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第2章 力を嫌う少女
この場所は……
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鳥の鳴き声とまぶしい日の光に、拓也はゆっくりと目を開けた。
目の前に広がるのは、全く知らない景色だ。
「あ…れ?」
状況を理解できない拓也は、目をしばたたかせる。
すると、横から―――
「おはよう、拓也。目が覚めた?」
のんびりとした声がかけられた。
驚いた拓也が声のした方を見ると、ベッドから少し離れた位置にある椅子に腰かけた実が、机に頬杖をついて本を読んでいた。
起き上がろうと腕に力を入れる拓也。
しかし、入れたはずの力が抜けてしまったのか、拓也は思い切りベッドに倒れてしまう。
「あーあ…。そこまで反動がきてたか。」
何が起こったか分からず混乱している様子の拓也に、実は溜め息混じりに呟いた。
妨害してきた相手が、あのレティルだけのことはある。
命を取るまでのものじゃないと思っていたけど、妨害魔法の作用に一切の容赦がない。
こんなものに引っかかっていたら、きっと数日は動けなくなっていたことだろう。
自分が動けずにいる間に息の根を止めるつもりだったのかどうか、その意図は知らないけれど。
「………」
やり方が回りくどいというか、陰湿というか。
思わず口元が引きつりかけたが、ぎりぎりで表情を殺し、実は本を閉じて椅子から立ち上がった。
拓也に近付いてその肩に手を置き、意識を集中させるために目を閉じる。
そして、ゆっくりと深呼吸をしながら、自分の魔力を拓也へと注ぎ込んだ。
「大丈夫?」
「……ああ。悪いな、実。」
拓也は自分の体に力が入るのを確認して、実の手を借りながら起き上がった。
「何があったんだっけ…? いきなり術が爆発したのは、なんとなく覚えてるんだけど……」
「それ以降は、気を失ってずっとここで寝てたよ。」
「なんであんなことに……」
額に手をやる拓也の隣に、実が腰かける。
「妨害魔法が働いてたって言えば分かる?」
「……ああ。」
しばし考えた後、拓也の顔に納得と嫌悪の表情が浮かんだ。
どうやら、妨害魔法の一言で犯人が誰なのかまで察したようだ。
「なるほどな。で、ここはどこだ?」
「俺の知り合いの家。」
「……は? 実、こっちに知り合いがいたのか?」
拓也が意外そうに目を見開く。
当然といえば当然の反応だ。
実は悩むように首を捻った。
「うーん……いたっていうより、最近知り合ったって感じ。」
「そうなのか。」
そう拓也が相づちを打ったその時、急に外から慌ただしい足音が聞こえてきた。
足音はまっすぐにこちらに向かい、隣を部屋のドアを開けたようだった。
そして今度は、この部屋のドアが大きく開かれる。
「こ、こ、かぁ!」
入ってきたのは一人の男性だ。
その全身からあふれる気迫に押されて、拓也は言葉を失う。
男性は胸辺りで結った茶髪を振り乱し、部屋中に視線をやる。
そして、その茶色い瞳に実を映すと、一直線に実に向かって駆け寄ってきた。
「実ーっ! ここにいたのか!!」
「だああっ! 近寄ってくんなぁ!」
両手を広げて飛びかかろうとしてきた男性の顔を、実は暑苦しそうに手で押しやる。
それでかけていた眼鏡がずれるが、男性はそんなことを気にも留めていない様子。
「怪我は!? 怪我は大丈夫なのか!?」
「だ、大丈夫だって。元気だから!」
逃げようとする実だが、なにしろ場所が悪い。
ベッドに座っている状態の実が必死に抵抗するも、結局はじわじわと男性に追い詰められていく。
「あ、あのー…」
すっかり蚊帳の外なのは分かっていたのだが、拓也はおそるおそる実と男性に声をかけた。
そこでようやく、拓也の存在に気付いたのだろう。
男性はハッと目を見開いて拓也を見ると、さっと実から離れて姿勢を正した。
「失礼。」
一つ咳払いをする男性。
「た、助かった。拓也、ありがとう。」
実が疲労しきった溜め息をつく。
拓也は実と男性を交互に見やり、躊躇いがちに口を開いた。
「あの、こちらは?」
そう訊ねると、実ではなく男性の方が柔らかな笑顔を拓也に向けて口を開いた。
「先ほどは取り乱してすまなかった。私は、ユリアス・ローレル。ここ、タリオン領の領主を補佐している。」
「は、はあ……」
拓也はユリアスに差し出された手を、これまた躊躇しながら握り返す。
拓也の腑に落ちない表情を見て、説明がかなり足りないことに思い至ったのだろう。
実は大きく溜め息を吐き出すと、一言だけ説明を追加した。
「父さんの兄さんだよ。」
「へえ、そうなんだ―――って……」
拓也ははたと動きを止める。
さらりと実が言うので、こちらもさらりと流しかけてしまったではないか。
拓也は口を結んで、実とユリアスを見つめる。
髪や瞳の色彩はともかく、顔つきや雰囲気がどことなく似ているような…?
「えええーっ!?」
言葉の意味が、ようやく頭に染み込んだ拓也であった。
「ってことは、ここは―――」
「そう。父さんの実家。」
実が簡潔にまとめる。
しかし、実の口からエリオスの名前が出た瞬間、明らかにユリアスの表情が不機嫌な色に彩られた。
「ふん。私は、あいつをこの家の一員とは認めないけどな。」
ユリアスの口から飛び出したのは、とても穏やかとは言い難い痛烈な言葉。
どういうことなのか。
簡単にそうは訊けない拓也は、ちらりと実を見やった。
実はというと、もう慣れたことなのか「またか…」と言いたげに顔をしかめるだけ。
どうやら、ユリアスにとってエリオスは温かく迎え入れられる弟ではないらしい。
それを察して、拓也は口をつぐむしかなかった。
「あ、そうだ。」
ここは早いところ話を変えた方がいい。
そう考えた拓也は、あえて軽い口調で実に話を振った。
「尚希は?」
あの尚希が、初めて訪れる場所で単独行動を取るとは珍しい。
特に誰かがこうして倒れている状況なら、尚希は十中八九つきっきりになるはずなのに。
尚希のことを十分に知っている拓也としては、疑問に思ったことを何気なく訊いただけだった。
しかし、拓也がそう問うた瞬間、実は表情を固まらせて不自然に視線を逸らしてしまう。
「尚希さん……ね。ははは……」
言葉を濁す実に、拓也は訝しげに眉を寄せる。
「どうした…?」
「まあ、行ってみれば分かると思うよ。そこに着替えがあるからさ。」
拓也の問いには答えずに、実はそう言うだけだった。
目の前に広がるのは、全く知らない景色だ。
「あ…れ?」
状況を理解できない拓也は、目をしばたたかせる。
すると、横から―――
「おはよう、拓也。目が覚めた?」
のんびりとした声がかけられた。
驚いた拓也が声のした方を見ると、ベッドから少し離れた位置にある椅子に腰かけた実が、机に頬杖をついて本を読んでいた。
起き上がろうと腕に力を入れる拓也。
しかし、入れたはずの力が抜けてしまったのか、拓也は思い切りベッドに倒れてしまう。
「あーあ…。そこまで反動がきてたか。」
何が起こったか分からず混乱している様子の拓也に、実は溜め息混じりに呟いた。
妨害してきた相手が、あのレティルだけのことはある。
命を取るまでのものじゃないと思っていたけど、妨害魔法の作用に一切の容赦がない。
こんなものに引っかかっていたら、きっと数日は動けなくなっていたことだろう。
自分が動けずにいる間に息の根を止めるつもりだったのかどうか、その意図は知らないけれど。
「………」
やり方が回りくどいというか、陰湿というか。
思わず口元が引きつりかけたが、ぎりぎりで表情を殺し、実は本を閉じて椅子から立ち上がった。
拓也に近付いてその肩に手を置き、意識を集中させるために目を閉じる。
そして、ゆっくりと深呼吸をしながら、自分の魔力を拓也へと注ぎ込んだ。
「大丈夫?」
「……ああ。悪いな、実。」
拓也は自分の体に力が入るのを確認して、実の手を借りながら起き上がった。
「何があったんだっけ…? いきなり術が爆発したのは、なんとなく覚えてるんだけど……」
「それ以降は、気を失ってずっとここで寝てたよ。」
「なんであんなことに……」
額に手をやる拓也の隣に、実が腰かける。
「妨害魔法が働いてたって言えば分かる?」
「……ああ。」
しばし考えた後、拓也の顔に納得と嫌悪の表情が浮かんだ。
どうやら、妨害魔法の一言で犯人が誰なのかまで察したようだ。
「なるほどな。で、ここはどこだ?」
「俺の知り合いの家。」
「……は? 実、こっちに知り合いがいたのか?」
拓也が意外そうに目を見開く。
当然といえば当然の反応だ。
実は悩むように首を捻った。
「うーん……いたっていうより、最近知り合ったって感じ。」
「そうなのか。」
そう拓也が相づちを打ったその時、急に外から慌ただしい足音が聞こえてきた。
足音はまっすぐにこちらに向かい、隣を部屋のドアを開けたようだった。
そして今度は、この部屋のドアが大きく開かれる。
「こ、こ、かぁ!」
入ってきたのは一人の男性だ。
その全身からあふれる気迫に押されて、拓也は言葉を失う。
男性は胸辺りで結った茶髪を振り乱し、部屋中に視線をやる。
そして、その茶色い瞳に実を映すと、一直線に実に向かって駆け寄ってきた。
「実ーっ! ここにいたのか!!」
「だああっ! 近寄ってくんなぁ!」
両手を広げて飛びかかろうとしてきた男性の顔を、実は暑苦しそうに手で押しやる。
それでかけていた眼鏡がずれるが、男性はそんなことを気にも留めていない様子。
「怪我は!? 怪我は大丈夫なのか!?」
「だ、大丈夫だって。元気だから!」
逃げようとする実だが、なにしろ場所が悪い。
ベッドに座っている状態の実が必死に抵抗するも、結局はじわじわと男性に追い詰められていく。
「あ、あのー…」
すっかり蚊帳の外なのは分かっていたのだが、拓也はおそるおそる実と男性に声をかけた。
そこでようやく、拓也の存在に気付いたのだろう。
男性はハッと目を見開いて拓也を見ると、さっと実から離れて姿勢を正した。
「失礼。」
一つ咳払いをする男性。
「た、助かった。拓也、ありがとう。」
実が疲労しきった溜め息をつく。
拓也は実と男性を交互に見やり、躊躇いがちに口を開いた。
「あの、こちらは?」
そう訊ねると、実ではなく男性の方が柔らかな笑顔を拓也に向けて口を開いた。
「先ほどは取り乱してすまなかった。私は、ユリアス・ローレル。ここ、タリオン領の領主を補佐している。」
「は、はあ……」
拓也はユリアスに差し出された手を、これまた躊躇しながら握り返す。
拓也の腑に落ちない表情を見て、説明がかなり足りないことに思い至ったのだろう。
実は大きく溜め息を吐き出すと、一言だけ説明を追加した。
「父さんの兄さんだよ。」
「へえ、そうなんだ―――って……」
拓也ははたと動きを止める。
さらりと実が言うので、こちらもさらりと流しかけてしまったではないか。
拓也は口を結んで、実とユリアスを見つめる。
髪や瞳の色彩はともかく、顔つきや雰囲気がどことなく似ているような…?
「えええーっ!?」
言葉の意味が、ようやく頭に染み込んだ拓也であった。
「ってことは、ここは―――」
「そう。父さんの実家。」
実が簡潔にまとめる。
しかし、実の口からエリオスの名前が出た瞬間、明らかにユリアスの表情が不機嫌な色に彩られた。
「ふん。私は、あいつをこの家の一員とは認めないけどな。」
ユリアスの口から飛び出したのは、とても穏やかとは言い難い痛烈な言葉。
どういうことなのか。
簡単にそうは訊けない拓也は、ちらりと実を見やった。
実はというと、もう慣れたことなのか「またか…」と言いたげに顔をしかめるだけ。
どうやら、ユリアスにとってエリオスは温かく迎え入れられる弟ではないらしい。
それを察して、拓也は口をつぐむしかなかった。
「あ、そうだ。」
ここは早いところ話を変えた方がいい。
そう考えた拓也は、あえて軽い口調で実に話を振った。
「尚希は?」
あの尚希が、初めて訪れる場所で単独行動を取るとは珍しい。
特に誰かがこうして倒れている状況なら、尚希は十中八九つきっきりになるはずなのに。
尚希のことを十分に知っている拓也としては、疑問に思ったことを何気なく訊いただけだった。
しかし、拓也がそう問うた瞬間、実は表情を固まらせて不自然に視線を逸らしてしまう。
「尚希さん……ね。ははは……」
言葉を濁す実に、拓也は訝しげに眉を寄せる。
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1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
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