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兎の騎士②
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「なっ……」
「なんだ、てめぇ! どこから現れやがった!」
当然の如く、ハイエナ達からあがる柄の悪い声。
……痛みはほとんどなかっただろうけど、まあ怒るよな。これに関しては完全に俺が悪い。
「……申し訳ありません。うっかり屋上から落ちてしまって」
へらりと愛想笑いを浮かべて謝罪をすると、何故か火に油をかけたように、ハイエナ達の殺気が増した。
「っこいつも兎じゃねぇか!」
「兎風情が、兄貴の頭を踏みつけやがったのか!?」
……あ、落下の衝撃で、フード外れてた。
「ふざんけんな、クソ兎! 生きて帰れると思うなよ!」
「ちょ、落ち着いてくださいよ」
いきなり始まる多勢に無勢の戦闘モード。
……しかし、こいつら弱いなあ。
うちのクラスで一番弱い奴でも、こんなヘボパンチはしなかったぞ。
次々と繰り出されるヘボ攻撃を華麗に避けながら、思案する。……少し痛い目見せて、失神させるくらいなら正当防衛か?
「くそっ、避けてんじゃねぇよ!」
ますますヒートアップして、ついには刃物まで出してきたので、一般人とは言えこのままにはしておけない。
というわけで、スタンガンの要領で、手に纏った雷魔法で軽く反撃させていただきます。
「ほらほら、皆さん落ち着いて」
「ぐっ」
「子どももいることですしね」
「がっ」
「な、てめぇ何をした!?」
「見てたでしょう? 軽く触っただけです。……こんな風に」
「ぐわっ!」
初級の雷魔法だけで拍子抜けするくらいあっさり失神してくれる柄の悪い獣人さん達。……身体強化、弱いなあ。ほぼ人間並じゃん。
「て、てめぇ! 何なんだよお! 兎の癖に」
「通りすがりの、一般人です」
「ぐああああっ!!!」
最後のボスらしきハイエナさんは、俺が身体強化バフを与えた分少し強めの雷魔法にしたら、白目を向いて失禁しながら失神してしまった。……ごめん。本当にごめん。下半身の洗浄魔法はかけておくから、許してくれ。
大人の獣人を全て倒し終えたので、一人残った獣面の兎の子どもに向き直る。
「ええと……兎のお嬢さんかな? ごめんね。怖い場面見せちゃって。こいつらとは、どういう関係なの?」
目線を合わせてかがみ込み、できる限り優しい笑みを浮かべて穏やかに質問すると、兎の女の子は震えだした。……しまったな。よけい怖がらせてしまったか。あの柄の悪い奴らが、実はこの子の保護者だったらどうしよう。
「……騎士さま」
「え?」
「兎の騎士さま! すごい、すごい、本当にいたんだ! 肉食獣人達を倒しちゃった!」
頬を薔薇色に染めて、興奮したようにぴょんぴょんと飛び回る女の子に、思わずポカンとしてしまう。……なんかつけ耳のせいで、おかしな勘違いをされている気がする。
どうやって否定しようかと悩んでいると、騒ぎを聞きつけて人がやって来る気配がした。
慌てて兎の女の子を、抱き上げる。
「……とりあえず、移動しようか」
駆けつけてきた人に見られる前に、そのまま猛ダッシュで裏路地を抜けた。
「すごい、すごい! 騎士さまは、足も速いのね。あっという間に広場に着いちゃった」
「……その、騎士様って言うのは何なんだい?」
「孤児院の先生が言ってたの! 海の向こうの大陸には、草食でも強い獣人がいて、わたしと同じ兎獣人でも馬に乗って騎士をやってたりするんだって。そんなの嘘だって思ってたけど、本当にいたんだね」
どうしよう……俺の片腕に中にちょこんと収まって、目をキラキラさせる兎の女の子が可愛すぎて、実は自分は兎獣人じゃないなんて言えない。というか、夢を壊したくなくて、敬語でこそないけど、口調や態度が自然と王子様っぽくなってしまう。演技慣れし過ぎてる、弊害だわ。
「……そっか。俺は騎士様ではないけど、お嬢さんがそう思うなら、今はそういうことにしとこうかな」
「お嬢さんじゃないよ。わたしは、アニカ。ただの孤児だよ」
「アニカって言うんだね。いい名前だ」
ふわふわの手を頬に当てて、くふふふ笑いながら耳をピコピコさせるアニカは、洋服を着た兎のぬいぐるみのようで、とても可愛い。可愛すぎて、心がぴょんぴょんする。
「なんだ、てめぇ! どこから現れやがった!」
当然の如く、ハイエナ達からあがる柄の悪い声。
……痛みはほとんどなかっただろうけど、まあ怒るよな。これに関しては完全に俺が悪い。
「……申し訳ありません。うっかり屋上から落ちてしまって」
へらりと愛想笑いを浮かべて謝罪をすると、何故か火に油をかけたように、ハイエナ達の殺気が増した。
「っこいつも兎じゃねぇか!」
「兎風情が、兄貴の頭を踏みつけやがったのか!?」
……あ、落下の衝撃で、フード外れてた。
「ふざんけんな、クソ兎! 生きて帰れると思うなよ!」
「ちょ、落ち着いてくださいよ」
いきなり始まる多勢に無勢の戦闘モード。
……しかし、こいつら弱いなあ。
うちのクラスで一番弱い奴でも、こんなヘボパンチはしなかったぞ。
次々と繰り出されるヘボ攻撃を華麗に避けながら、思案する。……少し痛い目見せて、失神させるくらいなら正当防衛か?
「くそっ、避けてんじゃねぇよ!」
ますますヒートアップして、ついには刃物まで出してきたので、一般人とは言えこのままにはしておけない。
というわけで、スタンガンの要領で、手に纏った雷魔法で軽く反撃させていただきます。
「ほらほら、皆さん落ち着いて」
「ぐっ」
「子どももいることですしね」
「がっ」
「な、てめぇ何をした!?」
「見てたでしょう? 軽く触っただけです。……こんな風に」
「ぐわっ!」
初級の雷魔法だけで拍子抜けするくらいあっさり失神してくれる柄の悪い獣人さん達。……身体強化、弱いなあ。ほぼ人間並じゃん。
「て、てめぇ! 何なんだよお! 兎の癖に」
「通りすがりの、一般人です」
「ぐああああっ!!!」
最後のボスらしきハイエナさんは、俺が身体強化バフを与えた分少し強めの雷魔法にしたら、白目を向いて失禁しながら失神してしまった。……ごめん。本当にごめん。下半身の洗浄魔法はかけておくから、許してくれ。
大人の獣人を全て倒し終えたので、一人残った獣面の兎の子どもに向き直る。
「ええと……兎のお嬢さんかな? ごめんね。怖い場面見せちゃって。こいつらとは、どういう関係なの?」
目線を合わせてかがみ込み、できる限り優しい笑みを浮かべて穏やかに質問すると、兎の女の子は震えだした。……しまったな。よけい怖がらせてしまったか。あの柄の悪い奴らが、実はこの子の保護者だったらどうしよう。
「……騎士さま」
「え?」
「兎の騎士さま! すごい、すごい、本当にいたんだ! 肉食獣人達を倒しちゃった!」
頬を薔薇色に染めて、興奮したようにぴょんぴょんと飛び回る女の子に、思わずポカンとしてしまう。……なんかつけ耳のせいで、おかしな勘違いをされている気がする。
どうやって否定しようかと悩んでいると、騒ぎを聞きつけて人がやって来る気配がした。
慌てて兎の女の子を、抱き上げる。
「……とりあえず、移動しようか」
駆けつけてきた人に見られる前に、そのまま猛ダッシュで裏路地を抜けた。
「すごい、すごい! 騎士さまは、足も速いのね。あっという間に広場に着いちゃった」
「……その、騎士様って言うのは何なんだい?」
「孤児院の先生が言ってたの! 海の向こうの大陸には、草食でも強い獣人がいて、わたしと同じ兎獣人でも馬に乗って騎士をやってたりするんだって。そんなの嘘だって思ってたけど、本当にいたんだね」
どうしよう……俺の片腕に中にちょこんと収まって、目をキラキラさせる兎の女の子が可愛すぎて、実は自分は兎獣人じゃないなんて言えない。というか、夢を壊したくなくて、敬語でこそないけど、口調や態度が自然と王子様っぽくなってしまう。演技慣れし過ぎてる、弊害だわ。
「……そっか。俺は騎士様ではないけど、お嬢さんがそう思うなら、今はそういうことにしとこうかな」
「お嬢さんじゃないよ。わたしは、アニカ。ただの孤児だよ」
「アニカって言うんだね。いい名前だ」
ふわふわの手を頬に当てて、くふふふ笑いながら耳をピコピコさせるアニカは、洋服を着た兎のぬいぐるみのようで、とても可愛い。可愛すぎて、心がぴょんぴょんする。
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