人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

文字の大きさ
448 / 916
五章 テクサイス帝国編 1 大陸最大の国

431 殺意ある者達

しおりを挟む
 一人の男が短剣を持ち、倒れているアレナリアに近づいていく。

「……ッ〈アイスショット〉」

 寸前のところで目を覚ましたアレナリアは、緩くなった縄を解き、氷の散弾を周りに放つ。
 意識が朦朧もうろうとしていたことで、攻撃は当たることはなかったが、自分と気を失っているクルエルから距離を取らせることが出来た。
 ふらつきながらも、気を失ってるクルエルに駆け寄り、周囲に居る連中をクルエルに近づけさせないように立ちはだかる。

「目を覚ましやがって。縛りが甘いんだ獣人!」

「すまない」

「まあいい。もう必要はねえ」

「さっきはクルエルを人質に取られてたから大人しくしてたけど、今度はそうはいかないわよ!」

「オレに殺らせてくれ。このちびには邪魔をされた借りがある」

「やっぱりあなた達!」

 よくよく見ると連中の中で、アレナリアに見覚えのある者が二人、クルエルがバイアステッチに来る時に襲った傭兵。
 一人はアレナリアとクルエルを運んで来た熊の獣人、もう一人はアレナリアの足に傷を負わせた狼の獣人。
 他の三人は見当たらない。

「覚えていたか。忘れてたら思い出すまで八裂きにしてやるところだ。ってか、八裂きする事には変わらねぇが」
 
「あなた程度で、私に勝てるとでも?」

「確かにお前の方が強いようだが、後ろのクルエルそれを庇いながらならどうだ?」

「おい、大事な商品なんだぞ」

「うるせェ! アレナリアコイツが自分かわいさに避けたりしなければ、傷つく事はねぇだろ。まあ、どっちだろうがオレには関係ねえが」

「流れの傭兵だと思ってたけど、盗賊もどきだったみたいね」

「言ってろ。どれだけ抵抗しようと、この状況から逃げられはしねえ。お前が死ぬのは確定だ。アラクネと同じ様に」

「あのアラクネ? メリアスさんのこと!? メリアスさんに何をしたの?」

「さあなあ」

「くだらん話をしないで、早く始末しろ。そのアラクネに怪我を負わせたら、報酬を減らすぞ」

「聞いた通りだ」

「知るか! オレはこいつを痛め付けて殺せればいい。報酬なんざ二の次だ!」

「チッ。やり過ぎるな(オレらに近い考えの狼の獣人コイツを残したつもりだったが駄目だ。これが終わったら始末する)」

「お前らは手を出すな。オレの獲物だ」

 口が大きく裂けて全身に茶色の毛が行き渡り、獣形へと姿を変えた狼の獣人は、30センチを越える鉤爪かぎづめ状の刃が三本のある武器を右手に装備し、斬撃を飛ばす独自のスキルを使う。

「《飛爪ひそう》」

「っ! 〈アイスシールド〉」

 狼の獣人から放たれた三本の斬撃は、アレナリアが作り上げた氷の障壁に阻まれる。

「よく耐えたが、それがいつまで持つか、だ!」

 連続してスキルを使用し、斬撃を飛ばす狼の獣人の攻撃が、アレナリアが作り出した氷の障壁を削る。
 自分を攻撃する狼の獣人以外の者を警戒するアレナリアだが、気を失う際に頭を打ったらしく頭痛が治まらない。

「どうした、守ってばかりか!」

 斬撃が氷の障壁を貫通し、アレナリアに届き出す。

「っく……(カズに連絡をするにも頭が痛くて。今は耐えるしか)」

 再度氷の障壁を作ろうと、アレナリアは手を正面に向ける。

「アイスシー…!」

 魔法を使おうとした瞬間、ナイフがアレナリアの肩に刺さる。

「手を出すなと言ったろ!」

「時間を掛け過ぎだ」

「くそッ」

 狼の獣人はまだ痛め付けて足りないと顔に出している。

「次の一撃でアイスシールドそいつはぶっ壊れる。逃げたければ好きにしろ。後ろのが犠牲になってよければだ」

「あんた達みたいな人で無しと一緒にしないで!」

「その威勢がどこまで続くか楽しみだ《飛爪ひそう》」

「ア…アイ……(身体が痺れてきてる)」

 放たれた斬撃が氷の障壁を砕き、アレナリアを切り裂く。

「きゃッ……!」

 避けずクルエルに当たらないようにして、自らの身体で貫通した斬撃を受ける。
 威力は落ちたものの、服を裂き身体中には多くの切り傷が付き、服には赤く血が滲む。
 ナイフに塗られた麻痺毒でアレナリアは痺れ、膝から崩れ落ちる。
 そこに狼の獣人が近付き、武器を付けた右手を大きく振り上げ、狼の獣人特有の爪と牙の斬撃スキルを使う。

「とどめだ《狼牙裂ろうがさき》」

 自分でなんとかしようとせず、もっと早く助けを呼べばと後悔し、もう駄目だと目を閉じたアレナリアの口から、小さく声が漏れる。

「……カズ」

 狼の獣人がへたり込むアレナリア目掛け、鉤爪が付いた右手を振り下ろす。
 だがアレナリアに攻撃が当たる事はなかった。
 何故ならそれよりも早く、狼の獣人の顔面に拳が沈み、勢いそのまま十数メートル吹っ飛び壁に激突して気絶。

「〈ハイヒール〉」

 身体の傷と痛みが消え、目を開けるアレナリアの前には、自然と声に出していたカズ人物がそこに。

「……カ…ズ」

「遅くなってごめん」

「ありが…とう。私は…大丈夫。でもメリアスさんがあの連中に……」

「メリアスさんなら助けてきたから安心して。クルエルさんは気を失ってるだけだね」

「うん」

「麻痺を治す薬だよ。これ飲んでクルエルさんの側に。防御結界を張っておくから」

 優しく話し掛けるカズに、アレナリアは今にも声を上げ泣きそうになる。

「てめェ誰だ? どこから入ってきやがった?」

 その場の誰一人として、カズがこの廃工場に侵入した事に気付けなかった。

「面倒臭い事ばかりじゃねぇか。殺す相手が増えたんだ、報酬は増やしてもらうぞ」

「だったら早く片付けろ。終わらせたら死体ごとここを燃やせ。そのアラクネだけは必ず生かして連れて来い」

 依頼主と思わしき男が廃工場を出ていく。

「だとよ! そいつらを助けに来たようだが、オレら五人…いや、馬鹿一人は使い物にならなくなったか」

 依頼主と交渉していた男が、カズに吹き飛ばされた狼の獣人を見る。

「ちょうどいい。てめェらと一緒に始末して、今回の事を全て狼の獣人一人でした事にすれば」

「話が違うだろ!」

 熊の獣人が今のを聞いて反論する。

「使えね傭兵は黙ってろ。お前を殺さないのは、クルエル獲物を運ぶ役目があるからだ」

「ッ……」

 毛を逆立て怒りをあらわにする熊の獣人だが、逆らっても自分では三人に勝てないと、これ以上反論はしなかった。

「さて、荷物持ちの熊の獣人コイツは参加しないだとよ。オレら三人でてめェら二人を殺す」

「オレはむしゃくしゃしてッから、エルフはてめェの前でなぶり殺す」

「それはいいが、あまり遊んでる時間はねえぞ」

「ならエルフはオレ一人で殺る」

 各々毒の付いた武器を持ち、三人はカズに殺意を向ける。


 《 一分前 》


 ここは……使われなくなった工場か? アレナリアとクルエルさんの他には六人。

 メリアスの家を飛び出したカズは【マップ】に表示されたアレナリアの反応がある場所にたどり着いた。
 そこはゴミが山積みに置かれ、壁にヒビが入り、一部の屋根は錆びて崩れ落ち、長い間使用されてない廃工場。
 雨音で聞き取りずらいが、廃工場からアレナリアの声がする。
 カズは歪んだ扉の隙間から音を立てないよう静かに入りると、座り込むアレナリアに向けて、狼の獣人が鉤爪状の武器を振り下ろそうとしていたのが目に入った。

 周囲の状況を確認し、次に最善が何かを考え行動する。
 それが今まで気に掛けて取るようにしてた行動だった。
 が、現状を目の当たりにしたカズは、考えるよりも先に身体が動き、瞬時に狼の獣人の顔に力を込めた拳を叩き込む。
 狼の獣人の顔は陥没し、衝撃方向へ吹き飛んでいく。

 服が裂け傷付き、血が流れるアレナリアの姿を見たカズは怒りが込み上げる。
 自分の力を思うよう振るえば、この場の敵対する連中を容易く殺す事は出来る。
 だがそれをしてしまえば……
 今までの自分が──
 これからの自分が──
 感情に任せて動けば──

 アレナリアの傷を治し〈バリア・フィールド〉防御結界魔法を使用している間に、後方で男達が何か喋っていた。
 だがカズの耳には殆ど入ってこない。
 そんな中でハッキリと聞こえたのが「エルフをなぶり殺し」という言葉。
 アレナリアに更に危害を及ぼそうとする発言に、カズは怒りを押さえきれなくなる。
しおりを挟む
感想 91

あなたにおすすめの小説

不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる

六志麻あさ
ファンタジー
異世界に召喚され、魔王を倒して世界を救った少年、夏瀬彼方(なつせ・かなた)。 強大な力を持つ彼方を恐れた異世界の人々は、彼を追い立てる。彼方は不遇のうちに数十年を過ごし、老人となって死のうとしていた。 死の直前、現れた女神によって、彼方は二度目の人生を与えられる。異世界で得たチートはそのままに、現実世界の高校生として人生をやり直す彼方。 再び魔王に襲われる異世界を見捨て、彼方は勇者としてのチート能力を存分に使い、快適な生活を始める──。 ※小説家になろうからの転載です。なろう版の方が先行しています。 ※HOTランキング最高4位まで上がりました。ありがとうございます!

35年ローンと共に異世界転生! スキル『マイホーム』で快適5LDK引きこもり生活 ~数学教師、合気道と三節根で異世界を論破する~

月神世一
ファンタジー
紹介文 「結婚しよう。白い壁の素敵なお家が欲しいな♡」 そう言われて35年ローンで新築一戸建て(5LDK)を買った直後、俺、加藤真守(25歳)は婚約者に捨てられた。 失意の中、猫を助けてトラックに轢かれ、気づけばジャージ姿の女神ルチアナに異世界へと放り出されていた。 ​「あげるのは『言語理解』と『マイホーム』でーす」 ​手に入れたのは、ローン残高ごと召喚できる最強の現代住宅。 電気・ガス・水道完備。お風呂は全自動、リビングは床暖房。 さらには貯めたポイントで、地球の「赤マル」から「最新家電」までお取り寄せ!? ​森で拾った純情な狩人の美少女に胃袋を掴まれ、 罠にかかったポンコツ天使(自称聖騎士)が居候し、 競馬好きの魔族公爵がビールを飲みにやってくる。 ​これは、借金まみれの数学教師が、三節根と計算能力を武器に、快適なマイホームを守り抜く物語。 ……頼むから、家の壁で爪を研ぐのはやめてくれ!

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

処理中です...