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24 魔王国からの贈り物
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ウィルフレッドとメリルはコンヤクのことなどどうでもよかった。ウィルフレッドが持つ小さい袋に入った品物を渡したくてウズウズしていたからだ。
話が途切れたのを見計らって突撃する。
「「母さま、これお誕生日プレゼント!!」」
「あらあら……えっ?」
不意をつかれた母アドリアナが目をパチクリさせる。
二人に渡された小さい袋から、手のひらほどの大きさの刺繍針専用収納箱が転がり出てくる。
その場にいた全員が一斉に、その収納箱を覗き込んだ。
「あらあら、これは……」
辺境伯ザカリ―とその妻アドリアナが驚いて見つめ合う。
「……ああ、そうだ。サリヴァン商会の一番若いのが言ってた……」
「魔王国で作られた収納箱か!」
アーサーとアンドリュー第三王子の声がピタリと合った。
二人とも収納箱に使われている金属が、とても軽量で頑丈なことを知っていた。まだまだ人間の国ではこのような金属加工の技術はない。
ウィルフレッドとメリルが対の置物のようにドヤ顔になる。二人とも同じえっへんポーズだ。
「意匠は不死鳥だよ。中に入ってるフェルトも不死鳥の羽根から作られてるから決して燃えないんだって。」
ウィルがここぞとばかりに口数が多い。メリルも負けじと語り出す。
「針はね、白牛の角で作られてるんだって!」
「えっ、あの牛と同じ種族ってこと?」
「そうそう! 草を食むあの子と、裁縫箱がつながるなんて思わなかったよね」
「……本当に嬉しいわ。シーズンオフに王都で裁縫会の集まりで、いつも針に困っていたのを聞いてくれていたのね」
「針刺しに針を刺しておくと錆びやすいって言ってたもんね!」
「昔は針は高くてなかなか買えなかったから、錆びてしまった針でも大事に使っていたわ……すぐに曲がってしまうのも困りものだったの。もう嘆くこともないわね」
アドリアナはウィルフレッドとメリルの頭を撫でて、笑顔になった。
「……あなたたち、本当に大きくなったのねぇ」
アーサーは懐かしそうな顔で、収納箱を見つめている。
「この金属加工が出回ったら、きっと人間の加工技術も一気に進化しそうだね」
アンドリュー王子も頷きながら、アドリアナの手の上の収納箱をじっと見ている。その様子を見て、ウィルフレッドは(メリル以外も見れるんだな)、と思った。
「試作させているが、同じ物はまだ製作出来ないでいる。鍛冶師は火の温度が違うのではないか、と言っていたが──」
「簡単に真似出来るようだと、一気に進歩して既存の鍛冶組合が廃れかねない。進化はゆっくりでいいんじゃないかな」
「確かに」
「ねえ、やっぱりあのきゅう舎にいる白牛って魔物なの? アーサー兄さま」
アーサーがその質問に答えた。
「ああ、そうみたいだな。アクアオッジの草が上質だって噂が立ってて、それを聞いたら居ても立っても居られなくなって、魔王国からやってきたって言ってた」
「ほえー」
「魔物界隈にも噂話なんてあるんだねえ」
「魔物って言われても、普通の牛と違わないね」
そこまで聞いて、アーサーが首を傾げた。
「やたら牛に詳しいな……さては、まだミョルダに迷惑かけてるのか?」
「ち、ちがうもん! 落ち込んだときに慰めてもらってるだけだもん! うちじゃ、みんなそうだったじゃない。父さまだって、母さまと喧嘩したあとは必ずだよ? 今もきっと父さまはミョルダのところにいるはず!」
メリルが食い気味に言う。
迷惑かけまくってるのがバレバレだぞ。
「……ああ、それでさっきまでと違って静かだったのか……」
どんな家族だ。王子はそう思ったが口には出さなかった。
白牛はある日突然きゅう舎にいて、大人しく他の乳牛たちと草を食んでいたのだ。
最初は雄の牛がさりげなくいることに、みんなびっくりしたけれど、そのまま飼うことにした。
その結果、次の年に乳牛が子供を産んだ。
その年の子牛たちは、一目でわかるくらい立派で丈夫な子牛たちだった。
いろいろな畜産農家にその子牛たちは引き取られていき、立派で丈夫な血統は今日のアクアオッジ領の畜産農家に受け継がれている。
今も最初の白牛は、きゅう舎の一角で静かに草を食んでいる。
話が途切れたのを見計らって突撃する。
「「母さま、これお誕生日プレゼント!!」」
「あらあら……えっ?」
不意をつかれた母アドリアナが目をパチクリさせる。
二人に渡された小さい袋から、手のひらほどの大きさの刺繍針専用収納箱が転がり出てくる。
その場にいた全員が一斉に、その収納箱を覗き込んだ。
「あらあら、これは……」
辺境伯ザカリ―とその妻アドリアナが驚いて見つめ合う。
「……ああ、そうだ。サリヴァン商会の一番若いのが言ってた……」
「魔王国で作られた収納箱か!」
アーサーとアンドリュー第三王子の声がピタリと合った。
二人とも収納箱に使われている金属が、とても軽量で頑丈なことを知っていた。まだまだ人間の国ではこのような金属加工の技術はない。
ウィルフレッドとメリルが対の置物のようにドヤ顔になる。二人とも同じえっへんポーズだ。
「意匠は不死鳥だよ。中に入ってるフェルトも不死鳥の羽根から作られてるから決して燃えないんだって。」
ウィルがここぞとばかりに口数が多い。メリルも負けじと語り出す。
「針はね、白牛の角で作られてるんだって!」
「えっ、あの牛と同じ種族ってこと?」
「そうそう! 草を食むあの子と、裁縫箱がつながるなんて思わなかったよね」
「……本当に嬉しいわ。シーズンオフに王都で裁縫会の集まりで、いつも針に困っていたのを聞いてくれていたのね」
「針刺しに針を刺しておくと錆びやすいって言ってたもんね!」
「昔は針は高くてなかなか買えなかったから、錆びてしまった針でも大事に使っていたわ……すぐに曲がってしまうのも困りものだったの。もう嘆くこともないわね」
アドリアナはウィルフレッドとメリルの頭を撫でて、笑顔になった。
「……あなたたち、本当に大きくなったのねぇ」
アーサーは懐かしそうな顔で、収納箱を見つめている。
「この金属加工が出回ったら、きっと人間の加工技術も一気に進化しそうだね」
アンドリュー王子も頷きながら、アドリアナの手の上の収納箱をじっと見ている。その様子を見て、ウィルフレッドは(メリル以外も見れるんだな)、と思った。
「試作させているが、同じ物はまだ製作出来ないでいる。鍛冶師は火の温度が違うのではないか、と言っていたが──」
「簡単に真似出来るようだと、一気に進歩して既存の鍛冶組合が廃れかねない。進化はゆっくりでいいんじゃないかな」
「確かに」
「ねえ、やっぱりあのきゅう舎にいる白牛って魔物なの? アーサー兄さま」
アーサーがその質問に答えた。
「ああ、そうみたいだな。アクアオッジの草が上質だって噂が立ってて、それを聞いたら居ても立っても居られなくなって、魔王国からやってきたって言ってた」
「ほえー」
「魔物界隈にも噂話なんてあるんだねえ」
「魔物って言われても、普通の牛と違わないね」
そこまで聞いて、アーサーが首を傾げた。
「やたら牛に詳しいな……さては、まだミョルダに迷惑かけてるのか?」
「ち、ちがうもん! 落ち込んだときに慰めてもらってるだけだもん! うちじゃ、みんなそうだったじゃない。父さまだって、母さまと喧嘩したあとは必ずだよ? 今もきっと父さまはミョルダのところにいるはず!」
メリルが食い気味に言う。
迷惑かけまくってるのがバレバレだぞ。
「……ああ、それでさっきまでと違って静かだったのか……」
どんな家族だ。王子はそう思ったが口には出さなかった。
白牛はある日突然きゅう舎にいて、大人しく他の乳牛たちと草を食んでいたのだ。
最初は雄の牛がさりげなくいることに、みんなびっくりしたけれど、そのまま飼うことにした。
その結果、次の年に乳牛が子供を産んだ。
その年の子牛たちは、一目でわかるくらい立派で丈夫な子牛たちだった。
いろいろな畜産農家にその子牛たちは引き取られていき、立派で丈夫な血統は今日のアクアオッジ領の畜産農家に受け継がれている。
今も最初の白牛は、きゅう舎の一角で静かに草を食んでいる。
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