世界の十字路

時雨青葉

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第4章 異世界の仕組み

助けられないもどかしさ

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 ヒスイたちは、もう何も言わなかった。


 シルヴィスに途中まで案内された後、実と晴人は部屋に戻るために長い廊下を二人で歩いていた。


「なあ、どうする?」
「何が?」


 晴人の問いに、実はひどく平坦な声で答える。


「だから……オレたち、これからどうすればいいのかなって……」


 晴人は、救いを求めるようなまなしで実を見つめる。
 それからのがれるように、実はくうを見上げた。


「さあね…。とりあえず、俺らは俺らで、自分に勝つしかないんじゃないの?」
「他の人は?」


「知らない。」
「そんな!」


 非難めいた声で叫んだ晴人は、実の腕を掴んだ。


「どうにかできないのか!? せっかく帰れるって可能性が出てきたのに……何もできないのかよ!?」


「………っ」


「実!」


「やめてくれ!!」


 晴人を押し返しながら、実は晴人に負けない悲痛さを含んだ声で叫んだ。


「俺だって……どうにかできるなら、とっくにそうしてる。……でも、俺は全能じゃないんだ。できないこともあるよ……」


 自分にはできないこともある。
 そう告げた実の顔が、泣きそうに歪んだ。


「これは、個人の戦いなんだ。たとえ俺たちがみんなに〝夢に負けなければ帰れる〟って言い回ったとしても、夢に勝てない奴は勝てない。それを救うことは……無理だよ。自分の恐怖に打ち勝つことがどれだけ難しいか、晴人にも分かるだろ…? 恐怖に飲まれるな、だなんて……ただでさえ参ってるみんなに、お前は押し付けられるのか?」


 ここでは、各々おのおのが自身の恐怖と対峙しなければならない。
 そこに、他人が入り込む余地などあるはずもない。


 いくら他人が助けに入っても、当人が恐怖を乗り越えない限りはどうにもならない。
 これは、そういう問題だ。


 実は眉根を寄せ、唇を噛み締める。


「ごめんね……晴人……」


 小さな謝罪の言葉は、周りの空気に溶けて消える。


「……オレも、ごめん。」


 まるで冷や水でも浴びたかのように、晴人から興奮した熱が引いていく。
 その後、晴人は実からゆっくりと手を離した。


「そう……だよな。なんか実って、いつも自信満々でしっかりしてるからさ…。いつもみたいに、実ならなんとかしてくれるって、勝手に思ってた。……ごめん。他力本願すぎるな、オレ……」


 情けねえ、と。
 気まずさをごまかすように笑う晴人。


 それが、取って貼りつけたような無理をしたぎこちない笑顔だというのは、一目瞭然だった。


「………っ」


 実は歯噛みする。


 アズバドルでは恐れられる自分も、ここでは無力なただの人間だ。
 それを痛感する。


 本当は、みんな助けてやりたいのだ。
 晴人や悠や、華奈美のことだって……


 最後には、二人して黙り込むしかなかった。




 それぞれの想いを乗せて、夜はまたけていく―――……



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