最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職

文字の大きさ
12 / 79

12話 100万回再生、だと

しおりを挟む
「宮下、お前これ……また見つけてきたのか!?」


 案の定驚いている様子の店長、景さん。


 アルバイトの人はそもそもこんなでかいコボルトを見た事がないのかな?


 だらしなく、あんぐりと口を開けて言葉が出ないみたいだ。


「見つけたのはそうなんですけど……それが見つけただけじゃなくて、コボルトの養殖場を――」

「コボルトの養殖場っ! あっ、ごめんなさい。えっと宮下くんもしかしてだけど、コボルト【RR】を恒常的に狩れる場所が?」


 食い気味に声を荒げた景さん。

 さっきの事はもう過去の事のように流して、俺に質問が飛ぶ。


 本当にコボルト様々です。

 マジで俺、コボルトに生かされてるまであるな。


「はい。この下に。スポーン間隔が結構長めなんですけど、それでも1日で20匹、いや30匹以上は狩れますよ」

「お父さ……店長、これなら夜はお客さんを帰らせなくても――」

「そうだな!昼はコボルト【RR】の肉が足りなくて結構な人数帰らしちまったし……。夜は稼ぐぞ。とその前に飯だな」


 昼の様子は分からなかったけど、店長の額に光る汗と椅子に腰かける音でなんとなく察した。


 ランチタイムは戦場だったんだなって。


「昼は私が作る。みんなは座って待ってて」

「あ、だったら先にこっちから使ってください。不格好ですけど」

「分かった。内臓はちょっとだけ匂いもあるし、下処理に時間がかかるから、こっちのバラ肉で……丼とかでいい?」

「俺、丁度焼肉丼がいいって思ってたんですよ!」

「だと思った。すぐだから待ってて」


 景さんはくすりと笑って調理場に向かった。


 一時はどうなるかと思ったけど……ふぅなんとかなった。


「えっと、初めましてバイトしてます。橋本優夏はしもとゆうかっていいます! 宮下さんの事は聞いてはいたんですけど……うん、似合ってると思います」

「うん、よろしくって何が似合ってるの?」


 元気一杯の優夏さんは多分大学生かな?

 人見知りもしない子みたいだし、良い子だとは思うけど……ごめんちょっと発言の意味が分からない。


「にぶちんだな」

「にぶちんですね」

「良く分かんないけど初対面の人にそれって、肝据わりすぎじゃない?店長の失礼はいつもの事だからいいけど……」


 優夏さんは俺の正面、店長の隣に座ってやれやれといった雰囲気で店長とぼそぼそしゃべる。


 はぁ、早く景さん戻ってこないかな。





「あむ、あ、ぐ、ん、んんっくぁ! うっまっ! 肉の質もいいけどこのタレ! いつもの焼肉ダレと違って、辛みが強い、けどマイルドで良く肉に絡み付いて、胡麻油の風味もいいし……キムチマヨと一緒も旨いっ。景さんの料理は本当に最高ですよ!」

「あ、ありがとう。でも落ち着いて食べて、喉に引っ掛かる」

 そっと俺のコップに水を足してくれる景さん。

 ホント過保護。


 いつもはこの過保護を店長がいじってくるんだけど……。


「やっぱこの肉上手いな!」

「私賄いでこんなに良い肉食べれるなんて思いませんでしたよ!」


 店長も優夏さんも食べる事に夢中でそれどころじゃないらしい。

 その気持ち分かる分かる。


「そういえば向こうでちょっと時間があって……あの動画見ましたよ」

「ど、どうだった?」

「編集も丁寧でよかったです!あれ見たら腹空かせてここに来るのも分かるなぁ。それに再生数が15万回で――」

「え! じゅっ――」


 舌鼓を打ちながら動画の話をすると景さんは言葉を途切れさせて、急いでスマホを取り出した。


 再生数に囚われるのは投稿者の性らしい。


「ほらっ! 15万回越えて――

「100万……」

「ひゃ?」

「100万回越えてる……。さっき来た人達がまた拡散して……。コメントも登録者もどんどん増えてる」

「あっはっはっはっはっ! 良いじゃないか!それで今日終わるまで客が途切れなければさ」


 俺が驚くよりも前に店長が高らかに笑った。


 にしても100万回越えって事は……。


「途切れないどころかランチより忙しくなるかも……。急いで肉の準備をしないと間に合わない。……そういえばこれ、宮下君が処理したんだっけ」

「……はい」

「コボルト【RR】の死体はまだある?」

「……はい」

「だったら申し訳ないんだけど……準備手伝って」

「……はい」


 やっぱりこうなるよねえ。

 俺一応探索者なんだけど。


「でも場所が無くないですか?こんなデカいのをまとめてってなると」

「1匹を3人で捌いて……っていってもやっぱり広い場所はあった方がいいな。狭いところで作業するのはしんどい。しかも男同士なんて暑苦しい」


 店長はじと目でこっちを見てくる。

 俺だってあんたと肌をくっつけて汗を流すのは勘弁なんだけど。


 あっ。

 そういえばあそこ設定で拡張も出きるんだっけ。


「……ちょっと俺に提案がありまして。その、これ食べたらみんなでそこの下、ダンジョンに潜りませんか?」


 俺の提案に3人共驚いた表情を見せる。


 怖いのは勿論、探索者以外の侵入は緊急時を除いてのダンジョン侵入は違法。


 でもこのダンジョン、ダンジョンっていう体を保ってないし、問題ないよね。

しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。 森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。 その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。 これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語 今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ! 競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。 まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。

異世界に移住することになったので、異世界のルールについて学ぶことになりました!

心太黒蜜きな粉味
ファンタジー
※完結しました。感想をいただけると、今後の励みになります。よろしくお願いします。 これは、今まで暮らしていた世界とはかなり異なる世界に移住することになった僕の話である。 ようやく再就職できた会社をクビになった僕は、不気味な影に取り憑かれ、異世界へと運ばれる。 気がつくと、空を飛んで、口から火を吐いていた! これは?ドラゴン? 僕はドラゴンだったのか?! 自分がドラゴンの先祖返りであると知った僕は、超絶美少女の王様に「もうヒトではないからな!異世界に移住するしかない!」と告げられる。 しかも、この世界では衣食住が保障されていて、お金や結婚、戦争も無いというのだ。なんて良い世界なんだ!と思ったのに、大いなる呪いがあるって? この世界のちょっと特殊なルールを学びながら、僕は呪いを解くため7つの国を巡ることになる。 ※派手なバトルやグロい表現はありません。 ※25話から1話2000文字程度で基本毎日更新しています。 ※なろうでも公開しています。

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!

IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。  無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。  一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。  甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。  しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--  これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話  複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています

【完結】スキルを作って習得!僕の趣味になりました

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》 どんなスキル持ちかによって、人生が決まる。生まれ持ったスキルは、12歳過ぎから鑑定で見えるようになる。ロマドは、4度目の15歳の歳の鑑定で、『スキル錬金』という優秀なスキルだと鑑定され……たと思ったが、錬金とつくが熟練度が上がらない!結局、使えないスキルとして一般スキル扱いとなってしまった。  どうやったら熟練度が上がるんだと思っていたところで、熟練度の上げ方を発見!  スキルの扱いを錬金にしてもらおうとするも却下された為、仕方なくあきらめた。だが、ふと「作成条件」という文字が目の前に見えて、その条件を達してみると、新しいスキルをゲットした!  天然ロマドと、タメで先輩のユイジュの突っ込みと、チェトの可愛さ(ロマドの主観)で織りなす、スキルと笑いのアドベンチャー。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

ダンジョンに捨てられた私 奇跡的に不老不死になれたので村を捨てます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はファム 前世は日本人、とても幸せな最期を迎えてこの世界に転生した 記憶を持っていた私はいいように使われて5歳を迎えた 村の代表だった私を拾ったおじさんはダンジョンが枯渇していることに気が付く ダンジョンには栄養、マナが必要。人もそのマナを持っていた そう、おじさんは私を栄養としてダンジョンに捨てた 私は捨てられたので村をすてる

職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!

よっしぃ
ファンタジー
この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。 10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。 ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。 同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。 皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。 こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。 そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。 しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。 その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。 そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした! 更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。 これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。 ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。

処理中です...