ここタマ! ~ここは府立珠河高等学校~

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~花火の女王様~

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 大阪にはおもちゃの問屋街がある。
 大阪の中心部、グルメ番組などで紹介される空堀商店街の坂を下ると、おもちゃの問屋街である松屋町通りに行きあたる。
 松屋町には人形の専門店や、提灯屋、縁日の景品のおもちゃやお菓子などを扱うお店、季節ごとのイベントなどで使う装飾品の専門店、玩具と名が付くものなら何でも取り扱うお店など、多種多様なお店が軒を並べていた。
 そんな松屋町のアーケードの下で生物部のメンバー数名が何やら相談をしていた。
「花火どこで買うよ?」
「こんなにいっぱいあると迷うわね…」
 生物部のメンバーで花火大会をしようという話になり、おもちゃの問屋街の松屋町で買えば安いからという事で、花火の買い出しにやってきたのである。
 買い出しのメンバーは優子、静香、岡部と洋司、そして渉の五人だった。
「予算は花火と飲み物代込みで二万円――かなりいろいろ買えるわね」
 今日の会計担当の静香が部員から集金した会費が入った封筒の中身を確かめながら言う。
「打ち上げ花火と〆の線香花火は絶対欲しいっていうリクエストと…あと蛇玉ひと箱っていうオーダーもあったわね…」
 メモ帳を確認しながら優子が笑う。
「蛇玉ひと箱って…誰だよそんなリクエストしたの?」
 呆れ顔の岡部に「古谷君」と優子が説明する。
 古谷の名前を聞いた瞬間「さすが爬虫類好き」と洋司が笑っていると、「まさか『蛇』とって名前って理由だけで大量注文したんじゃないでしょうね?」と静香が突っ込む。
 その本人が今いないのでどういう意図なのかはわからないが、そんなに高価な花火ではないので構わないか…という事になった。
「ここって飲み物も安いらしいですけど、買うんですか?」
 荷物持ち要因として連れてこられた渉が訊く。
「問屋さんだから飲み物もケース売りなのよね…」
 そう言いながら優子と静香は顔を見合わせる。
「飲み物は重いし…とりあえず、花火を買ってから考えれば?」
 岡部の言葉に女子二人も頷く。
「お店によって置いてある花火が違うみたいだし、ラインナップを確認してから買うお店を決めた方がいいと僕は思うな」という洋司の提案が採用され、花火屋を見て回る事となった。
「…よーちゃん、今日は習い事大丈夫なの?」
 習い事が理由で放課後以外のクラブ活動に参加が出来ないでいる洋司が、今日珍しく参加したので静香が訊く。
「大丈夫。先生たち今、夏季休暇中だから」
 そう言って洋司は嬉しそうな笑顔を見せた。
「前から気になっていたんだけど、何を習ってるの?」と訊く静香に、洋司は「今は、英語、フランス語、ドイツ語、中国語、バイオリン…あと数学かな?」と答えた。それをどのお店を覗こうか店頭を見ながら歩いていた一同が聞いて「は?」と言いながら足を止める。
「…ど、どういう事⁈」
 普通では考えられない数の語学の習い事に驚いて静香が洋司の顔を見る。
「家にいろんな国のゲストが来るんで、家の方針で家庭教師に来てもらってるんだ」
「か…家庭教師⁈」
 学校の勉強の為の家庭教師に来てもらっているという話は耳にする事があるが、外国語の…しかも多数の家庭教師がいるとは思わなかった静香は驚きの声を上げた。
「なんかすげーな」
「家庭の事情ってやつで…」
 岡部の言葉に洋司は苦笑いを浮かべながら答える。
「もしかして、よーちゃんっていいとこのボン?」
「普通だよ」
 そう言って洋司は否定する。
「——そうだよね。いいとこのボンが静香にしょっちゅうパシらされてるなんて変だし」
「どういう意味よ」
「エセ女王様は人使いが荒いって話」
「エセって言うな!」
 優子と静香のそんなやり取りを洋司はただ笑いながら聞いていた。
「…お嬢さんさん達、漫才は後にして、この店品揃えよさげだから覗いてみない?」
 ちゃんと目的を忘れていない岡部が、様々な花火が店の奥までずらっと並んでいる店を指し示す。
「いいんじゃない?」
 静香はそう言うと、洋司を引き連れて店の中へ入って行く。
「杉浦先輩もいまいち何を考えてるのかわかんないのよね…」
 洋司の後ろ姿を見ながら優子が呟く。
「人の心なんて本人だって本当はわかってなんだから、他人がわかる訳ないべな」
 そう言って岡部は店頭の花火の物色を始めた。
「先輩、これ面白くないですか?」
 渉が手持ち花火の一種なのか、蜘蛛胴体の絵が描かれた台紙に足に見立てた数本の花火がぶら下がっている袋を手に優子たちに見せる。
「いいんじゃない? 昔は蜘蛛じゃなく蛸とかイカの絵だった奴に似てるし」
「へぇ、このタイプ昔からあるんだ…」
 そう言いながら渉は手にしていた花火を元の場所に戻し、他の花火の品定めを始めた。
「打ち上げ花火も最近派手だなぁ…」
 店頭の人目が付く場所に置かれた様々な打ち上げ花火を見ながら岡部が感心する。
「イベントなんかで上がる尺玉のミニチュア版かぁ」
「ロケット花火はうるさいから最近禁止の場所増えてるし、みんなで鑑賞するならこういうやつの方がいいと俺は思うけど」
「そうですよねぇ…噴出し花火なんかも私は好きだけど…」
「あ、ドラゴンとか、俺も好きです」
 岡部と優子、渉の間で花火談議に花が咲かせていると、店の奥からプラスチックのバスケットを手にした静香と洋司が出てきた。
「手持ち花火はこんな感じでいいかしら?」
 静香はそう言いながらバスケットに山盛り入った手持ち花火を見せる。
「十人でだからすぐ無くなりそうな気もするけど…それだけでいくらぐらい?」
「値札ではこれと、よーちゃんが持っている分を足して四千円分くらいかな?」
 女子の会話を聞いていた岡部が話に入って来る。
「他の店も見て値段比較をして、それぞれの店の安いヤツをピックアップして買い集めないのかよ?」
「それはスーパーや個人商店なんかでの買い方。ここは問屋街よ? そんな買い方をしたら逆に高くつくし時間の無駄」
「どういう事だよ?」
 静香が自分の言葉をきっぱり否定したので、理由が解らず岡部が訊く。
「まとめて買えば値切り交渉出来るんだから、一軒のお店で買うのが一番賢いやり方」
「そんなものか? …先に言っておくけど、俺、値切り交渉なんてした事ないぞ?」
 スーパーやコンビニなどで表示価格でしか買い物をしたことが無い岡部が静香に言った。
「そうなの? 家電量販店とかでも値切り交渉ってするじゃない?」
「ええっ⁈」
 岡部を不思議そうに見ながら静香がそう言うのを聞いていた渉が驚きの声を上げる。
「家電量販店って定価より安い値段で売ってるのに、更にそれの値引き交渉をするんなんて出来るんですか⁈」
「何言ってるの? 昔から日本橋の電器街にある家電量販店なんかでは値引き交渉して買うのが常識じゃない」
「えええっ!」
 静香の何を今更といった言葉に今度は岡部と渉が声を揃えて驚きの声を上げる。それを聞いた優子と静香がびっくりしたような表情を浮かべる。
「…え? 君ら家電も量販店の表示価格で買ってるの⁈」
「普通そうですよ――優子ちゃんも、静香さんも値切ってるんですか?」
「もちろん」
 優子と静香の声が重なる。
 信じられないと言った顔になった岡部と渉に優子が「実演してみせるから、他の花火も適当に見繕ってバスケットに入れてね」と言って、買う花火を見繕い始めた。
「よく分からんが…俺らも選ぼうか…」
 納得いかない表情で岡部は渉にそう言うと、打ち上げ花火を手に取り吟味を始める。
 それから数分後、購入予定の花火はバスケット山盛り三つとなっていた。
「これ、完全に予算オーバーじゃないか?」
 床に置かれた花火の山に岡部が困惑の表情を浮かべる。
「大丈夫よ、任せて――花火の買い出しの流儀を見せてあげる」
 そう言うと、静香は店長の名札を付けた年配の男性に声をかけた。
「はい、いらっしゃいませ」
「これ、いくらぐらいになります?」
「…またぎょうさんあるなぁ、ちょっと待ってな…」
 そう言って店長は電卓を取り出しバスケットの中の花火の値段の計算を始める。
「…全部で二万三千五十円やね」
 そう言いながら店長は電卓の表示を静香に見せた。
「いっぱい買うんやから、まけてよ」
「そやなぁ…」
 静香の言葉に店長は電卓をたたき二万円の表示を出した。
「頑張って勉強してこれですわ」
「このぐらいにならないの?」
 そう言いながら静香が店長の電卓の表示を一万五千円に変えた。
「おっ…お客さん、これは殺生でっせ」
 驚いた店長が悲鳴を上げながら再び電卓をたたき、電卓の表示は一万九千円に変えた。
「次もまたいっぱい買うから…」
 そう言いながら静香は電卓の表示を一万七千円に変える。
「かなわんなぁ…」
 そう言いながら店長は再び電卓をたたき表示を一万八千五百円にした。
「端数は気持ち悪いから切りましょう」
 笑顔で静香は電卓の表示を一万八千円に変えてしまった。
「もう鼻血も出んわ…お客さんの勝ちや」
 そう言いながら店長が大きくため息をついた。
「店長ありがとう」
 静香は満面の笑顔を浮かべながら、封筒を取り出した。
「すげぇ…五千円以上値切っちゃったよ」
「…値切りのプロ」
 値切り交渉を目の前で見た岡部と渉が小さく感嘆の声を上げる。
「はいはい、私の任務はこれで終了。荷物持ちよろしくね」
 上機嫌で静香は男子たちに二つの段ボール梱包された花火を持つように指示を出した。
「店長本当にありがとうね。このお店ひいきにさせてもらうわ」
 見送りに出た店長に静香が笑顔でそう言うと、店長は「他には言わんとってな」と言いながら苦笑いを浮かべる。
「わかってるって、品ぞろえがいいお店だって宣伝しておくから」
「よろしゅうお願いします」
 そう言って頭を下げる店長に見送られながら一同は大量の花火を手に店を後にした。

「しっかし、すごかったなぁ」
 目的の大量の花火を購入するのを終えた一同は近くの喫茶店に入った。注文をして一息ついた後、岡部が先程の値引き交渉の光景がよほど衝撃だったのか、まだ興奮が冷めないようであった。
「二万三千五百円が一万八千円になったんだから、上出来だったわね」
 グラスの水に口をつけながら優子が静香を見た。
「ま、こんなもんじゃない? 本当はおまけを付けさせたいとこだったんだけど、可哀想だからやめておいたわ」
「すごい値引きをさせた上に、さらにおまけをつけさせるって…鬼ですか」
 不満が少し残っているような静香の言葉を聞いて、渉は水を吹き出しそうになる。
「値段が一万九千円だったら千円分…大きな打ち上げ花火一本ぐらいのおまけをつけさせたんだけど、お店のもうけを考えたら採算はギリギリってところかしらね?」
「まあ、妥当な所じゃない?」
 値引きやおまけは当然といった様子で女子たちが話しているのを聞いて岡部が目を丸くする。
「どういう事? 値引き交渉の暗黙のルールとか、基準とかあるのか?」
「はっきりある訳じゃないし、小さい頃から親がやっていたのを見たり聞いたりして覚えたものだから何とも言えないんだけど…」
 そう言いながら静香が少し考え込む。
「お店の商品の仕入れ額って、基本的には売値の六掛けから八掛けって言われてるから、それを念頭に置いてお店に損が無いように値引き交渉するとか、大きな値引き権限を持っている店長やマネージャーと交渉するとかかしらね?」
「あと、最初にわざと大きな値引き要求をしておいて、相手の言い値に少しずつ妥協する形ですり合わせて行くとかも大事」
 静香の説明を優子がすかさず補足する。
「…で、残りの二千円はどうするんですか?」
 渉の質問に静香はこの街でならジュース類も卸価格で売っている店があるので、そこで買うつもりと告げた。
「全部…持てる?」
 花火が入った段ボールに視線を走らせた優子の問いに男子たちは顔を一瞬見合わせたあと頷く。
「さすが男子。頼りになる~」
 荷物持ち要員として男子を多めに連れて来たのは正解だと思いながら静香がそう言って男子たちをおだてる。
「荷物持ちぐらいしか俺達には出来ないからな」
「任せておいて」
 男子たちは静香たちにそう言って力こぶを作って笑うのだった。

 松屋町の問屋街の外れに近い場所に飲料系の問屋があった。
卸売り価格なので店の前には複数の車が止まっていて、買ったばかりの飲料が入ったケースを車に積み込んでいる客達で込み合っている。
 生物部の一同は相談の上、ペットボトルのお茶を購入したのだが、ケースを持った瞬間、「痛っ‼」というのが岡部が発した第一声で、その後その場にへたり込んでしまった。
「どうしたの⁈」
「大丈夫?」
 何があったのか解らず、優子と静香が同時に岡部に声をかける。
「…ごめん、腰やったみたいだ…」
 岡部が声を絞り出す。
「え⁈」
「腰⁈」
「やっちゃったか…」
「痛そう…」
 口々にそう言いながら痛みを耐えている岡部を心配そうに取り囲んだ。
「歩ける?」
 優子がしゃがみ込んで岡部に尋ねる。
「…ちょっと、今はそれも…厳しい…」
「あちゃ~」
 行動不能に陥った岡部の言葉に優子がそう言いながら天を仰ぐ。
「…どうします?」
 地面に置かれた花火の段ボールとお茶のケース、うずくまったままの岡部を見比べながら渉が訊く。それにすぐに答える事無く、優子は黙ってお茶の箱を持ち上げた。
「——あ~、これ重いわ。多分10kg以上ある…」
 お茶の箱を持って短距離なら移動できない事も無いが、電車を乗換て自宅まで運ぶのはかなり大変そうと判断した優子の表情が曇る。
「物理的に持って帰るの無理そうよねぇ…」
 静香も事態を把握して困惑の表情を隠せないようであった。
「お茶返品する?」
「返品ご遠慮下さいっていう張り紙、お店で見ましたよ」
 渉の言葉に優子が唸り、さらに困り顔になっていると、洋司がおもむろに口を開いた。
「——うちの車使う?」
「…へ?」
 思わぬ提案に優子が不思議そうに洋司の顔を見る。
「私達五人よ? 岡部先輩と荷物だけ運ぶの?」
「大丈夫心配いらないから——ちょっと待ってて、今、呼ぶから」
「呼ぶ?」
 微笑む洋司の言葉に、今度は優子と静香が顔を見合わせた。その間に洋司はスマホを取り出し、みんなと少し離れた場所でどこかに電話を始める。
「30分ぐらいで迎えが来るから、大丈夫」
 連絡がついたのか洋司はそう言うと、心配事など一切ない様子でスマホをいじり始めた。
「…大丈夫って言ってるし、信じて待ってみる?」
「それしかないわよね」
 詳しい説明が一切ないので状況が呑み込めていないが、この事態になのに余裕すら感じる洋司の言葉を信じるしかないようである。
 待つ事半時間。洋司が手配した車が到着したのだが、その車種に一同仰天する事となった。
 黒塗りのリムジンが彼らの前の道路に停まり、中から燕尾服に身を包んだ初老の男性が降りてくると洋司に向かって「若様」と声をかけたのである。
「若様⁈」
 ただでさえリムジンなどテレビでしか見た事が無い高級車なのに、そのリムジンから降りてきた執事風の男性が洋司に若様と呼ぶのを聞いて、驚愕のあまり言葉を失う。
「室松、そこの荷物を積んでくれ――さあ、みんな乗って」
 そう言いながら洋司は岡部に肩を貸しリムジンに乗せると、他のメンバーにも乗る様に促した。
「…すげぇ」
 シックかつ豪華な内装に座り心地の良いソファーに岡部は腰の痛みも忘れて感嘆の声を上げる。
「——とりあえず、うちへ向かってくれ」
 インターフォンで分厚いガラスで仕切られた運転手側に洋司がそう告げると、リムジンは音も無く静かに走り出した。
「さすがリムジン…静穏性が半端じゃないわねぇ」
 興味津々といった様子で優子は走行中とは思えない静かな車内の様子を観察しながら笑う。
 リムジンが走り出してしばらく無言だった静香が不意に「…どこが普通よ」と不機嫌そうな呟きを漏らした。
「静香。何怒ってるの?」
 花火の値引き交渉に成功して上機嫌だったはずの静香が不機嫌になっているのに気が付いて、優子は静香を横目で見る。
「嘘つきって私嫌いなの――呼べば執事付きのリムジンが迎えに来るなんて、普通じゃないのに普通だなんて…謙遜なんかじゃなく、ここまで来ると嫌味よ」
 どうやら静香のご機嫌斜めの原因は、洋司の言葉が原因の様であった。
「気分を害したなら、ごめん」
 洋司は申し訳なさそうにそう言いながら静かに頭を下げる。
「嫌味とかじゃないんだ。俺が生まれた頃からこういうのが普通だっただけだから」
 嘘をついた訳でもないし、こういう生まれ育った環境が洋司にとって普通だったので普通と答えただけだと洋司は言ったが、静香は無言で不機嫌なままであった。
「おかげで助かったじゃない…困っていたのは事実だったんだから」
 洋司が車を呼んでくれていなければ、まだ今頃アーケードの下で途方にくれていたはずである。
「そうですよ。それにリムジンなんて僕たち庶民は一生に一度乗れるかどうかも分からないんですから」
 そんな渉の言葉を聞いて静香は鼻で嗤う。
「助けてくれなんて言った覚えはないのに、嬉しそうに連絡して呼び寄せるだなんて、見せびらかしたかっただけじゃない」
「そんなつもりは…」
「あ~、やってらんない。ここでいいから車を止めて」
「え?」
「私を降ろしなさい」
 戸惑う洋司に静香は強く言う。
「本人が降りたいって言っているのに降ろさない訳⁈」
 静香の声がヒステリーめいたトーンに変わったのを聞いて、洋司は狼狽えながらインターフォンを手に取りリムジンを停車させた。
「…何かございましたか?」
 洋司が室松と呼んでいた執事がドアを開け洋司にお伺いを立てていると、静香が室松を押しのけて外に出ると、振り向きもせず歩いて行く。
「若様?」
「気にするな。うちに寄って荷物を下ろしてから、みんなを家まで送る」
「…承知いたしました」
 室松は洋司に一礼するとドアを閉め、再びリムジンは走り出した。
「静香先輩、滅茶苦茶怒ってたみたいですけど、俺には言っていた意味がよく分からないです…」
 渉が戸惑いを隠せない様子で呟きを漏らす。
「花火みたいなもので、小さな種火から始まって激しく火花を散らしていても、最後はあっけなく鎮火して終わっちゃうかもよ」
 静香の怒りの原因がよく分からないまま、優子はそう言って肩を竦める。
「湿めった花火よりはマシですが、終わったかと思ったら次の仕掛けに引火する、連装花火とかだったら嫌だなぁ」
 洋司が困り顔で呟く。
「大丈夫よ。静香は仕掛け花火ってタイプよりは、花火の女王様——スターマインみたいなド派手タイプだから」
 優子の慰めにもならない言葉に洋司は深いため息を吐く。
「明日の花火大会、静香先輩来ますかね?」
 渉の質問に答えられる者は誰も居なかった。
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