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第三部・二章 血流大戦(前編)
第八話
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激戦の続く峡谷から役五百メル離れて布陣する、魔界侵攻軍第二部隊の最後方。
暗黒騎士団団長の地竜戦車には見劣りするが、それでも充分に豪奢な四輪馬車の二階席に、肌も露わな長身の女が腕組みをして立っている。五種会議の一人、女性専用暗黒騎士団団長ラビリア・テン・ナーチスである。
脇に控える黒衣の伝令騎士が、主人を見上げて低い声で告げた。
「ダバ殿、ソロチ殿、ザンバ殿、共に討ち死にとのこと」
途端、ラビリアは唇を歪めて吐き捨てる。
「使えぬ……所詮は頭の足りない亜人どもか」
艶やかな胸元の肌に垂らした首飾りをちらりと一瞥。銀の円環に十二の貴石を配したそれは、色合いの変化で時刻を教えるという秘蔵の神器だ。六時の石が光っており、七時の石はいまだ闇色。つまり、午後六時の開戦から、わずか二十分ほどしか経過していないことになる。
「天界の騎士どもの位置は摑めたか」
苛立ちを隠せない声で訊ねると、伝令騎士は短い術式を唱え、戦場に潜む騎士の応答に耳を傾けてから答えた。
「最前線に視認できた三名は照準済みです。後方にはもう二名を発見していますが、位置固定にはいましばらく」
「まだたった五人か。あるいは、そもそも数が少ないのか……。しかし、どうあれその五人は確実に屠らねば……」
ラビリアは、皇帝を前にした時の媚態とはかけ離れた冷酷な表情でひとりごちると、少し考え、命じた。
「よし、マガツヒを出せ。命令は……」
眼を細めて、崩壊した大門とその彼方の戦線までの距離を測り、続ける。
「……《八百メル飛行》、《無制限殲滅》だ」
「その距離ですと、最前線の亜人部隊を巻き込みますが」
「構わん」
無感動に言い切る。
伝令の騎士も、一切の感情を見せずに「は」と頷いたから問いを重ねた。
「数は如何なさいます。デーモン族から授かった八百体、全て運んできておりますが」
「ふむ、そうだな……」
ラビリアは更に数瞬、思考を巡らせた。
デーモンから授かったマガツヒは、彼女にとってはゴブリンなどよりもよほど貴重な戦力だ。出し惜しみしたいのはやまやまだが、前線の亜人がまるで役に立っていない。
「……八百、全部だ」
命じた唇に、酷薄な笑みが浮かんだ。
ラビリアの秘めたる野望。それは、この戦に勝利して《特異点》とやらを手に入れれば再び地の底に戻るという邪教神から、皇帝の位を受け継ぐこと。亡き姉、フロリダ・テン・ナーチスの願いは、妹である私が叶える。
帝位に就いた暁には、魔界全土だけではない。人界全土を支配する。
邪教神様にも不可能だった全世界の征服を成し遂げ、すべてをむさぼる。
不老不死。永遠の美。
ラビリアは、背筋を這い登る甘美な戦慄に身を震わせた。青く塗った唇を、赤い舌先でちらりと舐める。
ちょうどその時、伝令騎士の指令が前方の女性騎士団に行き渡り、闇の翼を得たかの如く、漆黒の人造怪物が一斉に飛び立った。
ぬらりと光る皮膚に篝火を反射させながら、八百体のマガツヒは命じられるままに上昇し、まっすぐに峡谷目指して飛んでいって。
***
──来た。
騎士長ヒサカゲは、開戦からずっと彫刻のように引き結んでいた口許に、にやりと太い笑みを刻んだ。
大門手前の上空に保持していた斬撃空間に、多くの飛行兵が侵入してくるのを察知したのだ。
暗黒騎士が駆る飛竜ではない。泥のように冷たく、魂を持たない人形どもの気配。
しかし、まだ発動はさせない。敵の放ったマガツヒの全てが空間に呑み込まれるまで、たっぷりと引き付ける。
ヒサカゲの研ぎ澄まされた知覚は、すでにルキウスやテレーゼの奮戦と、キクノの覚醒までをも捉えていた。
侵略軍先陣の将を三人とも討ったとなれば、もうこの局面で戦線が押し込まれることはない。あとは、目論見どおり上空で待機する特異点が空間魔素を根こそぎ使い果たして敵の第二陣を無力化してくれれば、無傷の守備軍第二部隊で敵の主力である暗黒騎士団とデーモン部隊を迎え撃てる。
自分の、真の出番はその先だろう、とヒサカゲは推測していた。
ヒサカゲは、この戦が己の死地だと既に察している。恐らく、数日前に遥か東方で感じた邪悪な気配──あれこそ、自分の最後の敵だろう。
最古の騎士として、人界創成期から無限にも等しい年月を生きてきたヒサカゲの願いは、人界と魔界の無血融和を成し遂げること。無為に命を散らさず、対話による和平こそが、ヒサカゲの夢。
しかし、凍てつく虚無にも来た気配の持ち主──邪教神が降り立ったせいで、望みは絶たれた。
闘争本能さえ埋め込まれなければ、無為に血が流れることもなかったのに。
かくなる上は、邪教神の首を取るしかない。そこで自分の命が終わるとしても。
生への執着は、彼の中には欠片も残っていなかった。
死すべき時宜を得たならば、ただ死するのみ。
ルキウス配下の下位騎士イオが、いまわの際に放ったその意思に、ヒサカゲは見事と感嘆すると同時にかすかな羨望を覚えてもいた。
とはいえ無論、いまはまだその時ではない。
上空の暗闇を切り裂いて侵入してくるマガツヒの群れが、ようやく斬撃空間に残らず呑み込まれた。
ヒサカゲは両眼を爛と見開き、地面に突き立てていた愛剣《斬穿剣》を、ゆったりとした動作で大上段に振りかぶった。
「────シッ!!」
気合一閃、虚空を白刃が切り裂く。
同時に、前方上空で、無数の白い光条が立体の格子模様を描いて眩く輝いた。
奇怪な断末魔の大合唱に続いて、どす黒い雨が敵亜人部隊の頭上に滝のように降り注いだ。それが将を失った部隊の混乱に拍車をかけた。
これまでまったくの無感情を貫いていた伝令騎士の声に、かすかな怯えの響きを聞き取った時点で、ラビリアは不吉な予感に囚われた。それは一秒後、現実へと変わった。
「恐れながら団長……マガツヒ八百体、降下直前に全滅した模様でございます」
「な…………」
絶句。
続いた破砕音は、馬車の床に叩きつけられた高価な水晶杯の悲鳴だ。
「何ゆえだ! 敵に大規模な魔術師隊がいたとしても不可能だぞ!」
それ以前に、魔術耐性を持つマガツヒを魔術で屠ること自体が不可能に等しい。最も有効なのは鋭利な刃による斬撃だが、空中にいるマガツヒに地上の兵どもの剣が届くはずがない。
「……敵の飛竜はまだ出ていないのだな?」
どうにか怒りを抑え込み、ラビリアは訊ねた。伝令騎士が、低く頭を垂れたまま肯定する。
「戦場上空に、現時点まで一匹の飛竜も確認しておりません」
「となると……アレか。騎士どもの切り札……《解放術》。しかし……よもや、これほどの……」
語尾を呑み込みながら、剥き出した糸切り歯をぎりりと擦り合わせる。
解放術についての情報収集は何度も試みている。しかし、いかんせん実例を目撃することすら至難だったのだ。神器と騎士本人の相性がいい、ということくらいしか解明できていない。
「だが、あれだけの範囲を維持するとなれば、騎士自身もかなり消耗してるはず。そうそう連発はできまい……」
全力で思考を回転させながら、ラビリアはそう呟いた時。
前線からの報告に耳を傾けていた伝令騎士がさっと顔を上げ、わずかに張りの戻った声で伝えた。
「団長、後方の騎士二名の位置把握、完了いたしました。合わせて五の目標を標準中」
「……よし」
頷き、更に考える。
最大の不確定要素たる騎士を消費させるべく、魔界軍主力の暗黒騎士団とデーモン部隊を投入するか。それとも、全勢力を投下し、一気に勝負を決めるか。
ラビリアは本来、念入りに策を巡らせ、万難を排してから動く用心深い性格だ。
しかし、マガツヒ八百体を瞬時に喪失するという予想外の展開が、彼女を自覚なき焦燥に追い込んでいた。
新たな水晶杯に黒紫色の酒を満たしながら、ラビリアは自分に言い聞かせた。
──私は優秀だ。今こそ、最初の栄光を摑み取る時。
ひと息に干した杯を掲げ、ラビリア・テン・ナーチスは高らかに命じた。
「第二部隊、総員前進! 峡谷に進入後、闇魔術で一掃せよ!!」
***
ぐるるる……。
高く、鋭い喉声。守護竜《戴天》が、主人に警告しているのだ。
カズヤは、労うように首筋を撫でながら、囁いた。
「大丈夫、心配すんな」
だが、実際のところは、まったく大丈夫ではない。視界は奇妙に歪み、呼吸は荒く、手足は氷のように冷たい。今この瞬間に気を失ってもおかしくない。
カズヤを消耗させているのは、開戦直後から詠唱を続けている、今にも暴発しそうなまでに内圧を高めた巨大魔術だけではない。
騎士。衛士。敵たるゴブリン、ジャイアント。凄まじい勢いで喪われていく命たちの、消え去る瞬間の恐怖や悲哀、絶望がカズヤを絶え間なく苛む。
かつてのカズヤは、魔界の民の生き死になど気にかけたことさえなかった。
人界での長い暮らしを経て、民たちの懸命な営みの貴さを知り、それを守るべきものだという認識は心得ている。しかし魔界に暮らす者たちに思いを致すまでには至らなかった。事実、この手で何人もの亜人を躊躇いもなく殲滅している。
魔界の民は血も涙もない侵略者であり、一兵残らず討ち果たすべき敵。
そう思わなければ、戦えなかった。
分かっている。眼下の戦場で次々と倒れる両軍の兵士は、まったく同質なことぐらい。全てが同じように温かく、清らかで、尊いことなど。
魔界の民に、最初から罪なんてない。邪教神に闘争本能を植え付けられていなければ、闘争本能など最初からなければ、彼らもまた、人界の民となんら変わらない存在なのだ。
「…………あの時、俺が……」
邪教神を討ち取っていれば、この戦争は起きなかった。魔界の民が血に飢えずに、対話で解決していたかもしれない。
思考を口にせずに押し殺す。いまは、術式に集中しなくてはならない。
開戦前の軍議で、ワタルは副騎士長ルキウスに向かって疑義を呈した。いったい何者が、広大な峡谷の空間魔素を消費し尽くすような巨大術式を行使できるのか、と。
するとルキウスは、まっすぐにカズヤを見て答えたのだ。
── 特異点の力に目覚めた君の力は、既に我ら騎士の範疇をも超えている。元より世の理から逸脱した君なら、行使できるはず……神雷と呼ばれる、神の力を。
買いかぶられているのだとその時は思った。しかし同時に、自分は命に代えてもこの役目を果たさねばならない、とも感じた。それが、邪教神を逃し、忌むべき戦争を引き起こした自分の責任なのだと。
カズヤは、そこで思考を中断し、峡谷に蓄積される空間魔素を集めて魔術──一本の矢に換えることだけに集中しようとした。
しかし、悲鳴は絶え間なく峡谷に響き渡り、否応なくカズヤの心を締め付ける。
死んでいく。誰かにとって大切な人たちが。
……早く。
カズヤは心の裡で呟く。
いっそ、今すぐにでも《その時》が来てほしい。これまでに倍する、膨大な死を生み出すことでこの惨劇を終わらせるその時が──。
再び、戴天が低く唸った。
しかし今度は、主人を心配する音ではない。鋭い牙鳴りの混ざる警戒音──敵襲を知らせる合図だ。
カズヤは、気力を振り絞って朦朧とし始めていた意識を立て直し、じっと遥か前方の宵闇を見据えた。
──来た!!
守備軍と混戦を続ける亜人部隊の向こうから、新たな軍勢が統制の取れた動きでひたひたと接近している。金属鎧の輝きは見えない。恐らく遠距離攻撃部隊──デーモン部隊だ。
彼らこそ、師匠が最も警戒していた、人界守備軍を一掃し得るほどの破壊力を秘めた者たち。
しかしそれは、特異点にも言えることだった。
カズヤが詠唱を続けている大規模な魔術。それは、神話に出てくる神の怒り《神雷》とでも言うべきものだ。
長年蓄積された空間魔素をもとに、カズヤはまず、《順次吸収》の構文を書き加えた鋼素の矢を生成した。
次に、矢の中に膨大な空間魔素を取り込み、雷素に変換させ閉じ込めていく。
素因の保持。
それは古来、幾多の高位術師たちを悩ませてきた、基本であり究極の技術だ。
生成された炎素や凍素、風素といった素因は、常に意識を繋いでおかねば気ままに宙に漂い、やがて熱や冷気を放散、消滅してしまう。同時に保持し得る素因の上限は、術者本人の精神と集中力で決まる。
さらに、焔天剣の解放術《形状変化》も同時に保持しなければならない。開戦してすぐに併行して発動させたため、意識を半々で分けなければいけない。
恐らく、戦争で最も疲弊しているのはカズヤだろう。巨大魔術と解放術の二つに意識を向け続けるのは至難の技だ。
だがカズヤは、その時を焦らずじっくりと待ち続けた。
時、来たり。
カズヤは一瞬だけ瞼を閉じ、念じた。
戴天の背中に両脚を踏み込み、内圧を限界まで高めた矢を、天に向けた《形状変化》で長弓と化した焔天剣に据える。
右手が、朧に光る弦を引き絞る。
照準……よし。
すうっと息を吸い、囁く。
「……解放」
恐るべき威力を内包した術式にしては、あまりに短く、単純な式句だった。
弦を引き絞る手を離し、眩い光の矢が、空に向けて垂直に発射された。
ひときわ強烈な閃光。矢が純白に煌めき、内包された無限個の雷素が炸裂する。
地上から《それ》を見上げたルキウスは、呆然と立ち尽くしながら、新星槍の解放術が生み出す光線の何千倍の威力だろうと考えた。
彼以外の衛士や騎士は、ただ単純に、それを《神雷》だと畏怖した。
眩い光の矢は瞬時に分裂し、あらゆる方向へと広がり。
鋭角な弧を描いて天から地へと超高速で降り注ぎ、デーモン部隊の中央に突き立った。そのまま峡谷の奥へと、撫でるように向きを変え──。
数千の鐘が共鳴するような轟音とともに、雷の波が峡谷の幅いっぱいに膨れ上がった。雷は地の闇を斬り裂き、夜空を赤く染めた。
ほとんど手の届きそうな距離に出現した、とてつもない規模の爆発を、ラビリア・テン・ナーチスは自分が展開したデーモン部隊が生み出したものと考えてほくそ笑んだ。
しかし直後、峡谷から噴き出し、四輪馬車目掛けて降り注いできた矢がその笑みを掻き消した。
熱く灼けた風が運んできたもの。それは亜人部隊と、デーモンたちの断末魔の叫び声だった。
立ち尽くすラビリアに、傍らの伝令騎士が掠れ声で告げた。
「……じょ、上空より、大規模魔術の反応あり。亜人部隊の七割、デーモン部隊は……八割以上が壊滅した模様です……」
「大規模魔術……だと!?」
ラビリアは、ようやく湧き上がってきた怒りに身を震わせながら叫んだ。
「有り得ん、あれほどの術を扱えるなんて……天界の騎士でも不可能だ!! それこそ、邪教神様と同じ存在にしか行使できないはず!! ならば、何者の仕業だというのだ!?」
怒鳴り散らしてみたものの、もちろん答えは返ってこない。
この局面をどう打開したものか──それ以前に、皇帝になんと報告すればいいのか。第二部隊の指揮権を与えられたラビリア・テン・ナーチスは、ただ荒い呼吸を繰り返し続けた。
桁外れに巨大な術式と解放術を維持させてた反動と、それが生み出した惨劇に打ちのめされ、カズヤは焔天剣を鞘に戻すや戴天の背中にくたりと崩れ落ちた。
戴天は主人の体に負担をかけないよう優しく受け止めると、緩やかな螺旋を描いて人界守備軍第二防衛線に降下した。
真っ先に駆け寄ってきたのは、騎士長ヒサカゲだった。両腕を伸ばし、竜から滑り落ちたカズヤを受け止める。
「……よく頑張った、上出来だぞ、カズヤ」
感極まったような声になんとか瞼を持ち上げると、いまだ赤熱する峡谷の底を、狂乱な体で逃走していく敵生存兵の影が見えた。死体はほとんど確認できない。最初の光線によって瞬時に蒸発してしまったか、その後の爆発で跡形もなく四散したのか。
あまりにも無慈悲な破壊を、誇る気持ちには到底なれなかった。
しかしすぐに、周囲の衛士たちから津波のような歓声が湧き起こった。それはやがて一つにまとまり、何度も繰り返される勝ち鬨へと変わる。
騎士団と教会を称える唱和を聞きながら、カズヤは詰めていた息をよくやく吐き、ヒサカゲに支えられていた体を起こした。騎士長が、労るような微笑みを浮かべて深く頷く。
「敵は撤退した。少年が導いた勝利だ」
その言葉に同じく微笑で応えてから、カズヤは表情を改め、言った。
「騎士長、戦いはまだ終わっていません。むしろ、これからが本番でしょう」
「暗黒騎士団と、報告にあった死邪……か」
騎士長は頷き、さすがに疲労の色が滲む声を張り上げた。
「動ける者は第一部隊に向かい、負傷者の治癒に向かってくれ! 衛士隊でも治癒術の心得のあるものもだ! 敵陣の動きからも眼を離すなよ!」
鋭い命令が響き渡ると、衛士たちは素早く動き始める。後方では、治癒術の起句が次々に発せられる。
「俺はルキウスに報告してくる。この場を任せていいか?」
カズヤが頷くと、ヒサカゲはもういちど微笑んでから去っていった。周囲に人がいなくなり、第二部隊中央にはカズヤと戴天だけが残される。
騎士長を見送ったカズヤは数歩移動し、愛竜の顎裏を掻いてやりながら、優しく囁いた。
「よく頑張ってくれたね、戴天。一箇所に静止し続けるのは疲れただろ。寝床に戻って、準備しといた茹でた牛肉をたっぷり食べてきな」
戴天の額に自分の額を付け、鼻先に唇を当てると、戴天は一声嬉しそうに啼いた。翼を羽ばたかせて浮き上がり、最後方の仲間たちの元へと滑空していった。
さて、自分も少しだけ休ませてもらおう。そう思ってその場に座り込む。
……カムイさん、スコッド、セレナ、ユリ。
俺の手は、もう汚れきってしまいました。
しかし、この手のお陰で、多くの命も救えた。
だから……少しぐらい、涙を流しても構いませんよね。
命を奪ってしまったことに涙する自分を、せめて今だけは、大目に見てください。
暗黒騎士団団長の地竜戦車には見劣りするが、それでも充分に豪奢な四輪馬車の二階席に、肌も露わな長身の女が腕組みをして立っている。五種会議の一人、女性専用暗黒騎士団団長ラビリア・テン・ナーチスである。
脇に控える黒衣の伝令騎士が、主人を見上げて低い声で告げた。
「ダバ殿、ソロチ殿、ザンバ殿、共に討ち死にとのこと」
途端、ラビリアは唇を歪めて吐き捨てる。
「使えぬ……所詮は頭の足りない亜人どもか」
艶やかな胸元の肌に垂らした首飾りをちらりと一瞥。銀の円環に十二の貴石を配したそれは、色合いの変化で時刻を教えるという秘蔵の神器だ。六時の石が光っており、七時の石はいまだ闇色。つまり、午後六時の開戦から、わずか二十分ほどしか経過していないことになる。
「天界の騎士どもの位置は摑めたか」
苛立ちを隠せない声で訊ねると、伝令騎士は短い術式を唱え、戦場に潜む騎士の応答に耳を傾けてから答えた。
「最前線に視認できた三名は照準済みです。後方にはもう二名を発見していますが、位置固定にはいましばらく」
「まだたった五人か。あるいは、そもそも数が少ないのか……。しかし、どうあれその五人は確実に屠らねば……」
ラビリアは、皇帝を前にした時の媚態とはかけ離れた冷酷な表情でひとりごちると、少し考え、命じた。
「よし、マガツヒを出せ。命令は……」
眼を細めて、崩壊した大門とその彼方の戦線までの距離を測り、続ける。
「……《八百メル飛行》、《無制限殲滅》だ」
「その距離ですと、最前線の亜人部隊を巻き込みますが」
「構わん」
無感動に言い切る。
伝令の騎士も、一切の感情を見せずに「は」と頷いたから問いを重ねた。
「数は如何なさいます。デーモン族から授かった八百体、全て運んできておりますが」
「ふむ、そうだな……」
ラビリアは更に数瞬、思考を巡らせた。
デーモンから授かったマガツヒは、彼女にとってはゴブリンなどよりもよほど貴重な戦力だ。出し惜しみしたいのはやまやまだが、前線の亜人がまるで役に立っていない。
「……八百、全部だ」
命じた唇に、酷薄な笑みが浮かんだ。
ラビリアの秘めたる野望。それは、この戦に勝利して《特異点》とやらを手に入れれば再び地の底に戻るという邪教神から、皇帝の位を受け継ぐこと。亡き姉、フロリダ・テン・ナーチスの願いは、妹である私が叶える。
帝位に就いた暁には、魔界全土だけではない。人界全土を支配する。
邪教神様にも不可能だった全世界の征服を成し遂げ、すべてをむさぼる。
不老不死。永遠の美。
ラビリアは、背筋を這い登る甘美な戦慄に身を震わせた。青く塗った唇を、赤い舌先でちらりと舐める。
ちょうどその時、伝令騎士の指令が前方の女性騎士団に行き渡り、闇の翼を得たかの如く、漆黒の人造怪物が一斉に飛び立った。
ぬらりと光る皮膚に篝火を反射させながら、八百体のマガツヒは命じられるままに上昇し、まっすぐに峡谷目指して飛んでいって。
***
──来た。
騎士長ヒサカゲは、開戦からずっと彫刻のように引き結んでいた口許に、にやりと太い笑みを刻んだ。
大門手前の上空に保持していた斬撃空間に、多くの飛行兵が侵入してくるのを察知したのだ。
暗黒騎士が駆る飛竜ではない。泥のように冷たく、魂を持たない人形どもの気配。
しかし、まだ発動はさせない。敵の放ったマガツヒの全てが空間に呑み込まれるまで、たっぷりと引き付ける。
ヒサカゲの研ぎ澄まされた知覚は、すでにルキウスやテレーゼの奮戦と、キクノの覚醒までをも捉えていた。
侵略軍先陣の将を三人とも討ったとなれば、もうこの局面で戦線が押し込まれることはない。あとは、目論見どおり上空で待機する特異点が空間魔素を根こそぎ使い果たして敵の第二陣を無力化してくれれば、無傷の守備軍第二部隊で敵の主力である暗黒騎士団とデーモン部隊を迎え撃てる。
自分の、真の出番はその先だろう、とヒサカゲは推測していた。
ヒサカゲは、この戦が己の死地だと既に察している。恐らく、数日前に遥か東方で感じた邪悪な気配──あれこそ、自分の最後の敵だろう。
最古の騎士として、人界創成期から無限にも等しい年月を生きてきたヒサカゲの願いは、人界と魔界の無血融和を成し遂げること。無為に命を散らさず、対話による和平こそが、ヒサカゲの夢。
しかし、凍てつく虚無にも来た気配の持ち主──邪教神が降り立ったせいで、望みは絶たれた。
闘争本能さえ埋め込まれなければ、無為に血が流れることもなかったのに。
かくなる上は、邪教神の首を取るしかない。そこで自分の命が終わるとしても。
生への執着は、彼の中には欠片も残っていなかった。
死すべき時宜を得たならば、ただ死するのみ。
ルキウス配下の下位騎士イオが、いまわの際に放ったその意思に、ヒサカゲは見事と感嘆すると同時にかすかな羨望を覚えてもいた。
とはいえ無論、いまはまだその時ではない。
上空の暗闇を切り裂いて侵入してくるマガツヒの群れが、ようやく斬撃空間に残らず呑み込まれた。
ヒサカゲは両眼を爛と見開き、地面に突き立てていた愛剣《斬穿剣》を、ゆったりとした動作で大上段に振りかぶった。
「────シッ!!」
気合一閃、虚空を白刃が切り裂く。
同時に、前方上空で、無数の白い光条が立体の格子模様を描いて眩く輝いた。
奇怪な断末魔の大合唱に続いて、どす黒い雨が敵亜人部隊の頭上に滝のように降り注いだ。それが将を失った部隊の混乱に拍車をかけた。
これまでまったくの無感情を貫いていた伝令騎士の声に、かすかな怯えの響きを聞き取った時点で、ラビリアは不吉な予感に囚われた。それは一秒後、現実へと変わった。
「恐れながら団長……マガツヒ八百体、降下直前に全滅した模様でございます」
「な…………」
絶句。
続いた破砕音は、馬車の床に叩きつけられた高価な水晶杯の悲鳴だ。
「何ゆえだ! 敵に大規模な魔術師隊がいたとしても不可能だぞ!」
それ以前に、魔術耐性を持つマガツヒを魔術で屠ること自体が不可能に等しい。最も有効なのは鋭利な刃による斬撃だが、空中にいるマガツヒに地上の兵どもの剣が届くはずがない。
「……敵の飛竜はまだ出ていないのだな?」
どうにか怒りを抑え込み、ラビリアは訊ねた。伝令騎士が、低く頭を垂れたまま肯定する。
「戦場上空に、現時点まで一匹の飛竜も確認しておりません」
「となると……アレか。騎士どもの切り札……《解放術》。しかし……よもや、これほどの……」
語尾を呑み込みながら、剥き出した糸切り歯をぎりりと擦り合わせる。
解放術についての情報収集は何度も試みている。しかし、いかんせん実例を目撃することすら至難だったのだ。神器と騎士本人の相性がいい、ということくらいしか解明できていない。
「だが、あれだけの範囲を維持するとなれば、騎士自身もかなり消耗してるはず。そうそう連発はできまい……」
全力で思考を回転させながら、ラビリアはそう呟いた時。
前線からの報告に耳を傾けていた伝令騎士がさっと顔を上げ、わずかに張りの戻った声で伝えた。
「団長、後方の騎士二名の位置把握、完了いたしました。合わせて五の目標を標準中」
「……よし」
頷き、更に考える。
最大の不確定要素たる騎士を消費させるべく、魔界軍主力の暗黒騎士団とデーモン部隊を投入するか。それとも、全勢力を投下し、一気に勝負を決めるか。
ラビリアは本来、念入りに策を巡らせ、万難を排してから動く用心深い性格だ。
しかし、マガツヒ八百体を瞬時に喪失するという予想外の展開が、彼女を自覚なき焦燥に追い込んでいた。
新たな水晶杯に黒紫色の酒を満たしながら、ラビリアは自分に言い聞かせた。
──私は優秀だ。今こそ、最初の栄光を摑み取る時。
ひと息に干した杯を掲げ、ラビリア・テン・ナーチスは高らかに命じた。
「第二部隊、総員前進! 峡谷に進入後、闇魔術で一掃せよ!!」
***
ぐるるる……。
高く、鋭い喉声。守護竜《戴天》が、主人に警告しているのだ。
カズヤは、労うように首筋を撫でながら、囁いた。
「大丈夫、心配すんな」
だが、実際のところは、まったく大丈夫ではない。視界は奇妙に歪み、呼吸は荒く、手足は氷のように冷たい。今この瞬間に気を失ってもおかしくない。
カズヤを消耗させているのは、開戦直後から詠唱を続けている、今にも暴発しそうなまでに内圧を高めた巨大魔術だけではない。
騎士。衛士。敵たるゴブリン、ジャイアント。凄まじい勢いで喪われていく命たちの、消え去る瞬間の恐怖や悲哀、絶望がカズヤを絶え間なく苛む。
かつてのカズヤは、魔界の民の生き死になど気にかけたことさえなかった。
人界での長い暮らしを経て、民たちの懸命な営みの貴さを知り、それを守るべきものだという認識は心得ている。しかし魔界に暮らす者たちに思いを致すまでには至らなかった。事実、この手で何人もの亜人を躊躇いもなく殲滅している。
魔界の民は血も涙もない侵略者であり、一兵残らず討ち果たすべき敵。
そう思わなければ、戦えなかった。
分かっている。眼下の戦場で次々と倒れる両軍の兵士は、まったく同質なことぐらい。全てが同じように温かく、清らかで、尊いことなど。
魔界の民に、最初から罪なんてない。邪教神に闘争本能を植え付けられていなければ、闘争本能など最初からなければ、彼らもまた、人界の民となんら変わらない存在なのだ。
「…………あの時、俺が……」
邪教神を討ち取っていれば、この戦争は起きなかった。魔界の民が血に飢えずに、対話で解決していたかもしれない。
思考を口にせずに押し殺す。いまは、術式に集中しなくてはならない。
開戦前の軍議で、ワタルは副騎士長ルキウスに向かって疑義を呈した。いったい何者が、広大な峡谷の空間魔素を消費し尽くすような巨大術式を行使できるのか、と。
するとルキウスは、まっすぐにカズヤを見て答えたのだ。
── 特異点の力に目覚めた君の力は、既に我ら騎士の範疇をも超えている。元より世の理から逸脱した君なら、行使できるはず……神雷と呼ばれる、神の力を。
買いかぶられているのだとその時は思った。しかし同時に、自分は命に代えてもこの役目を果たさねばならない、とも感じた。それが、邪教神を逃し、忌むべき戦争を引き起こした自分の責任なのだと。
カズヤは、そこで思考を中断し、峡谷に蓄積される空間魔素を集めて魔術──一本の矢に換えることだけに集中しようとした。
しかし、悲鳴は絶え間なく峡谷に響き渡り、否応なくカズヤの心を締め付ける。
死んでいく。誰かにとって大切な人たちが。
……早く。
カズヤは心の裡で呟く。
いっそ、今すぐにでも《その時》が来てほしい。これまでに倍する、膨大な死を生み出すことでこの惨劇を終わらせるその時が──。
再び、戴天が低く唸った。
しかし今度は、主人を心配する音ではない。鋭い牙鳴りの混ざる警戒音──敵襲を知らせる合図だ。
カズヤは、気力を振り絞って朦朧とし始めていた意識を立て直し、じっと遥か前方の宵闇を見据えた。
──来た!!
守備軍と混戦を続ける亜人部隊の向こうから、新たな軍勢が統制の取れた動きでひたひたと接近している。金属鎧の輝きは見えない。恐らく遠距離攻撃部隊──デーモン部隊だ。
彼らこそ、師匠が最も警戒していた、人界守備軍を一掃し得るほどの破壊力を秘めた者たち。
しかしそれは、特異点にも言えることだった。
カズヤが詠唱を続けている大規模な魔術。それは、神話に出てくる神の怒り《神雷》とでも言うべきものだ。
長年蓄積された空間魔素をもとに、カズヤはまず、《順次吸収》の構文を書き加えた鋼素の矢を生成した。
次に、矢の中に膨大な空間魔素を取り込み、雷素に変換させ閉じ込めていく。
素因の保持。
それは古来、幾多の高位術師たちを悩ませてきた、基本であり究極の技術だ。
生成された炎素や凍素、風素といった素因は、常に意識を繋いでおかねば気ままに宙に漂い、やがて熱や冷気を放散、消滅してしまう。同時に保持し得る素因の上限は、術者本人の精神と集中力で決まる。
さらに、焔天剣の解放術《形状変化》も同時に保持しなければならない。開戦してすぐに併行して発動させたため、意識を半々で分けなければいけない。
恐らく、戦争で最も疲弊しているのはカズヤだろう。巨大魔術と解放術の二つに意識を向け続けるのは至難の技だ。
だがカズヤは、その時を焦らずじっくりと待ち続けた。
時、来たり。
カズヤは一瞬だけ瞼を閉じ、念じた。
戴天の背中に両脚を踏み込み、内圧を限界まで高めた矢を、天に向けた《形状変化》で長弓と化した焔天剣に据える。
右手が、朧に光る弦を引き絞る。
照準……よし。
すうっと息を吸い、囁く。
「……解放」
恐るべき威力を内包した術式にしては、あまりに短く、単純な式句だった。
弦を引き絞る手を離し、眩い光の矢が、空に向けて垂直に発射された。
ひときわ強烈な閃光。矢が純白に煌めき、内包された無限個の雷素が炸裂する。
地上から《それ》を見上げたルキウスは、呆然と立ち尽くしながら、新星槍の解放術が生み出す光線の何千倍の威力だろうと考えた。
彼以外の衛士や騎士は、ただ単純に、それを《神雷》だと畏怖した。
眩い光の矢は瞬時に分裂し、あらゆる方向へと広がり。
鋭角な弧を描いて天から地へと超高速で降り注ぎ、デーモン部隊の中央に突き立った。そのまま峡谷の奥へと、撫でるように向きを変え──。
数千の鐘が共鳴するような轟音とともに、雷の波が峡谷の幅いっぱいに膨れ上がった。雷は地の闇を斬り裂き、夜空を赤く染めた。
ほとんど手の届きそうな距離に出現した、とてつもない規模の爆発を、ラビリア・テン・ナーチスは自分が展開したデーモン部隊が生み出したものと考えてほくそ笑んだ。
しかし直後、峡谷から噴き出し、四輪馬車目掛けて降り注いできた矢がその笑みを掻き消した。
熱く灼けた風が運んできたもの。それは亜人部隊と、デーモンたちの断末魔の叫び声だった。
立ち尽くすラビリアに、傍らの伝令騎士が掠れ声で告げた。
「……じょ、上空より、大規模魔術の反応あり。亜人部隊の七割、デーモン部隊は……八割以上が壊滅した模様です……」
「大規模魔術……だと!?」
ラビリアは、ようやく湧き上がってきた怒りに身を震わせながら叫んだ。
「有り得ん、あれほどの術を扱えるなんて……天界の騎士でも不可能だ!! それこそ、邪教神様と同じ存在にしか行使できないはず!! ならば、何者の仕業だというのだ!?」
怒鳴り散らしてみたものの、もちろん答えは返ってこない。
この局面をどう打開したものか──それ以前に、皇帝になんと報告すればいいのか。第二部隊の指揮権を与えられたラビリア・テン・ナーチスは、ただ荒い呼吸を繰り返し続けた。
桁外れに巨大な術式と解放術を維持させてた反動と、それが生み出した惨劇に打ちのめされ、カズヤは焔天剣を鞘に戻すや戴天の背中にくたりと崩れ落ちた。
戴天は主人の体に負担をかけないよう優しく受け止めると、緩やかな螺旋を描いて人界守備軍第二防衛線に降下した。
真っ先に駆け寄ってきたのは、騎士長ヒサカゲだった。両腕を伸ばし、竜から滑り落ちたカズヤを受け止める。
「……よく頑張った、上出来だぞ、カズヤ」
感極まったような声になんとか瞼を持ち上げると、いまだ赤熱する峡谷の底を、狂乱な体で逃走していく敵生存兵の影が見えた。死体はほとんど確認できない。最初の光線によって瞬時に蒸発してしまったか、その後の爆発で跡形もなく四散したのか。
あまりにも無慈悲な破壊を、誇る気持ちには到底なれなかった。
しかしすぐに、周囲の衛士たちから津波のような歓声が湧き起こった。それはやがて一つにまとまり、何度も繰り返される勝ち鬨へと変わる。
騎士団と教会を称える唱和を聞きながら、カズヤは詰めていた息をよくやく吐き、ヒサカゲに支えられていた体を起こした。騎士長が、労るような微笑みを浮かべて深く頷く。
「敵は撤退した。少年が導いた勝利だ」
その言葉に同じく微笑で応えてから、カズヤは表情を改め、言った。
「騎士長、戦いはまだ終わっていません。むしろ、これからが本番でしょう」
「暗黒騎士団と、報告にあった死邪……か」
騎士長は頷き、さすがに疲労の色が滲む声を張り上げた。
「動ける者は第一部隊に向かい、負傷者の治癒に向かってくれ! 衛士隊でも治癒術の心得のあるものもだ! 敵陣の動きからも眼を離すなよ!」
鋭い命令が響き渡ると、衛士たちは素早く動き始める。後方では、治癒術の起句が次々に発せられる。
「俺はルキウスに報告してくる。この場を任せていいか?」
カズヤが頷くと、ヒサカゲはもういちど微笑んでから去っていった。周囲に人がいなくなり、第二部隊中央にはカズヤと戴天だけが残される。
騎士長を見送ったカズヤは数歩移動し、愛竜の顎裏を掻いてやりながら、優しく囁いた。
「よく頑張ってくれたね、戴天。一箇所に静止し続けるのは疲れただろ。寝床に戻って、準備しといた茹でた牛肉をたっぷり食べてきな」
戴天の額に自分の額を付け、鼻先に唇を当てると、戴天は一声嬉しそうに啼いた。翼を羽ばたかせて浮き上がり、最後方の仲間たちの元へと滑空していった。
さて、自分も少しだけ休ませてもらおう。そう思ってその場に座り込む。
……カムイさん、スコッド、セレナ、ユリ。
俺の手は、もう汚れきってしまいました。
しかし、この手のお陰で、多くの命も救えた。
だから……少しぐらい、涙を流しても構いませんよね。
命を奪ってしまったことに涙する自分を、せめて今だけは、大目に見てください。
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