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第3章 過去に刻まれた罪
扱いにくい存在
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家から出て門を閉めると、ふと近くに人の気配があることに気付いた。
そちらを見ずとも、誰なのかは想像に難くない。
「やっぱり、来ると思ってたよ。二人とも。」
苦笑と共に言ってから、実はその二人に向き合う。
拓也も尚希も、何も言わなかった。
脱走がばれたら一番怒るだろうと踏んでいた拓也は、とても冷静な表情でこちらをじっと見つめてくるだけ。
「………っ」
そんな拓也と目が合って、実は無意識に足を引きかけた。
本人には言っていないけれど、自分はこんな表情をする時の拓也が一番苦手だ。
一緒にいる時間が長い分、普段は尚希以上の心配性で説教ばかりの拓也だが、彼は時おり妙に冷静になることがある。
タリオンの一件がいい例だ。
そんな時の拓也の判断はこちらの意志を尊重したものが多い反面、その判断材料に嘘というものを一切許さない。
こうなった時の拓也ばかりは、さすがの自分でもごまかすのは困難。
拓也は自分の中で一番扱いにくい存在であり、大きな悩みの種でもあった。
―――それでも、今回だけは譲れない。
実は口を引き結び、堂々と拓也と対峙した。
「実。」
拓也の口調は、抑揚を抑えた控えめなもの。
しかし、その声からは静かな威圧感が漂っていた。
「自分の状態が、まだ予断を許さないっていう自覚はあるな?」
拓也の問いに、実は頷く。
「おれたちが反対することを承知で動いてるってことだな?」
また一つ頷く実。
すると、拓也の瞳に全てを見抜くような鋭い光が宿った。
「じゃあ訊こう。実がしたいことは、自分を犠牲にしても、おれたちの反対を押し切ってでもしなくちゃいけないことなのか?」
「そうじゃなきゃ、こうしてここにいない。」
最後の問いには即答した。
譲らない。
妥協もしない。
そんな意志を込めて、実は拓也を睨む。
実と拓也の視線が静かに、けれども激しくぶつかる。
「チャンスは、今しかないんだ。」
別に、自分の行動を肯定してもらうつもりはない。
ここまで言っても反対するというなら、その時は力でねじ伏せて強行突破するだけだ。
そんなことを思っていたが故に、実の口調はどこか淡々としていて、切実さにいまひとつ欠けるような雰囲気。
しかしながら、拓也は何かを頼りに実の心境を正確に読み取ったようだ。
しばしの沈黙の後、彼はそっと目を閉じる。
「―――分かった。もう止めない。」
拓也が告げたその一言で、ずっと傍観に徹していた尚希も諦めがついたようだ。
「で? 行き先はどこなんだ?」
「俺も知らない。」
当然の問いではあるのだが、答えを知らない以上ごまかしようもないので、実はありのままの答えを述べた。
「……は、はあ?」
先ほどまでの冷静さはどこへ行ったのか。
拓也が素っ頓狂な声をあげる。
「実、ふざけてるのか?」
「こんな時におふざけなんか言わないよ。」
そっけなく言い返したが、拓也の反応も無理ないものだとは分かっている。
明確な目的はあるのに、その目的地が分からないでは話にならないのだから。
「じゃあ、どういう意味か説明してくれないか。」
拓也が努めて平静を保った声で訊ねる。
「俺の移動に合わせて、向こうから引っ張ってくれる奴がいるんだ。詳しい目的地を知っているのは、あいつだけだよ。」
ただ事実を告げただけなのだが、拓也たちの表情はみるみるうちに険しくなっていく。
「そんな不透明な情報を信じるのか?」
「別に、信じちゃいないよ。」
拓也の疑念を、実は冷たく一蹴した。
自分がいつもの何倍も冷めた顔をしているのが、なんとなく想像できる。
「客観的に考えて、今回はあいつが持つ情報が有力だから、それを利用するだけ。信頼関係なんか、最初からないさ。」
その言葉を最後に拓也たちから目を離した実は、目を閉じて手の先に力を集中させた。
そこから生まれた光の風が、実の体を包んでいく。
「おい、実!」
まだ話は終わっていないと言わんばかりに、制止の声をあげる拓也。
それに、実はうんざりしたように肩を落とした。
なんだか、言い繕うのも面倒になってきた。
そういうことで、無言で腕をしならせる。
すると、実を包んでいた光が意思を持ったかのように拓也たちへと襲いかかった。
驚いて動けない拓也たちを、光は容赦なく飲み込んでしまう。
そして、三人の姿は路上から消えた。
そちらを見ずとも、誰なのかは想像に難くない。
「やっぱり、来ると思ってたよ。二人とも。」
苦笑と共に言ってから、実はその二人に向き合う。
拓也も尚希も、何も言わなかった。
脱走がばれたら一番怒るだろうと踏んでいた拓也は、とても冷静な表情でこちらをじっと見つめてくるだけ。
「………っ」
そんな拓也と目が合って、実は無意識に足を引きかけた。
本人には言っていないけれど、自分はこんな表情をする時の拓也が一番苦手だ。
一緒にいる時間が長い分、普段は尚希以上の心配性で説教ばかりの拓也だが、彼は時おり妙に冷静になることがある。
タリオンの一件がいい例だ。
そんな時の拓也の判断はこちらの意志を尊重したものが多い反面、その判断材料に嘘というものを一切許さない。
こうなった時の拓也ばかりは、さすがの自分でもごまかすのは困難。
拓也は自分の中で一番扱いにくい存在であり、大きな悩みの種でもあった。
―――それでも、今回だけは譲れない。
実は口を引き結び、堂々と拓也と対峙した。
「実。」
拓也の口調は、抑揚を抑えた控えめなもの。
しかし、その声からは静かな威圧感が漂っていた。
「自分の状態が、まだ予断を許さないっていう自覚はあるな?」
拓也の問いに、実は頷く。
「おれたちが反対することを承知で動いてるってことだな?」
また一つ頷く実。
すると、拓也の瞳に全てを見抜くような鋭い光が宿った。
「じゃあ訊こう。実がしたいことは、自分を犠牲にしても、おれたちの反対を押し切ってでもしなくちゃいけないことなのか?」
「そうじゃなきゃ、こうしてここにいない。」
最後の問いには即答した。
譲らない。
妥協もしない。
そんな意志を込めて、実は拓也を睨む。
実と拓也の視線が静かに、けれども激しくぶつかる。
「チャンスは、今しかないんだ。」
別に、自分の行動を肯定してもらうつもりはない。
ここまで言っても反対するというなら、その時は力でねじ伏せて強行突破するだけだ。
そんなことを思っていたが故に、実の口調はどこか淡々としていて、切実さにいまひとつ欠けるような雰囲気。
しかしながら、拓也は何かを頼りに実の心境を正確に読み取ったようだ。
しばしの沈黙の後、彼はそっと目を閉じる。
「―――分かった。もう止めない。」
拓也が告げたその一言で、ずっと傍観に徹していた尚希も諦めがついたようだ。
「で? 行き先はどこなんだ?」
「俺も知らない。」
当然の問いではあるのだが、答えを知らない以上ごまかしようもないので、実はありのままの答えを述べた。
「……は、はあ?」
先ほどまでの冷静さはどこへ行ったのか。
拓也が素っ頓狂な声をあげる。
「実、ふざけてるのか?」
「こんな時におふざけなんか言わないよ。」
そっけなく言い返したが、拓也の反応も無理ないものだとは分かっている。
明確な目的はあるのに、その目的地が分からないでは話にならないのだから。
「じゃあ、どういう意味か説明してくれないか。」
拓也が努めて平静を保った声で訊ねる。
「俺の移動に合わせて、向こうから引っ張ってくれる奴がいるんだ。詳しい目的地を知っているのは、あいつだけだよ。」
ただ事実を告げただけなのだが、拓也たちの表情はみるみるうちに険しくなっていく。
「そんな不透明な情報を信じるのか?」
「別に、信じちゃいないよ。」
拓也の疑念を、実は冷たく一蹴した。
自分がいつもの何倍も冷めた顔をしているのが、なんとなく想像できる。
「客観的に考えて、今回はあいつが持つ情報が有力だから、それを利用するだけ。信頼関係なんか、最初からないさ。」
その言葉を最後に拓也たちから目を離した実は、目を閉じて手の先に力を集中させた。
そこから生まれた光の風が、実の体を包んでいく。
「おい、実!」
まだ話は終わっていないと言わんばかりに、制止の声をあげる拓也。
それに、実はうんざりしたように肩を落とした。
なんだか、言い繕うのも面倒になってきた。
そういうことで、無言で腕をしならせる。
すると、実を包んでいた光が意思を持ったかのように拓也たちへと襲いかかった。
驚いて動けない拓也たちを、光は容赦なく飲み込んでしまう。
そして、三人の姿は路上から消えた。
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