『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~

鈴白理人

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今日もアクアオッジ家は平和です

41 ⑯【従属契約の主】に敗北するメリル

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 絵が正位置に戻り、しばしの沈黙──

 

 やがてみんなが見つめる中、絵がほのかに光り出した。扉が光ったときと同じ光だ。
 精霊たちが物も言えずにスーっと消えていく……

 ソルと王子には元々見えていないし、声も聞こえない彼らだけれど、メリルとウィルはその様子に覚えがあってぎょっとした。
(これは……精霊たちが『気に当てられる』って言ってたやつだ……)
 精霊が姿を保っていられないほど、相手の存在がすごいってことなの? ……まあ、姿は確かに色々すごいのは間違いないけれど──

 絵がゆらりと揺らぎ、バニー姿の男がぬるりと顔を突き出す。
 キョロキョロと目だけを動かし、上下左右を見回したあと、首をコキコキと鳴らし、手を額縁にかけた。
 タイツを履いた脚でガニマタ気味に「うんせ」と跨ぎ、ゆっくりと絵の中から出てくる──

(ずっと逆さまになってたんなら、首も凝るか……)
 みんながそう思いつつ隠れながら、男のなめらかな動きに呆然としていると、バニーが目だけを左右に動かしながら、くつくつと喉を鳴らした。どうやら笑っているらしい。

"隠れても無駄よぉ? 出てらっしゃい。お・見・通し・よ"

 バレてーら。
 仕方ないのでみんなソファの陰から立ち上がると、男は嬉しそうにニタっと笑った。

"んまっ。何て綺麗なカワイ子ちゃんたちなぁ~んでしょ。……これは是非……キヒヒ……ッ"

 最後の声は、金属が軋んだような耳障りな音で、その異様さにぞくっとする。

「その口調……その服……自分の好みで着てたのかあ」
 
 メリルの言葉を見事に無視して、男がソルをまじまじと見ながら目を見開いた。
"……あら? この子……アタシが一度契約した子じゃない……なんで解除されてんのよ……"

 ぶわっとソルから怒りのオーラが立ち昇った。

 やっぱり、コイツが――
 我を忘れて攻撃に転じようとしたが、メリルの存在がソルにとっては何よりも大きかったので、衝動を抑え込む。
「気を付けて下さいお嬢様! コイツは相手の意識が無くても一方的に従属契約出来るんです!」

 従属契約と聞いて、メリルは真っ先にソルにかけられていた呪いを思い出した。
「従属契約……? お前が、ソルを!?」

 無理矢理そんな呪いをかけられて、暗殺者として使われて、どんなに、どんなにソルが傷ついたと思っているの!?

 許せない……

"ああ、そんな名前だったっけ? ……まあイイわ。掴めばすぐに分かるし……二度と逆らえないように、アタシ好みに育ててあげるからぁ♪"

 それを聞いたメリルの中で、どこかがプチっとキレた。

「違う! 乗っちゃダメですお嬢様! それがコイツらのやり方なんです!」


 誰にも止められない怒りで、メリルは暗闇の中、男の声のするほうに近づこうとする。
 原初の闇を感じる恐ろしい気に足が竦んでいたのだが、怒りがそれを上回った。

 薄っすらとオーラが立ち昇り、彼女の体を包み込んでいく。
 体の周りでバチバチと火花が飛び散り、鋭い光の放電が眩しく弾けて何度も消えた。

 メリルが放とうとしている魔法は── 

 【雷魔法 Lv10 MAX】

 おそらく、昔読んだ神話の絵本にあった、天罰の雷を想像したからだろう。

 歩きながら魔法を打ち出そうとして、手のひらから魔法の光が零れる──



 ……だが、今回の相手はただの人間ではなかった。

"……ふぅん。それなりに力があるのねアンタ……でもまだまだね。その程度のツラでしゃしゃり出てくるなんて……女は引っ込んでなさいよ。アタシはそっちのオトコノコたちに用があるの!"

 男の瘴気のような魔力がぶわっと巻き上がり、メリルに襲い掛かった。
 神々しいまでのオーラが途端に消失し、光が闇に覆われ消えてしまうと、全身が魔力の塊に叩き付けられる。

「きゃあっ!」
「メリル……っ!!」

(くっ……防壁で防がなきゃ!)
【光魔法 Lv10 MAX】!

 メリルが光魔法で咄嗟に展開した防壁は、敵の魔力に触れた瞬間、金色のひび割れを起こし、音もなく砕け散った。まるで闇が光を侵食したかのように……
 
 メリルはその衝撃で吹っ飛んで、勢いよく壁に打ち付けられてしまい動かなくなった。


 再び部屋を闇が支配する──

 その様子を見て変態……いや男はニヤリとする。
"……キヒヒッ。その程度の光なんかアタシの闇で舐めとって終わり、よ"

"……そう。この女メリルって言うの……心配そうな声を出しても飛び出してこないのね……『まとも』だわ。ホントはもうちょっと壊れてるほうが好みなのよねぇ……♪この女を完全に壊してやったら、どんな顔になるのかしら──"
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