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五章 テクサイス帝国編 1 大陸最大の国
432 対人への殺意と攻撃 と 押さえられぬ怒り
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カズはアレナリア達の元から離れ、迫る三人の男を威圧しつつ【アイテムボックス】から刀の絵が書かれたトレカを出す。
「収納スキル持ちか。入ってる物を全て出せば、楽に殺してやるぞ」
「やめろ。それをして足が付いた事あったろ」
「セテロンを出る羽目になったんだ。金目の物は多い方がいいだろ!」
「殺すからといって、余計な事を喋るな」
一人の男から出た言葉は、カズ達が通過してきた治安の悪い国セテロンの名。
「仕方ねえ。早く済ませるぞ」
男三人に殺意はあれど殺気は殆どない。
それは殺しが生活の一部となっている者達の感覚だからだろう。
ただ今回に限っては、個々の感情が大きく表に出ていた。
恐らくはセテロンを出なければならなかった事が原因なのだろ。
三人の中で一番若い男が、毒仕込みの短剣二本を逆手に持つと、体勢を低くしてカズに素早く接近する。
カズは取り出したトレカを実体化させ、逆手に持った二本の短剣を腕ごと切り落とし、胴体に蹴りを入れて壁まで吹っ飛ばした。
「先ず一人」
「やるじゃねえか」
「おい、あれだ」
「おう!」
やられた仲間を心配する様子もなく、男二人は左腕に装備した金属製の防具に魔力を込め、大きな武器を出現させた。
出てきた武器は、多くの毒矢が入った円筒状の飛び道具。
男二人は同時にカズ目掛けて毒矢を撃ち放つ。
ガトリング銃の様なそれは、回転することで円筒の各穴に入れられた毒矢が、連続で発射されるという武器。
本来は大きくて持ち運びには不便だが、今回の様に装備品に魔力を込めて出現させる事で、瞬時に使用出来るという『召喚武器』だ。
中でも強力な飛道具は、結構な高級品。
カズの後方にはアレナリアと、気を失っているクルエルが居る。
バリア・フィールドが張られているため、例え全ての毒矢が飛んでいったとしても二人に届きはしない。
しかし飛び迫る毒矢が、カズの手前で全て落下する。
「なんだどうなってる? 魔法……? それとも奴のスキルか……?」
「奴は何も言ってねェぞ」
そう、カズは一言も言葉を発してない。
魔法なら短縮詠唱でも魔法名を唱えて発動する。
スキルも同等。
どちらも使用するなら、小さくとも声に出さなくては発動しないのが当たり前の考え。
しかしカズは声に出さずとも無詠唱で使える。
何時もは周りを気にして声に出して使用していたが、今はそんな事どうでもよかった。
無詠唱でカズが使ったのは空気の壁を作り出す〈エアーシールド〉という魔法。
本来数十本もの矢を止められる程の空気の壁を作るには、それなりの時間を掛け詠唱をしなければ作れない。
だが、カズには自分の所有する魔力だけで、瞬時にイメージを構築して無詠唱での発動も可能だった。
薄暗い廃工場の中では魔力感知でも出来なければ、エアーシールドを目視するのには困難。
戦闘(暗殺)の経験を積んだ二人の男にも、放った毒矢が空中で急に止まり落下したように見えていた。
「コイツ……」
「てめェ、ダンジョン攻略者か! 大層なレア物を手に入れてるようだな!」
二人の男はカズが高難易度のダンジョンで、認知されてないアイテム、もしくはスキルや魔法を得たのだと判断した。
「報酬が選び放題の仕事があった国が無くなったんだ。ここで遊んで暮らせる金を手に入れる! 殺し屋ってのは潰しがきかねえんだ!」
「焦るなロイド! 奴の思うつぼだ。何をしたか知らねぇが、それだけ強力なら長くは持たねえだろ」
「そうか、そうだなアヘン。うかつに近付いて、モルフィと同じ目はごめんだ」
殺傷効果の高い武器を使ったのにも関わらず、仕込め損ねた事で躍起になるロイドを落ち着かせるアヘン。
「これ以上長引かされて、住人に気付かれたら面倒だ。これで一気に方を付ける。モルフィには悪いが、ああなったらもう仕事は無理だ」
アヘンは荷物から10センチ程の筒を出し、ロイドがバッグからガスマスクを出して一つは自分が、あと二つをアヘンと熊の獣人に投げ渡し、解毒薬が入った小さな注射器を用意した。
「これで終わりだ」
筒に魔力を込めると亀裂が入り、濃い紫色の煙が漏れ出す。
カズ目掛けて放り投げると、筒が砕けて煙が一気に拡散する。
煙の正体は強い神経毒。
少しでも吸い込めば呼吸困難となり、数分で死に至る。
直接吸い込まなくても、皮膚から吸収されるだけでも危険なため、三人が付けたガスマスクにも粉末状の解毒薬が仕込まれている。
それでも毒の中では長くは居られない。
「奴がぶっ倒れるのを確認したら、薬をアラクネに打つ。そしたらすぐに運び出せ」
「ぐずぐずするな。お前にマスクをやったのは、アラクネを運ばせるためなんだぞ!」
ロイドが熊の獣人に命令する。
「わ、わかってる」
「そろそろ倒れてるはずだが……?」
カズが倒れるのを待っていると、煙の中からスッと手が伸び、ロイドのガスマスクを外す。
煙を吸い込んだロイドは、慌てて廃工場の窓を突き破って外に出て、クルエルに打つはずだった解毒薬を自分に使った。
辛うじて呼吸困難にはならずにすんだが、ロイドの身体は痺れて動けなくなり雨の中で倒れる。
突き破った窓から風が入り、天井に空いた穴から毒の煙が外に出ていく。
雨で毒の効果が弱まり、雨に流され地面に染み込んでいく。
それでも廃工場内には、まだ少し毒の煙が残っているため、アヘンと熊の獣人はガスマスクを外すことが出来ない。
「なッ!?」
毒煙の中で平気に動くカズを見て、あまりの事でアヘンは驚愕の色を隠しきれない。
一瞬カズとアヘンの視線がぶつかると、格上の相手からの殺気を叩き込まれた事で、アヘンは足がすくみ動きを止めた。
カズの持つ刀がアヘンに届く距離まであと数歩。
「カズ待ってッ!」
麻痺毒から治ったアレナリアが、カズに声を掛ける。
「思い出したの。そいつら手配されてる暗殺者よ。見つけたら捕らえるように、ギルドでも言われるの。ここで全員殺してしまったら、そいつらを雇った者を捕まえられないわ」
アヘンは声のした方へ視線を動かすと、毒煙で死んでるはずのアレナリアが平然と生きているのを目にする。
「なん……で?」
アレナリアの声が届いているにも関わらず、カズは刀を振り上げてアヘンを斬ろうとする。
「聞いてカズ! カズ駄目ッ!」
次の瞬間、振り下ろそうとした刀が消えトレカへと戻る。
振り上げた腕を下ろし、カズは刀のトレカを無造作に【アイテムボックス】へと入れ、方向を変えてアレナリアとクルエルの方に歩き出す。
殺気が薄れカズが背を向けると、アヘンは動けるようになった。
アヘンは苛立ち、隠し持っていたが猛毒付きのナイフを、アレナリア目掛け投げようとする。
「〈グラヴィティ〉」
それに気付いていたカズは、足を止めて振り返り、視線をアヘンに向け重力魔法を放つ。
地面に押し付けられて動けなくなったアヘンは、腕の骨が折れ肋骨に罅が入り、息苦しくなると気を失った。
熊の獣人は武装を解除して、その場に座り完全に降伏した。
「カ…カズ……(あんなに怒ったカズ初めて見た)」
カズを見て一瞬ビクッとするアレナリア。
「すぐに助けに来ると言っておきながら……ごめん」
「謝らないで。私もクルエルも大丈夫だから。それにメリアスさんを先に助けてくれたんでしょ」
「家で安静にしてる」
「毒煙は吸ってないの? 大丈夫?」
「アレナリア達の周囲に張った防御結界を自分にも掛けたから毒は吸ってない」
カズの表情は何時もより暗く、返事は硬い。
「カ…」
「クルエルさんをメリアスさんの所に。安心させよう」
「そ、そうね。それが良いわ」
「俺は連中を拘束して見張るからここに残る。ゲートでメリアスさんの家に繋げるから、クルエルさんの安否を伝えたらアレナリアは応援を呼びに」
「わかったわ。ギルドに行って人を集めて来る」
「頼む」
「……大丈夫? 早まらないでね」
「わかってる」
「カズ……」
「大丈夫だって。アレナリアは早くクルエルさんと〈ゲート〉」
アレナリアとクルエルを囲むバリア・フィールドの内側に、空間移動魔法のゲートを作り出し、アレナリアと気を失っているクルエルを運び、カズは一人廃工場に戻りゲートを閉じた。
「収納スキル持ちか。入ってる物を全て出せば、楽に殺してやるぞ」
「やめろ。それをして足が付いた事あったろ」
「セテロンを出る羽目になったんだ。金目の物は多い方がいいだろ!」
「殺すからといって、余計な事を喋るな」
一人の男から出た言葉は、カズ達が通過してきた治安の悪い国セテロンの名。
「仕方ねえ。早く済ませるぞ」
男三人に殺意はあれど殺気は殆どない。
それは殺しが生活の一部となっている者達の感覚だからだろう。
ただ今回に限っては、個々の感情が大きく表に出ていた。
恐らくはセテロンを出なければならなかった事が原因なのだろ。
三人の中で一番若い男が、毒仕込みの短剣二本を逆手に持つと、体勢を低くしてカズに素早く接近する。
カズは取り出したトレカを実体化させ、逆手に持った二本の短剣を腕ごと切り落とし、胴体に蹴りを入れて壁まで吹っ飛ばした。
「先ず一人」
「やるじゃねえか」
「おい、あれだ」
「おう!」
やられた仲間を心配する様子もなく、男二人は左腕に装備した金属製の防具に魔力を込め、大きな武器を出現させた。
出てきた武器は、多くの毒矢が入った円筒状の飛び道具。
男二人は同時にカズ目掛けて毒矢を撃ち放つ。
ガトリング銃の様なそれは、回転することで円筒の各穴に入れられた毒矢が、連続で発射されるという武器。
本来は大きくて持ち運びには不便だが、今回の様に装備品に魔力を込めて出現させる事で、瞬時に使用出来るという『召喚武器』だ。
中でも強力な飛道具は、結構な高級品。
カズの後方にはアレナリアと、気を失っているクルエルが居る。
バリア・フィールドが張られているため、例え全ての毒矢が飛んでいったとしても二人に届きはしない。
しかし飛び迫る毒矢が、カズの手前で全て落下する。
「なんだどうなってる? 魔法……? それとも奴のスキルか……?」
「奴は何も言ってねェぞ」
そう、カズは一言も言葉を発してない。
魔法なら短縮詠唱でも魔法名を唱えて発動する。
スキルも同等。
どちらも使用するなら、小さくとも声に出さなくては発動しないのが当たり前の考え。
しかしカズは声に出さずとも無詠唱で使える。
何時もは周りを気にして声に出して使用していたが、今はそんな事どうでもよかった。
無詠唱でカズが使ったのは空気の壁を作り出す〈エアーシールド〉という魔法。
本来数十本もの矢を止められる程の空気の壁を作るには、それなりの時間を掛け詠唱をしなければ作れない。
だが、カズには自分の所有する魔力だけで、瞬時にイメージを構築して無詠唱での発動も可能だった。
薄暗い廃工場の中では魔力感知でも出来なければ、エアーシールドを目視するのには困難。
戦闘(暗殺)の経験を積んだ二人の男にも、放った毒矢が空中で急に止まり落下したように見えていた。
「コイツ……」
「てめェ、ダンジョン攻略者か! 大層なレア物を手に入れてるようだな!」
二人の男はカズが高難易度のダンジョンで、認知されてないアイテム、もしくはスキルや魔法を得たのだと判断した。
「報酬が選び放題の仕事があった国が無くなったんだ。ここで遊んで暮らせる金を手に入れる! 殺し屋ってのは潰しがきかねえんだ!」
「焦るなロイド! 奴の思うつぼだ。何をしたか知らねぇが、それだけ強力なら長くは持たねえだろ」
「そうか、そうだなアヘン。うかつに近付いて、モルフィと同じ目はごめんだ」
殺傷効果の高い武器を使ったのにも関わらず、仕込め損ねた事で躍起になるロイドを落ち着かせるアヘン。
「これ以上長引かされて、住人に気付かれたら面倒だ。これで一気に方を付ける。モルフィには悪いが、ああなったらもう仕事は無理だ」
アヘンは荷物から10センチ程の筒を出し、ロイドがバッグからガスマスクを出して一つは自分が、あと二つをアヘンと熊の獣人に投げ渡し、解毒薬が入った小さな注射器を用意した。
「これで終わりだ」
筒に魔力を込めると亀裂が入り、濃い紫色の煙が漏れ出す。
カズ目掛けて放り投げると、筒が砕けて煙が一気に拡散する。
煙の正体は強い神経毒。
少しでも吸い込めば呼吸困難となり、数分で死に至る。
直接吸い込まなくても、皮膚から吸収されるだけでも危険なため、三人が付けたガスマスクにも粉末状の解毒薬が仕込まれている。
それでも毒の中では長くは居られない。
「奴がぶっ倒れるのを確認したら、薬をアラクネに打つ。そしたらすぐに運び出せ」
「ぐずぐずするな。お前にマスクをやったのは、アラクネを運ばせるためなんだぞ!」
ロイドが熊の獣人に命令する。
「わ、わかってる」
「そろそろ倒れてるはずだが……?」
カズが倒れるのを待っていると、煙の中からスッと手が伸び、ロイドのガスマスクを外す。
煙を吸い込んだロイドは、慌てて廃工場の窓を突き破って外に出て、クルエルに打つはずだった解毒薬を自分に使った。
辛うじて呼吸困難にはならずにすんだが、ロイドの身体は痺れて動けなくなり雨の中で倒れる。
突き破った窓から風が入り、天井に空いた穴から毒の煙が外に出ていく。
雨で毒の効果が弱まり、雨に流され地面に染み込んでいく。
それでも廃工場内には、まだ少し毒の煙が残っているため、アヘンと熊の獣人はガスマスクを外すことが出来ない。
「なッ!?」
毒煙の中で平気に動くカズを見て、あまりの事でアヘンは驚愕の色を隠しきれない。
一瞬カズとアヘンの視線がぶつかると、格上の相手からの殺気を叩き込まれた事で、アヘンは足がすくみ動きを止めた。
カズの持つ刀がアヘンに届く距離まであと数歩。
「カズ待ってッ!」
麻痺毒から治ったアレナリアが、カズに声を掛ける。
「思い出したの。そいつら手配されてる暗殺者よ。見つけたら捕らえるように、ギルドでも言われるの。ここで全員殺してしまったら、そいつらを雇った者を捕まえられないわ」
アヘンは声のした方へ視線を動かすと、毒煙で死んでるはずのアレナリアが平然と生きているのを目にする。
「なん……で?」
アレナリアの声が届いているにも関わらず、カズは刀を振り上げてアヘンを斬ろうとする。
「聞いてカズ! カズ駄目ッ!」
次の瞬間、振り下ろそうとした刀が消えトレカへと戻る。
振り上げた腕を下ろし、カズは刀のトレカを無造作に【アイテムボックス】へと入れ、方向を変えてアレナリアとクルエルの方に歩き出す。
殺気が薄れカズが背を向けると、アヘンは動けるようになった。
アヘンは苛立ち、隠し持っていたが猛毒付きのナイフを、アレナリア目掛け投げようとする。
「〈グラヴィティ〉」
それに気付いていたカズは、足を止めて振り返り、視線をアヘンに向け重力魔法を放つ。
地面に押し付けられて動けなくなったアヘンは、腕の骨が折れ肋骨に罅が入り、息苦しくなると気を失った。
熊の獣人は武装を解除して、その場に座り完全に降伏した。
「カ…カズ……(あんなに怒ったカズ初めて見た)」
カズを見て一瞬ビクッとするアレナリア。
「すぐに助けに来ると言っておきながら……ごめん」
「謝らないで。私もクルエルも大丈夫だから。それにメリアスさんを先に助けてくれたんでしょ」
「家で安静にしてる」
「毒煙は吸ってないの? 大丈夫?」
「アレナリア達の周囲に張った防御結界を自分にも掛けたから毒は吸ってない」
カズの表情は何時もより暗く、返事は硬い。
「カ…」
「クルエルさんをメリアスさんの所に。安心させよう」
「そ、そうね。それが良いわ」
「俺は連中を拘束して見張るからここに残る。ゲートでメリアスさんの家に繋げるから、クルエルさんの安否を伝えたらアレナリアは応援を呼びに」
「わかったわ。ギルドに行って人を集めて来る」
「頼む」
「……大丈夫? 早まらないでね」
「わかってる」
「カズ……」
「大丈夫だって。アレナリアは早くクルエルさんと〈ゲート〉」
アレナリアとクルエルを囲むバリア・フィールドの内側に、空間移動魔法のゲートを作り出し、アレナリアと気を失っているクルエルを運び、カズは一人廃工場に戻りゲートを閉じた。
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