俺の悪役チートは獣人殿下には通じない

空飛ぶひよこ

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アディ(偽名)くん、13歳の無双②

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「ブーリ魚の食べ頃なもの、一匹譲ってもらえませんか? もちろんお金は払いますから」

「そんな! アディ様からお代はいただけませんよ!」

「経営者であっても、そういうところはきちんとしておきたいんです。その分ちゃんと利益は得てますから」

 あんまこの辺ゆるゆるにすると、養殖場の職員はブーリ魚をタダで食えるみたいに捉えられるかもしれないしな。
 こっそり一、二匹がめるくらいなら目こぼししてやるが、横領レベルまで発展されたら困る。

「正規の値段で良いです。あ、でもあなた達が購入する時は従業員価格で3割引きで良いですからね。ちゃんと伝票さえ残していただければ」

 締める所は締める、緩める所は緩める。これが経営には大切……だと思う。前世での仕事に関する記憶が一切思い出せんから特に根拠はないけど。……もしかしたら思い出したら辛くなるから、女神が記憶を封印してくれたのか? だとしたら感謝だな。

「……本当にアディ様は13歳とは思えないほどしっかりしたお方だ」

「いえいえ、いつも、あまり現場に足を運べなくて本当に申し訳ありません。養殖場がこうして成り立っているのは全てディックさんのおかげです。いつも本当にありがとうございます」

「……アディ様……」

 厳つい体を震わせて、じわりと涙目になるディック。
 ディックはよく言えば実直、悪く言えば単純な男なので言動に裏がなくてとても助かる。
 事業を委任するには、こういう男に限るな。笑顔で化かし合いするのは、クリストファー殿下だけで十分だ。
 問題があれば、転移魔法を付与した封筒に手紙を入れて即相談・報告してくれるから、俺の知らないとこで勝手に陥れられてる心配もないし。

「まだ時間ありますか、アディ様? せめてお茶くらいは飲んでください! 試作品としてニックが新しいデザートを持ってきてくれたんです」

「ニックの新デザートですか。それは楽しみです」 

 ニックはブーリ魚の餌となる柑橘類の皮を無償で譲ってくれた、ジュース業者の男だ。
 ブーリ魚で利益が出ることがわかったんで、それ以降は有償で譲ってもらうことにしようとしたんだけど、ニックは代わりに新商品のアイデアを求めて来た。
 すぐに思いついたのは豆乳デザートだけど、ようやく豆腐が浸透したばかりの状況では時期尚早かと保留。代わりに思いついたのが、ゼリー的なデザートだ。
 ゼリーに使われるゼラチンは、動物の骨や皮からコラーゲンを抽出して作られることは知識として知ってはいたけど、製法自体は知らなかった。妹が読ませた転生チートの話ではスライムをゼラチン代わりに利用する方法が書かれていた覚えがあったので、この世界でも適応されるのではとも思ったのだが、この世界のスライムは強酸を吐き出す中ボス級の魔物でとても食用にはならなそうだった。(そう言えば前世妹は昔、どこからか買った古いゲームをプレイして、『スライムは昔は雑魚キャラでなかったんだ!』と感動してたのを思い出した)
 ので、思いついたのは浄化魔法を応用して、コラーゲンのみを抽出する方法。浄化魔法で消失する「汚れ」を、「コラーゲン以外の不純物」に置き換えて魔方陣に書きくわえた後に、食用動物の骨や皮を対象にして発動させたら、ちゃんと骨や皮があった場所にコラーゲンが抽出されて。水分と混ぜて加熱したら、見事ゼリーができました! ……うっかり対象を人間にしたら恐ろしい殺人魔法が出来上がることに気づき、恐れ慄いたのはここだけの話。怖すぎるわ。
 そんでそれを果物の皮のお代がわりにニックに提供した結果、リシス王国初のゼリーデザートが完成したわけです! 以前もコラーゲン多いものを煮て煮凝り的なやつにする料理はあったんだけどね。どうしても臭みが出るから、デザートとしては初。
 そして骨や皮を安く卸してくれる肉屋には、コロッケをはじめとした肉を使った前世レシピを提供して……と、連鎖的に地域活性化に繋がるよう暗躍してます。自分とこばかり儲かると、どうしても敵を作るからな。味方づくりは大切です。
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