪ければ暴発して学園が吹き飛ぶ。
だから、まだ無闇に詠唱するわけにはいかない。出来れば自作魔術を使わずにユリを取り戻したい所存だ。
それが、可能ならの話だが。
しかも運が悪く、俺は物置の地形・配置を全く知らない。先に到着している相手の方に地の利がある。
整理して分かったことは、状況は圧倒的に不利だということ。
魔術を使用出来るだけの空間魔素は漂っているため、魔術対決で時間を稼ぎ、その隙にユリを連れて逃げる作戦でいくしかない。
長い思慮を巡らせていると、カズヤは根本的な疑問に遅かれ気付き、一度考えを念頭に据え置いた。
犯人は何故、足跡や血痕を拭き取らずに残したのか。
この嵐の中学園に忍び込んだ犯人も、当然濡れている。にもかかわらず、何故足跡を消さずに残しているのか。これでは自分の居場所を教えているようなもの。
そこでカズヤの脳に、一つの不確立な結論が導き出された。
敢えて残した? 追跡出来るように、地下に誘き寄せるために、足跡を消さずに、敢えて残したのか?
瞬間、背筋に悪寒が走った。
ユリを学園で拉致し、最も関係深い誰かを地下に誘き寄せるために、敢えて痕跡を残しているのか?
そして誘き寄せられたのは、俺。
もしや犯人は、俺を誘き寄せるためにユリを拉致したのか。だとしたら、犯人は俺を憎むか恨んでいる誰かになる。
だが何故だ? 関係ないユリを拉致したところで俺が来るとは限らない。彼女と最も仲が良いサヤの可能性だってあるし、人望がある彼女ならクラス総出だってあり得る。俺は、彼女と親しくなったのはつい最近だ。
しかしこれは、見方を変えてしまえばこうなる。相手は俺の性格を熟知していると。
犯人は俺を憎む誰か。憎むとなれば、俺が今一番大切な人や物を壊そうと考える。そして最近になって、ユリという大切な人が出来た。
そして犯人は、犯行に及んだ。俺──カズヤならば、絶対に助けに来ると踏んで。そして案の定、俺は学園に入ってきている。
そこで考察を止めた。この結論は確信性に欠ける、単なる憶測だ。決定打に欠けた結論などに翻弄されていては、これから対峙する犯人からユリを救出できない。
憶測を振り払うと、長く続いた道のりが終わり地下に到着した。
地下に降りると、すぐに巨大な扉に行き当たった。
「……ユリ」
静かに名を呟き、ゆっくりと扉を開ける。隙間から冷たく湿った風が一気に吹き出し、思わず両眼を閉じる。
風が止んでから、両眼をゆっくりと開く。そこは寮のエントランスと同じようなホールが広がっており、あちこちに行事用の用具が置かれている。天井はあまり高くなく、柱がかなり多く立っている。
あちこちにランタンのような明かりが掲げてあるが、メインとなる照明が点いていないため全体的には薄暗い印象だ。ただ、ところどころに他よりもずっと明るい照明があり、その一つに小さな女の子が照らされていた。
女の子は手足を拘束され、柱に寄りかかるような姿勢でぐったりとうなだれている。
「ユリ!」
部屋中に声が響くと、ユリははっとしたように顔を上げた。
「んんんんー!」
猿轡を噛まされているのか何を言っているのか一切分からないが、ぶんぶんと大きく首を横に振る。
瞬間、カズヤは不意に殺気を感じて大きく横に飛び退いた。
僅かに遅れて、柱の影から飛び出してきた黒い矢が、先ほどまでカズヤが立っていた空間を刺し貫く。
更に他の影からも同じような矢が次々と飛び出し、カズヤを狙う。
「くっ……!」
小さな呻き声を上げ攻撃をかわしていくが、どれもかなり際どい。どこから飛んでくるか、まるで予想がつかないのだ。その上、慣れない地形に視界の悪さから上手く動くことが出来ない。
避け続けることが出来ても反撃に出ることが出来ない。このままでは疲労が溜まり思うように動けなくなる。そうなる前に反撃しなければ。
まずは攻撃情報の分析。
相手の攻撃手段は魔術。矢を放つ音などは聞こえず、空間魔素が歪む瞬間を捉えることが出来た。
カズヤは矢を避けながら現状を打破案を一瞬で思い付き、即実行に移した。
六度目の攻撃を後方に大きく飛び退き、着地と同時に炎素を詠唱。
「そこだ!」
左の柱目掛けて炎素を放つと、柱の内部に貼り付けられていた魔法陣が露わになる。再度炎素を詠唱し、魔法陣の中央に向けて放つ。すると魔法陣は光の結晶となり消え去った。
六回も攻撃をかわせば、攻撃の規則性にも気付く。
攻撃は全て着地した場所に近く死角になる柱から飛んできている。暗がりの中で特定するのは難しかったが、一瞬の空間魔素の揺らぎを感知すればどうってことない。
後は矢が放たれるよりも先に自動発動設定された魔法陣を崩壊させれば、連鎖的に発動する魔術の包囲網から脱することが出来る。
「なるほど……流石は名門校の生徒だな」
予想通り攻撃がピタリと止むと、ユリが寄りかかっていた柱の影から一人の男が姿を現した。フードを深くかぶっているせいで男の顔は確認出来ないが、凍てつくようで、まるで感情らしきものが感じられない声をしている。
「……お前がユリを拉致した犯人か」
「そうだと言ったら、どうする……」
犯人は簡潔に答えると、どこからともなく出現した一本の長剣をユリの首元に突きつける。
「まずは武器を捨てろ。そうしなければ、こいつを殺す」
その言葉に、カズヤはぞっとした。
それが本気だと分かったからだ。
殺人を禁ずる禁書目録に違反する覚悟が、この男にはある。そして、従わなければ躊躇うことなくそれをやってのけるだろう。
それが分かった以上、カズヤにはそれを跳ね除けるという選択肢はない。
仕方なく、焔天剣をゆっくりと床に置く。
「鞘も置け……」
「……鞘は武器に入らないだろ」
「黙って従え。さもなければ……」
男はそう言うと、喉元に突きつけられた長剣の先端をわずかに刺した。
「分かった! ……すぐに置くからやめてくれ」
慌てて鞘を取り出し、焔天剣の隣に置く。すると男は更なる要求を突きつけてきた。
「その手にしてる指輪も外せ」
「……これも見えてるのかよ」
小さく呻きながら、指輪を外し床に置く。
あいつからは指輪は見えないはずなのに、何故指輪を嵌めていることに気付いたのか。やはりこいつは、俺をよく知る人物なのか。
「貴様のことはよく知っているからな……指輪一つでも脅威になり得る」
男は不意に、考えを見透かしたような発言をしてきた。
「……たかが魔道具一つでも脅威だと思ってくれるだけの評価はあるなんてな。俺のことも知ってるらしいし、俺たちどっかで会ったっけ?」
減らず口を叩くと、男は温度のない石のような瞳でカズヤを見た。
「貴様も俺を知っているさ……一年前に会っているのだからな」
「…………一年前に、俺がお前に会ってる?」
「忘れたのなら見せてやるよ……俺の素顔をな」
男はそう言うと、深くかぶっていたフードに手をかけ、ゆっくりと後ろに引いた。
そしてカズヤは、驚愕で息を呑んだ。
「お前は…………」
驚きを隠せずわななく唇からそれだけが零れ、震える指で男を指差した。
たしかに、俺はこいつを知っている。だが、すぐにその真実を受け入れることが出来なかった。
何故なら、男は一年前とは全く違う顔をしていたのだから。
火事に巻き込まれたのか、顔の皮膚は右半分がめくれており、痛々しい火傷跡を残している。右目は失っているのか、瞼を縫合され閉じられている。
何より、以前のこいつはこれだけの憎悪を抱いていなかった。
空間を歪ませるほどの激しい憎悪や怨念を持ち合わせており、先程の温度のない石のような瞳に、純粋な殺意を込めながらこちらを睨んでいる。
一年前のこいつは、こんな傷跡も負の感情も持っていなかった。だから素顔を確認してすぐに、誰だか分からなかった。
しかし、時間を経てようやく思い出すことが出来た。
「その顔……俺を思い出したようだな」
男は凍てついた声で言った。
悪魔の化身を思わせる男を指差しながら、カズヤはわななく唇からどうにか言葉を絞り出した。
「……ユーグ……お前、ユーグだな」
ユーグ。一年前の魔術剣修道学園入学試験の擬似決闘での不正行為が発覚したことで不合格となった男。
田舎者の俺を忌み嫌っていた、入学試験の時よりも憎悪を増幅させ豹変したユーグは、長剣を下ろすと妬ましく言った。
「覚えててくれてありがたいな。ま、もし忘れてたら、この女の首を跳ねていたがな」
そう言うと長剣をユリの柱に力強く叩きつける。柱の瓦礫屑が何個もユリの頭に落ちていき、砂埃が美しい顔を汚す。
一瞬の苛立ちをどうにか抑え込み、怒りを悟られないように落ち着いた雰囲気で尋ねた。
「お前、その顔は一体……」
焼けただれた皮膚で覆われた顔について指摘すると、ユーグは先の何倍もの憎悪を含ませた声で答えた。
「この傷はお前につけられたんだよ! 田舎者のゴミ屑風情が!」
最初の凍てつくような声から一変、怒号のようなけたたましい声を上げた。
「俺が……お前の顔に傷を付けただと?」
探りを入れるように問い返すと、柱に叩きつけた長剣を抜き、床に深々と突き立てた。そして、邪気を帯びた怒号で答えた。
「そうだよ! 貴様のせいで、俺の人生はめちゃくちゃに狂わされたんだよ!」
全く身に覚えのない主張を宣言すると、めくれた皮膚を鋭利な爪で掻きむしり始めた。皮膚の瘡蓋がベリベリと剥がれていき、剥がれた箇所からドス黒い色の液体が噴き出す。
悍ましい光景に吐き気を催しながら、懸命にユーグを見詰めた。
自分の右手が自らの液体で赤く染まると、数滴の血液を滴らせながら下げ、憎悪塗れの眼でこちらを鬼の形相で睨み付けていた。
ユーグから放たれる負の感情に圧倒されながら、俺はどうにか言葉を振り絞った。
「……この一年で、お前に一体何が起きたんだよ」
暗黒騎士と対峙した時同様の恐怖から目を背けながら、ユーグの現在に至るまでの経緯を尋ねると、長い沈黙を経てから、ゆっくりと答えた。
「……一年前。俺が行った不正行為が発覚し不合格になった。親父は俺に見切りをつけ、いないような存在に扱っていた」
静かに語るユーグの表情には、一筋の悲しみが滲み出ていた。
「それ以降俺は、屋敷内ではゴミ同然に扱われた。召使いは全員陰口を叩くようになり、兄上は俺に顔を合わせることさえなかった。敬愛する母上も、俺をまるでゴミ虫を見るような目を向けてくる始末だ」
思い出すだけでも腹立たしいのか、歯軋りする音がこちらにまで聞こえてくる。頭部には幾つも血管が破裂してしまうのではないかと思うほど膨らんでいた。
「だが屋敷内での扱いなんてどうでもよかった。以前から家族は俺に期待なんてしていなかったんだからな」
吐き捨てるように言うと、真っ赤に染まった右手を人差し指を突然持ち上げ、俺に突きつけてきた。
「俺が許せないのは、貴様に敗れたことだ!」
「……なんだと?」
「田舎から来た芋臭い貴様に敗れたことがどうしても許せなかったんだよ! あろうことか、高貴な人間である俺でさえ習得してない自作魔術なども使いやがって……」
突然真面目な話から子供みたいな言い草に唖然としながらも、カズヤはどこか納得していた。
貴族の末裔たるユーグは自尊心の塊のような男だ。毛嫌いしていた田舎者が自分よりも遥かに実力で優っていたことを、自らのプライドが許さなかったのだろう。
「俺は貴様が許せなかった! 怪しげな魔術を弄して勝利した貴様が! 本来俺様がいるべき席を剥奪した貴様が! 田舎者のくせに高貴な俺に逆らった貴様が!」
次々と上げられる憎しみの言葉は、最早嫉妬の類に思えるものばかりだった。
「領主の跡取りでもある俺が、平民出の貴様に負けたことが最も許せないんだよ! プライドも誇りも失った! だから貴様に復讐を誓ったんだ! 俺から全てを奪ったお前にな! この顔の傷は、あの時受けた屈辱を忘れないためにつけた、不名誉な傷なんだよ!」
言いたいことを全て言い終えたのか、乱れた呼吸を整えるように深呼吸を何度も繰り返した。
「どうだ……これで分かったか……貴様が犯した大罪が」
嘲るように囁く。奴はきっと、俺からの謝罪の言葉を待っているのだろう。
だが俺は、ユーグが待つ言葉とは全く異なる言葉を返した。
「お前って……本当に馬鹿だな」
放ったのは、罵倒言葉だった。
「一度負けたぐらいで俺を妬んで……関係ない人を巻き込んで……救いようのない馬鹿だよ、お前は」
侮辱的な発言をユーグに突きつけた。本来ならば人質を取られている立場故に犯人に刺激を与えるのは危険な行為ではあるが、自尊心の塊であるこいつならば、逆に侮辱し頭に血を昇らせれば、ユリを救い出せる隙が必ず生まれる。
事実ユーグは、これまで以上の憎悪を顔に刻みながら、今にもこちらに襲いかかりそうな勢いだ。
──そうだこい。ユリから離れた瞬間、顔面を地面に叩きつけてやる。
学園内でカズヤは、剣術や魔術以外にも体術を教授してもらっている。剣や魔術が主体の戦場に於いて需要は低いが、緊急時に役立つと思っていたのが、今役立つかもしれない。
思惑を悟られないよう険しい表情を崩さず、ユーグが飛びかかってくるのを待ち続ける。
だが、その作戦は儚く砕け散った。ユーグは先程まで狂気に歪めていた表情をすっと戻し、余裕の笑みを刻んだ。
「田舎者……何故俺様が、何の関係もない女を拉致したか分かるか?」
不意の問いに、カズヤは答えなかった。
「俺はな、半年もの間貴様を監視していたんだよ。無論、禁書目録違反にならない範囲でな」
「なんだと?」
「貴様に復讐するためならなんだってやるさ……知ってるぜ、四日前に中都近くの森にクラス全員で行ってたのを。普段は参加しないお前が、珍しく参加してたのもな」
四日前の親睦会も見られていたということは、まさか……、だから、ユリを……。
握りしめていた右拳に、じっとりと汗が滲むのをカズヤは意識した。
次に、本人が恐れていたことを口にした。
「そこで気づいたんだよ。お前とこいつの関係にな」
ユーグはそう言うと、ユリの頰を右手で摑み至近距離で覗き込むように顔を近づけた。怯える表情を楽しむようにしばらく黙っていたが、やがて芝居がかった仕草で大きく両腕を広げると高らかに叫んだ。
「俺はお前に癒えない傷を付けられた! だから貴様にも味合わせるんだよ! 将来を誓った女が苦しむ姿をな!」
言い放つや、ユーグは身を翻し──。
ユリが咥える猿轡を外し、こちらに放ってきた。
「や……嫌っ……!」
身をよじり、逃れようとするが、腕も足も拘束されているためままならない。ユーグの赤い右手が伸び、ユリの頰をぬるりと撫でる。
この時点でカズヤは、今から奴が行おうとしている行為を理解した。
ユーグはユリを、己の肉体で汚そうとしているんだ。将来を誓い夫婦となった男女にしか許されない行いを、強引に取り行おうとしているのだ。
そうと悟った瞬間、カズヤは叫んだ。
「これ以上罪を重ねるような真似はやめろユーグ! さもなくばお前をっ……!!」
床に置いてある焔天剣を握ろうと手を伸ばした瞬間、振り返ったユーグが両眼を爛々と光らせて言った。
「何を言っている……俺は一切罪を背負っていないぞ」
右手はユリの顔をなぶりつう、左手でカズヤを指差す。
「俺は禁書目録を違反していない。この嵐の中、こいつを安全な屋内に保護してるんだからな!」
突然放たれた支離滅裂な発言に抗議しようとしたが、一寸の隙もなく続く台詞に遮られた。
「これだけ吹き荒れる嵐だ……生命に関わる怪我を負う恐れもある。俺はそれを未然に防ぐためにこいつを地下に避難させた。いわば俺は、こいつの命の恩人だ。だから、最低限の奉仕をするのが礼儀だと思わないか?」
「……ふざけたことをっ!」
「寧ろ、俺の邪魔をすれば貴様が禁書目録を違反した罪人になるぞ。一切罪を犯していない一般人を切れば、殺人未遂で貴様が罪人になるのだからな!」
「そ……」
んなふざけた理屈、認められるか!
ユリから離れろ!
カズヤはそう叫ぼうとした。叫びつつユーグに飛びかかろうとした。だが。
いきなり両足が、床に根を張ったかの如く、勝手に止まった。勢い余ってがくんと膝を突いてしまう。慌てて立ち上がろうとするが、足に力が入らない。
頭の中では、『法を破れば全てを失う』という言葉が、何度も繰り返し鳴り響いている。
禁書目録がなんだ、たとえ罪人になってでも、関係のないユリを助けないと。確かにそう考えているのに、別の考えがそれを阻害する。
俺の目的は元の世界に帰ること。そのためには、十二主席で学園を卒業し、衛士隊から守護隊に入隊することが、今の俺の目的。禁書目録を違反してしまっては、全てが失われる。
「ぐ……っ……!!」
歯を食い縛り、阻害する思考に抗って右足を引っ張り上げる。そんなカズヤをちらりと見て、ユーグは嘲るように囁く。
「そうだ。そこで大人しく見てれば、全て終わる」
「う……ああっ……」
耳を貸さず、懸命に動かした右足でどうにか石畳を踏んだが、それ以上体を持ち上げることができない。もたついてる間にも、ユーグの汚らわしい手が、ユリに伸びている。
「────カズヤ君」
か細い声が聞こえ、カズヤは視線だけを動かした。
すると、ユーグに組み敷かれようとしているユリが、顔だけを向け、強い意志を宿した瞳で、まっすぐにカズヤを見ていた。
「私なら大丈夫だから……カズヤ君は、私が守るから……だからカズヤ君は、自分を責めたりしないで」
途切れ途切れの震え声だったが、ユリは毅然とそう言い切り、一つ頷いて顔を戻した。ユーグを一瞬睨んでから、ぎゅっと眼を瞑る。
一人の気高い少女の決意を目の当たりにして、ユーグは少し驚いたように身を引くと──
毒々しい笑みを浮かべた。
「大した覚悟だな。そんなにあの田舎者が好きだとはな……泣き叫ぶ声が楽しみだ」
人徳性の欠片もない台詞を口にするユーグには、ぎらつくような興奮と性欲だけに満ち満ちている。
こいつはまるで、一年半前に対峙した、魔界に住むゴブリンだ。セレナを連れ去り、俺を殺すことだけを考えていた亜人だ。
ユーグはユリの顔に手を伸ばすと、恐怖と恥辱を煽るように額や頰に指先を這わせた。唇の周りだけは巧妙に避けているのは、婚姻前の女性の唇へ合意なく意図的に接触することが禁じられているからだ。だが──それを禁じておきながら、婚姻前の少女を無理矢理凌辱することを許す法とは一体何だ? そのような行いを許す法に、存在意義や価値があるのか?
禁書目録は、人界に暮らす民が幸せな日々を過ごすために存在している。殺人・盗難・詐欺を万民が守っているから、人界は平和を保ててる。
しかし、ならばこそ、禁書目録は《禁ずる》だけなのか。おびただしい量の禁書条項を列挙せずとも、たった一つ簡潔に書けばいいではないか。
他者を尊重し、一人の人として敬意を払い、仁愛の心を持って接しよ。
禁書目録にその一文が存在すれば、今のような事件は起きなかったのに。
不可能なんだ。絶対の法を以てしても、すべての人間に善心のみを持たせることは出来ない。
俺は眼を背けていただけなんだ。異世界に来てから、ずっと元の世界の人間と異世界の人間を比べるのが嫌だった。それを認めてしまったら、世界が同じに見えてしまうから。
でも、今なら言える。元の世界で嫌というほど知った真実が、この世界にもあることが。
人間とは、もともと、善と悪の両方を持つ存在
異世界の人間が皆親切なのは、禁書目録によって善なる心を強要されていたから。
禁書目録は、人間の悪のほんの一部を押さえ込んでいるに過ぎない。だからユーグは、法の抜け道をすり抜け、無関係で何も知らない少女を汚すことが出来る。
無関係な少女が汚れるような法を守って……お前はそれでいいのか。
不意に、自分に問いかける。
将来に怯えた彼女に恐怖を与えようとする外道を見逃すことが、本当に正しい選択なのか。本当に正しい法なのか。
そんな法を守ることが、善だというのなら。一人の少女を見捨てることが善だというのなら。
「俺は…………」
カズヤは、床に横たわる焔天剣を握った。
鋭い刃を持つ相棒をユーグに向けた瞬間、俺の学園生活は終了し、全てを失うだろう。十二主席に上がることも、守護隊に入隊することも、セレナと再会することも、元の世界で俺の帰りを待つ家族に会うことも不可能になる。
だが、それらの目標は、目の前で純潔を散らそうとする彼女よりも大切なものなのか。彼女を見捨てて手に入れた功績を、俺は誇りに思えるのか。
十二主席という座は、ユリ以上に大切な肩書きじゃない。もしここでユーグの卑劣な行いを傍観していれば、俺は人として大切なものを失う。決して代用出来ない大切な──自分の心を。
例え法で禁じられていたとしても、しなくてはならないことがある。大切なものを守ることが、禁書目録よりも大切なもの。
自分の大切なものを守るために、俺は戦う。多くの人にとって、それが《悪》なのかもしれない。
「それでも…………俺は!」
声にならない声で叫ぶ。
自分の腕を懸命に、最大限の力を込める。
瞬間、右眼から頭の中央までを凄まじい激痛が貫く。真っ赤に染まった視界が広がり、意識が飛びかける。
なんなんだよ……これは。
…………また、この痛みが…………俺の邪魔を……
両の脚から地面に深い根が張ってしまったかのように、わずかにも動くことができない。
ユーグが異変に気付いたのか顔を向け、剣を握ったまま無様に固まるカズヤを見てニタリと嗤った。いっそうゆっくりと、見せつけるように、泣くのを我慢しているユリに腰を近づけていく。
そんな彼らの手前に、カズヤは真紅の視界を見た。
今なら分かる。これは、何らかの《呪い》だ。右眼に施されたこの呪いが、一年前のゴブリンの時も、ジュウオンジとの決闘の時も、この痛みが俺の行動を妨げていた。いや、今回だけは過去類に見ないほど強烈な激痛が襲っている。
「う……ぐ……ああ……!」
消し飛びそうになる意識を懸命に引き寄せながら、カズヤは深紅の視界を凝視した。そして、その向こうで、まさに少女の体を貫かんとしているユーグを。
ふざけるな……俺は、俺自身の意思で、ユリを助けると誓ったのに……。また、この痛みが俺の邪魔をするのか……そこまでして、自分の地位を守りたいと思うなら……俺は、俺は……!
自分自身に、抗ってやる! 俺の意思を、意地を見せてやる!
絶対に許さない。俺の大切な人を汚そうとするユーグを。奴への憎しみを力に変え、二本の足で立ち上がる。
ユーグの接近を感じた途端、ユリがこれまでに倍する恐怖と嫌悪に顔を歪めた。懇願するように激しく首を左右に振るが、ユーグはそれすら楽しむように、ゆっくりと、ゆっくりと体を近づけていく。
「い、嫌あああ────ッ!!」
ユリの叫びが耳に届いた瞬間、
「うっ……あ……あああああああああ!!」
カズヤは、高々と右拳を突き上げた。
そして、その指先を鉤爪のように曲げ。
激痛の源である右眼に、思い切り突き立てた。更なる激痛に耐えながら、右の眼球を一気に引き抜いた。
白い球体をぐしゃりと握り潰し、横に放り投げる。
眼球が抜き取られると、途端に右側の視界が真っ暗に陥り、灼熱の激痛のみが残るだけだった。
──助ける!! ユリだけは絶対に助ける!!
「う……おおおおおお────!!」
絶叫した、その刹那。
「ユ────グ!!」
ユリを貫く寸前だった外道に向けて、強力な炎素を宿した焔天剣が煌めく。
「なっ…………」
気付くのに遅れたユーグは短い悲鳴とともに、反射的に掲げられた左腕の肘あたりに、焔天剣が吸い込まれるように命中した。
ユーグの左腕は半ばから真っ二つに断ち切られ、くるくる炎上しながら回転し、石畳の上に落ちた。
「い……ああ……ああああ────!?」
甲高い絶叫が迸る。ぶしゅっ、と音を立てて大量の血液が切断面から噴き上がった。一部はカズヤの半身に降り注ぎ、白色の制服に赤黒い斑点を作った。
「き、貴様!! 俺の腕を──!?」
「ユリから……離れろ!!」
叫びを遮るように、顔面に向けて一発殴る。ユーグは後方に吹き飛び、端に置かれた用具に衝突した。
誰もが、しばらく動こうとも、声を上げようとしなかった。
やがて──。
「カズヤ……君……」
掠れたユリの声が、名を呼んだ。
カズヤは、残った左側の視界だけで彼女を捉え、安心させるように微笑み言った。
「もう大丈夫だよ、ユリ。俺が君を助けてみせる」
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