『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~

鈴白理人

文字の大きさ
40 / 58
今日もアクアオッジ家は平和です

40 ⑮予想外の気配

しおりを挟む
「なんでこういう状況で笑えるかな? あ、精霊たち、照らしてくれてありがとう」
 一番あとから階段を下りているウィルフレッドがそう言うと、精霊たちは俄然張り切った。
 どうやら話し合いが終わったようで、辺りを照らしてくれている。
 闇が後退したかのようで、メリルの恐怖心が少しだけ薄れた。

"イトシゴに褒められた"

"もっと照らさなきゃね"

 精霊たちが今まで以上にポッと輝きだすと、メリルにもあと数段で階段が終わってひらけた空間になっているのが分かった。
 剥き出しの床に、ソファが二つテーブルが一つ、何かを置く台座が壁際にあるだけ。

 まるで真ん丸な月の上部をスパッと切り取ったような部屋の形である。


「あ……」
 思わず声が漏れてしまったメリル。


「いた?」

「いた?ってどういう……?」
 ソルが灯りをメリルの見ている方向に掲げると、例のバニー男のさかさま絵があった。ソルの目が、静かに、しかし確実に見開かれていく。
 一瞬、そこに──殺気の宿った激情が揺らめき……何か言おうとする彼よりも早く、ここで全員のスキルがピコンと鳴った。

 驚く暇もなく、頭上からギギギギギー……──扉の音が地下に反響する。

 イヤな予感しかしないメリルは、「ウィル、扉閉めてきた?」と質問するが、「開けっぱだったけど、今の音…」予想通りの答えが返ってきた。

 二人とも顔を見合わせる。
「誰かが閉めた!?」

「閉まってしまうと様子を見に来る予定の護衛騎士たちに、扉は見つけられないだろうね」
 王子が淡々と口にする。

「それはしまったね。扉だけに」

 メリルの(すごく寒い)ダジャレをみんなは聞かなかったことにした。



「コホン!それはそうと……!」

 メリルが絵に向かって指さしてえっへんポーズを取る。
 なんのこっちゃよくわからない他の三人が絵をよく見てみると……あれ?なんだか絵の中の変態……じゃなくてバニー男の瞼がピクピク動いた……ような?

「その額縁の周囲の壁をよぉーく見てみて?」
 メリルがドヤ顔で言いながら、額縁の角をなぞりながら体を大きく使って円を描いていく。三人がその動きを見ながら灯りをかざしてよく見ると、円状に擦れた跡を発見する。

「……あ、もしかして、この絵は!」

 真っ先に気が付いた王子が叫んだ。それを聞いてにかっとメリルが笑う。

「どっせーい!!」

"ちょっとメリルってば。なにその掛け声"

"おいおい。淑女の教育とやらはどこいったんだ"

"ちょっと爺さん、びっくりじゃのう。心臓が止まるかと思ったわい"

 勇ましい(?)掛け声と共に、メリルがさかさまバニー男の絵の枠を額縁ごと引っ掴んで、勢いよく時計回りにグルン!と180度回転させた。

 いや、掛け声それかよ。
 貴族令嬢としてどうなんだ。

 案の定みんなの動きが驚きで止まった。

(……ああ、やっぱり。ずっと気になっていたのは、この絵が『生きている』からだったんだ──)

 メリルがみんなに隠れるように促す。

 ソルが急いで灯りを消し、精霊たちも光を消して、全員ソファの陰に隠れて息をひそめた。



 ……ガチャン。

 絵が回転して完全に正位置になった瞬間、何かが「はまった」ような音がした。

 続いて、何かが──微かに息をしたような気配──

 いや、気のせい……?

 ゾクリと背筋が冷えるのと同時に、絵の下の床が「ピシィ……」と音を立ててわずかにひび割れ、すぐに静寂が戻る。

"……今、イヤな気が──"

"うん……空気が、変わった"

"わしの尻尾が逆立っておる……いや尻尾ないけども"

"俺の尻尾は現状通りよ"

 トカゲ型のサラマンダーが言うが、その声は微かに掠れて聞こえた──
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~

鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。 そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。 そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。  「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」 オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く! ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。 いざ……はじまり、はじまり……。 ※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。

水神飛鳥の異世界茶会記 ~戦闘力ゼロの茶道家が、神業の【陶芸】と至高の【和菓子】で、野蛮な異世界を「癒やし」で侵略するようです~

月神世一
ファンタジー
「剣を下ろし、靴を脱いでください。……茶が入りましたよ」 ​ 猫を助けて死んだ茶道家・水神飛鳥(23歳)。 彼が転生したのは、魔法と闘気が支配する弱肉強食のファンタジー世界だった。 ​チート能力? 攻撃魔法? いいえ、彼が手にしたのは「茶道具一式」と「陶芸セット」が出せるスキルだけ。 ​「私がすべき事は、戦うことではありません。一服の茶を出し、心を整えることです」 ​ゴブリン相手に正座で茶を勧め、 戦場のど真ん中に「結界(茶室)」を展開して空気を変え、 牢屋にぶち込まれれば、そこを「隠れ家カフェ」にリフォームして看守を餌付けする。 ​そんな彼の振る舞う、異世界には存在しない「極上の甘味(カステラ・羊羹)」と、魔法よりも美しい「茶器」に、武闘派の獣人女王も、強欲な大商人も、次第に心を(胃袋を)掴まれていき……? ​「野暮な振る舞いは許しません」 ​これは、ブレない茶道家が、殺伐とした異世界を「おもてなし」で平和に変えていく、一期一会の物語。

処理中です...