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第三部・三章 血流大戦(後編)
第十三話
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──早く。
──早く、地上へ。カズヤくんのところへ。
ヒヅキとして魔界へと降臨した創世神はひたすらに特異点の名を念じた。
狂おしいほどの思慕を感じると同時に、針で突き刺されるような痛みがヒヅキの頭を貫いた。思わず顔を歪め、苦痛に耐える。
創世神の恩恵たる《地形操作》の使用に伴う副作用には覚悟していたのだが、広範囲で唱えただけでこれほどとは……。
やはり、古の大戦時よりも力が大きく衰えている。昔ならばこの程度、痛みも感じなかったのに。
しかしヒヅキは、千人ほどの人界の民と、南北から接近する膨大な魔界の民の存在を認識するや、躊躇いなく地形操作を唱えてしまった。
北から接近する大集団は、その手前に長大な谷を刻むことで侵行を止めた。
もしやこの頭痛は、死にゆく彼らの恐怖と怨念が、私の精神に鋭い痛みをもたらしているのかもしれない。
しかしヒヅキは強く一度眼を瞑ってから、勢いよく見開いて刹那の迷いを打ち消した。
自分の中の優先順位は、一年前から決定している。
カズヤ──水樹和也のためなら、どんな罪も犯す。彼のためなら、命すら捨てる覚悟だ。
永遠とも思えた数十秒の降下がついに終わり、パールホワイトのつま先が黒い地面を捉えた。
奇妙に捻くれた灌木が密生する林の中だ。夜空に月はなく、不吉な赤い星明かりだけが淡く降り注いでいる。
ようやく薄れ始めた頭痛を、何度か頭を振って追い出すと、ヒヅキはまっすぐ背を伸ばした。
馬のいななきが近くで聞こえ、そちらに視線を向けると、茂みに隠れるように大型の馬車が何台も停まっているのに気付く。
──どこ……? どこにいるの、カズヤくん?
焦燥のあまり、特異点の名を叫ぼうとした時、背後から震える声が掛けられた。
「創世神……さま……?」
振り向くと、肩の肉を抉り取られた獣人族の少女が剣を支えに立っていた。
ヒヅキは、彼女について知っていた。
正確には、監視生物からの情報で知り得ている。
「ええ。私は、人界の創造主にして人界を統べる神、創世神です。……今は、ヒヅキと名乗っているわ」
軽い自己紹介を終えると、少女は両眼を見開いてから、胸元できゅっと両手を握り、呟く。
「あなたが、古の大戦から人界を救ってくれた……信じられない、けど……」
そこまで言うと、サヤは限界に達してしまったのか前に倒れそうになる。
ヒヅキは倒れ掛けた体を抱き抱え、抉られた肩に左手を添える。何度か唇を動かしてから、高位治癒術を施す。
傷はみるみる塞がっていき、抉り取られていなかった状態にまで時が戻ったかのように、綺麗に治癒した。
それを見たサヤは、囁き声を絞り出す。
「今のは、治癒術……しかし、魔界でこれだけ高位な治癒術なんて、奇跡としか……」
声が少しずつ薄れていき、やがて両瞼をゆっくりと下ろした。戦闘による疲労と安堵がここで顔を出してしまったのか、一気に眠気が来てしまったのだろう。
静かに眠る体を優しく抱き止め、どうしたものかと頭を悩ませながら、しばしその場に立ち尽くす。
人界軍の状況はあらかた把握している。部隊を二つに分けた時は肝を冷やしたが、今のところ大きな被害は出ていない。
騎士テレーゼと騎士イユ、多くの衛士の命が散ってしまったことへは心痛むが、今は彼らの供養をしている余裕はない。
早くカズヤと再会し、伝えなければ。今が、邪教神を倒す唯一の機会だと。
「これは何とも……たまげたとしか言えませんなぁ」
大型竜車二階デッキの先端に立ち、前方に突如出現した巨大な地割れを見下ろしていたラギルスの耳に、どこかのんびりとした声が届いた。
視線を向けると、デッキの隅に設けられた昇降ハッチから、恰幅のいい中年男が顔を出したところだった。ロニージョという名の、商工ギルドの頭領だ。幅広の袖を体の前で合わせ、深々と一礼する。
いまや三人だけになってしまった将軍の一人だが、この男自身には大した戦闘力はない。何の用だ、という意味を込めたラギルスが片眉を動かすと、ロニージョは両手を顔の前に掲げたままちらりと左右に視線を走らせた。デッキにザルザードの姿がないことに気付いたはずだが、それに関しては何も言わず、改めて一礼する。
「ラギルス殿。これ以上進軍しないのであれば、兵たちに食事と休息のお許しを頂きたくまかり越しました」
「ああ」
ラギルスは、黒々と口を開けるクレヴァスに向き直った。
あの地割れが、東西どこまで続いているのかを確認させるために使った偵察兵からはいまだ報告がない。つまり、一キロや二キロではないということだ。土木作業で埋め立てられる深さではないこともひと目見れば解る。
また、ジンの報告から敵軍の行動を予測して戦場の南に潜ませたオーガの手勢も、この調子では何もできずに全滅した可能性が高い。
この状況は飛行戦力の使いどころであるはずだが、暗黒騎士団が所持する飛竜は十頭しかいない。二万の歩兵を運ぶのに、何往復させればいいのか見当もつかない。
デーモンならなんとかなるのかと、わずかに生き残ったデーモン隊に検討させたが、あの規模の谷に大軍が渡れるほどの橋をかけるのは時間が掛かるという返事だった。
つまるところ──。
あの巨大な地割れを渡る方法は、今の我々だけでは思いつかない。
厄介な局面になったのは確かだが、そうと解ればまだ対処のしようはある。
頼りたくはないが、邪教神様の指示を待つ。
ラギルスはかすかなため息を吐き、ロニージョに向き直り、言う。
「よかろう。今日はこの場所で野営する。兵にはたっぷり食わせておけ、明日は忙しくなるからな」
「はっ。御厚情、まことに痛み入ります」
再び深々と平伏し、商人の長はいそいそと姿を消した。
「これは……一体何が起きたんだ……?」
戴天の背に跨りながら、灌木地帯と丘陵の間に開かれた溝を見渡し、無意識に呟いた。
灌木地帯に向かう最中、遠目からでもはっきりと見えるほどの光が地を割くのを確かに見た。
神の御業としか思えない現象に、最初は邪教神が目覚めた前兆かと疑った。
しかしその可能性は低い。
あの光からは、邪教神が放つ禍々しさは感じられなかった。
「まさか……創世神が」
一年前に姿を消した、もう一人の神が戻ってきたのか。
終わりのない逡巡に陥りそうになっていると、視界の端で煌めくものが入ってきた。
不意にそちらへ視線を送ると、淡い月明かりを反射して輝く金髪が見えた。
あれは、セレナか……なんでこんな所に?
周囲に衛士は見当たらないし、待ち伏せのはずなのに単独で行動するなんて。
「戴天、あそこに降りてくれ」
手綱を引き方向変換させ降下する。徐々に距離が縮まって行く度に、何故だが胸の内で渇望が渦を巻いてくる。
──何故だろう。早く会って、色々と話したい。
今すぐ飛び降りて、後ろから抱きつきたい。
薄暗さに馴れたカズヤの眼が、地上に立つ金髪を捉える。
近づき、気付く。
彼女はセレナじゃないこと。
もう一人──サヤが倒れていることに。
……サヤッ!?
瞬間、あらゆる思考が吹き飛び。
戴天の背から飛び降りる。
白銀の鉄靴が、地面に触れた、その瞬間。
剣光。
そう認識する前に、カズヤは反射的に動いていた。右手が閃き、左腰に装備された焔天剣を全速で抜き放つ。
きゃりいいん! と高く澄んだ音が、夜の森を貫いた。
どうにか何者かの斬撃を弾いたが、あまりの衝撃に右手が肘まで痺れた。なんという重い剣か。
飛び散った大量の火花が白く焼きついたままの視界に、息もつかせぬ次撃の光が見えた。
ただブロックするだけでは押し切られる。
瞬時にそう判断し、迫り来る斬撃を連続して迎え撃つ。
「────ッ!?」
三撃目を迎え撃つ直前、不意に真上からの殺気を感じ、カズヤは三撃目と衝突する勢いに乗って大きく後ろに跳んだ。
その直後、上空から急降下してきた光の粒子を放つ刃が三本、先ほどまでカズヤが立っていた場所に突き刺さる。
「いつの間に……」
攻撃してる隙に上空へ放っていたのか? それにしては正確に落ちてきたが……。
地面に突き立つ刃を見据えていると、金髪の煌めきとは違う輝きが三点、暗がりで一瞬だけ映る。
直後、暗がりから地面に突き立つのと同じ刃が三本、こちらに向かって飛翔してきた。
身を転がして二本は回避。転がった先に飛んできた刃を焔天剣で弾き上げると、剣が近くの幹に突き立った。
なんて正確で見えない攻撃。いつ飛ばしてきたのか分からなかった。
暗がりだから見えないのか? いや、刀身自体は暗闇でも見えるほど光っているのに。
そもそも、これだけ光っているのなら、最初から気付くはず。
だがこの剣は、暗がりから突然姿を現した。
光の刃に対して多くの憶測を巡らせるカズヤであったが。
途端、息を呑む。
地面や樹に刺さっていた光の刃がふわりと宙に浮き上がる。
六本の刃は見えない糸で操られているかのように宙を飛び、金髪の者を囲むようにピタリと止まる。
ジンが扱っていたのに似ているが、あいつは手を動かしていない。
まさか、剣自身に意思があるのか!?
支離滅裂な結論を脳から振り払い、剣を肩に担ぐように構える。
──あれだけの数だ……一度に扱える数には限りがあるはず。
六本全部を同時に操れるわけじゃない。できるのなら、最初から俺を取り囲んで串刺しにしている。
最初の攻撃を退いて、至近距離で一気に叩く。
静かに呼吸を整え、精神を集中させる。六本の刃に意識を向けながら、カズヤは猛然と間合いを詰めに行った。
一本の刃が、風を裂くような鋭い突きを繰り出す。
──が、その切っ先が胸へと届く前に、カズヤはあっさりとそれを払いのける。
二本の刃が、左右から斜めに降り注いでくる。
「はぁッ!!」
気合声と共に剣を上薙ぎし、飛んでくる刃を弾き飛ばす。
やはり三本以上は同時に操れない。
カズヤはそのまま返す刀で、金髪の者を斬り倒せる──かと思えた。
「っ!?」
しかしカズヤの一撃はその寸前で、敵の操る一本に防がれてしまっていた。
「……まだだ!」
それでもカズヤは即座に次の攻撃へ移る。下段から斬り上げ、右袈裟に斬り下ろし、真一文字に薙ぐ──繋ぎ目に無駄がない連撃だと自負できる。
その猛攻を、敵は残った三本で見事に防ぎきっていた。
「くそ……」
自分で言うのもなんだが、連撃を単に三本という数の優位だけで凌げるものではない。敵は尋常ならざる剣速に、しっかりと対応してきている。
──どういうことだ!? こいつは、どうやってこれだけの刃を操っているんだ!?
冷や汗を振り払う勢いで剣を振るいながら、精巧な動きで斬撃を捌く刃を睨んだ。
至近距離で分かる。こいつは一切手を動かしていない。いや、手だけじゃない。その場から一歩も動いていない。
このまま攻撃を続けても意味がない……だったら、賭けに出る!!
振り上げた剣閃が煌き、焔天剣の切っ先が大きく弧を描く。
だが、今度もその一撃は刃によって遮られていた。
それでもカズヤは留まることなく次の攻撃へと繋ぎ──
「ここだ!」
ぐっと手首を捻り、力の流れを変える。
焔天剣を受け止めていた刃は急な力の変化に対応できず、大きくバランスを崩す。
それだけなら、ただの崩し技だ。敵も対処できたかもしれない。
しかし、その光刃が別の刃と接触──さらにカズヤがそこへもう一撃叩き込むと、刃同士が干渉しあって、三つの刃が弾かれるように吹き飛んだ。
「よし!!」
思った通りだ。
一度に操れる刃は三本が限界なら、三本同時に動きが乱されれば立て直すのは一苦労だろう。
ようやく出来た隙を見逃さず、がら空きになった腹部目掛けて、焔天剣が一閃する。
勝負あったと思った瞬間、黒い影がそこへ割り込んでいた。
カズヤの斬撃を、上空に弾き返した二本の刃が交差して防いだ。
──しまった! 三本だけに気を取られすぎた!
ここで初めて鍔迫り合い──と思しき拮抗状態に移行し、動きが止まった。
その静寂を、のんびりとした男の声が破った。
「うーむ、こりゃあ実に何とも、見事な眺めだな。咲き誇る麗しき一輪の花と、花に魅入られて寄っていく男が一人、いや絶景絶景」
同時に、それまで誰もいなかったはずの空間から、ぬうっと二本の逞しい腕が伸びてきた。ごつごつした指が、カズヤと敵の剣の腹をひょいと摘む。
「──っ!?」
まるで万力に挟まれたかの如く、剣が動かなくなる。腕は、唖然とするカズヤを剣ごと軽々と吊り上げ、大きく引き離して着地させる。
見ると、隣に立っているのは、騎士長ヒサカゲだった。
「なぜ邪魔するんですか師匠! こいつは、恐らく暗黒騎士……」
「違うと思うぜ。早々に戦死するところだったオレを命拾いさせてくれたのは、こちらのお方なんだからな。多分、あそこで眠ってる彼女もそうだろ?」
最後のひと言で、俺はサヤの存在を思い出した。
樹を背に倒れるサヤを見つけると、介抱するようにワタルが診ている。
「ワタル……なんでお前がここに」
「騎士長への報告中に、こっちで戦闘音が聞こえてね。同行してきたんだ」
微笑みながら言い、すぐにサヤに視線を戻す。
「なぁ、サヤは大丈夫なのか?」
答えを急かすと、ワタルは驚いたように眼を見開き、か細い声を発した。
「凄いよ……服は血で濡れてるのに、どこも怪我をしてない。傷跡が残らないほどの治癒術が施された証拠だよ」
「はっ……? 馬鹿言うなよ、ここは魔界だぞ。初歩的な素因なら出せるけど、治癒術は詠唱できないだろ」
炎素や風素といった初歩的な素因ならば生成できるが、デリケートな治癒術は魔界に漂う魔素では詠唱することも辛く、仮に生成できたとしても維持するのが困難だ。
サヤの場合、右肩の制服が千切れており真っ赤に染まっている。それだけ出血が激しかったことを物語っているのに、傷口は綺麗に塞がっている。
「やっぱりそうか……」
隣に顔を向けると、先ほど見た大峡谷の方向にちらりと目をやると、カズヤの肩にぽんと右手を乗せた。
「少年も見ただろ。天から七色の光が降り注いて、大地が幅百メルも裂けたのを。さしもの暗黒騎士連中も、飛竜を使わず棒立ちだったよ。ひと息に蹂躙されるところだったオレたちを、創世神殿が救ってくれたのは間違いない事実だ」
「………………え?」
あっさり呼ばれた名を聞き、カズヤは血の気の失せた顔で斬り交えた相手に視線を送る。
遮断されていた月明かりが少しずつ暗闇に隠れた素顔を照らし出す。
全貌が明らかになってくる度に、カズヤは息を呑む。
雪のように白い肌。黄金を溶かしたかのようなロングヘアが、夜風を受けてたなびく。真珠のようなブレストプレートで保護しているにも関わらず、圧倒的な存在感を出している胸部。
「……あ……あぁ…………」
開いた口が塞がらず、弱々しい呻き声が漏れていく。
やがて顔の全貌が明らかになるやすぐに、抜き身の焔天剣を鞘の鯉口にあてがい、シャキン! と一気に落とし込み、
「す、すいませんでしたッ!!」
大声で謝罪した。
対峙した相手──人界の創造主であり自分にとっても重要な人物である創世神ヒヅキは、無礼な行為をされたにもかかわらず、慈愛の微笑みを浮かべながら発した。
「気にしないで。あなたが元気でいてくれたことが一番だから」
女神の慈悲に心底感謝しながら顔を上げると、騎士長は口許をにやりと緩めた。
「驚きましたよ、創世神殿。一年も姿を消していたと思えば、いきなり我々の窮地を救い出して現れるなんて」
これには創世神も反論せず、周囲に浮かぶ六本の刃を背中の鞘へ自動的に落とし込んだ。
創世神はまたもやカズヤに優しい眼差しを向けると騎士長に向き直り、口を開いた。
「ええ……一年前、私は今日までずっと姿を隠し、力を蓄えていました。全ては、邪教神を倒し、人界と魔界に真の平和をもたらすために」
「真の平和……ね」
騎士長は、薄くヒゲの浮いた顎をざらりと擦りながら、太い笑みを浮かべた。
「詳しく聞きたいが、ここから先は他の騎士や衛士長たちにも聞いてもらったほうがいいだろう。茶でも飲みながら話しましょうや、創世神殿。敵軍も今夜はもう動けまい」
「……そう、ですね」
少しだけ切なそうな表情で、ヒヅキは頷いた。
「よし、そうと決まれば……カズヤ、熱い茶と、オレには火酒を用意してくれ」
「……なんで俺なんですか」
さも当然のように頼まれてしまったことに疑問を覚え率直に聞くと、騎士長はおおらかに笑いながら髪の毛をぐしゃぐしゃにかき乱してきた。
「新米騎士なんだからさ。お前さんにも火酒分けてやるから頼んだぜ、少年」
「いえ、一応ここは戦地なので結構です」
肩を竦めながら馬車に向かい、ついでにサヤを担ぐ。深い眠りについているのか、幸せそうな寝顔を浮かべている。
周囲の異様な地形を見る限り、ここで激しい戦闘があったのだろう。恐らく、餓断剣の解放術を使役したのだろう。
「……お疲れ様」
激闘を生き延びた女性に労いの言葉を囁きかけると、今度は隣に並び立つワタルが俺に話しかけてきた。
「無事でよかったよ、カズヤ」
「お前らより先に死ぬわけにはいかないだろ」
「そうだね……他の人には悪いけど、君らが生き残ってくれてて、本当に嬉しいよ」
ワタルの微笑みに思わずこちらも頰が緩んでしまい、笑みが溢れた。
すぐに両手を打ち合わせ、いつもの元気な声を出した。
「さ、急いでお湯沸かさなきゃな。悪いけど、火酒の壺はあっちの馬車だから取ってきてくれないか?」
「分かったよ。サヤさんはどうするの?」
「とりあえず、先に天幕で休ませるよ。創世神の話は、明日起きてから伝えればいいだろ」
自分の脳天気な発言に、ワタルは苦笑いで「そうだね」と答えると、火酒の置かれた馬車へと走り出して行った。
その背中を見詰めながら、俺はふと思った。
──俺って……酒飲んでいいのかな?
──早く、地上へ。カズヤくんのところへ。
ヒヅキとして魔界へと降臨した創世神はひたすらに特異点の名を念じた。
狂おしいほどの思慕を感じると同時に、針で突き刺されるような痛みがヒヅキの頭を貫いた。思わず顔を歪め、苦痛に耐える。
創世神の恩恵たる《地形操作》の使用に伴う副作用には覚悟していたのだが、広範囲で唱えただけでこれほどとは……。
やはり、古の大戦時よりも力が大きく衰えている。昔ならばこの程度、痛みも感じなかったのに。
しかしヒヅキは、千人ほどの人界の民と、南北から接近する膨大な魔界の民の存在を認識するや、躊躇いなく地形操作を唱えてしまった。
北から接近する大集団は、その手前に長大な谷を刻むことで侵行を止めた。
もしやこの頭痛は、死にゆく彼らの恐怖と怨念が、私の精神に鋭い痛みをもたらしているのかもしれない。
しかしヒヅキは強く一度眼を瞑ってから、勢いよく見開いて刹那の迷いを打ち消した。
自分の中の優先順位は、一年前から決定している。
カズヤ──水樹和也のためなら、どんな罪も犯す。彼のためなら、命すら捨てる覚悟だ。
永遠とも思えた数十秒の降下がついに終わり、パールホワイトのつま先が黒い地面を捉えた。
奇妙に捻くれた灌木が密生する林の中だ。夜空に月はなく、不吉な赤い星明かりだけが淡く降り注いでいる。
ようやく薄れ始めた頭痛を、何度か頭を振って追い出すと、ヒヅキはまっすぐ背を伸ばした。
馬のいななきが近くで聞こえ、そちらに視線を向けると、茂みに隠れるように大型の馬車が何台も停まっているのに気付く。
──どこ……? どこにいるの、カズヤくん?
焦燥のあまり、特異点の名を叫ぼうとした時、背後から震える声が掛けられた。
「創世神……さま……?」
振り向くと、肩の肉を抉り取られた獣人族の少女が剣を支えに立っていた。
ヒヅキは、彼女について知っていた。
正確には、監視生物からの情報で知り得ている。
「ええ。私は、人界の創造主にして人界を統べる神、創世神です。……今は、ヒヅキと名乗っているわ」
軽い自己紹介を終えると、少女は両眼を見開いてから、胸元できゅっと両手を握り、呟く。
「あなたが、古の大戦から人界を救ってくれた……信じられない、けど……」
そこまで言うと、サヤは限界に達してしまったのか前に倒れそうになる。
ヒヅキは倒れ掛けた体を抱き抱え、抉られた肩に左手を添える。何度か唇を動かしてから、高位治癒術を施す。
傷はみるみる塞がっていき、抉り取られていなかった状態にまで時が戻ったかのように、綺麗に治癒した。
それを見たサヤは、囁き声を絞り出す。
「今のは、治癒術……しかし、魔界でこれだけ高位な治癒術なんて、奇跡としか……」
声が少しずつ薄れていき、やがて両瞼をゆっくりと下ろした。戦闘による疲労と安堵がここで顔を出してしまったのか、一気に眠気が来てしまったのだろう。
静かに眠る体を優しく抱き止め、どうしたものかと頭を悩ませながら、しばしその場に立ち尽くす。
人界軍の状況はあらかた把握している。部隊を二つに分けた時は肝を冷やしたが、今のところ大きな被害は出ていない。
騎士テレーゼと騎士イユ、多くの衛士の命が散ってしまったことへは心痛むが、今は彼らの供養をしている余裕はない。
早くカズヤと再会し、伝えなければ。今が、邪教神を倒す唯一の機会だと。
「これは何とも……たまげたとしか言えませんなぁ」
大型竜車二階デッキの先端に立ち、前方に突如出現した巨大な地割れを見下ろしていたラギルスの耳に、どこかのんびりとした声が届いた。
視線を向けると、デッキの隅に設けられた昇降ハッチから、恰幅のいい中年男が顔を出したところだった。ロニージョという名の、商工ギルドの頭領だ。幅広の袖を体の前で合わせ、深々と一礼する。
いまや三人だけになってしまった将軍の一人だが、この男自身には大した戦闘力はない。何の用だ、という意味を込めたラギルスが片眉を動かすと、ロニージョは両手を顔の前に掲げたままちらりと左右に視線を走らせた。デッキにザルザードの姿がないことに気付いたはずだが、それに関しては何も言わず、改めて一礼する。
「ラギルス殿。これ以上進軍しないのであれば、兵たちに食事と休息のお許しを頂きたくまかり越しました」
「ああ」
ラギルスは、黒々と口を開けるクレヴァスに向き直った。
あの地割れが、東西どこまで続いているのかを確認させるために使った偵察兵からはいまだ報告がない。つまり、一キロや二キロではないということだ。土木作業で埋め立てられる深さではないこともひと目見れば解る。
また、ジンの報告から敵軍の行動を予測して戦場の南に潜ませたオーガの手勢も、この調子では何もできずに全滅した可能性が高い。
この状況は飛行戦力の使いどころであるはずだが、暗黒騎士団が所持する飛竜は十頭しかいない。二万の歩兵を運ぶのに、何往復させればいいのか見当もつかない。
デーモンならなんとかなるのかと、わずかに生き残ったデーモン隊に検討させたが、あの規模の谷に大軍が渡れるほどの橋をかけるのは時間が掛かるという返事だった。
つまるところ──。
あの巨大な地割れを渡る方法は、今の我々だけでは思いつかない。
厄介な局面になったのは確かだが、そうと解ればまだ対処のしようはある。
頼りたくはないが、邪教神様の指示を待つ。
ラギルスはかすかなため息を吐き、ロニージョに向き直り、言う。
「よかろう。今日はこの場所で野営する。兵にはたっぷり食わせておけ、明日は忙しくなるからな」
「はっ。御厚情、まことに痛み入ります」
再び深々と平伏し、商人の長はいそいそと姿を消した。
「これは……一体何が起きたんだ……?」
戴天の背に跨りながら、灌木地帯と丘陵の間に開かれた溝を見渡し、無意識に呟いた。
灌木地帯に向かう最中、遠目からでもはっきりと見えるほどの光が地を割くのを確かに見た。
神の御業としか思えない現象に、最初は邪教神が目覚めた前兆かと疑った。
しかしその可能性は低い。
あの光からは、邪教神が放つ禍々しさは感じられなかった。
「まさか……創世神が」
一年前に姿を消した、もう一人の神が戻ってきたのか。
終わりのない逡巡に陥りそうになっていると、視界の端で煌めくものが入ってきた。
不意にそちらへ視線を送ると、淡い月明かりを反射して輝く金髪が見えた。
あれは、セレナか……なんでこんな所に?
周囲に衛士は見当たらないし、待ち伏せのはずなのに単独で行動するなんて。
「戴天、あそこに降りてくれ」
手綱を引き方向変換させ降下する。徐々に距離が縮まって行く度に、何故だが胸の内で渇望が渦を巻いてくる。
──何故だろう。早く会って、色々と話したい。
今すぐ飛び降りて、後ろから抱きつきたい。
薄暗さに馴れたカズヤの眼が、地上に立つ金髪を捉える。
近づき、気付く。
彼女はセレナじゃないこと。
もう一人──サヤが倒れていることに。
……サヤッ!?
瞬間、あらゆる思考が吹き飛び。
戴天の背から飛び降りる。
白銀の鉄靴が、地面に触れた、その瞬間。
剣光。
そう認識する前に、カズヤは反射的に動いていた。右手が閃き、左腰に装備された焔天剣を全速で抜き放つ。
きゃりいいん! と高く澄んだ音が、夜の森を貫いた。
どうにか何者かの斬撃を弾いたが、あまりの衝撃に右手が肘まで痺れた。なんという重い剣か。
飛び散った大量の火花が白く焼きついたままの視界に、息もつかせぬ次撃の光が見えた。
ただブロックするだけでは押し切られる。
瞬時にそう判断し、迫り来る斬撃を連続して迎え撃つ。
「────ッ!?」
三撃目を迎え撃つ直前、不意に真上からの殺気を感じ、カズヤは三撃目と衝突する勢いに乗って大きく後ろに跳んだ。
その直後、上空から急降下してきた光の粒子を放つ刃が三本、先ほどまでカズヤが立っていた場所に突き刺さる。
「いつの間に……」
攻撃してる隙に上空へ放っていたのか? それにしては正確に落ちてきたが……。
地面に突き立つ刃を見据えていると、金髪の煌めきとは違う輝きが三点、暗がりで一瞬だけ映る。
直後、暗がりから地面に突き立つのと同じ刃が三本、こちらに向かって飛翔してきた。
身を転がして二本は回避。転がった先に飛んできた刃を焔天剣で弾き上げると、剣が近くの幹に突き立った。
なんて正確で見えない攻撃。いつ飛ばしてきたのか分からなかった。
暗がりだから見えないのか? いや、刀身自体は暗闇でも見えるほど光っているのに。
そもそも、これだけ光っているのなら、最初から気付くはず。
だがこの剣は、暗がりから突然姿を現した。
光の刃に対して多くの憶測を巡らせるカズヤであったが。
途端、息を呑む。
地面や樹に刺さっていた光の刃がふわりと宙に浮き上がる。
六本の刃は見えない糸で操られているかのように宙を飛び、金髪の者を囲むようにピタリと止まる。
ジンが扱っていたのに似ているが、あいつは手を動かしていない。
まさか、剣自身に意思があるのか!?
支離滅裂な結論を脳から振り払い、剣を肩に担ぐように構える。
──あれだけの数だ……一度に扱える数には限りがあるはず。
六本全部を同時に操れるわけじゃない。できるのなら、最初から俺を取り囲んで串刺しにしている。
最初の攻撃を退いて、至近距離で一気に叩く。
静かに呼吸を整え、精神を集中させる。六本の刃に意識を向けながら、カズヤは猛然と間合いを詰めに行った。
一本の刃が、風を裂くような鋭い突きを繰り出す。
──が、その切っ先が胸へと届く前に、カズヤはあっさりとそれを払いのける。
二本の刃が、左右から斜めに降り注いでくる。
「はぁッ!!」
気合声と共に剣を上薙ぎし、飛んでくる刃を弾き飛ばす。
やはり三本以上は同時に操れない。
カズヤはそのまま返す刀で、金髪の者を斬り倒せる──かと思えた。
「っ!?」
しかしカズヤの一撃はその寸前で、敵の操る一本に防がれてしまっていた。
「……まだだ!」
それでもカズヤは即座に次の攻撃へ移る。下段から斬り上げ、右袈裟に斬り下ろし、真一文字に薙ぐ──繋ぎ目に無駄がない連撃だと自負できる。
その猛攻を、敵は残った三本で見事に防ぎきっていた。
「くそ……」
自分で言うのもなんだが、連撃を単に三本という数の優位だけで凌げるものではない。敵は尋常ならざる剣速に、しっかりと対応してきている。
──どういうことだ!? こいつは、どうやってこれだけの刃を操っているんだ!?
冷や汗を振り払う勢いで剣を振るいながら、精巧な動きで斬撃を捌く刃を睨んだ。
至近距離で分かる。こいつは一切手を動かしていない。いや、手だけじゃない。その場から一歩も動いていない。
このまま攻撃を続けても意味がない……だったら、賭けに出る!!
振り上げた剣閃が煌き、焔天剣の切っ先が大きく弧を描く。
だが、今度もその一撃は刃によって遮られていた。
それでもカズヤは留まることなく次の攻撃へと繋ぎ──
「ここだ!」
ぐっと手首を捻り、力の流れを変える。
焔天剣を受け止めていた刃は急な力の変化に対応できず、大きくバランスを崩す。
それだけなら、ただの崩し技だ。敵も対処できたかもしれない。
しかし、その光刃が別の刃と接触──さらにカズヤがそこへもう一撃叩き込むと、刃同士が干渉しあって、三つの刃が弾かれるように吹き飛んだ。
「よし!!」
思った通りだ。
一度に操れる刃は三本が限界なら、三本同時に動きが乱されれば立て直すのは一苦労だろう。
ようやく出来た隙を見逃さず、がら空きになった腹部目掛けて、焔天剣が一閃する。
勝負あったと思った瞬間、黒い影がそこへ割り込んでいた。
カズヤの斬撃を、上空に弾き返した二本の刃が交差して防いだ。
──しまった! 三本だけに気を取られすぎた!
ここで初めて鍔迫り合い──と思しき拮抗状態に移行し、動きが止まった。
その静寂を、のんびりとした男の声が破った。
「うーむ、こりゃあ実に何とも、見事な眺めだな。咲き誇る麗しき一輪の花と、花に魅入られて寄っていく男が一人、いや絶景絶景」
同時に、それまで誰もいなかったはずの空間から、ぬうっと二本の逞しい腕が伸びてきた。ごつごつした指が、カズヤと敵の剣の腹をひょいと摘む。
「──っ!?」
まるで万力に挟まれたかの如く、剣が動かなくなる。腕は、唖然とするカズヤを剣ごと軽々と吊り上げ、大きく引き離して着地させる。
見ると、隣に立っているのは、騎士長ヒサカゲだった。
「なぜ邪魔するんですか師匠! こいつは、恐らく暗黒騎士……」
「違うと思うぜ。早々に戦死するところだったオレを命拾いさせてくれたのは、こちらのお方なんだからな。多分、あそこで眠ってる彼女もそうだろ?」
最後のひと言で、俺はサヤの存在を思い出した。
樹を背に倒れるサヤを見つけると、介抱するようにワタルが診ている。
「ワタル……なんでお前がここに」
「騎士長への報告中に、こっちで戦闘音が聞こえてね。同行してきたんだ」
微笑みながら言い、すぐにサヤに視線を戻す。
「なぁ、サヤは大丈夫なのか?」
答えを急かすと、ワタルは驚いたように眼を見開き、か細い声を発した。
「凄いよ……服は血で濡れてるのに、どこも怪我をしてない。傷跡が残らないほどの治癒術が施された証拠だよ」
「はっ……? 馬鹿言うなよ、ここは魔界だぞ。初歩的な素因なら出せるけど、治癒術は詠唱できないだろ」
炎素や風素といった初歩的な素因ならば生成できるが、デリケートな治癒術は魔界に漂う魔素では詠唱することも辛く、仮に生成できたとしても維持するのが困難だ。
サヤの場合、右肩の制服が千切れており真っ赤に染まっている。それだけ出血が激しかったことを物語っているのに、傷口は綺麗に塞がっている。
「やっぱりそうか……」
隣に顔を向けると、先ほど見た大峡谷の方向にちらりと目をやると、カズヤの肩にぽんと右手を乗せた。
「少年も見ただろ。天から七色の光が降り注いて、大地が幅百メルも裂けたのを。さしもの暗黒騎士連中も、飛竜を使わず棒立ちだったよ。ひと息に蹂躙されるところだったオレたちを、創世神殿が救ってくれたのは間違いない事実だ」
「………………え?」
あっさり呼ばれた名を聞き、カズヤは血の気の失せた顔で斬り交えた相手に視線を送る。
遮断されていた月明かりが少しずつ暗闇に隠れた素顔を照らし出す。
全貌が明らかになってくる度に、カズヤは息を呑む。
雪のように白い肌。黄金を溶かしたかのようなロングヘアが、夜風を受けてたなびく。真珠のようなブレストプレートで保護しているにも関わらず、圧倒的な存在感を出している胸部。
「……あ……あぁ…………」
開いた口が塞がらず、弱々しい呻き声が漏れていく。
やがて顔の全貌が明らかになるやすぐに、抜き身の焔天剣を鞘の鯉口にあてがい、シャキン! と一気に落とし込み、
「す、すいませんでしたッ!!」
大声で謝罪した。
対峙した相手──人界の創造主であり自分にとっても重要な人物である創世神ヒヅキは、無礼な行為をされたにもかかわらず、慈愛の微笑みを浮かべながら発した。
「気にしないで。あなたが元気でいてくれたことが一番だから」
女神の慈悲に心底感謝しながら顔を上げると、騎士長は口許をにやりと緩めた。
「驚きましたよ、創世神殿。一年も姿を消していたと思えば、いきなり我々の窮地を救い出して現れるなんて」
これには創世神も反論せず、周囲に浮かぶ六本の刃を背中の鞘へ自動的に落とし込んだ。
創世神はまたもやカズヤに優しい眼差しを向けると騎士長に向き直り、口を開いた。
「ええ……一年前、私は今日までずっと姿を隠し、力を蓄えていました。全ては、邪教神を倒し、人界と魔界に真の平和をもたらすために」
「真の平和……ね」
騎士長は、薄くヒゲの浮いた顎をざらりと擦りながら、太い笑みを浮かべた。
「詳しく聞きたいが、ここから先は他の騎士や衛士長たちにも聞いてもらったほうがいいだろう。茶でも飲みながら話しましょうや、創世神殿。敵軍も今夜はもう動けまい」
「……そう、ですね」
少しだけ切なそうな表情で、ヒヅキは頷いた。
「よし、そうと決まれば……カズヤ、熱い茶と、オレには火酒を用意してくれ」
「……なんで俺なんですか」
さも当然のように頼まれてしまったことに疑問を覚え率直に聞くと、騎士長はおおらかに笑いながら髪の毛をぐしゃぐしゃにかき乱してきた。
「新米騎士なんだからさ。お前さんにも火酒分けてやるから頼んだぜ、少年」
「いえ、一応ここは戦地なので結構です」
肩を竦めながら馬車に向かい、ついでにサヤを担ぐ。深い眠りについているのか、幸せそうな寝顔を浮かべている。
周囲の異様な地形を見る限り、ここで激しい戦闘があったのだろう。恐らく、餓断剣の解放術を使役したのだろう。
「……お疲れ様」
激闘を生き延びた女性に労いの言葉を囁きかけると、今度は隣に並び立つワタルが俺に話しかけてきた。
「無事でよかったよ、カズヤ」
「お前らより先に死ぬわけにはいかないだろ」
「そうだね……他の人には悪いけど、君らが生き残ってくれてて、本当に嬉しいよ」
ワタルの微笑みに思わずこちらも頰が緩んでしまい、笑みが溢れた。
すぐに両手を打ち合わせ、いつもの元気な声を出した。
「さ、急いでお湯沸かさなきゃな。悪いけど、火酒の壺はあっちの馬車だから取ってきてくれないか?」
「分かったよ。サヤさんはどうするの?」
「とりあえず、先に天幕で休ませるよ。創世神の話は、明日起きてから伝えればいいだろ」
自分の脳天気な発言に、ワタルは苦笑いで「そうだね」と答えると、火酒の置かれた馬車へと走り出して行った。
その背中を見詰めながら、俺はふと思った。
──俺って……酒飲んでいいのかな?
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