俺の悪役チートは獣人殿下には通じない

空飛ぶひよこ

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兎の騎士③

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 片腕抱っこは安定しないし、小さなアニカを祭りで混雑する足元にいさせるのは心配なので、断りを入れたうえで肩車することに。
 小さくて軽いアニカなら魔法を使わなくてもいけそうではあるけど、不測の自体に備えて肩の身体強化と重力魔法を使ったので、体の負担は一切ない。頭のうえで、高い高いとはしゃぐアニカがとてもきゃわいい。持って帰りたい。いや、普通に誘拐だからやらんけど。 

「で、アニカはあんな所で何をしてたんだい? さっきの人達とは知り合いなの?」

「ううん。人化もできない兎獣人が祭りに来るなんて、スリが目的に決まってる。盗んだ金を出せって言われて、持って来たお金全部取られそうになったの。……孤児院のみんなで一生懸命貯めたお金なのに」

 ……おおう。柄が悪いとは思ってたが、子ども相手にタカるような最低な奴らだったとは。そうと知ってたら、もっとボコボコにしてやったのに。

「ひどい奴らだな」

「……でもね、わたしも悪いの。人化もできない草食獣人がお祭りになんて行ったら、ひどい目にあうかもってわかってて、孤児院を抜け出してきたんだから。だけど、どうしても昔一度だけ食べたお祭りのお菓子を、孤児院のみんなで食べたかったの。だから一番逃げ足が速いわたしが、代表してお祭りに来たのよ。……結局捕まっちゃったけど」

 自分を卑下するようなアニカの言葉に、ぎゅうっと胸が締め付けられる。
 ……先ほどから聞こえてくる、心ない周囲の獣人達の声にも。

「……何だよ。あの兎の兄妹。妹の方は、人化もできてねーじゃねぇか。弱っちい草食獣人が、祭りに来んじゃねぇよ」

「せっかくの祭りなのに、テンション下がるわー。女王陛下、草食獣人は祭りに参加禁止の法律作ってくれないかなあ。大型草食獣人なら、許すけどさ」

「弱い草食獣人なんて、強い肉食獣人に守られるだけの立場なんだから、もっとわきまえろよな」

 アストルディアは、兎の獣人は舐められやすいと言っていたが、それ以上に激しい差別意識がありそうだ。

「……ごめんね。騎士さま。騎士さまの国と違って、セネーバでは兎獣人はこういう扱いなの。嫌な気分になってない?」

「俺のことは気にしないで。それよりアニカは大丈夫? 辛くないかい?」

「大丈夫。慣れてるから」

 当たり前みたいに答える、アニカが悲しい。
 ……これがアニカにとっては普通の扱いで、この子はもう傷つくことすらできないのだと思い知らされたから。

「……何か買いたいお菓子があるんだろう。アニカ。俺も一緒に行ってもいいかい? できるなら、孤児院にも一緒に行かせてもらえると嬉しいんだけど」

「え? いいの? わたしといたら、騎士さま、よけいに目立って嫌なこと言われちゃうよ」

「俺は強いから平気。騎士はね、可愛い女の子を守るものなんだよ。俺を騎士だって言うなら、俺にアニカのことを守らせて」

 肩車から降りるべきか迷っている様子だったアニカは、俺の言葉に肩の上の小さな体を跳ねさせた。
 暫くの沈黙の後、ぽふりと後頭部に、鼻先を埋められたような柔らかい感触が。

「……わかった。ありがとう。騎士さま」

「どういたしまして」

 照れちゃったのかな? ああ、本当可愛い。

「あ、でもその前にちょっと知り合いに連絡入れさせてね」

「? どうやって? 手紙を運んでくれる鳥さんを飼っているの?」

「違うよ。ちょっと俺の国ならではの方法があるんだ」

 ……嘘は言ってないぞ。魔法の展開は、セネーバにはない、リシス王国ならではの方法ではあるからな。レンリネドも使えるけど。
 亜空間から取り出した毛に、転移魔法を応用したものを付与して、マイクのように口に当てる。

「……アスティ。俺だ。大人の獣人に絡まれていた、兎獣人の少女を保護した。祭りの買い物に付き合って、孤児院まで送り届けるから、アスティは先に帰っていてくれ」

 これでアストルディアだけに、声が転送されたはずだ。これ以上一緒に祭りを回れないのは残念だけど、まあ十分楽しめたしな。サーカスはまた、何か別の機会があれば一緒に行ってもらおう。顔はなんとかごまかして。
 使ったアストルディアの毛を再び亜空間に収納して、頭上のアニカを見上げた。

「それじゃあ、行こうか。アニカ。どんなお菓子を買いたいんだい?」
 
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