処刑された王女は隣国に転生して聖女となる

空飛ぶひよこ

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聖女の日々5

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 今さら過ぎる願いだった。

「そんなの、当たり前だよ。私は、セーヌヴェットの国民全てを、憎んでいるわけじゃないもの。……セーヌヴェット人というだけで憎むのなら、父様や母様、兄様やアルバートまで憎まないといけなくなっちゃう」

 ……私が、個人として憎む相手は、ルイス王と、ユーリアだけでいい。

 かつて私を責め立てた人達の姿も、今となってはもうおぼろげで、よく覚えていない。
 アシュリナを憎悪し、責め立てる声は、未だに鮮明に思い出せるけど、それだけだ。
 あの時私を魔女と断じた人はたくさんいた。だから、個人でなんてもう判別できない。
 もし、私を焼き殺した張本人が現れたとしても、きっと私は気づかないまま、【災厄の魔女の呪い】を解くことだろう。

 それでいい。それがいい。

 不特定多数の人間に憎しみを向けることは、ただただ私を疲弊させる。

 だからこそ、割り切ってしまおう。

 アシュリナを魔女だと罵ったのは、一部の人間だけかもしれないけど、口に出さないだけで、内に同じ想いを抱えていた人はいたのだろう。
 その想いの選別をして、助けるべきセーヌヴェットの民を判断するのは不可能だ。

 私は、【災厄の魔女の呪い】に侵され、私に助けを求めて来た人は、誰であろうが、けして見捨てない。

 それが私の生まれ持った使命でありーー本物の【災厄の魔女】であるユーリアへの復讐でもあるのだから。



 ……だけど、問題は……。

『ーー何故だ。何故救ってくれない! あんた、聖女なんだろ!?』

「……父様。私ちょっと、連れて行って欲しい所が……」

「ーーああ、よかった。ディアナ。戻ってたか」

 父様に向けた言葉は、突然扉を開けて入って来た兄様によって遮られた。

「ティムシー。今日の鍛錬は終わったのか?」

「いいや。まだだよ。でも、そろそろディアナが治療を終えた頃合だと思ったから、隊長に断って、少し抜けて来た」

 そう言って兄様は、懐から厳重に口元を縛った袋を取り出した。

「それじゃあ、ディアナ。今日の分の石を、俺にくれ」

「………わざわざ、取りに来なくてもいいのに」

「ディアナがそれを持っている時間を、少しでも短くしたいんだよ」

 少し躊躇った後に、マイクさんの分の【厄】の結晶を差し出した。
 兄様はすぐにそれを受け取ると、素早くそれを袋に入れた。石と石がぶつかるような音に、自然と眉が寄った。

「……だいぶたまったね。それ。この辺りで、ライオネル王か大聖堂にでも預けた方が良いんじゃない?」


 
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