処刑された王女は隣国に転生して聖女となる

空飛ぶひよこ

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連載2

決戦の時31

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「……うん」 

 兄様の言うことは、正しい。
 ルシトリアで、聖女の力を行使する相手を選別したように、この国でも私は「救えない」相手を切り捨てること慣れなければならない。

 兄様は再び前方に視線を戻して、続けた。

「罪悪感なぞ、感じる必要はない。この国は根本から腐っている。表面に見える病人をちまちま治癒したところで、救える人間は一握りだ。救ったところで、腐ったこの国に生きるのならば、遅かれ早かれまた苦境に立たされることになるだろう」

「そうだね……」

「忘れるな。ディアナ。お前がこの国ですべきことは、あくまで【災厄の魔女】を倒すことだ。それ以外のことに無駄に労力を使う必要はないし、結果的にそうすることがセーヌヴェットの民を救うことになる。優先順位を間違えるな。セーヌヴェットの民に直接手を差し伸べるのは、今回のように余力がある時だけにしておけ」

 そうだ。
 私がこの国に来たのは、あくまで【災厄の魔女】ユーリアを倒すためで、それこそが聖女の真の役割だ。
 あらゆる傷病を癒す力は、単に聖女としての地盤を確立する為の副次的なものだということを忘れてはいけない。

「……うん。わかった。ありがとう。兄様」

 この国にいる間は、よけいな罪悪感は捨てよう。
 ルシトリアにいた時のように揺らいでいたら、【災厄の魔女】につけ込まれるかもしれない。
 決戦の時が来たのだ。今までより、ずっとずっと強くならないといけない。

 そうでなければ、【災厄の魔女】を打ち倒し、兄様と一緒にあの懐かしいマーナアルハの家に帰ることなんてできないのだから。

「……あの~。お兄様。できたら気分を害さずに私の質問に答えて欲しいのですが」

 黙って私と兄様の会話を聞いていたシャルル王子が、ばつが悪そうに頬を掻いた。

「その……聖女アシュリナが処刑された時にまだ子どもだった年代の人ならばともかく、先ほどのご老人のような年代のセーヌヴェットの民を、お兄様は許せるのですか? それほど詳細に話を聞いたわけではありませんが、ルシトリアに亡命した時のお兄様の状況は何となく察しています。それなのに、どうして……」

 シャルル王子の言葉にハッとした。
 父アルバートを殺され暴徒に追われた兄様にとって、当時暴徒化したオーネさんは立派な仇の一人だ。
 そんな相手に私の一存で手を差し伸べてしまってよかったのだろうか。

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