最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職

文字の大きさ
11 / 79

第11話 ラッキースケベは突然に

しおりを挟む


「おっす。ただいま」

「……ぐぁ」


  結局あの探索者達が早々に探索を済ましていたから、俺はあの仮設トイレを通って俺だけのダンジョンに戻ってきた。


 あの探索者達が隅々まで確認しても、進入禁止の立て札から入り口を通ってここまで来れなかったみたいだし、あそこは自動的に封鎖されたって事でいいよな。


 いちいち表の入り口からダンジョンに入ってあそこを確認する手間が省けたのはありがたい。


 ありがとう、派遣探索者達。


 そんでコボルト【RR】、お前そんな隅で踞ってても返事を返してくれるなんて……。

 犬畜生は格上に忠実なんだなぁ。


「えーっと時間は……」


 ん、まだまだあるな。

 狩りをするにしても次のスポーンまでまだ間も空くだろうし……折角だから景さんが投稿した動画でも見るか。


「よっと」


 俺は階段を降りると一番下の段に腰かけて持っていたスマホで動画共有サイトをアプリから起動した。


 景さんには直接チャンネル名を聞いてはいないけど、多分焼肉森本で検索すれば……ほら出てきた。


 『森本のタレ紹介』、『美味しいコボルトの焼き方』、『珍味っ!!ゴブリンの耳皮、ゴブミミガーっ!』、『入手困難!ドラゴン肉を越える!?コボルト【RR】を捌いていくっ!』、『コボルト【RR】トリミング編』、『コボルト【RR】実食編』。


 他にも焼肉森本の動画がこれでもかとヒットした。


 画面スクロールしてもまだまだまだまだ……景さん、いつの間にこんなに投稿を。


「どれも気になるけど、やっぱ昨日のやつ……ってこれさっき見せてくれた時より伸びてるじゃん。しかも15万再生って」


 コボルト【RR】を捌くっていうのがそんなに珍しいのか、動画はプチバズり中。


 投稿主の景さんがコメントで今日コボルト【RR】を提供するって書き込んでるけど……店大丈夫かな?


「俺が心配してもしゃあないか。店を手伝った事はあるけど、俺は料理人でも何でもないし……。でもこういう動画見るとちょっと捌きたくなるな。暇潰しに1匹試してみるか」


 俺はコボルト【RR】の死体と何かあったとき様のサバイバルナイフを取り出して、スマホを近くの岩に立て掛けた。


 前に店を手伝うついでで店長に色々教えてもらった事もある。

 それに動画を見ながらなら……何だか上手くいきそうな気がする。


「が、ああ、あ……」

「……怖いなら見なけりゃいいのに」


 俺がサバイバルナイフをコボルト【RR】の死体に刺して皮を剥ぎ始めると、隅で踞っていたコボルト【RR】は身体をびくびくさせながら泣きそうな顔でこちらを見つめるのだった。





「上々……かな」


 捌いて、一応部位ごとに分ける事は出来た。


 血抜きして出た血とか肉片、は放っとけばダンジョンの仕様で消えるはすだから、便利便利。

 失敗して、飛び散ったお粗末な肉片も証拠隠滅。


 ちょいとボロボロな所はあるけど、俺の昼飯には十分。


 時間もなんだかんだで13時を大きく回った頃。

 ランチタイムは13時半まで、焼肉森本でそろそろ賄い飯を作り始める頃合いだ。


 俺もその時間で景さんにコボルト【RR】の焼肉丼を作ってもらお。


「俺は飯タイムだ。……お前は気弱すぎて殺すのに気が引けるから強くなっとけよ」


 俺はどうせ分からないだろうと思いながらもコボルト【RR】に忠告し、階段の出入口設定を『焼肉森本(休憩所)』に直した後、階段を登り始めた。


 さっきも思ったがこの階段は結構長い。

 この歳になってくると20前後の時より遥かに階段がキツイ。

 気持ちは若いつもりなんだけどなぁ。



「――着いた。これは床の板かな?」


 最上段に辿り着き、早速天井を触るとざらざらとした手触りと温もりを感じた。


 多分休憩所の床だとは思うけどこ……これ外した後って勝手に元に戻ってくれるよね?


「戻らなくても説明すれば理解してもらえる、大丈夫……。すぅぅ……」


 俺は無意識の内に深く息を吸い込み、決して音を立てない様に木の板をそおっと持ち上げた。


 木の板は何かに引っ掛かったのか若干重い。


 それになんだかやけに暗い。


「ここ本当に休憩所か?机どころか灯りもない、あるのは三角の白とヒラヒラとピンクのリボ――」

「きゃっ!」


 女の人の可愛らしい声と共に俺の視界は晴れた。


 今のもしかして景さんのスカートのな――


「何でそこに宮下君が! その……み、見た?」

「えーっと、すいません。がっつりと」

「忘れて」

「それは難し――」

「忘れなさい」

「はい――」



 バンッ!



 景さんの言葉の圧力に負けて返事をすると、休憩所の扉が勢い良く開いた。


「ふぃーっ! お疲れ景!まさかあの動画でこんなに人が来てくれるなんて、いやーっこんなに嬉しい悲鳴は久しぶりだ! バイトの橋本さんも店の前にいた人達にコボルト【RR】の肉の提供は次回未定で伝え終わる頃だし、そろそろ俺達も昼飯にし……宮下、お前何やってんだ?」

「お疲れ様です店長、け、景さん」

「うん」


 景さんの素っ気ない返事で場が重くなる。

 う、胸が痛い! 気がする。


「……お前ら、その歳で青春か?」

「「違うっ!!」」

「店長、景さん、まだ待ってたお客さん達帰らして店閉めておいたよっ! ってこれどういう状況ですか?それにあなたは……」

「えーっと、色々説明したいんですけど……まずこれ見てください」


 アルバイトの人まで入ってきて面倒な事になる気配を感じた俺は、この空気を断ち切る為に処理したコボルト【RR】の肉とコボルト【RR】の死体を取り出して3人に見せつけるのだった。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

インターネットで異世界無双!?

kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。  その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。  これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!

IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。  無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。  一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。  甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。  しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--  これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話  複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

処理中です...