迷い人と当たり人〜伝説の国の魔道具で気ままに快適冒険者ライフを目指します〜

青空ばらみ

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89. いざの準備

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 ウルグベお母さんに、ボードの乗り方を教えてもらう。

 テトリでは安心できないと、ウルグベお母さんが名乗り出てくれた。

 まだ十歳にもなっていないのだから、もっと丁寧に教えてあげないとダメだとテトリに注意してくれる。

 これでわたしも一安心だ!

 なんとか座って乗れるようになったけど、落ちないか心配……

 これはこの国で、一番簡単で遅い乗り物らしい。
 そう簡単には振り落とされない、安全装置付きだと教えてくれる。

 ウルグベお母さんが、わたしが国に帰っても使えるように、認識障害付きのモノを選んでくれた。

 乗る人の身長を超えたところからわからなくなるので、乗り降りには気をつけるように注意される。

「これはひとり用で、一トンまで。あと二人用もあるけど、まあ、人族では重さはまず大丈夫だね。これがいま四つずつあるから、全部持っておいき」

「そんなに、良いのですか?」

「家族ができたら、これぐらいは必要さ! それまでは、二人用を一台だけ使って、あとは持っていないことにするんだよ」

「ひとりで乗るのに、二人用に乗るんですか?」

「そうだよ、パールちゃんが持っているのは、これだけにしておくんだ。 一人用は二人用がもし壊れたときの非常用のつもりで渡しているんだから、数に入れたらダメ。覚えておきなさい。もし家族で逃げなければいけないとき、四台あれば足りるだろ? それまでは、身内にもナイショにするんだよ。便利だからね。貸すことになるか取られてしまって、いざってときにないと困るだろ? だからしばらくは、自分限定の登録をしておきな」

「いざ、ですか?」

「そうだよ。長く生きていると、なにがあるかわからないからね。まず信用している一人に貸すとそのつながりで、もうひとりに貸さなければいけない状況になる。そこからはズルズルさっ、王族にバレたら身内を盾に、全部取られるよ。イヤだろ?」

 なんとなく、おとなのみんなが、同じことを言うな……ないことにする……

 ウルグベお母さんが、もう少し詳しく教えてくれた。

「迷い人が自分の国に帰るということは、もう一度あのトケイソウの金の粉? かい? それを、浴びることになるだろ。そうすると、また五百年寿命が伸びるんだよ」

 千年を、超えてしまうんだ……

 この国にいる帰れなかった迷い人は、王城から出てこれない。

 でもウワサはいろいろあるようだ。
 人族同士の結婚で、できた子どもたちの寿命は、親より少し少ないぐらい。
 やっぱり長いそうだ。
 だから、わたしが自分の国に帰って、結婚したら人族の夫は先に百年ないぐらいで亡くなって、子どもとわたしが長生きすることになるのか。

 迷い人が長生きで、お宝を持っていると王族は知っているはずだから、その親族もかならず狙われることになる。
 もしかしたら、国を転々とするようになるかもしれないな。
 とくに人族は百年生きられないのなら、なおさら子どもは母親のわたしが守らないといけない。

 迷い人だとバレて、逃げなければいけなくなったときに、亡くなった夫の親族がすごい魔道具を持っていると、いろいろめんどくさいことになる。

 自分の魔道具は自分と同じように長生きする子どもにわたるよう、できるだけ隠しておくことが肝心だという。

 なんとなく、わかったけど……なんだかなぁ~
 そもそも結婚、するだろうか……?

 それに、いくら思い出の地でも千年同じところにいたら、おかしいよね……

 隠れて暮らさないと、いけないのかな?

 ふーっ、なんにせよ、魔道具はいる! 
 少し真剣に、必要なモノを考えよう……

「ちょっとは、わかったようだね。いいことだよ」

 王族に見つかったら逃げるしかないから、そのときに助けてもらった人に、お礼のモノを決めておくことも大切だという。

 あっ! 向こうの、当たり人のことかな?

 良すぎず多すぎず、受け取りやすいモノだって。

 ためになるなあ……

 テトリがひと言。

「金だな! 砂金がいいな! さばきやすいからな」

 やっぱりそうか?

「砂金か……あとで庭の砂を、とらしてもらおう!」

「おまえ、さっきいっぱいもらっただろ!」

「あれは、アレ! 自分でも取りたいんだよ!」

「まぁ、なっ。気持ちは、わかるけど……な」

 気持ちは、わかるんだ……

 そこへ、息子さんのアリオさんが、戻ってきた。

「パールちゃん、お待たせ! さあ、このリングを、まずは登録して、つけてみて」

 さっきよりデザインがシンプルになって、わたし好み!

 庭にあるテーブルセットの椅子に座って、金を眺めながらサッサと、登録して親指につけてみる。

「これはね、魔力をためておける機能のほかに、移転装置。ほんの少しだけど、できるようにしたんだよ。最大で百メートル。くっついていたら、四人まで一緒に移転できるよ。条件は魔力がリングにたまっていること。はめていると使い方が色で分かるようになるからね。危険が迫ったときに、少しでも逃げきる可能性を高めるためのモノでもあるから、魔力が少したまったら、練習してみて」

「これは、ホントにすごい……ありがとうございます!!」

 消えることが一瞬できるようになるのか?

 竜人の魔道具は、すごい!!

 もうわたしは、逃げることの達人になれそうだ……

 そういえば、国に戻ったら迷い人は、隣の国に逃げると聞いたような……

 向こうの当たり人を決めておいた方が、良いのかな?

 今回はテトリがきちんとはじめに、当たり人の順番と渡すモノをある程度決めてくれたので、だいぶ助かったからなぁ……順番は大事。

 ちょっとまた、考えよう。

 こんなすごいモノをもらったら、これはもうお返しにマジックバックから、とっておいたモノ。
 大きめの肩から背負う革のカバン。
 腰に巻いて使う小さな革のカバン。
 あと、毛布を一枚。
 それを入れていた布の大袋が一枚。
 採取用の布袋、大が二枚、中が三枚。
 革の採取用袋、大が二枚、中が二枚。

 ポンポンとテーブルの上に出して、渡しておく。

 アリオさんは、次々とでてくる袋に驚いていた。

「パールちゃん。わたしのところで、こんなにもらっていいのかい?」

 小刻みに震えているアリオさんのかわりにウルグベお母さんが聞いてきたけど、大丈夫だと言っておいた。

「こんなすごいモノをもらったら、お礼をするのは当たり前だから気にしないで」

 ウルグベお母さんと話していると、急にアリオさんが立ち上がって。

「母さん! これで、お城に行けるよ!」

 庭から見える、王城をみつめながらアリオさんが話しだす。

「お城に、行く?」

 なにしに行くのか? 
 じっと王城を見つめ続けているアリオさんに代わって、ウルグベお母さんが教えてくれた。

「ツガイが、いるのさ」

「「ツガイーー!!」」

「おめでとう。よかったなあ! とうとうアリオさんにツガイが現れたのか?! でもお城って、まさか最近おとなの仲間入りしたっていう末の姫様じゃぁないよな? ハ、ハッハッ」

「そのまさか、みたいなんだよ……」


「「ホントにっ!?」」


 ツガイが、お姫様ーーっ!

 なんだか、すごい、すごいぞっ!!



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