『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~

鈴白理人

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今日もアクアオッジ家は平和です

42 ⑰バニー男のスキル

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 男はバカにしたようにふふんと鼻を鳴らした。

"魔法はエルフが作ったんだっけ? 脆弱、脆弱ぅ。Lv10程度じゃ小虫が顔に当たったようなもんよ"

 その言葉に三人は絶望する。
 Lv10 MAXがスキルの頂点だと信じて疑わなかった。
 それがどうだ──Lv10『程度』だなんて。


 アンドリューは唇を噛んだ。なにせ自分は【鑑定スキル】。見ることしか出来ないのだから──
 あとは年齢相応の剣術と体術しかない。そんなんでどうやって戦えというんだ。
(考えろ……考えろ……攻撃力が低いなんて嘆いている暇があったら、頭を使って攻撃に転じろ……頭は飾り物か?そうじゃないだろ。弱点を見つけ出せ……!)

 アンドリューは記憶を手繰り寄せる。
(こいつは、どこからやってきた? そう、一枚の絵から。正確には壁に額縁があって、そこで逆さまにされていた。額縁が正しい位置に戻って初めて、この悪魔は動き出した……その意味は?)

 ──封印されていた?

 逆さまにされていた、というのが鍵の役目を果たしていたんじゃないだろうか……
(悪魔は契約を交す際、本当の名前を軸に縛りをかけると聞いたことがある……なら、もしその名を僕が知っているとしたら──)


(……そうか、この方法なら)
 目の端で何かが動くのを見たアンドリューはニヤリとして言った。

「──僕たち、見目のよいものが好きなんだ」 


((いきなり何を!?」))
 ソルとウィルフレッドがぎょっとする。
「で、でん……」

 ウィルの言葉を待たずに王子は続けた。

「君の見た目は、どうしようもない。その恰好、本当に好きでやってるならなおさらだ。変態趣味の道化にしか見えないよ?」

"んなっ。なんですってぇ~?"

「まあでも、魔力は多くて力はあるんだろう。メリルを吹っ飛ばしたくらいなんだから」

 ここで王子は大げさにも見えるジェスチャーで両手のひらを上にして、お手上げのポーズを取った。見目のよい王子がそれをすると、一層効果が高い。

「でも、結局ご自慢の従属契約も解除されちゃったんだろ? そんな奴が主人だなんてまっぴらだな」 

"アタシの真名まなも知らないくせに。このビグレッド様にたてつくんじゃないわよ!"


(真名? それを知ってるかが重要なのか? ……そうか! 名前が鍵なのか)

 そこで王子は、ソルの言葉を思い出す──コイツは相手の意識が無くても一方的に従属契約出来るんです、と──
 悪魔はソルにこうも言っていた──"ああ、そんな名前だったっけ? ……まあイイわ。掴めばすぐに分かるし"


 王子の左目が淡い蒼光を放ち、ビグレッドの名を掴むため、彼にしか視えない魔法陣が浮かび上がった──

【真名鑑定 Lv8】

「キミの名なら分かるけど? 悪魔ビグレッド」

 途端に、内臓を掴み出されたような痛みが悪魔を襲う──何をされたかは分からないが、自分の存在が薄くなったような衝撃で、ビグレットは唇の端を不自然に蠢かせながら呻いた。

"何言ってんの!? ハッタリでしょおっ!?"

 これまで自分の優位を疑いもしなかったのが、初めて悪魔が動揺している。


 王子の魔法陣が回転し、空気が震える。 
 キィン──と耳障りな音を立てて回転が止まり、見えたものは──


ビグレッドショートス・アジンベルクイ  
  ┗【強制契約の主】  
    ├─【従属契約 Lv10 MAX】  
    └─【極大闇魔法 Lv5】 
【種族】:悪魔族  【性別】:判定不能


 王子は静かに怒っていた。悪魔だろうが、メリルに手を出すやつはただじゃおかない。

「ビグレッドショートス・アジンベルクイに命じる! !」


 王子の言葉と共に風が轟音と共に巻き起こり、悪魔が突風に煽られバランスを崩した。
 初撃に不意を突かれたのか、悪魔の片手がまるで骨が存在していないかのように、グネグネ踊ったかと思うと、元に戻る。 

"ちょ! な、なんでぇ……っ! くっ! だっ、誰が戻るもんですかぁ! やっと出られたのにィ!" 

 悪魔が少しずつ、空っぽになっていた額縁の方へと引き寄せられていく。
 テーブルを掴もうとしたが、指が明後日の方向に向いたかと思うと、パキリと折れて飛んでいった。

 絵の中の人物(?)が生きているという真実を知っていたメリルだけでなく、【鑑定スキル】を持つアンドリュー第三王子にも、より正確に正体を見破られてしまったのだ。



 だが悪魔ビグレッドショートスは必死に抵抗する。
 
 王子の魔力よりも悪魔のほうが上回っているのか、真名を奪われていても、じりじりと悪魔が額縁から遠ざかる。

"ふふん♪どうやら前にアタシの真名を知った奴よりは、キミの魔力のほうが劣るみたいね~ェ。真名を支配しきれていないわよ~?"


 王子の額に汗がにじみ、膝をついた。
(真名を知っただけでは支配しきれない。強制には、相手を上回る魔力が必要なのか──!)
 


 そのとき暗闇の中でソルが叫んだ。

「メリルお嬢様! 灯りを点けて下さいっ!」

 ソルはメリルがとっくに気絶から回復して、ビグレッドショートスの背後に回っていたことに気が付いていたのだ。

 あれだけの敗北を喫しておきながら、メリルは誰よりも強心臓だった。
(隠密隠密♪ソルのスキルは隠密スキル~♪)
 脳内で調子外れの歌を再生しながら、真っ暗闇の中こっそり行動していたつもりだったメリルは、いきなりの名指しでズッコケそうになった。
 
「えっ!? あ、灯りっ!?」 
(あ、そっか! 派生スキルで何かするつもりなんだ)
 察しだけはいいメリルは、ソルの意図を正確につかんだ。

 灯りにするなら、やっぱり火だ。
 慌てながら思いついたのは、何かを燃やして明るくすること──


 魔法の戦闘ポーズを取り、ソファに向かって火を打ち出すメリル。
 生み出した火の大きさは、身長を優に超えるえげつない大きさのもの。 
 
「えいやぁ!」

 ソファの近くにいたウィルフレッドが、よろめきながら慌てて逃げ出した。

「ぎゃあああ! 殺す気!?」

「ごめんごめん!」

 こんがり焼けました~、を間一髪で避けたウィルフレッドがほっとする余裕もなく、ドーンともの凄い音を立ててソファに火が直撃すると、豪快に燃え出し一気に明るくなった。


 今まで真っ暗闇だったので、手探り状態で進んでいたメリルは、王子が膝をつき、荒い呼吸を繰り返しているのが目に入り愕然とする。
 
(ああ! ソルは王子を助けようとしたんだ!)

 メリルが王子に駆け寄ろうとした瞬間、炎に照らされた悪魔の影が、壁一面に広がり、まるでこちらを呑み込もうとするかのように蠢いた──





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